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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

国庫補助事業において工事の委託等がある場合の事務費の算定に当たり、委託工事に係る事務費を適正に控除するよう是正改善の処置を求めたもの


(5) 国庫補助事業において工事の委託等がある場合の事務費の算定に当たり、委託工事に係る事務費を適正に控除するよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 道路整備特別会計(平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定))
    (項)道路事業費
    (項)道路環境整備事業費
    (項)地方道路整備臨時交付金
部局等 国土交通本省、19府県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号。平成20年度以降は「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」)、交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年法律第45号)等
補助事業者
(事業主体)
府2、県17、市15、町4、村2、計40事業主体
補助事業 道路整備事業
国庫補助事業に係る事務費の概要 国庫補助事業の施行のために必要な人件費、旅費、庁費等に係る経費
(1)委託事務費を適正に控除しておらず、過大になっている事務費の額
1億1832万余円
(平成18、19両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
7117万円
 

(2)特定の事業者に委託する場合等に、事業主体が算定した事務費と委託事務費を適切に控除した場合の事務費との開差額
4395万円
(平成18、19両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
2375万円
 

(1)及び(2)の純計
1億5367万余円
 

上記に対する国庫補助金相当額;
8911万円
 

(3)委託費の内容が正確に把握されていない事業の事務費の額
55億2405万余円
(平成18、19両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
46億4418万円
(背景金額)

(上記(1)の事態については、前掲「補助の対象となる事務費の算定が適切でなかったため、補助金が過大に交付されているもの」 を参照)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 国庫補助事業において工事の委託等がある場合の事務費の算定について

(平成21年10月30日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 補助事業の概要

(1) 事務費の概要

 貴省は、道路交通の円滑化を図るなどのため、国が実施する直轄事業のほか、都道府県等が実施する国庫補助事業により道路整備事業を実施しており、このうち、道路局所管の国庫補助事業(以下「補助事業」という。)を実施する都道府県等の事業主体に対しては、事業に要する費用の一部について、道路法(昭和27年法律第180号)等に基づき、国庫補助金を交付している。
 そして、補助事業における事業費の内容、算定方法等については、「道路局所管補助金等交付申請について」(平成13年3月30日国土交通省国道総第589号国土交通省道路局長通知。以下「交付申請要領」という。)等によることとしており、これによると、補助事業の事業費は、本工事費(委託費を含む。)、用地費、補償費等から成る工事費と職員の人件費、旅費、庁費等から成る事務費とに区分されている。このうち、事務費については、事業費(注1) を所定の金額の段階に区分して、区分ごとに定められた率を乗じて得た額を合計した額(以下「定率事務費」という。)を事務費補助限度額とし、その範囲内で必要な額を補助の対象となる事務費(以下「補助対象事務費」という。)として算定することとなっている。

(2) 委託工事の概要

 事業主体は、補助事業の実施に当たり、当該事業主体が管理する道路の整備に関する工事を国や他の地方公共団体等が管理する道路の工事と合わせて行う場合、道路と鉄道との交差に関する工事を行う場合、電線共同溝の整備に伴う管路の埋設工事を行う場合等においては、国、地方公共団体、鉄道事業者、電気事業者等に工事を委託して施行(以下、これら委託して施行する工事を「委託工事」という。)することがある。この場合、事業主体は、委託先に委託費を支払っており、この委託費の中に、委託先が当該委託工事を実施するために必要な事務費(以下「委託事務費」という。)が含まれている。
 そして、工事を委託して施行する場合、事業主体が自ら行う事務が軽減され、その分の事務費を要しないこと及び委託費の中に委託事務費が含まれていることから、補助対象事務費の算定に当たっては、定率事務費から委託事務費の実績額を控除した額を事務費補助限度額とすることとなっている。
 また、事業主体は、委託費の内容を把握するため、委託先から工事費、委託事務費等の内訳及び金額が記載されている精算書等の提出を受けるなどしている。この精算書等の様式及び内容は、委託先によって費目の名称及び区分が異なることなどから、委託先ごとに区々となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 事業主体は、補助事業を実施する場合、補助対象事務費を適正に算定する必要がある。そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、補助事業の実施に当たって工事を委託して施行した場合、委託費の内容及び金額を正確に把握し、定率事務費から委託事務費を適切に控除して、補助対象事務費を適切に算定しているかなどに着眼して検査を行った。

(検査の対象及び方法)

 平成18、19両年度に補助事業により道路整備事業を実施した19 府県及びその管内427市町村のうち、事業内容に委託工事等を含めて実施している110事業主体の356事業、事業費計3257億9040万余円(国庫補助金2666億0106万余円)を対象に、完了実績報告書、精算書等の書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 委託事務費を適正に控除していないもの

 事業主体が国や他の地方公共団体等に工事を委託して施行する場合、事務費補助限度額の算定に当たっては、前記のとおり、定率事務費から委託事務費の実績額を控除することとされている。
 しかし、16府県(注2) の23事業主体は、委託契約77件を含む34事業、事業費計678億0601万余円(国庫補助金548億4420万余円)において、定率事務費から、委託事務費を控除していなかったり、委託事務費の実績額より低額な概算額を控除していたりするなど、適正に委託事務費を控除することなく事務費補助限度額を過大に算定し、これにより補助対象事務費を計25億3344万余円(国庫補助金21億3172万余円)としていた。
 これらについて、定率事務費から委託事務費の実績額を控除するなどして適正な事務費補助限度額を算定すると計24億1511万余円となり、上記の補助対象事務費計25億3344万余円はこれより1億1832万余円が過大となっており、これに係る国庫補助金相当額7117万余円が過大に交付されていて、適正を欠いていると認められる。

(2) 特定の事業者に委託する場合等の委託事務費等を控除の対象としていないもの

 電線共同溝の整備に伴う工事を電気事業者等に委託して施行する場合及び公共施設管理者負担金(注3) を土地区画整理事業の施行者に支払う場合に、当該委託先等に支払った委託事務費等を適切に控除している事業主体がある一方、11府県(注4) の14事業主体は、委託契約等75件を含む27事業、事業費計156億1460万余円(国庫補助金102億1552万余円)において、これを控除の対象としていなかった。これらの事業主体は、委託先等に委託事務費等を支払っているにもかかわらず、交付申請要領に、委託事務費を控除する場合の委託先が国、他の地方公共団体等とされていることから、電気事業者等や土地区画整理事業の施行者はこれらの対象者に該当しないと判断するなどして、委託事務費等計5223万余円を控除していなかった。
 しかし、事務費補助限度額の算定に当たっては、委託先等のいかんにかかわらず、委託事務費等を控除する必要があり、上記の27事業について、適切な事務費補助限度額を算定すると計5億4269万余円となることから、14事業主体が算定した補助対象事務費計5億8665万余円は、4395万余円(国庫補助金相当額2375万余円)の開差が生じることとなる。

 上記の(1)及び(2)の事態について、過大に算定されていた補助対象事務費計1億6228万余円から、重複している861万余円を差し引くと1億5367万余円となり、これに係る国庫補助金相当額8911万余円が過大になっていると認められる。

(3) 委託費の内容を正確に把握していないもの

 補助事業の実施に当たって工事を委託して施行した事業主体は、委託先から精算書等の提出を受けるなどして、これを基に控除する委託事務費の額を算定する必要がある。これらの委託先は多くの業種にわたり、委託工事の内容も多様なものとなっていることから、委託先ごと、委託契約ごとに精算書等の様式及び内容は区々となっていて、同様の費用であっても、事務費の費目として計上されていたり、工事費等の費目に計上されていたりするなどしていた。
 そして、18府県(注5) の35事業主体は、委託契約273件を含む87事業(補助対象事務費計55億2405万余円、国庫補助金46億4418万余円)において、事務費と明記されている費用のみを控除対象の委託事務費として控除して、補助対象事務費を算定していた。
 しかし、上記の委託契約273件の精算書等の内訳をみると、これらの委託費の中には、事業主体が控除の対象とした事務費と明記されている費用以外にも、委託事務費に該当すると思料される設計監督費等の費用が含まれており、事務費補助限度額の算定に当たっては、これらの費用についてもその内容を精査した上、委託事務費に該当するものは適切に控除する必要があると認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 前記のように、委託事務費を適正に控除していなかったり、特定の事業者に委託する場合等の委託事務費等を控除の対象としていなかったりしているため、事務費補助限度額及び補助対象事務費が過大に算定されていて、これに係る国庫補助金が過大に交付されている事態並びに委託費の内容を正確に把握していないため、控除すべき委託事務費が適切に控除されていない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、主として次のようなことによると認められる。

ア 貴省において

(ア) 交付申請要領等において、委託事務費等を控除する趣旨を明確にしていないこと及び国庫補助金の交付に当たって、控除すべき委託事務費等の額を十分に把握していないこと
(イ) 交付申請要領等において、控除の対象となる委託事務費等に係る委託工事の委託先等について、国、地方公共団体以外のものもすべて対象となることを明確にしていないこと
(ウ) 交付申請要領等において、控除の対象となる委託事務費等に該当する費用について、実質的な内容で判断する必要があることを明確にしていないこと

イ 事業主体において

(ア) 委託事務費等を適正に控除することなどについての認識が十分でなく、また、国庫補助金の交付申請に当たって、控除すべき委託事務費等の額を適正に計上していないこと
(イ) 控除の対象となる委託事務費等に係る委託工事の委託先等についての認識が十分でないこと
(ウ) 委託費の内容を正確に把握しておらず、控除すべき委託事務費等の精査等が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 道路整備事業においては、公共事業としての事業の透明性や効率的な予算の執行が求められている。
 ついては、貴省において、補助事業における事務費に係る国庫補助金の額を適切に算定するため、当該事務費が適切に算定されるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 交付申請要領等において、委託事務費等を控除する趣旨を明確にすること
イ 交付申請要領等において、工事等を委託して施行した場合は、委託先等のいかんにかかわらず、委託事務費等を控除すべきことを明確にすること
ウ 交付申請要領等において、控除する委託事務費等については、費目名のいかんにかかわらず、実質的な内容で判断する必要があることを明確にすること
エ 事業主体に対して、国庫補助金の交付申請に当たって、控除すべき委託事務費等の額を適正に計上するよう周知徹底すること

 事業費  地方道路交付金事業については国費の額、その他の補助事業については国費と地方費を合計した額

 16府県  京都、大阪両府、岩手、山形、福島、茨城、埼玉、静岡、和歌山、鳥取、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、長崎各県

 公共施設管理者負担金  土地区画整理事業の施行地区内において、道路、公園等の公共施設の新設又は変更を行う場合に、当該公共施設に係る用地費、物件移転補償費及び事務費について、それぞれの公共施設の管理者又は管理者となるべき者が土地区画整理事業の施行者に支払う負担金

 11府県  大阪府、岩手、福島、茨城、長野、静岡、鳥取、山口、徳島、香川、愛媛各県

 18府県  京都、大阪両府、岩手、山形、福島、埼玉、長野、静岡、和歌山、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡、長崎各県