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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(850) 高年齢者等共同就業機会創出助成金の支給が適正でなかったもの


(850) 高年齢者等共同就業機会創出助成金の支給が適正でなかったもの

科目
高齢・障害者雇用支援勘定
部局等
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
支給の相手方
3事業主
高年齢者等共同就業機会創出助成金の支給額の合計
14,902,000円
(平成17年度〜19年度)
不適正支給額
10,182,000円
(平成17年度〜19年度)

1 助成金の概要

(1) 高年齢者等共同就業機会創出助成金

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(以下「機構」という。)は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」 参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、45歳以上の求職者等(以下「求職者」という。)を雇い入れて継続的な雇用・就業機会を創出するために、高年齢者等共同就業機会創出助成金(以下「助成金」という。)の支給に係る業務を行っている。助成金は、45歳以上の者(以下「中高年齢者」という。)3人以上が共同して法人を設立して、求職者を雇い入れて継続的な雇用・就業機会を創出した場合に、当該法人に対して、法人の運営に要した経費等の一部を助成するものである。
 なお、機構は、助成金の支給業務については、中高年齢者の雇用の安定等を図ることを目的として各都道府県に設立された社団法人又は財団法人である雇用開発協会等(以下「都道府県協会」という。)にその一部を委託して実施している。

(2) 助成金の支給

 助成金の支給要件は、3人以上の中高年齢者がそれぞれ出資して設立した法人であること、設立登記後継続して事業を営んでいる雇用保険の適用事業主(以下「事業主」という。)が、法人の運営に要する経費等、助成金の支給対象となる経費(以下「支給対象経費」という。)を支払っていること、事業主が助成金の支給申請日までに求職者を雇用保険の被保険者として1人以上雇い入れたことなどとなっている。そして、支給額は、法人の設立登記の日から起算して6か月の期間内に費用が発生して、支払が完了した支給対象経費に3分の2を乗じて得た額(ただし、500万円を限度とする。)となっている。
 助成金の支給を受けようとする事業主は、法人の設立登記年月日、事業の概要等を記載した「高年齢者等共同就業機会創出事業計画書」に法人設立の際に必要とされた書類等を添付して、これを都道府県協会を通じて機構に提出することとなっている。また、法人の設立登記の日から6か月経過後に、雇用保険の被保険者数、支給対象経費等を記載した「高年齢者等共同就業機会創出助成金支給申請書」(以下「支給申請書」という。)に支給対象経費の支払を確認できる領収書等を添付して、これを都道府県協会を通じて機構に提出することとなっている。そして、機構は、支給申請書等の内容を審査した上、支給決定を行い、これに基づいて助成金の支給を行うこととなっている。また、事実と相違する内容の申請により助成金を支給した事業主に対しては、助成金の全部又は一部について支給決定を取り消して返還させることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構において会計実地検査を行い、平成15年度から19年度までの間に助成金の支給を受けた事業主のうち47事業主を選定して、合規性等の観点から、これらの事業主に対する助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、事業主から提出された支給申請書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に機構に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、17年度から19年度までの3事業主に対する助成金の支給(支給額14,902,000円)のうち、10,182,000円が適正に支給されておらず、不当と認められる。
 上記の不適正支給の態様は、支給申請日までに求職者を雇用保険の被保険者として雇い入れていなかったのに雇い入れたこととしたり、支給対象経費について事実と相違する領収書を添付したりなどして申請した事業主に対して、助成金を支給していたものである。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 機構は、事業主Aから、平成18年6月に求職者Bを雇用保険の被保険者として雇い入れたとする支給申請書の提出を受けて、これに基づき、助成金5,000,000円を支給していた。
 しかし、実際には、求職者Bの労働時間は短時間であり、雇用保険の加入要件を満たしていなかったため、事業主Aは、求職者を雇用保険の被保険者として1人以上雇い入れるという支給要件を満たしていないことから、助成金5,000,000円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、機構において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。