会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)住宅建設等事業費 | |||
社会資本整備事業特別会計(治水勘定)(平成19年度以前は、治水特別会計(治水勘定)) | ||||||
(項)河川整備事業費 | ||||||
(平成19年度以前は、 | (項)河川事業費) | |||||
(項)総合流域防災事業費 | ||||||
部局等 | 5府県 | |||||
補助の根拠河川法 | 河川法(昭和39年法律第167号)、予算補助 | |||||
事業主体 | 府1、県3、市1、計5事業主体 | |||||
工事の概要 | 事業主体が実施する河川工事に伴う鉄道工事の施行を鉄道事業者に委託する工事 | |||||
鉄道事業者に委託した鉄道工事の件数及び支払済委託費 |
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上記に対する国庫補助金交付額 |
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出来高の把握を的確に行えないまま支払った鉄道工事の件数及び支払済委託費 |
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上記に対する国庫補助金交付額 |
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(前掲「出来高検査を適切に行わなかったため、補助金を過大に受給しているもの」 参照)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴省は、公共の安全を保持し、公共の福祉を増進するため、河川法(昭和39年法律第167号。以下「法」という。)等に基づき、洪水等による災害の発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全に必要な河川工事を、直轄事業又は補助事業により毎年多数実施している。
このうち補助事業については、河川を管理する都道府県等の長(以下「事業主体」という。)が、河川断面の拡幅や護岸等の河川管理施設を整備するための工事を行うものとされているが、河川と鉄道が交差する箇所に架かる鉄道施設の改築等(以下「鉄道工事」という。)を行う場合には、「河川工事に起因して生じる鉄道工事について」(平成14年国河治第191号、国鉄技第138号河川局長及び鉄道局長通達)等に基づき、河川の管理並びに鉄道の運転保安及び施設管理の重要性を考慮し、事業主体と鉄道事業者の技術力及び経済性を勘案して鉄道工事を施行する者を決めることとされている。そして、ほとんどの場合、事業主体は鉄道事業者に鉄道工事を委託して施行させており、委託を受けた鉄道事業者は建設業者と請負契約等を締結して鉄道工事を施行している。
鉄道工事を伴う河川工事は、治水安全上の理由から河川の流水及び鉄道の運行を維持したまま、線路等の切替え、河川の切回し、仮設物の設置及び撤去等を行う必要があること、また、同一箇所内に鉄道施設、河川管理施設等が存在し、それぞれの施設を管理する者が異なることなどから、施工方法等が複雑となり工期は長期にわたる場合が多い。
このため、事業主体は、鉄道事業者との間で、全体の工事の内容、総事業費等を記した協定(以下「全体協定」という。)を締結し、さらに、毎年度、年度内に施行可能な工事の内容、事業費等を明確にするための協定(以下「年度協定」という。)を締結し、年度協定ごとに補助事業の実績報告を行うこととしている。そして、事業主体は、各年度協定ごとに、鉄道事業者から提出を受けた書類により出来高等を把握した後に鉄道事業者に委託費を支払い、これに係る国庫補助金の交付を受けている。
鉄道事業者に委託された鉄道工事は全体工期が長期にわたることが多いことなどから、本院は、合規性等の観点から、事業主体における年度協定ごとの委託費の支払が適切に行われているかなどに着眼して、22府県等(注1)
において会計実地検査を行った。
検査に当たっては、全体協定における工期が3か年以上の鉄道工事のうち、平成16年度から20年度までの間に年度協定が締結されている35件(支払済委託費314億0768万余円、国庫補助金交付額144億5355万余円)を対象として、協定書等の関係書類の提出を受けるとともに、必要に応じて現地を確認するなどして検査した。
検査したところ、5府県等(注2)
が事業主体となって鉄道事業者に委託した6件の鉄道工事(支払済委託費99億3451万余円、国庫補助金交付額44億3184万余円)において、次のような事態が見受けられた。
すなわち、上記の補助事業において、事業主体は、当該年度の年度協定に基づく工事が年度内に完了できない場合、年度協定を変更し工期を延伸して工事の一部を翌年度に実施することとしていた。そして、延伸した年度協定における工期が終了していないうちに、全体協定に基づいて新たに翌年度の年度協定を締結したため、両年度協定における工期の一部が重複していた。
一方、鉄道事業者と建設業者との間の請負契約は、土木、軌道、電気設備、通信設備工事等の工種ごとに締結され、このうち、土木、軌道工事については複数年度にわたる工期により締結されている場合が多い。また、建設業者からの出来高の報告は土留工、掘削工、橋台工等の作業種別ごとに行われることになっている。このため、鉄道事業者は年度協定における工期が重複している場合には、その重複している期間内に同一作業種別の工事がそれぞれの年度協定にあると、その作業種別の出来高を年度協定ごとに把握することはできない。したがって、鉄道事業者が建設業者からの出来高の報告を基に作成して事業主体に提出する書類では年度協定ごとの工事の出来高の把握は的確に行えないのに、事業主体は、年度協定に基づく工事がすべて完了したとして鉄道事業者に委託費86億8341万余円(国庫補助金交付額38億8103万余円)を支払っていた。
これらの中には、次のとおり、年度協定に基づく支払額の合計が出来高の合計額を大幅に上回っている事態が見受けられた。
横浜市(事業主体)は、平成16年度から22年度までの期間に、二級河川今井川に架かる東海道本線の岩間川橋りょう及び金沢橋の架替え等工事を総事業費66億9965万円で東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)に委託して施行させている。
同市は、鉄道工事が遅延したことに伴い、16年4月に締結した16年度の年度協定における工期を17年11月まで延伸(その後、更に18年1月まで延伸)していたのに、17年6月に、17年度の年度協定を締結していた。このため、16、17両年度の年度協定における工期が重複していて、建設業者から提出を受けた書類では16年度の年度協定の工事の内容とその出来高の把握を的確に行えなかった。しかし、16年度の年度協定の工事が完了したとする物品役務完了検査調書を作成して、JR東日本に委託費を支払い、これに基づき、補助事業の実績報告を行い国庫補助金の交付を受けていた。
そして、同市は、17年度の年度協定及び18年度の年度協定に基づく鉄道工事の施行に当たっても、工期が重複したままそれぞれ翌年度の年度協定を締結するなどしていて年度協定ごとの工事の内容とその出来高の把握を的確に行えなかったのに、年度協定の工事が完了したとしてJR東日本に委託費を支払うなどしていた。
さらに、同市は、鉄道工事全体の進ちょくを適切に把握していなかったため、19年度末までの工事施行分の委託費の支払額が実際の出来高より8億2358万余円過大となっていて、これに係る国庫補助金2億7452万余円が過大に交付されていた。
このように、長期にわたり鉄道事業者に施行を委託する鉄道工事において、年度協定ごとの工事の内容とその出来高の把握を的確に行えないことから、事業主体がその把握を行わないまま、年度協定に基づく工事がすべて完了したとして委託費を支払い、これに基づいて補助事業の実績報告を行っている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、補助事業における長期にわたる鉄道工事の施行に当たり、年度協定における工期が重複している場合は年度協定ごとの出来高の把握を的確に行えない状況であるのに、事業主体に対して、年度協定の工事の内容を変更して年度末で終了させて、完了していない工事については残工事分を翌年度の年度協定の工事としたり、延伸した年度協定における工期が終了した後に新たな翌年度の年度協定を締結させたりして、年度協定における工期が重複しないようにするための指導が十分に行われていなかったことなどによると認められる。
河川と鉄道が交差する箇所については、今後も多数の河川工事に伴う鉄道工事の施行が必要となることから、当該工事について、引き続き、鉄道事業者に委託することが見込まれる。
ついては、貴省において、長期にわたり鉄道事業者に鉄道工事を委託する場合には、事業主体に対して、年度協定ごとの出来高の把握が的確に行えるよう、当該年度と翌年度の年度協定における工期を重複させないよう助言するなど指導を徹底し、もって、委託した鉄道工事に係る支払を適切に行わせるよう是正改善の処置を求める。