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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第26 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

入居率が低調な借上宿舎について、一括して借り上げることをやめて個別に借り上げることにより、空室となっている宿舎に対する賃借料等を支払うことのないよう改善させたもの


入居率が低調な借上宿舎について、一括して借り上げることをやめて個別に借り上げることにより、空室となっている宿舎に対する賃借料等を支払うことのないよう改善させたもの

科目
(石油天然ガス勘定) 経常費用
部局等
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
契約名
貸室賃貸借契約
契約の概要
集合住宅1棟全21戸を独身者用の宿舎として借り上げるもの
賃借料等の支払額
7541万余円
(平成16年4月分〜20年12月分)
上記のうち1か月間全日にわたり空室となっていた宿舎に係る賃借料等相当額
3269万円
 

1 宿舎等の概要

(1) 宿舎の概要

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構宿舎貸与規程(2004年(総企)規程第16号)等に基づき、職員の居住の用に供する宿舎を管理運営しており、機構が必要と認めた場合に職員に対して宿舎を貸与している。機構が管理運営している宿舎は平成20年10月末現在で87戸あり、その内訳は機構が保有する宿舎35戸及び民間業者等から借り上げた宿舎52戸となっている。

(2) 浦安宿舎に係る賃貸借契約の概要

 機構は、機構本部等に勤務する職員に貸与するため千葉県浦安市に所在する集合住宅1棟(21戸)を、民間業者から一括して借り上げて独身者用の宿舎としている(以下、この宿舎を「浦安宿舎」という。)。この宿舎は、旧石油公団(以下「公団」という。)が5年3月から借り上げていたもので、16年2月に機構が設立されたことに伴い、当該借上げに係る賃貸借契約を機構が承継して、引き続き借り上げているものである。そして、公団が1棟を一括して借り上げたのは、従前16戸を個別に借り上げていたが、管理面を考慮してこれを集約することとしたことによるとしており、一括して借り上げることによって月額賃借料を有利なものとすることも期待できたとしている。
 機構が締結している賃貸借契約は、19年4月1日付けで契約を更新したもので、賃借料及び管理費(以下「賃借料等」という。)は月額1,323,000円、契約期間は2年間(19年3月25日から21年3月24日まで)となっている。また、機構は契約期間中であっても2か月前に予告して、この契約を解約することができるなどとされていて、この契約条件は機構が賃貸借契約を承継した以降は変更されていない。そして、機構が支払った16年4月分(注) から20年12月分までの賃借料等の額は計7541万余円となっている。

 機構は平成16年2月に設立されているが、賃借料等は、前月末日までに支払うこととされていることから、16年2月分及び3月分の賃借料等は、機構が契約を承継する前に、公団が支払っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、浦安宿舎の入退居の管理及び費用負担は適切に行われているかなどに着眼して、機構設立後の浦安宿舎に係る賃貸借契約(16年4月分から20年12月分までの賃借料等の額計7541万余円)を対象として、本部において、賃貸借契約書、入退居の実績に関する書類等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
 (本件の検査の背景等については、後掲の「独立行政法人及び国立大学法人が管理運営する福利厚生施設等の状況について 」参照)

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、浦安宿舎の入居状況は、機構が設立された16年2月29日時点で、総戸数21戸に対して11戸にとどまっており、20年12月までの各月末日において総戸数21戸の全戸に同時に入居している実績はなく、各月とも1か月間全日空室となっていたものが3戸以上あった。そして、各月の入居率(総戸数に対する各月末日における入居戸数の割合をいう。)は最も高い月でも80.9%(入居戸数17戸)、低い月では33.3%(同7戸)であり、平均では54.3%(入居戸数の平均11.4戸)となっていて、平均45.6%が空室となっていた。
 このように空室が多くなっている背景には、機構本部が神奈川県川崎市に置かれたことから、機構本部に勤務する職員にとって、本部が東京都千代田区に置かれていた公団当時と比べて、浦安宿舎の通勤の利便性が低下したことのほか、機構が東京都大田区に新たに購入した独身者用の宿舎10戸の供用が20年5月に開始されたことなどがあると認められた。
 また、首都圏においては賃貸住宅は特に不足はしていないことなどを考慮すれば、一括借上げによる契約によらなくても、宿舎の貸与を希望する職員の需要に応じて個別に借り上げる契約により対処することが可能であると認められた。
 したがって、機構の設立時から浦安宿舎の入居戸数が少なく、平均45.6%もの空室が生じている状況であるのに、1棟を一括して借り上げる契約について見直しを行うことなく更新し続けていた事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(空室となっていた宿舎に係る賃借料等相当額)

 機構が支払っている賃借料等月額1,323,000円を総戸数21戸で除した各室の賃借料等相当月額63,000円により、16年4月以降において1か月間全日空室となっていた延べ519か月の賃借料等相当額を算出すると計3269万余円となると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、浦安宿舎の入居戸数が少ない状況が継続しているにもかかわらず、空室となっている宿舎に対しても賃借料等を支払っていることについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、21年3月12日付けで浦安宿舎を一括して借り上げていた賃貸借契約を解約し、個別に借り上げることとする処置を講じた。