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第4 独立行政法人及び国立大学法人が管理運営する福利厚生施設等の状況について


第4 独立行政法人及び国立大学法人が管理運営する福利厚生施設等の状況について

検査対象
(1)
独立行政法人93法人
 
(2)
国立大学法人86法人
 
福利厚生施設等の概要
役職員に使用させるために、法人が保有し、又は民間業者等から有償で借り上げている宿舎、宿泊施設等
宿舎を管理運営している法人数及び戸数(平成20年12月末現在)
(1)
53法人
32,481戸
 
(2)
84法人
26,752戸
 
137法人
59,233戸
 
宿泊施設等を管理運営している法人数及び施設数(平成20年12月末現在)
(1)
39法人
184施設
 
(2)
73法人
134施設
 
112法人
318施設
 
民間業者等から宿舎を借り上げている法人数及び戸数(平成20年12月末現在)
(1)
49法人
5,376戸
 
(2)
24法人
909戸
 
73法人
6,285戸
 
上記に係る借上費用
(1)
56億7308万円
(平成19年度)
(2)
6億2833万円
(平成19年度)
63億0142万円
(平成19年度)
福利厚生施設等の処分件数
(1)
16法人
154件
(平成17年度〜20年度)
(2)
3法人
9件
(平成17年度〜20年度)
上記に係る処分収入
(1)
188億円
 
(2)
3億円
 

1 検査の背景

 独立行政法人及び国立大学法人(以下「独立行政法人等」という。)の中には、法人の役職員に使用させるために、宿舎、宿泊施設、体育施設等の福利厚生施設や研修施設等(以下、これらを合わせて「福利厚生施設等」という。)を管理運営している法人がある。
 そして、独立行政法人等が管理運営する福利厚生施設等は、そのほとんどが政府出資又は政府出資見合いの資産であり、施設の維持管理等には運営費交付金が充てられているものも多い。また、福利厚生施設等の管理運営は、各法人において独自に決定することが可能となっている。
 一方、経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月19日閣議決定)では、独立行政法人における資産債務改革を独立行政法人改革及びその改革工程と整合性を取りつつ推進することとされており、また、国立大学法人についても大学改革との整合性を取りながら同様に改革を推進することとされている。
 独立行政法人の保有資産の見直しについては、独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定。以下「整理合理化計画」という。)等において、独立行政法人は保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を着実に推進して適切な形で財政貢献を行うこと、上記の売却等対象資産以外の実物資産についてもその保有の必要性について不断に見直しを実施することとされている。そして、整理合理化計画等において売却等処分することとされている独立行政法人の資産は全体で6104億円(平成18年度財務諸表価額)となっており、このうち福利厚生施設等は18法人で107億円(同)となっている。
 また、国立大学法人についても、国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて(平成21年6月5日文部科学大臣決定)において、効率的な法人運営を行うために、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めることとするとされている。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 本院は、独立行政法人等が役職員に使用させるために管理運営する福利厚生施設等について、経済性、効率性、有効性等の観点から、主として次の項目に着眼して横断的に検査を行った。
〔1〕  福利厚生施設等の管理運営に当たり、使用料の算定や法人の費用負担は適切なものとなっているか。
〔2〕  整理合理化計画等において売却等処分することとされている福利厚生施設等は、適切に処分されているか、また、これ以外の福利厚生施設等の処分状況はどうなっているか。

(2) 検査の対象及び方法

 独立行政法人のうち21年3月末現在で国が資本金を出資している93法人及び国立大学法人86法人、計179法人を検査の対象とした(表1 参照。以下、検査の対象とした独立行政法人等を「検査対象法人」という。)。
 検査に当たっては、福利厚生施設等の管理運営及び処分の状況について作成及び提出を求めた調書等を在庁して分析するとともに、検査対象法人のうち福利厚生施設等を多数管理運営するものを中心に50法人(独立行政法人36法人及び国立大学法人14法人)を選定して会計実地検査を行った。

表1 検査の対象とした独立行政法人等179法人(平成21年3月末現在)
番号
独立行政法人名
番号
独立行政法人名
番号
国立大学法人名
番号
国立大学法人名
1
国立公文書館
48
平和祈念事業特別基金
1
北海道大学
48
滋賀大学
2
情報通信研究機構
49
国際協力機構
2
北海道教育大学
49
滋賀医科大学
3
酒類総合研究所
50
国際交流基金
3
室蘭工業大学
50
京都大学
4
国立特別支援教育総合研究所
51
新エネルギー・産業技術総合開発機構
4
小樽商科大学
51
京都教育大学
5
大学入試センター
52
科学技術振興機構
5
帯広畜産大学
52
京都工芸繊維大学
6
国立青少年教育振興機構
53
日本学術振興会
6
旭川医科大学
53
大阪大学
7
国立女性教育会館
54
理化学研究所
7
北見工業大学
54
大阪教育大学
8
国立科学博物館
55
宇宙航空研究開発機構
8
弘前大学
55
兵庫教育大学
9
物質・材料研究機構
56
日本スポーツ振興センター
9
岩手大学
56
神戸大学
10
防災科学技術研究所
57
日本芸術文化振興会
10
東北大学
57
奈良教育大学
11
放射線医学総合研究所
58
高齢・障害者雇用支援機構
11
宮城教育大学
58
奈良女子大学
12
国立美術館
59
福祉医療機構
12
秋田大学
59
和歌山大学
13
国立文化財機構
60
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
13
山形大学
60
鳥取大学
14
労働安全衛生総合研究所
61
労働政策研究・研修機構
14
福島大学
61
島根大学
15
農林水産消費安全技術センター
62
日本貿易振興機構
15
茨城大学
62
岡山大学
16
種苗管理センター
63
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
16
筑波大学
63
広島大学
17
家畜改良センター
64
国際観光振興機構
17
宇都宮大学
64
山口大学
18
水産大学校
65
水資源機構
18
群馬大学
65
徳島大学
19
農業・食品産業技術総合研究機構
66
自動車事故対策機構
19
埼玉大学
66
鳴門教育大学
20
農業生物資源研究所
67
空港周辺整備機構
20
千葉大学
67
香川大学
21
農業環境技術研究所
68
海上災害防止センター
21
東京大学
68
愛媛大学
22
国際農林水産業研究センター
69
情報処理推進機構
22
東京医科歯科大学
69
高知大学
23
森林総合研究所
70
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
23
東京外国語大学
70
福岡教育大学
24
水産総合研究センター
71
雇用・能力開発機構
24
東京学芸大学
71
九州大学
25
日本貿易保険
72
労働者健康福祉機構
25
東京農工大学
72
九州工業大学
26
産業技術総合研究所
73
国立病院機構
26
東京芸術大学
73
佐賀大学
27
製品評価技術基盤機構
74
医薬品医療機器総合機構
27
東京工業大学
74
長崎大学
28
土木研究所
75
環境再生保全機構
28
東京海洋大学
75
熊本大学
29
建築研究所
76
日本学生支援機構
29
お茶の水女子大学
76
大分大学
30
交通安全環境研究所
77
海洋研究開発機構
30
電気通信大学
77
宮崎大学
31
海上技術安全研究所
78
国立高等専門学校機構
31
一橋大学
78
鹿児島大学
32
港湾空港技術研究所
79
大学評価・学位授与機構
32
横浜国立大学
79
鹿屋体育大学
33
電子航法研究所
80
国立大学財務・経営センター
33
新潟大学
80
琉球大学
34
航海訓練所
81
メディア教育開発センター
34
長岡技術科学大学
81
政策研究大学院大学
35
海技教育機構
82
中小企業基盤整備機構
35
上越教育大学
82
総合研究大学院大学
36
航空大学校
83
都市再生機構
36
金沢大学
83
北陸先端科学技術大学院大学
37
国立環境研究所
84
奄美群島振興開発基金
37
福井大学
84
奈良先端科学技術大学院大学
38
教員研修センター
85
国立国語研究所
38
山梨大学
85
筑波技術大学
39
駐留軍等労働者労務管理機構
86
医薬基盤研究所
39
信州大学
86
富山大学
40
自動車検査
87
沖縄科学技術研究基盤整備機構
40
岐阜大学
 
 
41
造幣局
88
日本高速道路保有・債務返済機構
41
静岡大学
 
 
42
国立印刷局
89
日本原子力研究開発機構
42
浜松医科大学
 
 
43
国民生活センター
90
年金・健康保険福祉施設整理機構
43
名古屋大学
 
 
44
日本万国博覧会記念機構
91
年金積立金管理運用
44
愛知教育大学
 
 
45
農畜産業振興機構
92
住宅金融支援機構
45
名古屋工業大学
 
 
46
農林漁業信用基金
93
郵便貯金・簡易生命保険管理機構
46
豊橋技術科学大学
 
 
47
北方領土問題対策協会
 
 
47
三重大学
 
 
注(1)
 独立行政法人メディア教育開発センターは平成21年4月1日に解散して、必要な業務については放送大学学園において実施されることとなった。
注(2)
 独立行政法人国立国語研究所は平成21年10月1日に解散して、大学共同利用機関法人人間文化研究機構が設置する研究機関に移管された。
注(3)
 独立行政法人平和祈念事業特別基金は平成22年9月30日までに解散することとされている。

(以下、各法人の名称中「独立行政法人」及び「国立大学法人」は記載を省略した。)

3 検査の状況

(1) 福利厚生施設等の状況

 検査対象法人が管理運営している福利厚生施設等のうち、宿舎以外の宿泊施設、研修施設等(以下「宿泊施設等」という。)は、複数の機能を持つものも多く、その規模等も区々となっている。そこで、福利厚生施設等について、宿舎と宿泊施設等に区分してみると次のとおりである。

ア 宿舎の状況

 宿舎には、検査対象法人が保有する宿舎(以下「保有宿舎」という。)と、民間業者等から借り上げている宿舎(以下「借上宿舎」という。)がある(表2 参照)。

表2 宿舎の保有等の状況(平成20年12月末現在)
(単位:法人、戸)

区分
独立行政法人
国立大学法人
法人数
戸数
法人数
戸数
法人数
戸数
検査対象法人数
93
100%
86
100%
179
100%
宿舎を管理運営している法人
53
56.9%
32,481
100%
84
97.6%
26,752
100%
137
76.5%
59,233
100%
 
保有宿舎を管理運営している法人
35
37.6%
27,105
83.4%
84
97.6%
25,843
96.6%
119
66.4%
52,948
89.3%
借上宿舎を管理運営している法人
49
52.6%
5,376
16.5%
24
27.9%
909
3.3%
73
40.7%
6,285
10.6%
(注)
 法人数の合計は、保有宿舎及び借上宿舎の両方を管理運営している法人が存在するため一致しない。

 保有宿舎を管理運営している法人は119法人で、その戸数は52,948戸となっている。これを法人別にみると、戸数が多いのは、国立病院機構(9,291戸)、労働者健康福祉機構(4,467戸)、日本原子力研究開発機構(2,924戸)等となっている。また、経年別に保有宿舎の状況をみると、表3のとおり、新たな耐震基準が定められた今から28年前の昭和56年以前に建築されたものが3,462棟32,309戸(61.0%)あり、このうち、建築後満40年以上経過しているものが1,006棟7,594戸(14.3%)ある。

表3 経年区分による保有宿舎の状況(平成20年12月末現在)
(単位:棟、戸)

区分
単身用
世帯用
全体
棟数
戸数
棟数
戸数
棟数
戸数
保有宿舎の総数
742
18,080
34.1%
4,562
34,868
65.8%
5,184
52,948
100%
築10年未満の保有宿舎
74
1,768
3.3%
127
1,335
2.5%
175
3,103
5.8%
築10年以上20年未満の保有宿舎
153
5,745
10.8%
764
5,074
9.5%
891
10,819
20.4%
築20年以上30年未満の保有宿舎
125
2,519
4.7%
1,118
9,303
17.5%
1,223
11,822
22.3%
築30年以上40年未満の保有宿舎
321
6,208
11.7%
1,600
13,402
25.3%
1,889
19,610
37.0%
築40年以上の保有宿舎
69
1,840
3.4%
953
5,754
10.8%
1,006
7,594
14.3%
昭和56年以前に建築された保有宿舎
450
9,038
17.0%
3,067
23,271
43.9%
3,462
32,309
61.0%
(注)
 1棟の中に単身用及び世帯用の双方を有するものがあるため、棟数の全体は一致しない。

 借上宿舎を管理運営している法人は73法人で、その戸数は6,285戸となっている。これを法人別にみると、戸数が多いのは、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(1,057戸)、労働者健康福祉機構(472戸)、森林総合研究所(405戸)等となっている。

イ 宿泊施設等の状況

 各法人が管理運営している宿泊施設等は、その機能からみると、〔1〕 宿泊施設(保養所、分室、非常勤教員宿泊施設等)、〔2〕 体育施設(体育館、グラウンド、テニスコート等)、〔3〕 会合施設、〔4〕 研修施設に区分される(表4 参照)。

表4 宿泊施設等の保有等の状況(平成20年12月末現在)
(単位:法人、施設)

区分
独立行政法人
国立大学法人
法人数
施設数
法人数
施設数
法人数
施設数
検査対象法人数
93
86
179
宿泊施設等を管理運営している法人
総数
39
184(4)
73
134(1)
112
318(5)
100%
うち敷地外
13
62(4)
30
37(1)
43
99(5)
31.1%
 
〔1〕 宿泊施設を管理運営している法人
総数
11
53(4)
71
116(1)
82
169(5)
53.1%
うち敷地外
9
30(4)
26
31(1)
35
61(5)
19.1%
〔2〕 体育施設を管理運営している法人
総数
30
96
4
4
34
100
31.4%
うち敷地外
4
15
0
0
4
15
4.7%
〔3〕 会合施設を管理運営している法人
総数
6
37
32
52(1)
38
89(1)
27.9%
うち敷地外
5
26
12
15(1)
17
41(1)
12.8%
〔4〕 研修施設を管理運営している法人
総数
14
20(1)
18
27(1)
32
47(2)
14.7%
うち敷地外
6
7(1)
10
12(1)
16
19(2)
5.9%
注(1)
 一つの施設が複数の機能を有するものがあるため、各施設の合算分と合計とは一致しない。
注(2)
 括弧内は借上げに係る施設であり、内数である。

 宿泊施設等を管理運営している法人は112法人で、その数は318施設となっている。これらの施設の中には、複数の機能を持つものもあるが、宿泊施設が169施設と最も多く、全体の53.1%を占めている。なお、法人の事務所等の敷地内に立地している施設は、必要に応じて業務の用に供されるなどしていることから、法人の事務所等の敷地外に立地している施設の状況をみると、宿泊施設では61施設が法人の事務所等の敷地外に立地している。

(2) 宿舎の管理運営状況

 上記のように、検査対象法人が管理運営している福利厚生施設等の大半が宿舎であることから、宿舎の管理運営状況についてみたところ、宿舎使用料及び借上宿舎については、次のような状況となっていた。

ア 宿舎使用料

 独立行政法人等が役職員に保有宿舎又は借上宿舎を貸与する場合、宿舎使用料は各法人の自己収入として、宿舎の維持、管理等を適切に行っていく上で必要な財源となるものである。そして、宿舎使用料については各法人が独自に定めることが可能であるが、その額の設定に当たっては、独立行政法人等の運営に運営費交付金を始めとする多額の財政支出が充てられていることなどにかんがみると、各法人の業務実績や業務の特性等を踏まえつつ、社会一般の情勢に適合したものとなるよう、適正な水準とすることが必要である。
 なお、国が国家公務員等に宿舎を貸与する場合は国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号)、同法施行令(昭和33年政令第341号)、同法施行規則(昭和34年大蔵省令第10号)等(以下、これらを「宿舎法等」という。)の規定に基づき、無料で貸与するとされている一部の宿舎を除いて入居者から宿舎使用料を徴収することとされており、その額は宿舎法等において、標準的な建設費用の償却額、修繕費、地代及び火災保険料に相当する金額を基礎として、居住の条件その他の事情を考慮して定めることとされている。
 検査対象法人のうち、宿舎使用料を徴収することとしている宿舎を平成20年12月末現在で100戸以上管理運営している90法人(独立行政法人21法人、国立大学法人69法人)について、これらの法人が規程等で定めている宿舎使用料の算定方法等について調査・分析したところ、次のような状況となっていた。
 すなわち、上記の90法人が19年度に徴収している宿舎使用料63億4958万余円のうち、家屋等の使用料は55億5840万余円となっており、これを法人別にみると、徴収額が多いのは国立病院機構の7億9826万余円、労働者健康福祉機構の3億5186万余円、雇用・能力開発機構の3億1471万余円等となっている。
 そして、家屋等の使用料の算定方法をみると、家屋等の面積に所定の単価を乗ずるなどして算定する方式を採用している法人が90法人中89法人となっている。なお、残りの1法人は借上宿舎のみを管理運営しており、この1法人及び上記89法人のうち7法人は借上宿舎について借り上げた物件の賃借料に一定割合(10%〜50%)を乗じて算定する方式を採用している。
 上記89法人のうち88法人は、宿舎法等に準ずるなどして、宿舎建築後の経過年数や設備の差異等により、家屋等の使用料を調整することとする規定を設定している。そして、上記のうち鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び水資源機構は、単身者用宿舎の多くが世帯用宿舎と異なり各戸専用の給排水設備等を設置していないとして、単身者用宿舎の家屋等の使用料を一律に減額する調整を行うこととしている。しかし、近年、両機構は各戸専用の給排水設備等を設置した単身者用宿舎の整備を図ってきていることから、これらについて使用料を減額する調整を行う必要はないと認められた。

 (前掲本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 2か所参照   

イ 借上宿舎

(ア) 借上費用の状況

 20年12月末現在で借上宿舎を管理運営している73法人について、宿舎を借り上げるために発生した経費(以下「借上費用」という。)の状況を示すと表5のとおりである。

表5 借上費用の内訳(平成19年度)
(単位:千円)

区分
借上費用
 
賃借料等(注)
その他の経費
73法人の合計
6,301,424
5,977,377
324,047
(注)
 賃借料等には、共益費及び管理費を含む。

(イ) 借上宿舎の利用状況

 宿舎を借り上げる方法には、1戸ごとに借り上げる方式(以下「個別借上方式」という。)と、棟単位で借り上げるなど複数戸を一括して借り上げる方式(以下「一括借上方式」という。)とがある。個別借上方式の場合は、通常、宿舎の貸与が必要となった場合にその都度借り上げることから、空室が発生しても入退居に伴う一時的なものとなっている。一方、一括借上方式の場合は、個別借上方式に比べて入居を必要とする者の増減に伴う事務負担が少ないなど、法人にとって利点がある場合も考えられるものの、入居者の退去により一部に空室が発生しても、部分的に解約することができず、新たな入居者がいないと、結果として長期にわたって空室が生ずることがある。
 そこで、各法人が20年12月末現在で管理運営している一括借上方式の借上宿舎97棟1,572戸のうち1棟が10戸以上となっている60棟1,365戸の入居率(宿舎1棟の戸数に対する入居戸数の割合をいう。以下同じ。)についてみたところ、17年度から20年度(20年12月まで。以下、本項において同じ。)までの各年度の平均入居率(各月末現在の入居率の平均)が、70%を下回ったことのある棟数は表6のとおりとなっている。

表6 一括借上方式の借上宿舎の平均入居率の状況
(単位:棟)

法人名\区分
一括借上方式のうち1棟10戸以上の棟数
左のうち平均入居率が70%を下回った棟数
4か年度とも平均入居率が70%を下回った棟数
平成
17年度
18年度
19年度
20年度
17年度
18年度
19年度
20年度
森林総合研究所
1
1
1
1
1
1
国際協力機構
5
5
5
5
宇宙航空研究開発機構
1
1
1
1
日本貿易振興機構
1
1
1
1
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
23
24
26
26
5
5
6
6
1
水資源機構
3
3
3
3
1
1
1
1
1
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
1
1
1
1
1
1
1
1
1
労働者健康福祉機構
2
2
3
3
国立病院機構
1
1
日本原子力研究開発機構
4
4
5
5
1
1
北海道大学
1
1
東京医科歯科大学
1
3
3
3
1
1
信州大学
2
名古屋大学
1
1
三重大学
1
1
1
神戸大学
2
4
4
長崎大学
1
1
計(17法人)
42
48
57
60
9
8
10
10
3

 これによると、17年度から20年度までの4か年度にわたり連続して平均入居率が70%を下回っているのは3法人の3棟となっている。
 これらのうち、鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び水資源機構の借上宿舎各1棟は、両機構が事業の実施に当たり事業実施箇所の周辺において一定期間宿舎を確保する必要があり、当該地域においてほかに適当な物件がないなどの理由により、一括して借り上げざるを得ないとしているものである。
 一方、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の1棟は、首都圏に所在する同機構本部等に勤務する職員のための借上宿舎で、当該地域においては物件は特に不足はしていないことなどを考慮すれば、一括借上方式によらなくても、宿舎の貸与を希望する職員の需要に応じて個別借上方式により対処することが可能であると認められた。

 (前掲本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項参照

(3) 福利厚生施設等の処分状況

 独立行政法人等については、前記のとおり、保有資産の見直し及び不要とされた資産の処分が求められている。そして、独立行政法人については、整理合理化計画等において売却等処分することとされている福利厚生施設等が18法人で107億円(18年度財務諸表価額)となっている一方、国立大学法人においては、21年6月に決定された前記の組織及び業務全般の見直しにおいて、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めることとされたものの、自主的・自律的な運営の確保が必要であるなどとして、整理合理化計画等のような処分計画の策定は行っていないなど、その取組状況に差が見受けられる。
 また、検査対象法人が管理運営する福利厚生施設等の中には、低利用となっているものも相当数見受けられる。
 そこで、福利厚生施設等の処分状況について、独立行政法人と国立大学法人に区分して、低利用となっている福利厚生施設等の状況、処分された施設の状況及び売却に至らなかった施設等の状況についてみると次のとおりである。

ア 低利用となっている福利厚生施設等の状況

(ア) 宿舎

 1棟10戸以上の保有宿舎について、17年度から20年度までの間において、各年度の12月末現在の入居率が50%未満となっているものをみると表7のとおりである。

表7 入居率が50%未満の保有宿舎
区分
整備戸数
平成17年度
18年度
19年度
20年度
4か年度連続
棟数
戸数
棟数
戸数
棟数
戸数
棟数
戸数
棟数
戸数
法人数
棟数
戸数
独立行政法人
853
19,763
115
2,599
125
2,606
158
3,345
173
3,540
14
74
1,649
国立大学法人
906
24,280
19
487
31
969
47
1,758
47
1,319
8
9
275
1,759
44,043
134
3,086
156
3,575
205
5,103
220
4,859
22
83
1,924
(注)
 入居率は当該年度の12月末現在の数値である。

 これによると、4か年度にわたり入居率が50%未満となっているものが22法人で83棟1,924戸あり、その内訳をみると、独立行政法人は14法人74棟1,649戸、国立大学法人は8法人9棟275戸となっている。
 上記のうち、4か年度にわたり入居率が0%となっているのは、国立高等専門学校機構の1棟11戸、労働者健康福祉機構の2棟62戸及び国立病院機構の6棟227戸、計9棟300戸である。これらのうち299戸は単身者用宿舎であり、経年に加え、入浴設備や便所が共同利用となっているといった設備の状況により入居率が低率になっているものと考えられる。なお、国立大学法人において入居率が低率になっているものについても同様な状況であった。
 これらの中には国立病院機構大阪南医療センターの研修医宿舎、新潟大学の上所島職員宿舎等のように独立行政法人化又は国立大学法人化の時点から継続して入居率が低率となっているものも見受けられた。

(イ) 宿泊施設等

 宿泊施設等には、前記のとおり、複数の機能を持つものがあるほか、法人の事務所等の敷地内に立地している施設は必要に応じて業務の用に供されるなどしているものがある。また、利用対象者等が法人、施設ごとに異なっているため、これらを一律の指標により分析することは困難である。そこで、施設の稼働率を把握することが比較的容易な宿泊施設のうち、法人の事務所等の敷地外に立地している独立行政法人7法人の26施設、国立大学法人26法人の30施設、計33法人の56施設(借上げに係る5施設は除く。)について、17年度から20年度までの宿泊施設としての稼働率(年間宿泊可能延客室数に対する年間宿泊延客室数の割合。以下同じ。)が50%未満となっているものをみると表8のとおりである。

表8 稼働率が50%未満の宿泊施設
区分
整備施設数
平成17年度
18年度
19年度
20年度
4か年度の平均
法人数
施設数
法人数
施設数
法人数
施設数
法人数
施設数
法人数
施設数
法人数
施設数
独立行政法人
7
26
5
21
5
20
5
21
5
20
5
21
国立大学法人
26
30
23
27
23
26
22
25
22
25
23
27
33
56
28
48
28
46
27
46
27
45
28
48
注(1)
 一部の施設については、年間宿泊可能延人数に対する年間宿泊延人数の割合により稼働率を算出している。
注(2)
 平成20年度の稼働率は、20年12月までの実績により算出している。

 これによると、4か年度の平均稼働率が50%未満のものが独立行政法人で5法人21施設、国立大学法人で23法人27施設あるなど、全体としての稼働率は低調なものとなっている。特に、このうち独立行政法人1法人の1施設、国立大学法人6法人の7施設、計7法人の8施設は、4か年度の平均稼働率が10%未満と低調なまま推移している。

イ 処分された施設の状況

(ア) 独立行政法人

 検査対象法人のうち、17年度から20年度までの間に、福利厚生施設等の処分を実施した独立行政法人は16法人で、処分された施設(当該施設を取り壊し、更地にして処分したものを含む。以下同じ。)は154件(宿舎143件、宿泊施設等11件)、処分収入は188億円(注) となっている(表9 参照)。

 労働者健康福祉機構が処分した宿舎22件のうち21件は、病院の譲渡に伴い一括して地方公共団体等に売却されたもので、土地については、病院の敷地として一体で処分されていて、宿舎に係る部分を区分できないため、処分収入に含めていない。


表9 独立行政法人における施設の処分状況
(単位:件、百万円)

区分
平成17年度
18年度
19年度
20年度
処分件数
処分収入金額
処分件数
処分収入金額
処分件数
処分収入金額
処分件数
処分収入金額
処分件数
処分収入金額
宿舎
16(1)
1,204
56(6)
7,255
32(11)
3,810
39(4)
3,036
143(13)
15,306
宿泊施設等
1(1)
305
8(3)
3,243
2(2)
3
11(5)
3,552
16(1)
1,204
57(6)
7,560
40(12)
7,053
41(6)
3,039
154(16)
18,858
(注)
 括弧内は法人数で、計欄は重複があるため一致しない。

 上記154件の処分方法をみると、売却によるものが14法人で148件と大多数を占めており、このほかには国への承継によるものが4件、無償譲渡、交換によるものが各1件となっている。
 また、これらの物件の中には、整理合理化計画等において売却等対象資産とされていたものが7法人の48件10億円、売却等検討資産とされていたものが2法人の4件0.3億円、計9法人の52件10億円あり、これら以外のものは法人独自の処分計画等によるもので11法人の102件178億円となっている。
 一方、前記の表7及び表8のとおり、独立行政法人において、4か年度にわたり入居率が50%未満となっている保有宿舎が14法人で74棟あり、4か年度の平均稼働率が50%未満となっている法人保有の宿泊施設が5法人で21施設あった。これらのうち、整理合理化計画等で売却等対象資産又は売却等検討資産とされているものは保有宿舎に係る6法人の10棟及び宿泊施設に係る4法人の16施設となっている。
 なお、本院は、国立印刷局の久我山運動場について、多額の維持管理費用が今後も継続して発生すると見込まれるのに、譲渡を含む適切な処分に向けた調整が進展しておらず、在り方の検討が十分に進んでいない事態を、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 として掲記した。また、本院は、独立行政法人造幣局理事長に対して20年10月に、宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地について、利用状況を考慮するなどして保有の必要性を検討するとともに、不要な資産の確実な国庫返納に備えるよう、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求したが、その後の処置状況について、平成19年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果 として掲記した。

(イ) 国立大学法人

 検査対象法人のうち、17年度から20年度までの間に、福利厚生施設等の処分を実施した国立大学法人は3法人で、処分された施設は9件、処分収入は3億円となっている(表10 参照)。これら9件のうち1件は交換によるものであるが、ほかの8件はいずれも2法人が地方公共団体等の道路整備事業や区画整理事業に供するために売却したことによるものである。
 一方、前記の表7及び表8のとおり、国立大学法人において、4か年度にわたり入居率が50%未満となっている保有宿舎が8法人で9棟あり、4か年度の平均稼働率が50%未満となっている法人保有の宿泊施設が23法人で27施設あった。
 なお、国立大学法人が政府出資に係る土地の全部又は一部を譲渡したときは、国立大学法人法(平成15年法律第112号)等の規定により、当該譲渡により生じた収入の金額から100万円(国立大学法人が当該譲渡に要した費用の総額が100万円を超える場合は、その費用の総額)を控除した額に100分の50(22年3月31日までは100分の75)を乗じて得た額に相当する金額を国立大学財務・経営センター(以下「センター」という。)に納付することなどとされている。

表10 国立大学法人における施設の処分状況
(単位:件、百万円)

区分
平成17年度
18年度
19年度
20年度
件数
処分収入金額
センターへの納付額
件数
処分収入金額
センターへの納付額
件数
処分収入金額
センターへの納付額
件数
処分収入金額
センターへの納付額
件数
処分収入金額
センターへの納付額
宿舎
1(1)
185
92
1(1)
7(1)
195
97
9(3)
381
189
宿泊施設等
1(1)
185
92
1(1)
7(1)
195
97
9(3)
381
189
(注)
 括弧内は法人数である。

 上記(ア)及び(イ)のとおり、独立行政法人14法人148件、国立大学法人2法人8件、計156件の売却により16法人が得た処分収入は独立行政法人188億円、国立大学法人3億円、計192億円となっており、このうち政府出資又は政府出資見合いの資産の売却に係るものは13法人の98件で109億円となっている。そして、このうち独立行政法人4法人の20件については、売却益に相当する金額の一部又は全部が、また、独立行政法人1法人の21件については処分収入の全額がそれぞれ国庫へ納付されており、国立大学法人2法人の8件については処分収入の一部がセンターへ納付されている。しかし、上記13法人の98件に係る処分収入109億円のうち、これら国庫等への納付等の60億円を除いた49億円については、相応の減資を行って政府出資金を国庫に納付する規定がないなどのため、政府出資又は政府出資見合いの資産を売却したものであっても、現状では法人内部に留保されている。ただし、これらのうち、処分収入が簿価を上回り利益を計上したものについては、各年度の損益計算の結果等にもよるが、その全部又は一部が中期目標期間の最終年度の利益処分により、将来、国庫に納付される可能性がある。

ウ 売却に至らなかった施設等の状況

 検査対象法人において、17年度から20年度までの間に、福利厚生施設等の売却のための入札を実施したものの、いまだに処分されていないものは9法人で31件ある(表11 参照)。これらの物件はすべて一般競争入札を実施したものであるが、入札者がなかったり、落札者がなかったりなどしたため、いまだに売却には至っていない。このうち、独立行政法人に係るものは30件で、この中には整理合理化計画等において、売却等対象資産とされているものが11件、売却等検討資産とされているものが18件ある。これに対して、国立大学法人に係るものは1件にとどまっている。

表11 入札不調等の状況
(単位:件)

区分
平成17年度
18年度
19年度
20年度
宿舎
宿泊施設等
宿舎
宿泊施設等
宿舎
宿泊施設等
宿舎
宿泊施設等
宿舎
宿泊施設等
合計
独立行政法人
1(1)
2(1)
23(6)
4(3)
26(7)
4(3)
30(8)
国立大学法人
1(1)
1(1)
1(1)
1(1)
2(1)
24(7)
4(3)
27(8)
4(3)
31(9)
(注)
 1回目の入札を実施した年度で整理している。また、括弧内は法人数である。

 上記の31件について、入札の実施状況等をみると、1回目の入札が世界的金融危機発生後の20年10月以降に行われたものが28件(90%)で大半を占めている。また、これら31件について、実施された入札は延べ37回、平均で1.6回となっていて、このうち、応札者がなかったものは18回、応札者はあったもののすべて予定価格を下回り落札者がなかったものが18回、落札者はあったものの契約が解除されたものが1回となっている。なお、落札者がなかった18回の入札における応札者は平均で1.7者となっている。
 上記のように、20年10月以降に1回目の入札が実施されたもので売却に至らなかったものが多数に上っているのは、世界的な金融危機により国内不動産市況が急激に悪化したことなどによると考えられる。

 以上のように、国立大学法人において利用率が低い福利厚生施設等が相当数見受けられたが、独立行政法人に比べてその処分等が進んでいない状況にある。また、前記のとおり、国立大学法人については、独立行政法人のように国立大学法人全体として処分対象等とする資産をとりまとめたものはない。しかし、国立大学法人についても、大学改革との整合性を取りながら、資産債務改革を推進するとされていること、第1期中期目標期間の終了時に行う組織及び業務全般の見直しに当たり、効率的な法人運営を行うために、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めるとされていることなどから、各国立大学法人は、福利厚生施設等について、その利用状況等を踏まえつつ、的確な処分計画を策定するなどして、不要とされた資産の処分等を着実に実施することが望まれる。

4 本院の所見

 独立行政法人等においては、所管する主務大臣の監督、関与その他国の関与を必要最小限にして、主務大臣が法人に対して指示する中期目標の下で自主的かつ透明な法人運営を確保することとし、法人の業務実績を事後的に評価して、中期目標の期間の終了時点で業務等の全般的な見直しを行うなどとされている。
 また、我が国の現下の財政事情が極めて厳しい中で、独立行政法人等の運営に対しては運営費交付金を始めとする多額の財政資金が投入されている。
 このような状況の下で、各法人は、福利厚生施設等について、当該施設を管理運営する必要性を含めて不断に見直しを実施することが求められている。
 したがって、以上の検査の状況を踏まえて、検査対象法人においては、次の点に留意することが必要である。
ア 宿舎使用料について、社会経済情勢等の変化を踏まえつつ、その妥当性を検証して、必要に応じて算定方法等を適切に見直す。また、宿舎の借上げに当たっては、借り上げる宿舎の戸数、期間等について、入居者等の状況を的確に把握して決定するとともに、状況の変化に応じて適時適切に契約を見直すなど適切に管理運営する。
イ 福利厚生施設等の処分について、独立行政法人においては、整理合理化計画等において売却等対象資産等とされているものの処分等を着実に実施するとともに、売却等対象資産等とされていない福利厚生施設等であっても低利用となっている施設については不断に見直しを実施する。また、国立大学法人においては、福利厚生施設等の利用状況を踏まえつつ、的確な処分計画を策定するなどして、不要とされた資産の処分等を着実に実施する。

 本院としては、今後とも、社会情勢等の変化に留意しつつ、独立行政法人等が管理運営する福利厚生施設等の状況について引き続き検査していくこととする。