農林水産省は、農業水利システムを担い手中心の省力的システムに再構築することが必要であるとして、新農業水利システム保全対策事業の一環として、農業水利システム保全計画策定事業を実施する市町村等に対して、国庫補助金を交付して事業の推進を図っている。この事業において策定された農業水利システム保全計画が、合理的な水利用等の実現に資するものとなっているかなどについてみたところ、農業水利施設の機能診断等により判明した制約要因及びその除去の手段を十分に反映したものとなっていないなどの事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、保全計画を適切なものに修正させるなどするとともに、計画策定事業の事業効果が発現するように事業主体に対して計画策定事業の趣旨の周知徹底及び指導を行い、事業主体が策定した保全計画に対する審査を確実に行うなどの処置を講ずるよう、農林水産大臣に対して平成20年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、本院が指摘した138地区に係る保全計画を、21年3月までに機能診断等の結果を反映した適切なものに修正させるとともに、20年9月に発出した通知に基づき、事業主体に対して、都道府県を通じて、計画策定事業の趣旨の周知徹底及び指導を行い、また、事業主体が策定した保全計画に対する審査を行い、機能診断等の結果を十分反映させていない保全計画を修正させるなどの処置を講じていた。