(平成18年度決算検査報告 参照)
独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、平成16年7月に、独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号)等に基づき、中小企業総合事業団、地域振興整備公団及び産業基盤整備基金の3法人の業務の一部を統合再編して設立され、中小企業者その他の事業者の事業活動に必要な助言、研修、資金の貸付け、出資等の事業を行っている。そして、出資事業の中には、駐車場、多目的ホールなどの商業活性化施設や情報提供等の機能を備えた産業支援施設の整備等を目的として、地方公共団体の出資又は拠出に係る法人(以下「第三セクター」という。)に対して出資を行っている。これらの第三セクター116社のうち、会社の議決権の過半数を所有している会社又は会社の議決権の100分の20以上を実質的に所有していて、出資、人事、資金等の関係を通じて財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる会社(以下「関係会社」という。)101社に対する払込出資額は統合再編前には565億4510万円であった。しかし、その後、経営の悪化等により純資産額が減少したため、19年3月末には434億7928万余円に減少している。
そこで、経済性、有効性等の観点から、関係会社の事業は、出資目的に沿って実施されているか、また、出資金の管理を適切に行っているかなどに着眼して検査したところ、多くの関係会社の経営状況は良好とはいえず、中には事業継続が困難となって清算に追い込まれたり、出資等の目的に沿った事業運営が行われていなかったりしているところなどもあった。
このような中で、機構における出資先の管理状況についてみると、組織として情報を共有して、有効な経営支援を行えるような体制を整備していなかったり、支部等とのネットワークが活用されていなかったりしていた。また、機構と地方公共団体との連携が十分でない事態も見受けられて、これらについて改善の要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、経済の長期低迷や地方公共団体の財政悪化に伴う第三セクターへの支援の縮小等により関係会社の経営状況が悪化してきたことなどにもよるが、機構において、次のことによると認められた。
ア 関係会社の経営状況を適時適切に把握して、管理方針を策定するための統一的な基準がないことや、関係会社の管理に関する業務について本部と支部等が情報を共有した上で支部等を十分活用する業務体制となっていなかったこと
イ 関係会社に対して、経営アドバイザー等を派遣するなどの経営支援等が十分になされていなかったこと
ウ 出資目的に沿った事業運営が行われていなかったり、経営不振に陥っていたりしている関係会社についての支援や、出資金の回収に向けた地方公共団体等の関係機関との協議が十分行われていなかったこと
関係会社に対する出資金の管理や事業の支援が適切に行われるよう、次のとおり、機構の理事長に対して19年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
ア 関係会社の経営状況を適時適切に把握するために、会社の事業の進ちょく状況、決算状況等の把握及び株式の処分等について定めた統一的な管理基準を整備した上で、各会社の管理方針を策定して支援や管理を行うとともに、支部等とのネットワークを十分活用できるような業務体制を整備すること
イ 関係会社の経営の健全化を図り出資等の目的を達成するために、関係会社に対して、経営アドバイザーを派遣するなどの経営支援等を積極的に行うこと
ウ 出資目的に沿った事業運営が行われていなかったり、経営不振に陥っていたりしている関係会社については、経営健全化等に関する計画を策定させて、その進ちょく状況に応じた支援等を実施すること、その結果、改善が困難である又は出資を継続していく意義が乏しいと見込まれる場合には、地方公共団体等の関係機関と十分協議の上、出資金の回収に向けた管理を行っていくこと
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院の指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 関係会社の経営状況の把握、支部等との情報の共有、株式処分の基準や手続等を定めた統一的な管理基準として出資先第三セクターに係る出資金管理要領を策定した。そして、この管理要領に基づき、出資先の関係会社ごとに管理方針を策定するとともに、管理に必要な情報を記載した管理シートを作成して、本部と支部等との情報の共有を促進した。そして、上記で定めた管理方針に基づき、地方公共団体や関係会社を訪問して、経営状況に関するヒアリングや管理方針の説明を行っている。
また、これまで本部で一括して行うこととしていた地方公共団体や関係会社との情報交換や協議等に支部等が関与する体制を整備して、支部等のネットワークを活用している。
イ 経営支援アドバイザーを派遣しやすい体制を整備するなどして経営支援アドバイザーの派遣回数を従来に比べて増やしたり、実質的に一部の出資事業に限定されていた経営アドバイザーを他の出資事業にも派遣したりしている。
ウ 経営不振に陥っている関係会社の経営健全化等に関する計画を策定させるとともに、その進ちょく状況に応じた支援等を実施したり、地方公共団体と協議を行い、減資を実施して繰越欠損金の解消を図ったりするなどしている。また、地方公共団体から関係会社に対する補助金や助成金の制度整備、維持又は増額等の必要な措置について地方公共団体との間で協議を行った。
また、改善が困難で出資を継続する意義が乏しいと見込まれる関係会社については、清算、破産手続を行ったり、地方公共団体への株式の譲渡による整理を行ったりした。