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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第3 中小企業金融公庫)|
  • 平成18年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

信用保証協会に対して行う融資事業の効果等について


信用保証協会に対して行う融資事業の効果等について

平成18年度決算検査報告 参照)

1 本院が表示した意見

(検査結果の概要)

 中小企業金融公庫(平成20年10月1日以降は株式会社日本政策金融公庫。以下「公庫」という。)は、中小企業金融公庫法(昭和28年法律第138号)に基づき、信用保証協会(以下「協会」という。)に対してその保証債務額を増大するために必要な原資となるべき資金及び保証債務の履行を円滑にするために必要な資金の貸付け(以下「融資事業」という。)を行っている。
 公庫は、信用保険等業務勘定の融資基金に、融資事業の原資として国から出資を受けていて、18年度末の融資基金の残高は6732億2762万余円となっていた。そして、15年度以降は、特定の政策目的を推進するための保証の促進等を図る特別長期資金(貸付期間1年。以下「長期資金」という。)の貸付けのみが行われており、その残高は18年度末現在で4629億5600万円となっていた。
 公庫は、各協会に保証債務残高等に応じて長期資金を貸し付けて、各協会は金融機関に同資金を保証債務残高等に応じて定期預金等として預託して、それにより、保証債務額の増大、政策的保証の推進、協会の保証基盤の強化という融資事業の効果が期待できるとしている。
 また、公庫は、協会への長期資金の貸付利率を、預入金額300万円未満の定期預金利率(預入期間1年)と預入金額300万円以上1000万円未満の定期預金利率(同)の平均利率の2分の1としている。これは、貸付利率の決定方法を定めた5年当時に、上記2区分の定期預金による預託額が62.5%を占めていた実態を踏まえて、原則として公庫の受取利息と協会の純運用益がおおむね等しくなるようにしているためである。
 そこで、経済性、有効性等の観点から、融資事業は保証債務額の増大、政策的保証の推進、協会の保証基盤の強化等に資するものとなっているか、融資事業の経済的な業務運営のための検討は十分なものとなっているかなどに着眼して検査したところ、公庫は、各協会の保証債務残高等に応じて貸付額を決める方法を採っていた。しかし、各協会の預託先金融機関別の預託額と保証債務残高の構成割合にはかい離が生じていて、長期資金の金融機関への預託と保証債務額の増大とに十分な関連性が認められない状況となってきていた。また、保証債務額の増大及び政策的保証の促進は、各協会における独自の施策等によるところが大きいなど、各協会の保証債務残高等を基礎とした現行の貸付方法は十分な効果が期待できるものとはいえない状況となっていた。さらに、協会の保証基盤については、協会の収支及び基本財産の状況が一部の協会を除いて充実したものとなっていたことから、融資事業によりその基盤を強化する必要性は少ないと認められた。
 また、協会への長期資金の貸付利率については、預入利率の高い預入金額1000万円以上の定期預金の預託額に占める割合が18年度末に80.5%に達するなど、預託の実態が変化したにもかかわらず、見直しが行われていなかった。
 したがって、上記の事態を踏まえて、融資事業の適切な運営、管理を図るための方策を講ずる要があると認められた。
 このような事態が生じていたのは、融資事業の効果について適切な分析に基づく評価を行っていなかったり、協会への貸付利率について金融機関への預託等の実態に合わせた見直しを行っていなかったりしたことなどによると認められた。

(検査結果により表示した意見)

 公庫において、融資事業に国から多額の出資が行われていることにかんがみ、融資事業の運営、管理が適切に行われて、その効果が十分発現されるよう、次のとおり、公庫総裁に対して19年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
ア 公庫資金の預託先であり保証付融資を行う金融機関の意見を参酌するなどして、融資事業の状況を分析、評価する。
 そして、これに基づき、協会への貸付規模、貸付方法について、各協会の保証債務残高等を基礎とする現行の方式等を見直して、各協会における保証の推進に対する取組姿勢、信用補完制度の受益者である中小企業者に対する預託先金融機関の保証付融資の状況等を十分に勘案して行う方式とするなど、協会への貸付けの在り方について検討する。
イ 協会への貸付利率については、協会が行う金融機関への預託等の実態を踏まえて、金利を見直す。

2 当局が講じた処置

 本院は、公庫本店において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、公庫は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 協会への貸付けの在り方について検討した結果、融資事業の効果が十分に発現し難い状況にあるものと考えて、20年度以降は、協会の業務運営に支障が生ずる場合を除いて新規貸付を停止することとして、20年2月に、この旨を各協会へ通知した。なお、19年度末の長期資金残高は20年度中に全額償還されることとなっている。
イ 協会への貸付利率については、協会が行う金融機関への預託額の80%以上が預入金額1000万円以上の定期預金であることを踏まえて、20年7月に、融資基金貸付業務取扱要領を改正して、預入金額1000万円以上の定期預金利率の2分の1に相当する利率とした。