国土交通省及び地方公共団体は、地盤改良工事の設計に当たり、施工現場が民家に隣接するなど周辺環境等に配慮する必要がある場合に、地盤改良材に発じん抑制型のセメント系固化材を使用してスタビライザ等により地盤改良材と軟弱土を混合する工法で設計している。しかし、国土交通省が積極的な活用を進めている新技術の中には、発じん抑制型のセメント系固化材よりも安価な一般軟弱土用のセメント系固化材を使用しても、粉じんの発生を抑制できる移動型土質改良用機械による工法(以下「移動型改良工法」という。)があり、移動型改良工法によると地盤改良工費が安価となる場合があるのに、経済比較等の検討を十分行っておらず、経済的な設計となっていない事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、粉じんの発生を抑制する必要がある地盤改良工事の実施に当たり、工法の選定を適切なものとして経済的な設計を行うことなどの処置を講ずるよう、国土交通大臣に対して平成20年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、20年9月に地方整備局等に対して事務連絡を発して、粉じんの発生を抑制する必要がある地盤改良工事の実施に当たっては、移動型改良工法についても比較検討の対象とした上で、工法の選定を適切に行って経済的な設計となるよう周知徹底するとともに、都道府県等に対して同様の助言を行い、管内の関係機関等にもこの旨を周知徹底するよう要請するなどの処置を講じていた。