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  • 平成21年10月

年金記録問題に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 年金記録問題発生の経緯、現状等

(1) 年金記録問題発生の経緯等

 前記第1の1(6)の年金記録問題の発生の経緯等は、社会保険庁の資料等によれば、おおむね次のとおりとなっている。


ア オンラインシステムにおいて、基礎年金番号に統合されずに手帳番号で管理されている約5095万件の年金記録

 前記のとおり、9年1月の基礎年金番号導入後において、基礎年金番号に統合されずに依然として各制度ごとの手帳番号により管理されている年金記録は約2億件あるとされていた。
 これらの未統合の年金記録について、社会保険庁は、8年12月から9年2月までの間に基礎年金番号付番済みの者に通知文書約1億0156万件を送付した際に、送付者に対して、他の年金制度に加入していたことがあるか又は他の手帳番号を持っているかのいずれかに該当する場合には、その旨を申し出てもらうよう照会を行っている。この照会に対して複数の手帳番号を有すると回答した者のうち、9年1月時点で20歳以上55歳以下の者は約916万人存在した。
 さらに、上記の回答がない者について、社会保険庁が基礎年金番号を付番した記録とその他の記録の氏名、生年月日及び性別(以下「氏名等」という。)による名寄せを10年度から18年度までの間に行っている。その結果、基礎年金番号に結び付く可能性があるなどとして抽出した者のうち、9年1月時点で20歳以上55歳以下の者は約902万人存在した。
 そこで、社会保険庁は、両者を合わせた約1818万人に対して10年度から18年度の間に改めて照会を行ったところ、約1253万人から回答を得て、このうち約927万人に係る年金記録について基礎年金番号への統合が完了したとしている。
 また、社会保険庁は、「保険給付を受ける権利は、その権利を有する者(略)の請求に基いて、社会保険庁長官が裁定する。」(厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第33条)等という申請主義の考え方により、本人の申請に基づく年金の裁定、年金相談等の際に本人の年金記録と確認された場合には、基礎年金番号への統合を行ってきている。
 これらの結果、9年1月から18年6月までの間に、前記の約2億件のうち約1億5000万件の年金記録が基礎年金番号に統合されたが、18年6月時点で、図表5のとおり、残りの約5095万件が依然として基礎年金番号に統合されていない状況となっていた。
 この原因は、検証委員会報告書によれば、同委員会が厚生年金保険及び国民年金の年金記録7,840件についてサンプル調査をした結果、次のようなことなどが推定できるとされている。

〔1〕  「生存の可能性が高いことが判明した者の記録」(33.6%)については、i)社会保険庁は、平成10年度から18年度にかけて、複数の年金手帳記号番号を持っていると思われる55歳(平成9年1月時点)までの被保険者(約1,818万人)に対して、順次確認の照会を行った。しかし、56歳(平成9年1月時点)以上の者に対しては、数年のうちに裁定請求がなされることになるのでその時に処理できると考え、これを実施しなかったこと、ii)この照会に対して回答がなかった者(約480万人)及び照会文書が送達不能で返戻された者(約85万人)に対して、再送付や住所の再確認などのための特段の措置を執らなかったことが主な原因と考えられる。

〔2〕  「死亡が判明した者等の記録、年金受給の対象とならないと考えられる記録及び基礎年金番号に統合済みの記録」(27.9%)については、i)社会保険庁において、死亡情報を把握していないものがあること、ii)死亡情報がオンライン記録等により把握できるものも存在するが、これらの記録を約5,000万件とは区別して整理してこなかったこと、iii)記録されている全期間にわたり脱退手当金等を受給した者の記録、厚生年金保険の加入期間や国民年金の納付期間の無い者の記録は、オンライン記録により把握できるが、これらの記録を約5,000万件とは区別して整理してこなかったことが主な原因であると考えられる。


平成9年1月から18年6月までの基礎年金番号への統合状況

図表5

(社会保険庁作成資料による。)


 イ オンラインシステムに収録されておらずマイクロフィルムで管理することとされた厚生年金保険及び船員保険の旧台帳に係る計約1466万件の年金記録

(ア) 厚生年金保険の旧台帳に係る約1430万件の記録

 厚生年金保険の被保険者等の年金記録については、紙台帳から磁気テープ化を経るなどして、現在ではオンラインシステムによる管理が行われている。
 しかし、オンライン化等の一連の過程において、被保険者資格を喪失した者の記録であることから使用頻度が低いと判断され(「社会保険庁25年史」(昭和63年作成)等による。)、磁気テープ化又はオンライン化が行われずにマイクロフィルムの形で管理することとされた記録(以下「厚生年金保険喪失台帳記録」という。)が、62年3月時点で約1430万件存在することが判明した。これらは、29年4月1日以前に厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、34年3月31日までに被保険者資格を再取得していない者の年金記録であり、そのマイクロフィルム化は50年から52年までの間に行われた。

(イ) 船員保険の旧台帳に係る約36万件の記録

 船員保険の年金記録の一部についても、マイクロフィルムのみで管理することとされた年金記録(以下「船員保険喪失台帳記録」という。)が、62年3月時点で約36万件存在することが判明した。これらは、25年4月1日以前に被保険者の資格を喪失した者に係る年金記録であり、社会保険庁は、使用頻度が低いものとしてオンラインシステムへの収録を行わず、58年にマイクロフィルム化を行っていた。

(ウ) 検証委員会の検証結果

 上記(ア)、(イ)の計約1466万件の年金記録について、検証委員会は厚生年金保険喪失台帳記録2,700件、船員保険喪失台帳記録1,000件のサンプル調査を行った。検証委員会報告書によれば、その結果は次のとおりとされている。
 厚生年金保険喪失台帳記録については、「約1,430万件の記録をオンライン化しなかったことについて、社会保険庁は、使用頻度が低いと見込んだためと説明している。しかし、サンプル調査の結果では、記録が使用されオンライン化されたものが15.2%もある。このようなことを踏まえれば、社会保険庁が、使用頻度が低いとみられることを理由として、オンライン化しないという判断を継続し、その後オンライン化作業に取り組まなかったことは問題であったと考えられる。早期にオンライン化していれば、記録の検索、基礎年金番号との統合も容易に行えたと考えられる。」
 また、船員保険喪失台帳記録については、「約36万件の記録をオンライン化しなかったことについて、社会保険庁は(略)使用頻度が低いと見込んだためと説明している。しかし、サンプル調査の結果では、記録が使用されオンライン化されたものが60.3%もある。このようなことを踏まえれば、社会保険庁が、使用頻度が低いとみられることを理由として、オンライン化しないという判断を継続し、その後オンライン化作業に取り組まなかったことは、明らかに判断上の誤りがあったと考えられる。」


ウ 紙台帳等の被保険者名簿等からオンラインシステム上に内容が正確に入力されていない年金記録等

 平成18年3月以降、国民年金保険料免除等に関する不適正な事務処理が発覚し、年金記録の取扱い等、年金制度についての不信を招く事態となったことなどから、社会保険庁は、被保険者等の年金記録に対する不安や疑問の解消を図ることなどを目的として、同年8月から、年金記録相談について特別強化体制を執っている。
 社会保険庁は、この特別強化体制の実施過程において、国民年金の保険料について、〔1〕 社会保険庁が保有する国民年金被保険者台帳のマイクロフィルム又は紙台帳や市区町村が保有する国民年金被保険者名簿等の紙台帳に納付記録が存在しているが、オンラインシステム上にその内容が正確に入力されていないものがあることや、〔2〕 オンラインシステム、マイクロフィルム及び紙台帳に納付記録は存在していないが、年金受給者又は被保険者等本人が保有していた領収書等に納付記録が存在するなどしているものがあることを把握した。
 上記の〔1〕 、〔2〕 について、その概要を示すと次のとおりである。

〔1〕 紙台帳等の国民年金被保険者台帳等に納付記録が存在しているが、オンラインシステム上に内容が正確に入力されていない年金記録

 国民年金の年金記録は、制度発足当初は紙台帳により管理されていたが、その後、磁気テープ等による管理へ、そして、オンラインシステムによる管理へ変更されてきている。現在のオンラインシステム上に納付記録が正確に入力されていない原因は、検証委員会報告書によれば、「(昭和)40年4月から開始された国民年金についての紙テープを基に入力した磁気テープの事務処理の過程において、入力ミスなどに起因する記録の誤りが存在したと考えられる。(略)これらの誤った記録がそのままオンライン上に残ったことが、年金記録の名寄せ・統合に支障を来す事態を招く原因となった。」とされている。
 社会保険庁が、国民年金の特殊台帳の記録約0.3億件のうち3,090件についてサンプル調査を行ったところ、当該記録とオンラインシステム上の記録に、年金の給付に影響する納付記録の不一致が4件(0.1%)あった。
 次いで、社会保険庁が、厚生年金保険の被保険者名簿及び被保険者原票の記録約3.9億件のうち19,979件についてサンプル調査を行ったところ、当該記録とオンラインシステム上の記録に、不一致が277件(1.4%)あった。
 これらの結果によれば、被保険者名簿等の年金記録とオンラインシステム上の年金記録との不一致には相当な数があると推定することができる。

〔2〕 オンラインシステム、マイクロフィルム及び紙台帳には納付記録が存在していないが、年金受給者又は被保険者等本人が保有していた領収書、年金手帳等に納付記録が存在するなどしているもの

 社会保険庁は、社会保険庁や市区町村が保有するマイクロフィルム、紙台帳等にも年金記録が存在せず、年金受給者又は被保険者等本人が保有していた領収書等にのみ納付記録が存在していて、当該資料に基づき年金記録が訂正・回復されたものが、全国で、18年12月までに55件、20年9月までに5,673件あったとしている。
 また、年金受給者又は被保険者等の中には、上記のような領収書等の直接的な納付の記録を保有していないが、保険料を納めたと主張する者も多数見受けられたが、社会保険事務所等においては年金記録の訂正・回復を行う仕組みが整備されていなかった。
 そこで、国は、19年6月に、総務省に年金記録確認中央第三者委員会及び年金記録確認地方第三者委員会(以下、これらを合わせて「第三者委員会」という。)を設置した。第三者委員会は、年金記録問題は年金記録を管理・運営する社会保険庁等関係行政機関の管理に起因する問題であり、保険料を納付してきた国民の側に不利益を及ぼしてはならないという考え方に立ち、国民の立場に立って、年金記録の訂正に関する公正な判断を示すことによって、国民の正当な権利を実現し、もって、国民の不安の解消を図り、年金制度に対する信頼を回復することを使命とするものとされている。
 そして、同委員会は社会保険事務所等から送付された申立内容について調査審議を行い、年金記録の訂正を要する場合はあっせん案を作成する。これを踏まえて、総務大臣が社会保険庁長官に対して年金記録の訂正に関するあっせんを行い、社会保険庁はその決定を尊重し、記録の訂正を行うこととされている。


エ 標準報酬月額等の不適正なそ及訂正処理

 総務大臣が厚生年金保険に関して20年2月までにあっせんを行った事案201件のうちには、被保険者の標準報酬月額の引下げ処理を適用事業所に該当しなくなったとする全喪届出処理が行われた日より後の日付でそ及して行っていたなど合理的な理由が認められないとされた年金記録のそ及訂正の事案が16件見受けられた。
 また、これらの事案とは別に、このような年金記録の不適正なそ及訂正処理について、社会保険事務所等の職員の関与を疑わせるとされる事案も明らかになった。 すなわち、社会保険庁は、20年9月に標準報酬月額の訂正に関して「事業主の具体的な証言のある事案に係る調査結果」を公表している。その概要は、7年11月に東京都内の設計コンサルタント会社の事業主が滞納保険料の分割納付を申し出たところ、社会保険事務所の職員が虚偽の標準報酬月額変更届を作成して、これを基に標準報酬月額をそ及訂正した上で、更に当該事業所を適用事業所から全喪事業所として処理したというものである。
 これらのことから、20年9月の「年金記録問題に関する関係閣僚会議」において、 事業主の具体的な証言のある事案に関与した職員が他にも同様のそ及訂正処理を行っていたかどうかについて調査を実施するほか、標準報酬月額等の不適正なそ及訂正事案に関する今後の対応として、オンラインシステム上のすべての年金記録から不適正なそ及訂正処理の可能性のある年金記録を抽出した上で、調査を行うこととされた。


(2) 社会保険庁の取組の状況

 19年7月に、年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会により「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」が取りまとめられた。 次いで、厚生労働省は、この政府・与党取りまとめに沿って、同年8月に工程表を作成して、取組の内容、実施時期等を公表している。
 工程表には、次のとおり一連の具体的な対策等が掲げられており、社会保険庁は工程表等に沿って対応を進めている。

ア 約5095万件の基礎年金番号未統合記録と基礎年金番号が付番されているオンラインシステム上の約1億件の記録との名寄せの実施

イ 年金記録が基礎年金番号に結び付く可能性がある者に対して、その旨と加入履歴を確認してもらうための「ねんきん特別便」の発送

ウ マイクロフィルムで管理されている約1466万件の年金記録の磁気ファイル化及びオンラインシステム上のすべての年金記録との名寄せの実施

エ オンラインシステム上の年金記録と厚生年金保険の被保険者名簿等の記録との計画的な突合せ

オ 年金記録に係る相談体制の拡充

 社会保険庁が実施している上記の取組状況を時系列的に整理すると、図表6のとおりとなる。


社会保険庁の取組状況

図表6

(注)
 ねんきんダイヤル及びねんきんあんしんダイヤルによる電話相談は、前記の工程表が作成された8月以前から実施している。


ア 年金記録の補正作業及び名寄せの実施状況

(ア) 氏名等が収録されていない年金記録の補正作業の実施について

 社会保険庁は、基礎年金番号に統合されていない年金記録を基礎年金番号に統合するに当たっては、まず年金記録の名寄せを行い、この結果に基づきねんきん特別便を発送することとした。

a 補正作業の対象

 この名寄せの実施に当たり、被保険者の氏名等が収録されていない年金記録が全国で約524万件存在しており、正しい名寄せを行うことができないという問題点が確認された。そこで、これを解決するために、社会保険庁は、名寄せに先立ち、19年9月から20年1月までの間に氏名等が収録されていない年金記録の補正作業を集中的に実施しており、現在も継続している。
 年金記録に氏名等が収録されていないものの項目数別内訳は図表7のとおりであり、氏名等の3項目すべてが収録されていなかったものが、厚生年金保険において3,809件(0.07%)見受けられた。

図表7 年金記録に氏名等が収録されていないものの項目数別内訳表 (単位:件)
項目数別状況
年金記録
3項目すべて
(氏名・生年月日・性別)
3項目のうちのいずれか2項目 3項目のうちのいずれか1項目
(氏名・生年月日) (生年月日・性別) (氏名・性別) (氏名) (生年月日) (性別)
厚生年金保険 3,809 294,578 0 3,927 4,937,396 52 19 5,239,781
国民年金 0 1,208 0 0 0 6 0 1,214
3,809 295,786 0 3,927 4,937,396 58 19 5,240,995

(社会保険庁作成資料による。)

b 補正作業の方法

 社会保険庁は、補正作業に当たり、基礎年金番号に統合されていない年金記録のうち氏名等が収録されていないものについて、19年9月に社会保険業務センターが作成した「補正要領」に基づき、地方社会保険事務局又は社会保険事務所等(以下「地方社会保険事務局等」という。)が手帳番号を被保険者に払い出した際に記録した「年金手帳記号番号払出簿」(以下「払出簿」という。)等を確認の上、補正作業を行うこととした。
 その主な手順は次のとおりである。

〔1〕  社会保険業務センターにおいて補正リストを作成して、手帳番号を払い出した地方社会保険事務局へ送付する。
〔2〕  地方社会保険事務局等は、補正要領に基づき、手帳番号等を基に払出簿等により確認する。
〔3〕  基づき、手帳番号等を基に払出簿等により確認する。
〔4〕  補正リストの補正項目をオンラインシステムに入力する。
〔5〕  進ちょく状況について管理して、社会保険業務センターに報告する。

c 補正作業の実施状況

 会計検査院が、各地方社会保険事務局及び管内の社会保険事務所等における上記補正作業の実施状況について検査したところ、次のような状況となっていた。

(a) 補正作業の実施結果

 各地方社会保険事務局等は、図表7で示した氏名等の収録されていない年金記録5,240,995件について、払出簿等から正しい氏名等を転記するなどして、図表8のとおり、20年1月までに5,181,370件の補正作業を終了した。このうち、65,902件は、1人が所有する複数の年金記録で既に基礎年金番号等に統合されたこととなっていたが、実際にはオンラインシステム上での統合処理が行われないままオンラインシステム上に別々の手帳番号として残されていたものなどであった。これらの年金記録をオンラインシステム上に収録して統合することにより補正作業を終了した。

図表8 地方社会保険事務局等における「氏名等が収録されていない年金記録の補正作業」(平成19年9月〜20年1月実施) (単位:件)
項目
補正対象
左のうち補正済み
左のうち統合
他局等照会中
補正困難
年金記録件数
5,240,995
5,181,370
65,902
4,204
55,421

 上記について、事例を示すと次のとおりである。


オンラインシステム上の年金記録に氏名等が収録されていなかったため、払出簿等を確認して補正作業を完了したもの

 オンラインシステム上の手帳番号aaaa-aaaaaaの年金記録(氏名及び生年月日いずれも無し、性別:女)は、これを払出簿等で確認したところ、A(昭和13年生まれ、女性)のものであることが判明した。
 そこで、オンラインシステム上の当該記録に氏名及び生年月日を収録して、補正作業を完了した。


1人が 所有する複数の年金記録で統合処理がなされずにオンラインシステム上に残されていたものを基礎年金番号等に統合したもの

 オンラインシステム上の手帳番号bbbb-bbbbbbの年金記録(氏名無し、生年月日有り、性別:女)は、これを払出簿により確認したところ、被保険者B(昭和27年生まれ、女性)のものであることが判明した。当該払出簿の備考欄には、当該手帳番号が統合された旨が表示されていたが、実際には統合がなされていなかったものである。
 そこで、手帳番号bbbb-bbbbbbの記録をオンラインシステム上において統合した。

 このほか、補正済みとなったものの中には、生年月日の日付が一定の日付に丸められていた(例えば、18日を10日にしているなど、1日、10日、20日、30日に丸めて記載されていた。)ため正しい記録となっていなかったものが506,578件(補正対象件数に対する割合は9.6%)見受けられた(図表9 参照)。 そして、その99.9%に当たる506,539件は昭和38年度から41年度までの間に手帳番号が払い出されたものとなっていた。
 なお、生年月日が丸められていた記録が特定の地方社会保険事務局等に偏在していたという事実は無かった。
 社会保険庁は、このような事態が発生した原因について、これまで過去の資料の確認や当時の職員に事情を聴取するなどの調査を行ったが、期間が相当経過していることもあり、原因の特定を行うことは困難であるとしている。


図表9 補正対象のうち生年月日が一定の日付に丸められた記録 (単位:件)
項目
補正対象(A)
左のうち生年月日が一定の日付に丸められた記録
(D)/(A)単位:%
(B)/(D)単位:%
昭和38年度から41年度までの払出年度別件数計(B)
(B)以外の払出年度件数計(C)
(D)=(B)+(C)
 
38年度
39年度
40年度
41年度
年金記録件数
5,240,995
506,539
41,361
114,860
277,658
72,660
39
506,578
9.6
99.9

 上記について、事例を示すと次のとおりである。

オンラインシステム上の生年月日の日付が丸められていたもの

 オンラインシステム上の手帳番号cccc-ccccccの年金記録(氏名無し、昭和11年1月1日生まれ、性別:男)は、これを払出簿で確認したところ、C(11年生まれ、男性)のものであることが判明した。
 払出簿上の生年月日は、年金記録の11年1月1日ではなく同年同月の2日となっており、被保険者名簿においても2日と記録されていた。
 そこで、オンラインシステム上で、Cの年金記録の氏名を収録するとともに生年月日を11年1月2日に修正して、補正作業を完了した。

 このように比較的容易に補正作業が完了する年金記録がある一方で、氏名等の年金記録の補正作業が困難とされているものが、図表8のとおり、平成20年1月現在で55,421件存在していた。
 これらの補正作業が困難とされた事由については、図表10のとおり、払出簿等に記載が無かったり、オンラインシステム上に事業所情報が収録されていなかったり、生年月日が実在しない日付であったりなどしていることによるとしている。


図表10 補正作業が困難な事由別内訳 (単位:件)
事由別内訳
払出簿等に記載が無い
払出簿等の記載内容が不明
オンラインシステム上の事業所情報が未収録
生年月日が実在しない日付
その他
(払出簿が無いものなど)
年金記録件数
(全体の件数に対する割合)
15,213
(27.4%)
981
(1.8%)
27,311
(49.3%)
2,498
(4.5%)
9,418
(17.0%)
55,421
(100.0%)
(注)
 表中の「オンラインシステム上の事業所情報が未収録」とは、厚生年金保険の適用事業所の被保険者名簿等の記録により確認する手掛かりとなる事業所情報が収録されていないものである。

 上記について、事例を示すと次のとおりである。

払出簿等上の生年月日の記録が実在しない日付となっていて補正作業が困難なもの

 オンラインシステム上の手帳番号dddd-ddddddの年金記録(氏名有り、生年月日無し、性別:女)は、これを払出簿で確認したところ、その氏名がD(女性)であることが判明した。
 オンラインシステム上にはDと同姓同名の者が多数存在したので、当該年金記録に係る生年月日を確認したところ、払出簿等には大正17年11月7日という実在しない日付が記録されていた。
 これについては、オンラインシステム上に氏名及び性別は収録できたものの、正しい生年月日を確認することができないため、補正困難とされた。

 このように被保険者の氏名等が収録されていない年金記録が多数存在していた事態が生じているのは、社会保険庁の年金記録管理において、年金記録作成時における確認や、その後の管理における年金記録の確認、補正等が適切に行われていなかったことによると思料される。
 これら氏名等の収録されていない年金記録の大部分については、9年1月の基礎年金番号導入後において、年金記録の補正作業及び名寄せを迅速に行うことが可能であったと思料されるが、それにもかかわらず、社会保険庁がこれを行っていなかったのは、前記のとおり、被保険者が年金の裁定時までに申し出た際に年金記録の訂正等を行うことで対処できると判断したことなどによると思料される。
 各地方社会保険事務局等においては、その後も継続して調査を実施しており、その結果、21年2月現在で補正作業が困難とされているものは、前記の20年1月現在における55,421件から26,354件に減少している。

(b) 補正作業を行う職員等の状況

 補正作業を行う職員等については、図表11のとおり、各地方社会保険事務局等においては、職員を中心として、これに賃金職員、謝金職員及び労働者派遣契約による派遣会社の社員(以下「派遣社員」という。)を加えて実施していた。
 社会保険庁は、当該補正作業の進ちょく状況を対象日(19年9月30日から12月21日までの期間のうちの13日)ごとに調査している。この調査によれば、補正作業に携わった者について、当該調査日における1日当たりの平均人数でみると、総人員2,059.5人のうち、職員が1,818.1人(総人員に対する割合88.2%)、賃金職員が60.3人(同2.9%)、謝金職員が54.5人(同2.6%)、派遣社員が126.4人(同6.1%)となっていた。


各地方社会保険事務局等における「氏名等が収録されていない年金記録の補正作業」を行う職員等の状況

各地方社会保険事務局等における「氏名等が収録されていない年金記録の補正作業」を行う職員等の状況

(イ) 名寄せの実施状況

 前記のとおり、社会保険庁は、工程表において、オンラインシステム上に存在する基礎年金番号に結び付かない約5095万件の年金記録の名寄せを行うこととしている。そして、名寄せを行うプログラムを開発した上で、19年11月から20年3月までの間に、年金受給年齢に到達している約2880万件の記録を含むすべての年金受給者、被保険者等のオンラインシステム上の記録との名寄せを実施した。
 未統合記録と基礎年金番号との名寄せについては、〔1〕 第一次名寄せ(19年11月から20年1月までの間)及び〔2〕 第二次名寄せ(19年12月から20年3月までの間)を段階的に実施した。

〔1〕  第一次名寄せにおいては、氏名等の3項目の一致を確認して、基礎年金番号に結び付く可能性のある年金記録を特定した。その際、カナ氏名の濁点の有無(例えば、「シンドウ」と「シントウ」)等については、一致条件を緩和した上で実施した。

〔2〕  第二次名寄せにおいては、第一段階として、性別の不一致や生年月日の前後1日を許容するなどのように一致条件を更に緩和して実施した。次に、第二段階として、元号を生年月日の一致条件から除外するとともに、氏名の丸め(例えば「ソ」と「ン」、「シ」と「ツ」、「フルヤ」と「フルタニ」、「サチコ」と「ユキコ」)を行って一致条件を一層緩和した上で実施した。

 会計検査院が社会保険業務センターにおいて名寄せの実施状況について検査したところ、図表12のとおりとなっており、名寄せの結果、特定の基礎年金番号に結び付く可能性のある未統合記録は20年3月現在で11,721,496件であった。

図表12 名寄せの実施結果等(平成20年3月現在) (単位:件、通)
区分
第一次名寄せ
第二次名寄せ
年金受給者
名寄せの結果、特定の基礎年金番号に結び付く可能性のある未統合記録の件数
2,923,438
431,205
3,354,643
ねんきん特別便による通知数
2,507,693
497,098
3,004,791
被保険者等
名寄せの結果、特定の基礎年金番号に結び付く可能性のある未統合記録の件数
7,952,248
504,990
8,457,238
ねんきん特別便による通知数
6,668,281
629,666
7,297,947
名寄せの結果、特定の基礎年 金番号に結び付く可能性のある未統合記録の件数
10,875,686
936,195
11,721,496
ねんきん特別便による通知数
9,175,974
1,126,764
10,302,738
 名寄せの結果、特定の基礎年金番号に結び付く可能性のある未統合記録の件数については、一つの年金記録が年金受給者と被保険者等の双方に結び付くと思われたものの件数が90,385件あるため、「計」欄の件数は年金受給者と被保険者等の件数を合わせた11,811,881件ではなく、11,721,496件となる。


イ ねんきん特別便等の実施状況

(ア) ねんきん特別便等の発送状況

a ねんきん特別便の発送

(a) 社会保険庁は、前記アの補正作業及び名寄せを実施した結果、上記のとおり、約5095万件のうち約1172万件(約23.0%)の記録について既存の基礎年金番号に結び付く可能性が高いとして、図表13のとおり、20年3月までに、ねんきん特別便(青色の封筒)を約1030万人の当該年金受給者、被保険者等に発送した。

(b) 次いで、同庁は、同年4月及び5月に上記(a)以外のすべての年金受給者に対して、6月から10月までの間に上記(a)以外のすべての被保険者等に対して、ねんきん特別便(緑色の封筒)を計約9843万人に発送した。

b ねんきん特別便の「回答のお願い」の発送

(a) 社会保険庁は、a(a)に係る者のうち、回答の無い者については、20年4月から6月までの間にねんきん特別便の「回答のお願い」(勧奨はがき)を年金受給者に約99万件、被保険者等に約432万件、計約532万件を発送した。その後9月に、なお回答の無い者に対して、2回目の「回答のお願い」を年金受給者約3万件、被保険者等約279万件、計約283万件を発送した。

(b) また、同庁は、a(b)に係る者のうち、回答の無い年金受給者に対して、21年2月及び3月に約718万件を発送した。

c 会計検査院が、上記a及びbの発送状況等について検査したところ、次の〔1〕 から〔5〕 のとおりとなっていた。

〔1〕  19年12月から20年10月末までの間に発送されたねんきん特別便の件数は、これを年金受給者、被保険者等別にみると図表13のとおりとなっていた。
 また、これらのねんきん特別便の発送に係る経費は、封筒、リーフレット等の作成に要する経費10億9197万余円、ねんきん特別便の作成及び発送準備に係る業務委託費110億6810万余円、郵便料金69億3364万余円、計190億9372万余円となっていた。このほか、返信に係る郵便料金が52億1411万余円となっていた。

図表13 ねんきん特別便の発送状況 (単位:人)
発送年月
(a) 名寄せ実施分(青色の封筒)
(b) 左記以外分(緑色の封筒)
年金受給者分
被保険者等分
小計
年金受給者分
被保険者等分
小計
平成19年
12月
481,717
-
481,717
-
-
-
20年1月
600,279
-
600,279
-
-
-
2月
1,238,650
1,238,315
2,476,965
-
-
-
3月
684,145
6,059,632
6,743,777
-
-
-
4月
-
-
-
14,191,486
-
14,191,486
5月
-
-
-
19,761,536
-
19,761,536
6月
-
-
-
-
1,209,586
1,209,586
7月
-
-
-
-
9,212,589
9,212,589
8月
-
-
-
-
11,061,332
11,061,332
9月
-
-
-
-
22,364,908
22,364,908
10月
-
-
-
-
20,629,083
20,629,083
3,004,791
7,297,947
10,302,738
33,953,022
64,477,498
98,430,520

〔2〕  ねんきん特別便は、社会保険庁が把握している年金受給者等の年金記録について、加入制度、勤務先の名称、資格取得年月日等を表形式で示す様式となっている。
 しかし、前記a(a)のねんきん特別便のうち20年1月30日までに発送されたものについては、約5095万件の未統合の年金記録の中に本人の基礎年金番号に結び付くと思われる記録が存在しているのに、加入履歴のチェックポイントが示されていないなど、その様式等が必ずしも十分ではなかった。
 このことから、20年1月24日に開催された「年金記録問題に関する関係閣僚会議」において、より積極的な対応や分かりやすい注意喚起を行うための印刷物を新たに折り込むこととされた。そこで、社会保険庁は、上記の発送分については、これを新たに折り込んで3月末までに1,080,917件を再発送した。
 また、これに係る経費は、封筒、リーフレット等の作成に要する経費1001万余円、ねんきん特別便の作成及び発送準備に係る業務委託費9193万余円、郵便料金8795万余円、計1億8989万余円となっていた。

〔3〕  前記のaで発送したねんきん特別便の中には、発送対象者の住所不明により返送されたものがあり、社会保険庁は住所の変更について各地方社会保険事務局等に再確認するなどした上で、図表14のとおり、21年3月末までに約79万件を再発送した。
 また、これに係る経費は、封筒、リーフレット等の作成に要する経費1558万余円、ねんきん特別便の作成及び発送準備に係る業務委託費1億1224万余円、郵便料金5683万余円、計1億8466万余円となっていた。

図表14 発送対象者の住所不明により返送されたねんきん特別便の再発送状況
(単位:件)
発送年月
(a) 名寄せ実施分(青色の封筒)
(b) 左記以外分(緑色の封筒)
年金受給者分
被保険者等分
小計
年金受給者分
被保険者等分
小計
平成20年
3月
516
-
516
-
-
-
5月
1,290
-
1,290
-
-
-
7月
1,789
92,642
94,431
9,500
-
9,500
9月
2,225
42,050
44,275
7,139
39,144
46,283
12月
498
21,830
22,328
1,077
61,997
63,074
21年1月
354
36,183
36,537
1,296
168,991
170,287
3月
1,466
35,871
37,337
12,847
259,184
272,031
8,138
228,576
236,714
31,859
529,316
561,175


〔4〕  上記〔2〕 、〔3〕 のほか、図表15のとおり、予定どおり発送対象者に到達しなかったため、再発送せざるを得なかったものがあった。

予定どおり発送対象者に到達しなかったため、再発送せざるを得なかったねんきん特別便

(事態番号)

当初の発送年月日
事態の概要
(i)
平成20.3.19
ねんきん特別便の作成及び発送準備業務に係る委託契約において、仕様書の記載、委託業者への指示等が適切でなかったため、再度、ねんきん特別便の作成及び発送が必要となった(19,827件)。
(この事態については、平成19年度決算検査報告に掲記した。)
(ii)
20.6.23及び25
20年6月14日の岩手・宮城内陸地震被害により、委託業者のサーバが破損し、収録していたねんきん特別便の印刷用設定ファイルが消失したことから委託業者において再作成を行ったが、その際に印刷設定を誤ったため、加入月数の合計欄と納付済月数等の計欄を反対にして出力し、そのまま発送してしまった(23事業所 1,857件)。
(iii)
20.7.2
ねんきん特別便を事業主を経由して被保険者に発送したが、誤って、他の事業所の被保険者の分を封入して発送してしまった(3事業所 28件)。
(iv)
20.8.27
委託業者において、印刷設定を誤ったため、加入月数の合計欄と納付済月数等の計欄を反対にして出力し、そのまま発送してしまった(19,784件)
(v)
20.9.30
委託業者において、誤って、遺族年金の受給者あてのねんきん特別便の備考欄にのみ出力すべきメッセージを老齢年金・障害年金の受給者あてのねんきん特別便にも出力し、そのまま発送してしまった(1,554件)。
(vi)
20.10.22〜30
共済組合各支部を経由して発送した地方公務員共済組合員に係るねんきん特別便について、社会保険庁が、ねんきん特別便の発送準備段階において、〔1〕 共済組合の各支部の発送先住所を誤ったり、〔2〕 共済組合の指定した配列順と異なるものとしたりしてしまったため、共済組合から組合員への配布が困難となった(〔1〕 と〔2〕 の合計 159か所 498,675件)。

 これらの再発送に要した経費については、次のとおりとなっていた。
 図表15の(i)については343万余円である。  (ii)から(v)までについては、このような事態の発生に関し委託業者に責任があるとして、委託業者に負担させている。
 (vi)について、社会保険庁が負担した経費は、派遣業務に要する経費98万余円、運送業務に要する経費63万余円、郵便料金2796万余円、計2958万余円である。
 上記のうち、(i)の事例を示すと次のとおりである。

ねんきん特別便の作成及び発送準備業務に係る委託契約において、仕様書の記載、委託業者への指示等が適切でなかったため、再度、ねんきん特別便の作成及び発送が必要となったもの

 社会保険庁が平成20年2月に締結した委託契約において、同年3月19日発送分の遺族年金受給者の一部19,827件分について、「加入記録」欄に本人の遺族年金の基となった記録に加えて別人の記録が印字されているなど、正確な加入履歴等が示されていなかった。そして、この19,827件のねんきん特別便を再度作成して発送するために、同年3月24日に改めて委託契約を締結するなどして3,431,226円を支出していた。
 会計検査院が、上記の事態について検査したところ、同一の識別番号を付与された加入履歴等のデータが、委託業者に貸与された複数の磁気テープに重複して存在していた。
 しかし、社会保険庁においては、仕様書には識別番号が重複することなく付与されているとしていて、識別番号の重複が生じている旨を委託業者に伝えて、その処理方法を指示することをしていなかった。このため、委託業者は仕様書どおり識別番号の重複は無いものとして処理を行っていた。
 この事態については、不当事項として、平成19年度決算検査報告に掲記したところである。
 社会保険庁は、会計検査院の指摘に基づき、今後同種事態を防止するために、仕様書に委託業務の詳細を明記するとともに、委託業者に対する十分な指示、確認を行うこととしている。

〔5〕 前記bのとおり、社会保険庁は、回答の無い者に対して、ねんきん特別便の「回答のお願い」(勧奨はがき)を発送しているが、その状況は図表16のとおりとなっていた。
 また、これに係る経費は、「回答のお願い」の作成及び発送準備に係る業務委託費7443万余円、郵便料金6億0686万余円、計6億8129万余円となっていた。


図表16 ねんきん特別便の「回答のお願い」の発送状況 (単位:件)
発送年月
(a) 名寄せ実施分
(b) 左記以外分
年金受給者分
被保険者等分
小計
年金受給者分
被保険者等分
小計
平成20年
4月
274,207
-
274,207
-
-
-
5月
181,323
-
181,323
-
-
-
6月
541,503
4,328,474
4,869,977
-
-
-
9月
38,371
2,793,563
2,831,934
-
-
-
21年2月
-
-
-
1,411,185
-
1,411,185
3月
-
-
-
5,773,062
-
5,773,062
1,035,404
7,122,037
8,157,441
7,184,247
-
7,184,247

(イ) ねんきん特別便への回答状況

 社会保険庁が、ねんきん特別便を発送したものの中には、前記(ア)のとおり、年金受給者、被保険者等の住所が不明であるなどして未到達となっているものが存在している。
 また、ねんきん特別便を受け取った年金受給者、被保険者等は、ねんきん特別便に記載された自分の年金記録を確認した後に回答をすることとされているが、必ずしもそのすべてがなされていない状況である。
 会計検査院が検査したところ、図表17のとおり、21年5月末現在、回答のあったものは年金受給者約3113万人(発送対象者数約3695万人に対する割合84.2%)、被保険者等約4640万人(同約7177万人に対する割合64.6%)となっていた。回答のあったもののうち、「訂正あり」又は「記録にもれや間違いがある」としているものは年金受給者約324万人(回答者数約3113万人に対する割合10.4%)、被保険者等約770万人(同約4640万人に対する割合16.6%)となっていた。


ねんきん特別便への回答状況(平成21年5月末現在)

種別
(a) 名寄せ実施分(青色の封筒)
(b) 左記以外分(緑色の封筒)
(a)+(b)
年金受給者分
被保険者等分
年金受給者分
被保険者等分
年金受給者分
被保険者等分
発送対象者数A
300万人
729万人
3395万人
6447万人
3695万人
7177万人
回答者数B
260万人
462万人
2852万人
4178万人
3113万人
4640万人
B/A
86.6%
63.3%
84.0%
64.7%
84.2%
64.6%
「訂正あり」、「記録にもれや間違いがある」と回答した者の数 C
90万人
335万人
234万人
435万人
324万人
770万人
C/A
30.1%
45.9%
6.9%
6.7%
8.7%
10.7%
C/B
34.8%
72.5%
8.2%
10.4%
10.4%
16.6%
「訂正無し」、「記録にもれや間違いが無い」と回答した者の数 D
169万人
127万人
2618万人
3742万人
2788万人
3869万人
D/A
56.4%
17.4%
77.1%
58.0%
75.4%
53.9%
D/B
65.1%
27.4%
91.7%
89.5%
89.5%
83.3%
(注)
 人数は千人以下を切り捨て、割合は小数点第2位以下を切り捨てている。

(ウ) ねんきん特別便に係る政府広報

 社会保険庁は、19年7月から、ねんきん特別便に係る政府広報として、新聞広告等の各種広報媒体を通じてねんきん特別便が届いた場合のねんきん特別便専用ダイヤルの利用や社会保険事務所等への相談の呼びかけを実施している(図表18 参照)。

ねんきん特別便に係る政府広報

年度
広報媒体及び掲載等方法
掲載日等
平成19年度
新聞突出し広告
(全国紙、ブロック紙、地方紙)
11月22日〜25日、12月18日〜21日、12月23日、3月17日〜23日
新聞折込広告
7月19日〜21日、12月17日
新聞記事下広告(カラー7段)
(全国紙、ブロック紙、地方紙)
7月25日〜26日、2月29日〜3月2日、3月3日〜5日、3月17日〜20日、3月25日〜27日
テレビ番組
11月30日、12月7日、12月16日、3月10日、3月14日
テレビスポットコマーシャル
1月19日〜2月1日、3月18日〜24日
ラジオ番組
11月10日、11月17日、11月24日、12月1日、12月15日、3月15日
政府インターネットテレビ
12月20日から実施
インターネットサイトテキスト広告
11月5日〜13日、12月17日〜23日、12月31日〜1月6日、3月17日〜23日
広報誌(政府情報誌)
3月5日
雑誌
3月10日
モバイル携帯端末
12月17日〜23日
視覚障害者向け資料(音声広報CD)
11月発行、3月発行
  20年度
新聞突出し広告
(全国紙、ブロック紙、地方紙)
6月3日〜8日、7月28日〜8月3日、8月31日〜9月6日、9月22日〜28日、10月26日〜11月1日、12月16日〜21日、2月10日〜15日
新聞記事下広告(カラー7段)等
(全国紙、ブロック紙、地方紙)
5月1日、5月30日、7月4日〜6日
テレビ番組
1月30日〜2月1日、2月5日
ラジオ番組
2月7日〜8日
政府インターネットテレビ
19年12月20日から継続
モバイル携帯端末
2月16日〜22日

(社会保険庁作成資料による。)

(エ) ねんきん特別便に係る入念照会及びフォローアップ照会の実施状況

 図表17のとおり、名寄せ作業の結果、年金記録が基礎年金番号に結び付く可能性がある者に対して発送したねんきん特別便に対して、その可能性が高いにもかかわらず加入記録に「訂正が無い」とする回答がいまだ相当数に上っている。「訂正が無い」との回答は、本人に加入記録を確認してもらった結果に基づくものではあるが、十分に点検せずに回答した年金受給者、被保険者等もあると想定されている。

a 入念照会の実施

 上記のことから、社会保険庁は、20年1月から、基礎年金番号上の記録と名寄せにより該当した記録に期間の重複が無く、かつ未統合記録に結び付く同一氏名等の者が他にいないなど優先度の高い年金受給者約35万人に対しては、電話や戸別訪問により、結び付く可能性がある年金記録について具体的に情報提供しながら再確認するなどの入念照会を行っている。

b フォローアップ照会の実施

 さらに、社会保険庁は、20年6月27日に開催された「年金記録問題に関する関係閣僚会議」で了承された「年金記録問題への対応の今後の道筋」に基づき、同月30日の事務連絡により、従来よりも入念照会の対象者の範囲を広げ、未回答の年金受給者を含む記録上上記の重複期間が無い年金受給者すべてに対し、フォローアップ照会を各地方社会保険事務局等において実施している。このため、21年5月末現在、照会対象者数は877,380人に増加している。

c フォローアップ照会の実施状況

 会計検査院が、各地方社会保険事務局及び管内の社会保険事務所等におけるフォローアップ照会の実施状況について検査したところ、常勤職員を中心に実施しており、地方社会保険事務局別の実施状況は図表19のとおりとなっていた。


地方社会保険事務局別のフォローアップ照会の実施状況(平成21年5月末現在)

地方社会保険事務局
照会対象者数
 
実施対象者数
 
 
うち照会実施完了者
数(括弧書きは実施対象
者数に対する割合)
回答拒
否者数
連絡が
取れな
い者の
残件数
 
 
 
未統合記録が本人のものであると確認できた者の数(括弧書きは照会実施完了者数に対する割合)
北海道
36,689
30,960
26,660(86.1%)
19,616(73.5%)
55
1,574
2,671
青森
6,407
5,557
3,663(65.9%)
2,640(72.0%)
90
34
1,770
岩手
7,001
6,156
5,366(87.1%)
3,721(69.3%)
7
194
589
宮城
15,507
13,847
7,454(53.8%)
5,895(79.0%)
146
31
6,216
秋田
7,033
6,114
4,822(78.8%)
3,237(67.1%)
79
507
706
山形
7,777
7,573
6,925(91.4%)
4,666(67.3%)
8
387
253
福島
12,392
10,023
7,266(72.4%)
5,370(73.9%)
26
308
2,423
茨城
18,781
16,368
10,679(65.2%)
6,371(59.6%)
122
2,290
3,277
栃木
14,790
11,818
8,470(71.6%)
4,772(56.3%)
368
175
2,805
群馬
14,379
11,395
4,126(36.2%)
3,019(73.1%)
46
82
7,141
埼玉
60,237
59,634
26,795(44.9%)
23,268(86.8%)
909
413
31,517
千葉
47,324
46,184
19,202(41.5%)
15,358(79.9%)
127
211
26,644
東京
87,359
78,837
30,471(38.6%)
23,843(78.2%)
136
907
47,323
神奈川
63,876
39,970
11,790 (29.4%)
9,528(80.8%)
458
437
27,285
新潟
12,720
11,828
9,322(78.8%)
7,033(75.4%)
114
181
2,211
富山
5,639
4,879
3,687(75.5%)
2,474(67.1%)
9
74
1,109
石川
7,464
6,674
5,212(78.0%)
4,205(80.6%)
12
187
1,263
福井
4,320
3,816
3,559 (93.2%)
2,563(72.0%)
60
169
28
山梨
5,197
4,118
2,487(60.3%)
1,907(76.6%)
17
45
1,569
長野
13,830
12,522
10,794(86.2%)
7,955(73.6%)
119
539
1,070
岐阜
14,419
13,789
9,891(71.7%)
8,062(81.5%)
18
534
3,346
静岡
27,125
22,238
8,309(37.3%)
6,053(72.8%)
93
456
13,380
愛知
47,524
36,000
17,238(47.8%)
12,966(75.2%)
166
925
17,671
三重
12,618
10,061
5,330(52.9%)
4,177(78.3%)
0
329
4,402
滋賀
7,909
7,211
5,773(80.0%)
4,592(79.5%)
8
510
920
京都
17,314
17,193
14,162(82.3%)
12,722 (89.8%)
82
989
1.960
大阪
79,789
69,615
44,046(63.2%)
35,289(80.1%)
1,016
5,304
19,249
兵庫
40,480
40,214
26,797(66.6%)
20,239(75.5%)
138
3,255
10,024
奈良
11,028
10,171
9,280(91.2%)
7,585(81.7%)
23
678
190
和歌山2
7,221
6,046
5,006(82.7%)
3,574(71.3%)
81
627
33
鳥取
4,168
3,589
3,065(85.3%)
2,521(82.2%)
20
82
422
島根
4.413
3,927
2,799(71.2%)
2,137(76.3%)
8
54
1,066
岡山
14,751
10,434
8,430(80.7%)
6,408(76.0%)
84
369
1,551
広島
17,432
13,938
10,293(73.8%)
7,775(75.5%)
37
507
3,101
山口
11,614
10,776
8,401(77.9%)
6,427(76.5%)
22
324
2,029
徳島
5,039
3,923
2,901(73.9%)
1,463 (50.4%)
11
56
955
香川
6,818
6,178
4,818(77.9%)
3,775(78.3%)
14
122
1,224
愛媛
9,490
8,274
6,632(80.1%)
4,740(71.4%)
38
104
1,500
高知
4,646
4,168
2,232(53.5%)
1,663(74.5%)
1
18
1,917
福岡
31,714
28,749
22,017(76.5%)
17,016(77.2%)
92
6,198
442
佐賀
5,498
4,414
3,277(74.2%)
2,548(77.7%)
183
247
707
長崎
9,082
8,192
6,552(79.9%)
5,149(78.5%)
40
310
1,290
熊本
10,614
10,114
7,264(71.8%)
5,519(75.9%)
37
242
2,571
大分
7,867
6,291
5,038(80.0%)
4,201(83.3%)
34
216
1,003
宮崎
6,529
6,068
4,545(74.9%)
3,712(81.6%)
8
84
1,431
鹿児島
11,466
9,766
7,976(81.6%)
6,334(79.4%)
205
465
1,120
沖縄
2,090
2,037
1,402(68.8%)
995(70.9%)
9
214
412
877,380
761,649
462,224(60.6%)
355,083(76.8%)
5,376
31,964
262,085
注(1)
 実施対象者数は、照会対象者数からフォローアップ照会実施時点において既に統合されている者等を除いた者の数である。
注(2)
 残件数には、他の地方社会保険事務局等へ照会中のものなど調査中のものが含まれる。

 フォローアップ照会の実施状況についてみると、図表19のとおり、実施対象者数761,649人に対する照会実施完了者数は、21年5月末現在で462,224人であり、その割合は60.6%となっていた。これを地方社会保険事務局別にみると、 照会実施完了者数の進ちょく状況は各地方社会保険事務局で区々となっており、実施対象者数に対する照会実施完了者数の割合は、最高で93.2%、最低で29.4%となっていた。
 そして、フォローアップ照会の実施により、未統合記録が本人のものであると確認できた者の数は、21年5月末現在で355,083人であり、照会実施完了者数に対する割合は76.8%となっていた。これを地方社会保険事務局別にみると、最高で89.8%、最低で50.4%となっていた。
 一方、地方社会保険事務局全体で、本人と連絡が取れない者の数は31,964人、そして、本人と連絡は取れたものの本人が回答を拒否した者の数は5,376人、計37,340人となっており、実施対象者数に対する割合は4.9%となっていた。 しかし、これらの者は図表20のとおり、フォローアップ照会の実施の進ちょくに伴い増加する傾向となっており、フォローアップ照会を実施したものの、未統合記録が本人のものであるか否かを確認するというフォローアップ照会の目的が十分達せられていない状況となっている。
 なお、社会保険庁は、21年2月にフォローアップ照会実施要綱を定めて、電話や戸別訪問によっても本人と連絡が取れない者に対して、未統合記録の一部を記載して回答を求める文書を発送した。


図表20
地方社会保険事務局全体における連絡が取れない者の数等の状況


図表20

(注)連絡が取れない者の数等には回答拒否者数を含む。


(オ) ねんきん特別便による年金記録の統合状況

 前記のとおり、年金記録が基礎年金番号に結び付く可能性があるとして、未統合の年金記録約1172万件についてねんきん特別便が発送されているが、このうち、統合がなされたとして公表された件数は、図表21のとおり、21年3月25日現在で 約398万件となっている。


ねんきん特別便を発送した記録のうち基礎年金番号に統合されたものの件数

ねんきん特別便の発送対象者区分
21年3月25日現在の件数
年金受給者に係る名寄せ分
約112万件
被保険者等に係る名寄せ分
約288万件
約398万件
(注)
 「計」については、「年金受給者に係る名寄せ分」と「被保険者等に係る名寄せ分」に重複する未統合記録があるため、両者を合計しても「計」欄の数字とは一致しない。


(カ) 「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)の実施について

a 「漢字カナ変換辞書」を使用してカナ氏名を収録した年金記録の補正作業

(a) 社会保険庁は、昭和54年から、それまで漢字氏名で収録していた厚生年金保険の被保険者記録をカナ氏名で収録することとした。
 このことについては、「三十年史」(昭和62年社会保険庁年金保険部作成)によれば、「厚生年金保険被保険者の氏名の管理は、東京都及び沖縄県の資格記録はカナ氏名で、その他のものは数字符号化漢字氏名で管理していたが、次の理由からカナ文字に統一して管理することとした。〔1〕 厚生年金保険の給付記録、船員保険及び国民年金の資格記録等はすべてカナ文字で管理されている。〔2〕 事務処理機器で氏名を取り扱う場合、カナ文字は漢字に比べ簡単に、かつ、短時間で効率的な処理をすることができる。〔3〕 カナ文字を使用するシステムは、漢字を使用するシステムに比べ費用が低廉である。」としている。
 そして、社会保険庁は、カナ氏名の収録に伴って、その変更の際に、それ以前の記録についてもカナ氏名の入力を行うこととして、「〔1〕 現存被保険者については、昭和54年度の報酬月額算定基礎届によりカナ氏名を進達することにより、カナ氏名収録する。〔2〕 既に、年金の裁定を受けた被保険者については、給付記録によりカナ氏名を収録する。〔3〕 〔1〕 及び〔2〕 以外の資格喪失被保険者については、漢字の姓及び名単位に一般的な読み方をカナに変換する「漢字カナ変換辞書」を開発し、これによって数字符号化漢字氏名をカナ氏名に置きかえ、カナ氏名を収録する。」こととした。
 しかし、この「漢字カナ変換辞書」は漢字氏名を一般的な読み方により自動的にカナに変換するシステムであったため、一般的な読み方と異なる読み方の氏名については、年金記録に正しい読み方と異なるカナ氏名が収録される状況となった。
 この点については、検証委員会報告書によれば、「年金相談業務における検索事務に用いる目的で昭和54年に開発した漢字カナ自動変換辞書システムは、漢字を一定のルールで自動的にカナに変換するものであり、カナ氏名収録用に使うには不適切であった。しかし、厚生年金保険の資格喪失者については本人への郵便や事業所を通じてのカナ氏名の確認ができないことから、このシステムを56年に使用してカナ氏名収録を行った。このため、誤った読み方のままでカナ氏名が入力された記録が発生し、これが氏名に係る不備記録の一因となった。」とされている。
 上記のように、正しい読み方と異なるカナ氏名が収録されている年金記録については、カナ氏名同士で名寄せができないことから、社会保険庁は、このような年金記録について、払出簿等を確認することによって正しい漢字氏名を収録する作業を平成20年2月から同年5月までの間に実施した。この補正作業の対象となった件数は計1,544,426件であった。
 そして、この補正作業は、同年1月に社会保険業務センターが作成した「漢字氏名収録処理要領」に基づき行うとされたもので、その主な手順は、前記ア(ア)の氏名等が収録されていない年金記録の補正作業の場合とほぼ同様である。

(b) 会計検査院が、各地方社会保険事務局及び管内の社会保険事務所等における当該補正作業の実施状況について検査したところ、次のとおりであった。
 すなわち、上記の補正対象件数計1,544,426件のうち1,541,096件(99.7%)については、図表22のとおり、払出簿等に記載された漢字氏名を転記するなどして補正作業を実施している。
 一方、漢字氏名等の記録の補正作業が完了していないものは20年5月現在で計3,330件あった。社会保険庁は、これらの中には、払出簿等を確認しても漢字氏名が判明せず、名寄せして基礎年金番号に統合することが困難なものがあるとしている。
 なお、各地方社会保険事務局等は、その後も、前記ア(ア)の氏名等が収録されていない年金記録の補正作業の場合と同様に再調査を継続して実施している。


図表22
各地方社会保険事務局等における「漢字カナ変換辞書を使用してカナ氏名を収録した記録に係る漢字氏名補正作業」(平成20年2月〜5月実施)
(単位:件)
項目
補正対象(A)
左のうち補正済み(B)
左のうち統合(C)
残件数
(D)=(A)-(B)
年金記録件数
1,544,426
1,541,096
24,006
3,330

 また、補正作業を行う職員等については、図表23のとおり、各地方社会保険事務局等においては、職員を中心として、これに賃金職員、謝金職員及び派遣社員を加えて実施していた。
 これを、進ちょく状況に関する各調査対象日(20年2月10日から4月23日までの期間のうちの11日)において、実施に携わった者を1日当たりの平均人数でみると、総人員708.5人のうち、職員が542.5人(総人員に対する割合76.5%)、賃金職員が61.9人(同8.7%)、謝金職員が47.2人(同6.6%)、派遣社員が56.8人(同8.0%)となっていた。

各地方社会保険事務局等における「漢字カナ変換辞書を使用してカナ氏名を収録した記録に係る漢字氏名補正作業」を行う職員等の状況

各地方社会保険事務局等における「漢字カナ変換辞書を使用してカナ氏名を収録した記録に係る漢字氏名補正作業」を行う職員等の状況

b 「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)の発送について

(a) 社会保険庁は、上記の補正作業において正しい漢字氏名が収録できたものについて、漢字氏名等により基礎年金番号の年金記録との名寄せを実施した。 その結果、当該年金記録の持ち主である可能性のある者について、ねんきん特別便とは別に「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)を発送している。

(b) また、住民基本台帳ネットワークシステムによる調査を行った結果、生存することなどが確認できた者のうち年金受給要件を満たしている者や婚姻等により姓が変わった旨の申出があった者等に対しても同様に発送している。

 会計検査院が、「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)の発送状況等について検査したところ、その発送件数は図表24のとおりとなっていた。
 また、これに係る経費は、封筒及びリーフレットの作成に要する経費1454万余円、「年金記録の確認のお知らせ」の作成及び発送準備に係る業務委託費1億8745万余円、郵便料金1億3743万余円、計3億3942万余円となっていた。このほか、返信に係る郵便料金が6923万余円となっていた。


図表24
「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)の発送状況(平成21年3月末現在)
(単位:件)
発送年月
(a)漢字氏名補正に基づくもの
(b)左記以外分
(a)+(b)
年金受給者分
被保険者等分
小計
平成20年6月
-
-
-
10,316
10,316
7月
-
20,000
20,000
15,141
35,141
8月
-
59,020
59,020
-
59,020
9月
96,787
3,253
100,040
-
100,040
12月
-
-
-
39,782
39,782
21年1月
-
-
-
183,002
183,002
2月
32,000
32,329
64,329
797,586
861,915
3月
-
-
-
624,547
624,547
128,787
114,602
243,389
1,670,374
1,913,763

(キ) 「ねんきん定期便」の発送について

 社会保険庁は、21年4月から、「ねんきん定期便」を国民年金及び厚生年金保険のすべての被保険者に対し発送している。これにより、ねんきん特別便には含まれていなかった標準報酬月額、国民年金の保険料納付状況、加入実績に応じた年金見込額等の個人の年金に関する幅広い情報が提供されて、被保険者本人が自身の年金記録を確認できることとなるとしている。
 すなわち、ねんきん定期便は、21年度においては、すべての被保険者に対して、被保険者の誕生月に、〔1〕 年金加入期間(加入月数及び納付済月数)、〔2〕 加入実績に応じた年金見込額、〔3〕 厚生年金保険のすべての期間の標準報酬月額や国民年金の保険料納付状況(納付、未納又は免除の別)等を通知する。これにより、21年度中に、すべての被保険者が自身の年金記録を確認できることとなるとしている。
 そして、22年度以降は、35歳、45歳及び58歳の節目の年齢に該当する被保険者に対して、〔1〕 年金加入期間(加入月数及び納付済月数)、〔2〕 加入実績に応じた年金見込額、〔3〕 厚生年金保険のすべての期間の標準報酬月額や国民年金の保険料納付状況(納付、未納又は免除の別)等を通知する。また、上記以外の被保険者全員に対して、年金加入期間、加入実績に応じた年金見込額等に加えて、直近1年 分の厚生年金保険の標準報酬月額や国民年金の保険料納付状況(納付、未納又は免除の別)を通知するとしている。
 ねんきん定期便については、社会保険庁は21年4月には、4月2日から5月1日生まれの者に対して約557万件を発送し、その後も毎月発送している。その際、ねんきん特別便の未回答者に対しては、その回答勧奨を行うなどしている。

(ク) インターネットによる年金記録照会について

 社会保険庁は、被保険者等の個人がインターネットにより過去の標準報酬月額、保険料納付状況等の年金加入記録の照会を行えるサービスを18年3月から実施している。このサービスは、当初は被保険者等しか利用できなかったが、21年3月からは既に老齢基礎年金及び老齢厚生年金の裁定を受けている年金受給者も自身の年金記録の再確認ができるように拡大された。
 このサービスを利用するためには、あらかじめユーザーID・パスワードを申し込む必要がある。その申込件数は、年金記録問題が大きく報道された後の19年6月には約505千件に達しており、21年4月現在までの累計で約1,908千件となり、このうち約1,494千件についてユーザーID・パスワードが発行されている(図表25 参照)。
 そして、本システムの当初の開発経費は1億4079万余円、前記の年金受給者に対する情報提供の拡大に係る開発経費は315万円となっている。また、その運用経費は19年度で3363万余円、20年度で1422万余円となっている。


インターネット利用申込状況

図表25

ウ マイクロフィルムで管理されている約1466万件の年金記録とオンラインシステム上の記録との名寄せ

 社会保険庁は、マイクロフィルムで管理されている厚生年金保険喪失台帳記録約1430万件及び船員保険喪失台帳記録約36万件、計約1466万件について、年金記録の統合へ向けた解明作業を行うこととして、これら年金記録についてオンラインシステム上の記録との間で名寄せを行うこととした。

〔1〕  この名寄せに先立ち、社会保険庁は、まず、19年9月から20年1月までの間にマイクロフィルムに記録されている情報を紙媒体に印字出力した。次に、上記の約1466万件のうち、オンラインシステムに収録されていない記録について、氏名、性別、生年月日等の項目を抽出してこれを転記することにより入力対象者リストを作成して、これをパンチ入力することにより磁気媒体化する作業を実施した。
〔2〕  上記〔1〕 の作業を実施した後、同年3月からオンラインシステム上の年金受給者記録及び被保険者記録と氏名等の名寄せを行った。その結果、氏名等が一致した年金記録のうち約139万件の年金記録について、オンラインシステムへの収録を行った。
〔3〕  社会保険庁は、この約139万件の年金記録から被保険者期間が重複していて本人の記録である可能性の低い記録等を除くなどして、記録が結び付く可能性がある約68万人(これに係る記録の数約76万件)に対して、同年5月に確認の文書(灰色の封筒)を発送した。その結果、21年5月末までにこのうち約58万人から回答があった。
〔4〕  社会保険庁は、21年5月までに、回答人数約58万人のうち約44万人について、社会保険事務所等において旧台帳を基に電話や戸別訪問により確認を行った。その結果、このうち約35万人については本人の記録であると確認することができ、その一方で、約9万人については本人の記録ではないことが確認されたとしている。

 なお、社会保険庁は、同年2月までに約27万件の年金記録が基礎年金番号に統合されているとしている。


エ オンラインシステム上の年金記録と厚生年金保険の被保険者名簿等の記録約8.5億件との突合せ

 社会保険庁は、オンラインシステム上の年金記録と現存する台帳等との突合せを行うこととしており、その対象は、図表26のとおり、社会保険庁等が保管している〔1〕 厚生年金保険の被保険者名簿等の記録約6.8億件、〔2〕 国民年金の特殊台帳の記録約0.3億件及び〔3〕 国民年金の被保険者名簿の記録約1.4億件の合計約8.5億件となっている。


図表26 厚生年金保険の被保険者名簿等の内訳(平成20年3月作成) (単位:万件)
保管者
種別
社会保険業務センター
社会保険事務所等
市区町村
合計
〔1〕 厚生年金被保険者台帳
1,167
〔2〕 国民年金被保険者台帳
166
〔1〕 厚生年金被保険者名簿・原票
25,382
〔1〕 船員保険被保険者名簿
576
〔3〕 国民年金被保険者名簿
87
〔3〕 国民年金被保険者名簿
3,983
31,361
マイクロフィルム
〔1〕 厚生年金被保険者台帳
1,754
〔1〕 船員保険被保険者台帳
36
〔2〕 国民年金被保険者台帳
3,138
〔1〕 厚生年金被保険者名簿・原票
38,885
〔1〕 船員保険被保険者名簿
855
〔3〕 国民年金被保険者名簿
82
〔3〕 国民年金被保険者名簿
4,555
49,305
電磁媒体
 
〔3〕 国民年金被保険者名簿
7
〔3〕 国民年金被保険者名簿
4,988
4,995
合計
2,957
69,178
13,526
85,661

(社会保険庁作成資料による。)

注(1)
 〔1〕 厚生年金保険の被保険者名簿等の記録1,167+1,754+36+25,382+576+38,885+855≒6.8億件
注(2)
 〔2〕 国民年金の特殊台帳の記録166+3,138≒0.3億件
注(3)
 〔3〕 国民年金の被保険者名簿の記録87+82+7+3,983+4,555+4,988≒1.4億件


 社会保険庁は、これらの記録が膨大な数に上ることから、効率的な突合せ方法を検討するためなどとして、次の取組を行っている。

〔1〕  厚生年金保険の被保険者名簿等の記録

 厚生年金保険の被保険者名簿等の記録は約6.8億件と件数が膨大であることから、社会保険庁は、オンラインシステム上への転記が正確に行われたかどうかをサンプル調査により確認することとして、その結果を分析し、突合せの効率的な実施方法の検証を行うための基礎資料を得ることとした。このサンプル調査は、20年1月から各社会保険事務所等が保管するマイクロフィルムの記録約3.9億件のうち19,979件の写し及びこれに対応するオンラインシステム上の記録を社会保険業務センターにおいて突合せする方法により行われた。
 このようにして実施したサンプル調査の結果、被保険者名簿等の記録とオンラインシステム上の記録が一致しないものが、図表27のとおり全体の1.4%に当たる277件となっていた。これによれば、マイクロフィルムの記録とオンラインシステム上の記録との不一致は、全体として相当な数があると推定することができる。

厚生年金保険の被保険者名簿等のサンプル調査結果(平成20年6月作成)

被保険者名簿等の記録とオンライン記録が一致しないもの
 
年金額の算出に直接の影響があり得るもの  263件
氏名・生年月日・性別の一部が異なっているもの
 
名簿・原票上の記録が入力されていないもの
取得・喪失年月日・標準報酬に関する記録の一部が異なっているもの
277件(1.4%)
48件(0.2%)
215件(1.1%)
18件(0.1%)

(社会保険庁作成資料による。)

(注)
 「年金額の算出に直接の影響があり得るもの」263件と「氏名・生年月日・性別の一部が異なっているもの」18件には4件の重複がある。

 また、紙台帳等の記録とオンラインシステム上の記録との不一致の解明に当たっては各種の関係資料の照合等が必要になるが、この調査の結果、同一人の記録が、全国の複数の社会保険事務所等及び市区町村に分散していたなど、個人や手帳番号単位で集約されておらず、効率的な突合せが行えない状況となっていることが明らかになった。

〔2〕  国民年金の特殊台帳の記録

 社会保険庁は、19年4月から6月までの間に、マイクロフィルム又は紙台帳により保管されている国民年金の特殊台帳の記録約0.3億件のうち3,090件についてサンプル調査を行った。その結果、その0.1%に当たる4件について納付状況の一部に不一致が見受けられた。
 このサンプル調査の結果、20年5月から21年3月までの間に、上記〔1〕 の厚生年金保険の被保険者名簿等の記録及び下記〔3〕 の国民年金の被保険者名簿の二つの記録に先行して当該特殊台帳とオンラインシステム上の記録の突合せ及び記録の補正作業を行うこととした。
 そこで、社会保険庁が、20年5月以降、上記の約0.3億件について、第1次審査として、特殊台帳の記録とオンラインシステム上の記録との突合せを実施した結果、約2321万件の記録が一致した。次いで、記録の一致しなかった約775万件について、第2次審査として、社会保険事務所等において更に変更履歴等を確認した上で突合せを行い、このうち約282万件については突合せを完了している。
 この第1次及び第2次審査により、21年2月末現在、約0.3億件のうち約2603万件(84.1%)について突合せを完了して、このうち約10万件(0.3%)の記録については補正作業が必要であると考えられるとしている。

〔3〕  国民年金の被保険者名簿の記録

 国民年金の支給の根拠となる年金記録の原簿は、社会保険庁によれば、オンラインシステム上に収録・管理されている記録であり、市区町村が保管している国民年金の被保険者名簿の記録は、当該市区町村において収納事務等を行う際に使用していた、いわば「控えの帳簿」であるとしている。
 しかし、社会保険庁が保管していた国民年金の台帳のうち特殊台帳を除く普通台帳については、オンライン化後にそのほとんどが廃棄されていることから、同庁は、市区町村が保管している国民年金の被保険者名簿をオンラインシステム上の記録と突合せすることとした。そして、同庁は、20年度に21年度から開始される当該被保険者名簿の同庁への移管及びこの年金記録とオンラインシステム上の記録との突合せに備えて点検・整備するための準備を行ったとしている。


 厚生労働省は、上記〔1〕 及び〔2〕 のサンプル調査の結果を踏まえて、20年6月に、これらの記録を電子画像化してコンピュータに入力し、基礎年金番号、手帳番号等により検索できる機能を有する年金情報総合管理・照合システムを整備した上で、計画的な突合せを行うこととした。同省は、突合せを21年度から30年度までの10年間で順次実施した場合の作業人員に係る経費をおおむね1900億円から2300億円であると試算している。
 そして、社会保険庁は、現在、22年4月からの突合せの実施に合わせて年金情報総合管理・照合システムを開発しているところであり、21年8月から10月までの間に詳細設計を、同月から22年1月までの間にプログラム作成を行うこととしている。このシステム構築に要する経費としては20、21両年度に予算額で66億円を計上している。
 また、同システムの構築に伴う紙台帳等の電子画像化については、厚生年金保険の被保険者名簿等は21年5月に、国民年金の被保険者名簿は同年6月に、それぞれ入札により受託業者が決定している。その他の台帳等については、同年9月末日までを目途に順次入札を行う予定であるとしている。


オ 年金記録相談等の実施状況

 社会保険庁は、18年3月に国民年金保険料の免除等に関する不適正な事務処理が発覚したことを契機として、国民に対して年金記録の取扱いについて不安を与えたことから、年金記録に対する国民の不安や疑問に積極的に対応するなどのために、同年8月から年金記録相談の特別強化体制を執っており、19年6月から電話相談の24時間受付、相談窓口の拡大等を実施している。さらに、同年12月から、ねんきん特別便の発送開始に伴い、これに係る年金相談に対応するために、専用相談窓口等を設置するなどして年金相談を実施してきている。
 社会保険庁における年金記録相談等業務には、(ア)社会保険事務所等が主体となって実施している年金記録相談等、(イ)社会保険庁が民間事業者に業務を委託して実施しているコールセンターでの年金記録電話相談等、(ウ)市区町村、社会保険労務士等の協力を得て市区町村の窓口、郵便局、農業協同組合等において実施している年金記録相談等がある。

(ア) 社会保険事務所等が主体となって実施している年金記録相談等

a 年金記録相談等の実施状況

 社会保険庁は、18年8月以降、社会保険事務所等に、一般的な年金相談に関する相談窓口とは別に、年金記録相談専用の相談窓口を設置するなどして年金記録相談等を実施している。この相談業務は、従前、正規職員に加えて、謝金職員2,035人(21年3月現在)に委嘱して実施されている。
 そして、社会保険庁は、19年12月から開始された、ねんきん特別便の発送に伴う相談件数の増加等に対応し、社会保険事務所等の相談窓口に相談者が来訪して行う来訪相談等の拡充を図るために、20年4月から、都道府県にある各社会保険労務士会と業務委託契約を締結して、社会保険事務所等の年金相談窓口等の運営を委託している。運営を委託された各社会保険労務士会では、年金相談窓口等に社会保険労務士を配置して年金記録相談等を実施している。
 社会保険庁によれば、18年度から20年度までの間の全国の社会保険事務所等の年金相談窓口等における年金相談(年金記録に関する相談のほか、年金制度に関する相談等の一般的な年金相談を含む。)の件数は、18年度約1149万件、19年度約1527万件、20年度約1698万件、計約4375万件となっている。このうち、相談者が社会保険事務所等の窓口に来訪して行う「来訪相談」が約3115万件と相談件数全体の71.2%を占めており、社会保険事務所等における「電話相談」が約1139万件、市区町村、商工会議所等に社会保険事務所等の職員等が赴いて臨時に行う「出張相談」等が約91万件、社会保険事務所等が郵送等により相談者からの相談を文書で受付した「文書相談」が約28万件となっている。

b 年金記録の確認状況

(a) 相談窓口における年金記録の確認状況

 会計検査院が、18年8月以降、全国の社会保険事務所等の相談窓口において年金記録の確認を行ったものの状況について検査したところ、図表28のとおり、20年6月までの件数は累計で約1165万件となっていた。

社会保険事務所等の相談窓口における年金記録の確認件数の推移

図表28

 この約1165万件は、社会保険事務所等の相談窓口に設置されているオンラインシステムの端末装置により年金記録を確認したものであり、その確認内容について整理すると図表29のとおりとなる。
 図表29の〔2〕 (ii)相談者が認識していた年金記録が判明しなかったため、「厚生年金保険被保険者加入期間照会申出書」、「国民年金保険料納付記録照会申出書」等(以下、これらを合わせて「照会申出書」という。)により調査の申出を受け付けた約70万件(同6.0%)については、相談者が社会保険事務所等に対して改めて照会申出書を提出して年金記録の照会を申し出ている。この照会申出に対しては、社会保険事務所等は当該年金記録について調査を行い、その調査結果を相談者に回答することとなっている。

相談窓口における年金記録の確認内容(平成18年8月から20年6月までの間の累計)

年金記録の確認内容
件数
割合(%)
記録確認
11,658,125
100.0
 
〔1〕  相談者が認識していた年金記録が基礎年金番号の年金記録にすべて収録されていたもの
9,200,598
78.9
 
〔2〕  相談者が認識していた年金記録が基礎年金番号の年金記録と一致していなかったもの
2,457,527
21.0
 
 
(i) 相談者の手帳番号の年金記録が基礎年金番号の年金記録に収録されていなかったが、相談者本人の記録であることが判明したものなど
1,749,771
15.0
 
 
 
手帳番号と基礎年金番号の氏名等が同一であったもの
1,213,917
10.4
 
 
 
手帳番号の年金記録が旧姓であったもの
356,173
3.0
 
 
 
その他
179,681
1.5
 
 
(ii) 相談者が認識していた年金記録が判明しなかったため、「照会申出書」により調査の申出を受付したもの
707,756
6.0
(注)
 「割合(%)」欄は、小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目の数値を合計してもそれぞれの計欄と一致しない場合がある。

(b) 照会申出書の受付及び処理の状況

 会計検査院は、照会申出書の受付及び処理の状況について検査した。
 検査したところ、18年8月から20年6月までの間に相談者から社会保険事務所等に照会申出書が提出されたものは、社会保険事務所等の相談窓口における記録確認を契機として提出された図表29の〔2〕 (ii)の約70万件のほか、照会申出者がインターネット等により事前に年金記録を確認した後、社会保険事務所等に照会申出書を提出したものなどが約41万件あり、これらを合わせた照会申出書の件数は約112万件となっていた。
 そして、その処理状況について整理すると、図表30のとおりとなる。
 社会保険庁によれば、図表30の(i)及び(ii)において判明した基礎年金番号に収録されていなかった年金記録は、手帳番号の年金記録が判明したものや手帳番号以外の年金記録が判明したものである。このうち、手帳番号以外の年金記録が判明したものの中には、オンラインシステム上には年金記録がなく、社会保険庁や市区町村が保有していたマイクロフィルム、紙台帳等に年金記録があったものがあるとしている。

照会申出書の受付及び処理状況

区分
件数
割合(%)
照会申出書受付
1,122,442
(707,756)
100.0
 
回答済
694,785
61.8
 
 
(i) 相談者から申し出のあった基礎年金番号の年金記録に収録されていなかった記録が判明するなどしたもの
287,575
25.6
 
 
(ii) 相談者から申し出のあった基礎年金番号の年金記録に収録されていなかった記録の一部が判明したもの
28,658
2.5
 
 
(iii) 相談者から申し出のあった年金記録が判明しなかったもの
378,552
33.7
 
処理中
427,657
38.1
注(1)
 本図表に記載している件数は、平成18年度から20年度までの各年度末(20年度については20年6月28日)時点における件数を集計したものである。
注(2)
 「照会申出書受付」欄の()内に記載している数字は、社会保険事務所等の相談窓口での記録確認を契機として照会申出書が提出されたものの件数であり、内数である。
注(3)
 「割合(%)」欄は、小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目の数値を合計してもそれぞれの計欄と一致しない場合がある。


(イ) 民間事業者に業務を委託して行う年金記録電話相談等の実施状況

a 社会保険庁は、年金電話相談業務について、従前は、社会保険業務センターの中央年金相談室(注2) と全国23か所の年金電話相談センター(注3) をネットワークで結び、全国共通の電話番号による「ねんきんダイヤル」を設置するなどして電話相談業務を実施してきた。
 その後、年金記録問題が大きな社会的関心事項になって、19年6月には電話相談件数が大幅に増加したため、上記の「ねんきんダイヤル」による対応のみでは増加する電話相談に直ちに対応することができなくなった。このことなどから、社会保険庁は、19年6月から20年3月までの間、年金記録相談に24時間対応するための「ねんきんあんしんダイヤル」を設置した。
 そして、19年12月から開始されたねんきん特別便の発送に伴い電話相談件数が増加したことなどから、社会保険庁は19年12月から21年3月までの間、ねんきん特別便に係る相談等に対応するための「ねんきん特別便専用ダイヤル」(注4) を上記の「ねんきんダイヤル」及び「ねんきんあんしんダイヤル」とは別に設置するなどして年金記録電話相談等業務を実施している。

b 会計検査院が、「ねんきんダイヤル」、「ねんきんあんしんダイヤル」及び「ねんきん特別便専用ダイヤル」の電話相談の呼数及び設置席数の状況について検査したところ、図表31、図表32及び図表33のとおりとなっていた。

 中央年金相談室  来訪、電話及び文書による年金相談の実施に関する業務、地方社会保険事務局における年金相談に関する事務の指導に関する業務等を行っている。
 年金電話相談センター  平成20年2月から9月までの間に23年金電話相談センターは段階的に廃止されて、東京、福岡及び宮城にそれぞれ設置した3コールセンターに集約化された。
 ねんきん特別便専用ダイヤル  平成21年4月からは、新たに発送が開始された「ねんきん定期便」等に係る電話相談に対応するために、本ダイヤルにおいて使用していた電話番号による「ねんきん定期便専用ダイヤル」が設置された。


「ねんきんダイヤル」の呼数及び設置席数の推移

図表31

(注)
 設置席数は、原則として月初めにおける設置席数である。


「ねんきんあんしんダイヤル」の呼数及び設置席数の推移

図表32

(注)
設置席数は、原則として月初めにおける最大設置席数である。


「ねんきん特別便専用ダイヤル」の呼数及び設置席数の推移

図表33

(注)
設置席数は、原則として月初めにおける設置席数である。


 また、呼数に対する応答数(オペレータが応答した件数)の比率である各ダイヤルの応答率について検査したところ、図表34のとおり、「ねんきんあんしんダイヤル」の平均応答率は93.1%となっていた。これは、オペレータの手元にオンラインシステムの端末装置が設置されていないことから、照会内容に対して、後日、相談者に記録照会回答票を送付する方式を執っているため、1件当たりの相談は比較的短時間で処理が可能であったことなどによるものと考えられる。
 一方、「ねんきんダイヤル」の平均応答率は38.8%、「ねんきん特別便専用ダイヤル」は68.5%となっていた。これは、オンラインシステムの端末装置により記録等を確認しながら回答するなどのため、「ねんきんあんしんダイヤル」と比較すると1件当たりの処理時間が長くなる傾向があり、これが応答率に影響を与えているものと思料される。特に、「ねんきんダイヤル」及び「ねんきん特別便専用ダイヤル」は、図表34のとおり、年金受給者又は被保険者等の年金記録電話相談等の需要に対して十分な対応ができない期間が生じていると認められる。


年金記録電話相談等の応答率の推移

図表34

注(1)
 各ダイヤルの応答率は、各月の日単位の呼数と応答数の比率を平均して算出している。
注(2)
 各ダイヤルの平均応答率は、注(1)における各月の応答率を平均して算出している。


c なお、「ねんきんダイヤル」については、財務省において、21年度に予算執行調査を実施しており、その結果が21年7月に公表されている。
 これによれば、〔1〕 応答率等については、「1月あたり応答呼数は漸増している一方、年金記録問題等の影響で総呼数が大幅に増加していることから、応答率は低迷している。」、〔2〕 平均処理時間については、「応答数に直結する平均処理時間を見ると、通話時間が長くなっていることに加え、特に相談内容の記録等に係る後処理時間が目標数値の倍となっているため、目標時間を大幅に上回っている。」などとされている。


(ウ) 市区町村、社会保険労務士等の協力による年金記録相談等の実施状況

a 市区町村の協力による年金記録相談等

 社会保険庁は、20年2月に、ねんきん特別便等に係る年金相談の対応及び社会保険事務所等への届出代行等の実施について、全国の市区町村に対して協力を要請している。そして、21年3月末現在では、年金相談の対応については1,808市区町村において、また、社会保険事務所等への届出代行等については1,311市区町村において、それぞれ実施されている。
 さらに、社会保険庁は、オンラインシステムの端末装置を用いた年金記録相談等の実施について、全国の市区町村に対して協力を要請している。そして、21年2月現在で協力を得られた196市区町村と地方社会保険事務局との間において個人情報の守秘義務等を規定した契約を締結した上で、当該市区町村に対して端末装置を貸与している。貸与された市区町村においては、これを用いてねんきん特別便等に係る年金相談等を実施している。

b 社会保険労務士等の協力による年金記録相談等

 社会保険庁は、20年3月から、全国の社会保険労務士会の協力を得て全国の市役所、郵便局、農業協同組合等において社会保険労務士等によるねんきん特別便等に係る年金相談等を実施している。これに係る21年3月までの実施回数は延べ4,887回、これに係る相談件数は延べ38,828件となっている。
 また、このほかにも、都道府県にある社会保険労務士会の年金相談センターや社会保険労務士事務所においても年金相談を実施している。この実施のため、社会保険労務士会と地方社会保険事務局との間において個人情報の守秘義務等を規定した契約を締結した上で、社会保険労務士会に対してオンラインシステムの端末装置を貸与している。これに係る21年3月までの相談件数は延べ20,169件となっている。


カ 標準報酬月額等の不適正なそ及訂正処理問題への取組状況

 前記のとおり、20年9月に開催された「年金記録問題に関する関係閣僚会議」において、オンラインシステム上のすべての年金記録から不適正なそ及訂正処理の可能性のある年金記録を抽出して、調査を行うこととされた。
 社会保険庁は、上記の調査を行うに当たり、次の3条件のいずれにも当てはまる年金記録約6万9千件を抽出して、このうち年金受給者に係る約2万件について調査を行った。

〔1〕  標準報酬月額の引下げ処理と同日又は翌日に資格喪失処理が行われている。
〔2〕  そ及して5等級以上標準報酬月額が引き下げられている。
〔3〕  6か月以上そ及して標準報酬月額が引き下げられている。

 約2万件の年金記録については、社会保険庁職員等が、年金受給者本人に対して戸別訪問を行い、同人からの聞き取りによる標準報酬月額等の記録確認調査を行った。社会保険庁は、その調査結果の中間報告を「不適正な遡及訂正処理の可能性のある記録(約6万9千件)のうち年金受給者(約2万件)への戸別訪問の状況について」として20年12月、21年2月、3月、5月及び7月に公表している。
 その概要等は、次のとおりである。

(ア) 21年3月31日までに戸別訪問対象件数22,255件のうち戸別訪問を実施した件数は19,188件で、このうち、年金受給者が年金記録が事実と相違している旨の回答をした件数が10,436件(全体の54.4%)となっている。このような回答者の内訳は、事業主であった者が最も多く5,588件(53.5%)であり、役員であった者2,192件を含めると7,780件(74.5%)と多数を占めている。

(イ) 上記10,436件のうち、記録訂正の意思がある旨を回答したのは4,150件であり、その意思が無い旨を回答した件数4,746件がこれを上回っている。

(ウ) これらの年金記録の訂正についてみると、第三者委員会への申立ての送付が完了している件数は、21年7月31日現在で2,853件となっていて、その内訳は事業主又は役員であった者に係る事案が1,962件、従業員であった者に係る事案が891件となっている。
 このほか、社会保険庁は、戸別訪問対象者等の迅速な救済を図るために、対象者が役員(事業主を含む。)以外である場合など一定の基準に該当する事案については、第三者委員会への申立ての送付を行わず社会保険事務所等において年金記録の訂正を行っており、その件数は21年7月31日現在で444件となっている。

(エ) 社会保険事務所の職員がそ及訂正処理に関与した疑いがある旨の回答をした件数は、21年7月現在で1,335件(全体の7.0%)であり、そのうち211件について、職員が特定できるなど具体性のある内容の回答がなされている。

 また、社会保険庁は、標準報酬月額の不適正なそ及訂正処理への職員の関与について事実解明を図るとして年金記録問題作業委員会等を設置するなどして調査を行っている。
 その結果、21年7月に、20年9月公表の調査結果において標準報酬月額の不適正なそ及訂正処理に関与したとされた職員については、追加調査の結果が「事業主の具体的な証言がある事案の追加調査の結果について」に公表された。これによれば、当該職員が関与した不適正なそ及訂正事案が既に公表されている1件のほか、4件確認されたとしている。当該職員は、不適正な処理を行った理由・背景について「〔1〕 事業主との滞納保険料の納付協議の中で、差押えをされると倒産してしまうので、何とかならないかと事業主から懇願されたこともあったこと、〔2〕 担当する保険料滞納事業所の数を減らしたかったこと、〔3〕 具体的には承知していないが、他の職員も同様の取扱いがあったのではないかと思う」としている。
 さらに、21年9月に、上記職員以外の職員の関与の状況について、前記の211件及びそ及訂正処理が行われた被保険者が4人以上で、かつ全喪後に再加入をしている事案等から選定した128件、計339件を対象とした調査を行った結果が「社会保険庁職員の関与状況等についての報告」等に公表された。これによれば、職員2名が関与した不適正なそ及訂正事案が21件確認されたとしている。これらの職員は、不適正な処理を行った理由として、それぞれ「長期・多額の滞納保険料が発生していたこと、倒産により今後収納の見込みがなかったこと」、「差押え等による倒産を避け、事業回復のチャンスを与えるため」であったことなどを挙げている。
 今後、上記1,335件から調査済みの事案を除いた残りの事案について、職員による書面調査等を実施することとしている。


(3) 年金記録の基礎年金番号への統合等の状況

ア 年金記録の基礎年金番号への統合及び記録の訂正・回復状況

(ア) オンラインシステム上の約5095万件の未統合記録

 社会保険庁がこれまでに公表したオンラインシステム上の未統合年金記録約5095万件の内訳及びその統合状況の推移について、会計検査院が整理すると、図表35のとおりとなる。


未統合年金記録(約5095万件)の内訳及び統合状況の推移(推計)

図表35

 社会保険庁は、約5095万件の年金記録については、社会保険事務所等における年金記録相談の実施、ねんきん特別便の発送等により、18年6月から21年3月までの間に、約1010万件の記録について基礎年金番号へ統合を終えたとしている。
 約5095万件のうち、名寄せにより基礎年金番号の記録に結び付く可能性があるとしてねんきん特別便を発送したものは約1172万件である。このうち、統合できた記録は前記のとおり約398万件であり、依然として約774万件が統合できないまま残っている状況である。
 そして、約5095万件の年金記録のうちには、上記の統合を終えた約1010万件のほか、死亡が判明した者等の記録が約1616万件、解明作業が進展中の記録が約533万件ある。
 しかし、その一方で、今後解明を進める年金記録は依然として約1162万件存在している。これらの年金記録について、社会保険庁は、ねんきん特別便に対する回答票に基づく旧姓情報と未統合記録との突合せ等により未統合記録の持ち主であると思われる者に対して照会を行うなどの各種解明作業を行い、それでもなお本人の特定ができない年金記録については、最終的にはインターネット上での公示等により解明・統合を進めることを検討することとしている。
 また、これらの作業と平行して、前記のとおり、22年4月から年金情報総合管理・照合システムによる紙台帳の記録とオンラインシステム上の記録との突合せを実施することとしている。

(イ) オンラインシステム上に存在していなかった年金記録

 前記のとおり、年金受給者又は被保険者等本人からの保険料を納付した旨の申立てにより、保険料の納付の記録がオンラインシステム上に収録されていないものの存在が明らかになっている。

a 年金受給者又は被保険者本等人が保有していた領収書等に基づき、国民年金に係る年金記録が訂正・回復されたもの

 社会保険庁によれば、オンラインシステム上には保険料の納付記録が存在していないが、社会保険庁や市区町村が保有する年金記録に納付記録が存在していたり、年金受給者又は被保険者等が保有していた領収書、年金手帳等の資料に納付記録が存在していたりしたことにより、国民年金に係る年金記録の訂正・回復がなされた件数は、18年8月から20年9月までの間に、計13,824件あった としている。
 このうち、社会保険庁及び市区町村には全く年金記録が存在せず、年金受給者又は被保険者等が保有していた領収書、年金手帳等にのみ納付記録が存在していて、当該資料に基づき国民年金に係る年金記録の訂正・回復がなされたものの件数は20年9月までに5,673件となっている。そして、5,673件の内訳をみると、既に年金の裁定を終えた者に係るものが3,441件と過半数を占めている。
 社会保険庁は、上記の5,673件の記録に係る訂正月数、保険料の領収場所等は、次のとおりであるとしている。

〔1〕  訂正月数
最短1か月、最長102か月
〔2〕  年金受給権の裁定状況
裁定済3,441件、未裁定2,232件
〔3〕  領収場所(注5)
市区町村3,869件、金融機関1,548件、郵便局665件、社会保険事務所90件、不明85件
〔4〕  保有資料(注5)
領収書3,382件、年金手帳2,716件、領収済証明書159件

 件数は一部重複しているため、計は5,673件と一致しない。

 そして、社会保険庁は、上記の5,673件のうちの987件について、オンラインシステム上に納付記録が存在していなかった事由を、次の三つに区分している。

(i)
 市区町村に保険料を納付したにもかかわらず、保険料納付に係る期間が誤って未加入期間等とされていたと考えられるもの
 
 
183件
(ii)
 市区町村に保険料を納付したにもかかわらず、国民年金手帳の印紙検認台紙が切り離されず、印紙検認台紙が社会保険事務所等に送付されなかったと考えられるもの
 
 
685件
(iii)
 保険料を納付したにもかかわらず、納付書の記号番号が、被保険者の国民年金手帳の記号番号と異なっていたため、被保険者台帳に納付記録が記載されなかったと考えられるもの
 
 
119件

 残りの4,686件について、社会保険庁は、原因は不明であるとしている。
 検証委員会報告書によれば、「支払ったはずの保険料の記録が社会保険庁の側にないという問題の原因については、事務処理ミスの可能性のほか、横領等が原因の一つになっている可能性も否定することはできないものと考える。ただし、委員会の調査においては、平成18年8月21日から19年3月末までに、社会保険庁及び市区町村が保有する資料に納付記録がなく、被保険者が保有する資料に基づき社会保険庁が国民年金の被保険者記録を訂正した事案(235件)、及び年金記録確認中央第三者委員会が19年9月18日までに年金記録の訂正に関するあっせん案を決定した事案(64件)については、横領等が原因であると確認するに至ったものはなかった。」とされている。


b 総務大臣のあっせんにより、厚生年金保険等に係る年金記録が訂正・回復されたもの

 厚生年金保険に係る年金記録の訂正・回復については、保険料の納付の記録がオンラインシステム上に収録されておらず、被保険者等が給与明細書等しか保有していない場合には、従来は、被保険者資格の取得、喪失、保険料の納付等の事実の確認は困難であるとして、社会保険事務所等の窓口での記録の訂正・回復は認められていなかった。また、国民年金に係る年金記録であっても、被保険者等が領収書、年金手帳等の資料を保有しない場合については、これと同様に記録の訂正・回復は認められていなかった。
 そこで、19年6月に総務省に設置された第三者委員会は、社会保険庁が管理する年金記録に納付記録がなく、年金受給者又は被保険者自身においても領収書等の物的証拠を保有していないような事例について、国民の立場に立って、申立てを十分に酌み取り、様々な関連資料を検討し、年金記録の訂正に関し公正な判断を示すこととされている。そして、同委員会は、年金記録の申立内容の調査・検討、年金記録の訂正に関する判断及び総務大臣が社会保険庁に対して行うあっせん案の作成等を行うこととされている。
 被保険者等は、社会保険事務所等において自己の年金記録を確認したところ、その回答において年金記録が不存在であるとされ、これに対して異議がある場合、第三者委員会に確認申立てを行うこととなる。確認申立ての受付は社会保険事務所等で行われており、同委員会は、社会保険事務所等から送付された申立内容について調査審議を行い、年金記録の訂正を要する場合はあっせん案を作成する。これを踏まえ、総務大臣が社会保険庁長官に対して年金記録の訂正に関するあっせんを行い、社会保険庁は、その決定を尊重し、記録の訂正を行うこととされている。
 21年6月までの厚生年金保険に係るあっせんに対する記録訂正等の状況を整理すると、図表36のとおりとなる。21年6月現在、厚生年金保険に係るあっせん件数11,207件に対して、社会保険庁が総務省に対して訂正が完了したと報告した件数は4,337件となっている。

厚生年金保険に係るあっせんに対する記録訂正等の状況(累計)

図表36

(注)
 「社会保険庁における訂正件数」は、社会保険事務所等において記録が訂正された件数のうち、社会保険庁長官から総務大臣への報告が完了している件数であって、記録訂正済の件数ではない。

(ウ) 年金記録相談により判明した年金記録について、その基礎年金番号への統合等の処理が行われていなかったため、本来給付されるべきであった年金額が適正に支給されないなどしているもの

a 年金記録の基礎年金番号への統合等に係る処理の概要

(a) 基礎年金番号に統合されていない年金記録に係る処理

 前記のとおり、基礎年金番号を導入するに当たり、社会保険庁は、8年10月に、その実施に係る事務の取扱いを定めた通知(以下「基礎年金番号通知」という。)を発している。この通知によれば、基礎年金番号を有している者について基礎年金番号以外の手帳番号が判明した場合は、当該手帳番号をオンラインシステムの端末装置(以下「端末装置」という。)により、基礎年金番号に統合することとされている。

(b) 年金記録相談の特別強化体制の実施方法等に係る通知の発出

 社会保険庁は、年金記録に対する年金受給者又は被保険者等の不安や疑問に積極的に対応することなどのために、18年8月から年金記録相談の特別強化体制を執っている。この特別強化体制を執るに当たり、同月に各地方社会保険事務局に対して、年金記録相談の実施方法等に係る通知(以下「年金記録相談通知」という。)を発するなどしている。

(c) 年金記録の照会があった場合の事務処理

 年金記録相談通知においては、社会保険事務所等の年金記録相談で、年金受給者又は被保険者等から厚生年金保険に係る年金記録の照会があった場合、その事務処理方法をおおむね次のとおりとするとされている。

(i) 年金受給者又は被保険者等から照会のあった年金記録が端末装置により確認できた場合

 年金受給者又は被保険者等から照会のあった年金記録が端末装置により確認できた場合は、社会保険事務所等は、年金受給者又は被保険者等に手帳番号の年金記録の基礎年金番号への統合等に係る届出を提出してもらい、照会のあった年金記録に係る手帳番号を端末装置により基礎年金番号に統合するとともに、統合の結果を年金受給者又は被保険者等に文書で回答する。

(ii) 年金受給者又は被保険者等から照会のあった年金記録が端末装置により確認できなかった場合

〔1〕  年金受給者又は被保険者等から照会のあった年金記録が端末装置により確認することができなかった場合は、社会保険事務所等は、年金受給者又は被保険者等から照会申出書を提出してもらう。
 この照会申出書には、年金記録相談通知により、年金受給者又は被保険者等が記入する氏名、生年月日、住所、基礎年金番号、職歴等に係る様式が定められている。そして、氏名変更(訂正)、生年月日訂正及び手帳番号の年金記録の基礎年金番号への統合が必要である場合はこの申出によって当該変更、訂正又は統合の処理が行われるようにするための届出欄が設けられている。そして、社会保険事務所等は、年金記録相談の際に、照会申出書の当該届出欄に年金受給者又は被保険者等の署名、押印を求めて、これにより年金受給者又は被保険者等から当該変更、訂正又は統合の処理に係る届出をあらかじめ受けておくこととされている。
 このように、照会申出書に氏名変更(訂正)及び生年月日訂正に係る届出欄が設けられているのは、年金記録相談において判明した手帳番号の年金記録について、年金受給者又は被保険者等に社会保険事務所等への再度の来訪等を求めてこれらの届出書を提出してもらうことなく、基礎年金番号通知に基づく統合の処理を速やかに行うためのものであるとされている。
 また、基礎年金番号以外の手帳番号の年金記録が判明して、当該年金記録の氏名、生年月日等が基礎年金番号のそれと一致した場合には、年金受給者又は被保険者等からの届出を受けることなく社会保険事務所等において基礎年金番号通知に基づく統合の処理を行うこととされているが、当該届出欄を設けたのは、社会保険庁は、年金受給者又は被保険者等の意思を念のために確認するためであるとしている。
〔2〕  社会保険事務所等は、年金受給者又は被保険者等から照会申出書が提出された場合は、これに基づき当該記録の調査を行う。調査の結果、年金受給者又は被保険者等が基礎年金番号と手帳番号の両方を保有していることが判明した場合には、社会保険事務所等は、手帳番号の年金記録を基礎年金番号へ統合するなどして、その結果を年金受給者又は被保険者等に文書で回答する。

b 年金記録相談により判明した年金記録が基礎年金番号に統合されていなかった事態

 会計検査院は、合規性等の観点から、年金記録の基礎年金番号への統合等の事務処理が適切に行われているかなどに着眼して、20年2月から21年7月までの間に会計実地検査を行った。
 検査したところ、7社会保険事務局管内の社会保険事務所等において、前記の特別強化体制が執られた後に年金記録照会の申出を受けて、21年6月又は7月の会計実地検査時までに年金受給者又は被保険者等に対して回答したものの中に、厚生年金保険の手帳番号の年金記録が基礎年金番号に統合されていない次の事態等が見受けられた。

(a) 氏名変更等の届出欄の無い様式の申出書を使用していて、年金受給者又は被保険者等から氏名変更等に係る届出が別途提出されていなかったなどのもの
(b) 手帳番号の年金記録の基礎年金番号への統合には年金受給者又は被保険者等の届出は必要ないのに、これを求めていたもの

 前記の社会保険事務所等においては、
(a) 年金受給者又は被保険者等から氏名変更(訂正)又は生年月日訂正の届出が無い場合には、これを提出するよう勧奨したり、
(b) 年金受給者又は被保険者等からの届出が無くとも手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合するための処理を行ったり
などすることにより、判明した手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合する必要があった。

 前記の手帳番号の年金記録のうち、年金給付額又は年金給付見込額に変動が生ずる者に係る年金記録の内訳は、次のとおりである。

〔1〕  年金受給者のうち再裁定を受けた者に係る手帳番号の年金記録

 これは、20年2月から同年6月までの間の会計実地検査において見受けられた事態のうち、21年6月の会計実地検査時までに手帳番号の年金記録が基礎年金番号に統合されたことにより、その後に年金の再裁定(当初の年金支給開始の際に行った裁定の変更をいう。以下同じ。)が行われて、年金給付額が増額となったものである。
 これらについては、当該年金受給者に係る老齢厚生年金等の年金給付額が記録統合前の年金給付額と比べて増額されて、さらに、老齢厚生年金等がそ及して支給された。

〔2〕  新規に年金の裁定を受けた年金受給者に係る手帳番号の年金記録

 これは、20年2月から同年6月までの間の会計実地検査において見受けられた事態のうち、21年6月の会計実地検査時までに手帳番号の年金記録が基礎年金番号に統合されて、その後、新規に年金の裁定が行われたものである。
 これらについては、当該年金受給者に係る老齢厚生年金等の年金給付額が記録統合前の年金給付見込額と比べて増額となった。

〔3〕  年金受給者のうち再裁定の手続が処理中の者等に係る手帳番号の年金記録

 これは、基礎年金番号に統合した場合の年金給付見込額を試算したところ、現在受給している老齢厚生年金等の年金給付額が増加すると見込まれるものがあると認められたものである。

〔4〕  上記〔1〕 から〔3〕 の年金受給者を除く被保険者等に係る手帳番号の年金記録

 これは、基礎年金番号に統合した場合の年金給付見込額(注6) を試算したところ、将来受給する可能性のある老齢厚生年金等の年金給付見込額が増加すると見込まれるものがあると認められたものである。

 このような事態が生じていたのは、前記の社会保険事務所等において、氏名変更(訂正)及び生年月日訂正に係る届出書を提出するよう年金受給者又は被保険者等に勧奨することや、年金受給者又は被保険者等に係る手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合することなどについての認識が十分でなかったり、前記7地方社会保険事務局において、上記の各社会保険事務所等に対する指導等が十分でなかったりしたことなどによると認められる。

 年金給付見込額  50歳以上の被保険者について現に加入している制度の被保険者記録を受給権発生日又は60歳のいずれか早く到来する時点まで延長した場合等の額であり、平成21年度における年金額の増加見込額である。この額は、必ずしも将来における実際の年金支給額となるものではない。


イ 再裁定等の実施状況

 年金受給者について未統合の年金記録のあることが新たに判明した場合は、社会保険事務所等が年金記録を基礎年金番号に統合する処理を行った後に、「再裁定」を行う必要がある。
 再裁定は、新規裁定と異なり、社会保険事務所等においてではなく社会保険業務センターにおいて処理を行うこととされている。このため、〔1〕 社会保険事務所等は、年金受給者に「年金再裁定申出書」の提出を求めた上で、社会保険業務センターへ再裁定の進達を行っている。〔2〕 この進達を受けた社会保険業務センターは、上記の統合処理が行われた年金記録に基いて再裁定の事務処理を行っている。
〔1〕  社会保険事務所等における再裁定の申出受付から社会保険業務センターへ進達するまでに要している期間は、21年5月末現在、全国平均で約1.4か月である。そして、同月末時点において、社会保険業務センターに再裁定の進達が行われていないものが約5.1万件あり、このうちの約0.7万件は再裁定の申出受付から6か月以上の期間が経過しているものである。
〔2〕  再裁定の進達を受けた社会保険業務センターにおいても、再裁定進達件数の増加や「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律」(平成19年法律第111号。以下「時効特例法」という。)に基づく事務処理の増加等により業務量が増大したことなどから、再裁定の事務処理には約6か月の期間を要している状況となっている。
 これらのことから、社会保険事務所等における再裁定の申出受付から社会保険業務センターにおいて再裁定の処理が完結して、年金が支給されるまでに、約7.4か月の期間を要している状況となっている。
 20年1月から21年4月までの間に、社会保険業務センターにおいて各社会保険事務所等から進達を受け付けたものは累計で約158.2万件、このうち事務処理を完了したものは約100万件となっている。また、図表37のとおり、未処理件数は21年1月末の約82.8万件をピークとして、その後は減少に転じ、21年4月には約61.7万件となってはいるものの、20年1月の約3.8万件と比べ16倍以上に増加していて再裁定の事務処理は大幅に遅延している状況である。


社会保険業務センターにおける再裁定処理の状況

図表37

 社会保険庁は、事務処理の大幅な遅延を受け、再裁定処理の迅速化のために、地方社会保険事務局の職員を社会保険業務センターへ配置したり、派遣社員を増員したりして、再裁定処理に従事する人員を20年1月の38人から20年10月には203人(約434%増)に、21年2月には466人(約1,126%増)に大幅に増員している。そして、21年5月の人員数は483人であり、その内訳は、常勤職員55人、支援職員275人、任期付職員15人、非常勤職員8人及び派遣社員130人となっている。
 しかし、社会保険業務センターにおける再裁定処理には、複数の年金制度が適用される場合に併給調整を行う必要があるなどの複雑な事務処理に対応できる知識が必要であり、人員の増加が直ちに処理件数の増加につながらない面もある。そこで、社会保険庁は、常勤職員、派遣社員等の職員の種別ごとに、処理の難易度に応じて再裁定事案を振り分けることにより事務処理を行っているほか、入力処理の自動化を行って1件当たりの処理時間を短縮するなどのために、再裁定に係るシステム機能の強化を20年4月以降、随時行ったとしており、今後も22年1月まで同システムの改善を図るとしている。
 その結果、図表37のとおり、20年10月以降、社会保険業務センターにおける1か月当たりの処理件数は5万件を超え、21年3月以降は19万件まで増加している。社会保険庁は、1か月当たりの受付件数を10万件から12万件と見込み、500人程度の人員 配置及び再裁定処理システム機能の更なる強化により1か月当たり19万件から20万件の事務処理体制を維持することとした。
 また、社会保険庁は、21年3月時点において、再裁定案件の約8割程度が時効特例法の対象となる案件であると見込んでおり、時効特例法に基づきそ及して支払われる年金の給付については、通常の再裁定から更に3か月程度を要しているとしている。再裁定処理の進ちょくに伴い、時効特例法の対象案件も増加している。そこで、それまで20名程度であった当該事務処理に従事する職員は、同年4月から常勤職員を中心に50人程度に増員されている。


ウ 年金受給者等に対する特例的救済施策とその実施状況

 年金記録問題の発生以降、年金受給者等の有する資料や総務大臣からのあっせんなどにより、多数の年金記録が訂正・回復されている。
 しかし、訂正・回復後の年金記録に基づく年金給付については、
(ア) 消滅時効により5年を超える期間について請求権を行使できない事態や、
(イ) 事業主が被保険者の給与から厚生年金保険の保険料を控除しているにもかかわらず、事業主が加入手続を適切に行っていなかったなどのため、保険料を2年間しかそ及して納付できなかったり、保険料の控除に見合った給付を受けられなかったりする事態

が、多数発生している。
 国は、このような事態に直面した年金受給者等を特例的に救済することとして、(ア)「時効特例法」及び(イ)「厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律」(平成19年法律第131号。以下「厚年特例法」という。)を制定するなど、関係法令の整備等を行っている。
 会計検査院は、時効特例法、厚年特例法等が、
(ア) 法的な権利義務の安定性の見地から定められる請求権の消滅時効による枠を取り払い、加入当初までそ及し得ることとしたり、
(イ) 事業主の不適正な年金手続に対して国が救済することとしたり
するという特例的な措置であることにかんがみ、その適用の状況及び運用の適切性等に着眼して検査を実施した。

(ア) 時効特例法による権利の回復状況について

a 厚生年金保険、国民年金等の年金記録が訂正されて年金給付額が増額しても、従前は消滅時効により5年を超える期間の請求権は行使できず、直近の5年分の年金増額分のみが支給の対象とされていた。
 しかし、年金記録の管理に対する国民の信頼を確保するために、前記のとおり時効特例法が制定されて19年7月から施行された。これにより、裁定請求の失念など年金受給者本人の過失による場合などを除き、年金記録の訂正・回復がなされた上で裁定等が行われた場合に、5年を超える期間を含めて全期間そ及して全額又は増額分の年金が支払われることとなった。なお、年金記録の訂正・回復により年金給付額が減額される場合もあるが、この場合は5年を超えてそ及することはないとされている。

b 時効特例法に基づく従前の時効消滅分に係る支給決定について、同法が施行された19年7月から21年4月までの間の状況をみると、図表38のとおりとなっている。
 同法施行当初の19年8月の支給決定の件数は995件、決定金額は9億9108万余円であったが、同年12月には5,026件、44億7372万余円と件数で約5倍、金額では4.5倍以上と大幅に増加している。そして、その後も件数及び金額は増加傾向にあり、21年4月までの累計では、件数で549,536件、金額で2938億2281万余円となっている。
 時効特例法の対象は、年金記録の訂正により新たに基礎年金番号に統合されるなどした過去の年金記録に係るものである。未統合の年金記録約5095万件の解明作業の進ちょくに伴い、基礎年金番号に統合すべき年金記録が判明するなどした結果、前記の図表37のとおり、20年1月に約1.9万件であった社会保険業務センターへの再裁定の進達件数はその後増加し、同年同月から21年4月までの間の累計が約158.2万件に上っている。社会保険庁は、前記のとおり、これらのうち8割程度が時効特例法の対象になると見込んでおり、上記の支給決定の件数及び金額は更に増加すると考えられる。


時効特例法に係る支給決定件数及び金額の推移(平成21年4月まで)

図表38

c 同法に基づく支給対象者についてみると、21年4月現在において、図表39のとおり、支給決定時の年齢が70歳以上の者の割合が全体の81.6%を占めていて、本来の受給開始時期から相当期間経過するまでの間受給できなかった者が非常に多くなっている。これらの者の平均年齢は74歳であり、最高年齢は106歳となっている。
 また、支給対象期間では平均90月、最長552月となっていて、時効特例法に基づき、これらの期間の年金記録が訂正・回復されて、支給に結び付いた状況がうかがえる。
 1人当たりの支給決定金額をみると、50万円未満の者が71.3%と過半を占めるものの、1000万円以上支給されている例も見受けられる。これらの平均は51万円、最低は13円、最高は2823万円となっている。

支給対象者等の年齢及び1人当たりの支給決定金額分布

図表39

(注)
 年齢分布については支給決定時に既に死亡している者を除いているため、人数を合計しても支給決定数の合計とは一致しない。

d 上記のとおり、時効特例法により、そ及して年金が給付された者の中には、極めて長期間の年金記録が訂正・回復されたことにより受給資格の期間要件を満たし新規に裁定がなされて受給できることとなった者も多く、このような場合には支給決定金額も多額となることが想定される。
 これらのうち上位5名については、図表40のとおり、いずれも厚生年金保険に係るものであり、年金記録の訂正・回復がなされたことにより、新たに受給資格の期間要件を満たすこととなり、そのすべてが新規に裁定を受けた事案である。


時効特例法による年金支給額上位5事例

番号
性別
年齢
支給対象期間
支給決定金額
対象制度
新規裁定・再裁定の区分
1
男性
96
昭和47年1月〜
平成14年5月
2823万円
厚生年金保険
新規裁定
2
男性
85
昭和57年10月〜
平成7年1月
2750万円
厚生年金保険
新規裁定
3
男性
87
昭和55年5月〜
平成14年3月
2736万円
厚生年金保険
新規裁定
4
女性
96
昭和44年12月〜
平成11年7月
2701万円
厚生年金保険
新規裁定
5
男性
87
昭和52年12月〜
平成15年5月
2676万円
厚生年金保険
新規裁定
注(1)
 時効特例法施行日(平成19年7月6日)以降、21年4月までの状況である。
注(2)
 「支給対象期間」は、時効特例法に基づきそ及して支払われる年金の支給対象となった期間である。


 上記について、事例を示すと次のとおりである。

時効特例法に基づき、そ及して年金の給付を受けたもの

 無年金者H(大正11年生まれ、男性)は、厚生年金保険の被保険者期間(注)が178月のみであるとされていたため、年金の受給権がなく、公的年金制度から年金を受給していなかった。
 しかし、平成20年7月に社会保険事務所に対して被保険者期間について照会したところ、上記の178月のほかに新たに厚生年金保険の被保険者期間72月が判明した。これにより、同人の年金記録が統合されて計250月となり被保険者期間が240月(20年)以上となったことから受給権が発生することとなった。
 この結果、21年1月に、時効特例法に基づく給付金2676万円の支払が決定されて、21年2月に同額の支払が行われている。
(注)大正15年4月1日以前生まれの者は、厚生年金保険については被保険者期間240月(20年)以上で老齢年金の受給権を得る。


(イ) 厚年特例法の運用状況について

a 従前の厚生年金保険制度においては、事業主が被保険者の負担すべき厚生年金保険料を被保険者の給与から控除していても、当該被保険者に係る被保険者資格取得の届出を行わなかったり、事実と異なる喪失の届出を行ったりするなどして事業主が当該保険料を納付していない事案では、当該被保険者に係る保険料の納付があったとはみなされず、これに係る保険料の未納付期間については年金額に反映されないこととなっていた。これを回復するためには、事業主からの適正な届出及び保険料の徴収が必要となるが、保険料の徴収権が消滅時効となる2年を経過した場合、これを超える期間に係る保険料の徴収ができなくなり、2年を超える期間に相当する分の保険給付ができないこととなる。
 そこで、第三者委員会の調査審議の結果、事業主が被保険者の負担すべき保険料を給与から控除していたにもかかわらず、納付義務を履行していないことが明らかであるなどとされた場合には、年金記録が訂正・回復されるとともに、保険給付を受けられるよう、厚年特例法が制定されて、19年12月から施行された。これにより、事業主及び当該法人の役員であった者(以下「特例法対象事業主等」という。)は消滅時効後であっても、2年を超えて全期間そ及して特例納付保険料として未納保険料相当額等を納付(以下、厚年特例法に基づく未納保険料相当額等を「特例納付保険料」という。)することができることとなった。
 社会保険庁長官は、特例法対象事業主等に対し特例納付保険料の納付について勧奨を行うが、当該事業主等が納付の申出を行わない場合又は期限までに納付を行わない場合は当該事業主等名を公表する(ただし、事業主が保険料を納付したか否かが明らかでない場合を除く。)こととされている。そして、公表してもなお保険料が納付されないなどして、国が保険料相当額を負担した場合には、当該負担額の限度において、特例法対象者が当該事業主に対して有する請求権を取得することとされている。

b 会計検査院が、第三者委員会の設立された19年6月から21年3月までに年金記録の訂正のあっせんが行われたものについての21年5月時点の厚年特例法の施行状況について検査したところ、図表41のとおり、厚生年金保険に係るあっせん事案9,035件のうち、厚年特例法に係るあっせん件数は7,596件となっていた。
 なお、社会保険庁によれば、20年9月までの厚年特例法に係るあっせん件数3,507件に係る特例法対象者のうち、1,484人が年金受給者であるとしている。

図表41 厚年特例法に係る年金記録の訂正のあっせん件数
(単位:件)
項目
合計
厚生年金保険に係る年金記録の訂正のあっせん件数
9,035
上記のうち厚年特例法に係る年金記録の訂正のあっせん件数
7,596
 
〔1〕 事業主が保険料を納付する義務を履行しなかったと認められる事案の件数
6,419
 
〔2〕 事業主が保険料を納付する義務を履行したかどうか明らかでないと認められる事案の件数
1,274
(注)
 一つのあっせんが、〔1〕 、〔2〕 の両事案に該当すると認められるものがあるため、合計と一致しない。

c 特例納付保険料の額は、図表42のとおり、21年5月現在で5億5625万余円となっていて、このうちの45.6%に当たる2億5410万余円が既に納付されている。
 一方、21年5月までの間において、納付が行われていないものは、納付期限が未到来及び未勧奨のものを含め、件数で4,413件、金額で3億0214万余円となっている。このうち、特例法対象事業主等が所在不明、又は、特例納付保険料の納付の申出を行わなかったことにより事業主等名が公表された事案は、件数で19件、金額で1431万余円発生している。


図表42 特例納付保険料額等の推移
(単位:件、円)
項目
平成19年6月〜20年3月
20年4月〜9月
20年10月〜21年3月
合計
件数
特例納付保険料額
件数
特例納付保険料額
件数
特例納付保険料額
件数
特例納付保険料額
厚年特例法に係る年金記録の訂正のあっせんが行われたもの
310
22,676,127
3,194
306,100,831
4,092
227,476,356
7,596
556,253,314
 
〔1〕 納付が行われたもの
225
10,184,390
(44.9%)
2,522
209,984,918
(68.5%)
554
33,940,433
(14.9%)
3,301
254,109,741
(45.6%)
 
〔2〕 納付が行われていないもの(未勧奨を含む。)
103
12,491,737
(55.0%)
772
96,115,913
(31.4%)
3,538
193,535,923
(85.0%)
4,413
302,143,573
(54.3%)
 
〔2〕 のうち事業主等名が公表されたもの
4
1,613,835
15
12,704,847
0
0
19
14,318,682
注(1)
 一つのあっせんが、〔1〕 、〔2〕 の両態様に該当すると認められるものがあるため態様別の合計はあっせん件数と一致しない。
注(2)
 平成19年6月から21年3月までにあっせんが行われたものについての21年5月時点の計数である。
注(3)
 ()内の割合は小数点第2位以下を切り捨てているため、各数値の合計は100%とならない。


 事業主等名が公表された事案の主な事例を示すと、次のとおりである。

納付勧奨を実施し、かつ公表を行ったが納付の申出が行われていないもの

 社会保険庁は、事業主Iが、元従業員であるJに係る昭和60年2月から平成6年10月(昭和61年11月、平成2年4月及び3年5月を除く。)までの厚生年金保険料を給与から控除しているにもかかわらず、その一部を納付する義務を履行していないと認められるなどとする総務大臣からのあっせんに基づき、20年4月、同人の年金記録を訂正した。
 そして、事業主Iに対し、当該期間に係る特例納付保険料等1,583,226円について、20年4月に納付勧奨を行った。
 これに対し、事業主Iは、納付期限である20年10月までにこれを納付する旨を回答せず、21年1月に事業主名が公表されたが、21年8月現在、納付の申出は行われていない。

 公表された19件を含めて、今後、文書及び電話による納付勧奨、事業主等名の公表を行うなどしても納付が行われないなどの場合には、前記のとおり当該特例納付保険料に相当する額を国が負担することとなる。
 したがって、勧奨後も特例法対象事業主等から納付の申出が行われていなかったり申出を行ったものの納付がなされなかったりすることなどについて、今後の推移を注視する必要がある。また、今後、同様の事案が発生することを防止するために、事業主等に対する制度の趣旨についての啓発活動や、被保険者等が自分の年金記録を容易に確認できるための方策を執ることが望まれる。
 なお、社会保険庁は、日本年金機構の成立(22年1月1日予定)後におけるこれらの債権管理等についての具体的な方法については、現在検討中であるとしている。


(ウ) 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律の制定について

 年金記録問題の重大性及び緊急性にかんがみ、かつ、公的年金制度に対する国民の信頼を速やかに回復するために、「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律」(平成21年法律第37号)が、議員立法により制定された。この法律は、21年5月1日に公布され、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされた。
 この法律においては、年金記録の訂正がなされた上で受給権に係る裁定(再裁定を含む。)が行われた場合において、時効特例法の適用などにより本来の支給日より大幅に遅れて支払われる年金給付の額について、その現在価値に見合う額となるようにするため、本来の支払日から実際の支払日までの間の物価の状況を勘案して政令で定めるところにより算定した額(特別加算金)を支給することとし、特別加算金は年金特別会計から支出するとされている。
 なお、この法律の施行に要する経費は、同法案に添付された法律施行に関し必要とする経費を明らかにした文書によれば、「年金特別会計基礎年金勘定、国民年金勘定及び厚生年金勘定において、合計で初年度約五百四十五億円の支出増が見込まれる。」とされている。


(4) 決算検査報告掲記事項のうち年金記録の正確性に係るもの

 会計検査院が過去に決算検査報告に掲記した事項のうち、年金記録の正確性に影響のあるものに係る概要及びその処置状況は、次のとおりである。

(平成12年度決算検査報告)

 健康保険又は厚生年金保険が適用される事業所は、事業主等の意思にかかわらず健康保険又は厚生年金保険に加入し、その適用を受けなければならないこととなっている。
 社会保険事務所等は、適用事業所が解散したり休業したりするなどして、その従業員全員が使用されなくなって被保険者全員の資格が喪失した場合には、当該事業所の事業主に対して、被保険者全員の資格喪失届に健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届(以下「全喪届」という。)を添付して提出させることにしている。全喪届は、法令等の規定に基づいて事業主に提出させるものではないが、事業主から被保険者全員の資格喪失届と全喪届が提出された場合には、その事業所に係る全喪処理を行うことにしている。この全喪処理によりその事業所は適用事業所から除外されて、健康保険又は厚生年金保険の適用を受けないことになる。
 そこで、主として休業を理由とした健康保険又は厚生年金保険の適用事業所の全喪処理が適正に行われているかについて検査したところ、全喪処理後も引き続き事業を継続していたり、全喪処理後に短期間で事業を再開していたりしているのに、健康保険又は厚生年金保険の適用を受けていない事態が見受けられた。
 このような事態が生じているのは、事業主が誠実でなく保険料の負担を避けるなどのため全喪届を提出していたこと及び社会保険事務所等における事業主に対しての指導等が十分でなかったことにもよるが、なお次のようなことによると認められた。

(ア) 全喪届は全喪処理を行うための重要な届書であるのに法令等で規定されておらず、全喪届の記載内容やこれを確認するための添付資料が明確に示されていないため、社会保険事務所等において、全喪届を提出した事業所の事業実態を的確に把握することができないこと
(イ) 全喪届の記載内容について、社会保険事務所等が行う調査確認方法などが具体的に定められていないこと
 したがって、適用事業所の全喪処理について、その適正化が図られるよう、次のとおり、社会保険庁長官に対して13年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

(ア) 全喪届について法令等で規定してその記載内容を明確に示し、また、事業所が休業等に至った事由などを確認するための資料を添付させることにより、社会保険事務所等において、全喪届を提出した事業所に事業実態を的確に把握することができるようにすること
(イ) 全喪届の記載内容について、社会保険事務所等が行う具体的な調査確認方法などを定めること

 これに対して、社会保険庁は、本院指摘の趣旨に沿い、
 (ア)については、15年2月に健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)及び厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)を改正して適用事業所に該当しなくなった場合の届出に関する規定を新たに設け、届書の記載内容を明確に示すとともに、適用事業所に該当しなくなったことを証する書類を添付させることとされた。
 (イ)については、15年11月に地方社会保険事務局に対して通知を発して、上記届書の記載内容の調査確認方法などを定めた。


 健康保険、厚生年金保険の適用促進の実施状況について (平成16年度決算検査報告)

 健康保険又は厚生年金保険が適用される事業所は、事業主等の意思にかかわらず健康保険又は厚生年金保険に加入しなければならず、両保険は強制保険となっている。 昭和61年度の基礎年金制度の導入と時期を同じくして、健康保険法及び厚生年金保険法が改正されて、両保険の適用事業所の範囲を段階的に拡大する措置が執られた。
 近年、年金に対する関心が高まる中で、健康保険又は厚生年金保険の新規適用届を提出していないことなどによる未適用事業所が数多くあるとの指摘がなされており、また、未適用事業所を少なくすることが、被保険者等となるべき者に対する医療保障や年金受給権の確保、事業主間の公平性の確保及び制度の信頼性の確保のために重要と考えられることなどから、両保険の適用促進の実施状況について検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 社会保険事務所等の中には、適用促進への取組が十分でないものや、配置された社会保険適用指導員の活動が低調であるものがあった。
(イ) 社会保険庁と各省庁との連携強化が図られているのは、現在までのところ、貨物自動車運送業者の未適用情報提供のみである。
(ウ) 14年度においてリストを活用した適用促進を行っていなかった社会保険事務所が見受けられるなど、社会保険庁の指導内容が必ずしも統一的に実施されていなかった。
(エ) 適用事業所であることを認識しているものの加入に積極的でない事業所の比率が高いことから、制度の周知による勧奨のみでは適用に至る可能性は低いと考えられる。
(オ) 16年度から適用実績等を把握していたが、その評価や今後の適用促進のための活用方法は明確とはなっていない。

 上記のような状況を踏まえると、社会保険庁において、今後、健康保険事業及び厚生年金保険事業の健全な運営を図るため、未適用事業所に対する適用促進について、次のような点を検討するなどして適切な実施を図ることが必要と考えられる。

(ア) 各社会保険事務所等において適用促進に積極的に取り組むように努めるとともに、社会保険適用指導員の一層の活用を図ること
(イ) 各省庁等との協力連携を十分に図り適用促進の推進体制の拡充強化を図ること
(ウ) リストの活用について、各社会保険事務所等の間で取扱いに差異が生じないよう指導するとともに、これまでのリストの活用の実態について再検討した上で今後の改善策を検討すること
(エ) 職権適用の積極的な実施を前提に、適用促進対象事業所に対する重点的加入指導の一層の強化を図ること
(オ) 適用実績等を十分に把握・分析し、今後の実施方法の選択、評価等に活用すること

 これに対して、社会保険庁は、本院指摘の趣旨に沿い、
 (ア)については、17年度に社会保険等の適用促進を外部に委託する市場化テストのモデル事業を5社会保険事務所で実施し、更に18年度においては104社会保険事務所等に拡大して市場化テストを実施した。そして、この結果を踏まえ、19年度においては一般競争による民間委託を全社会保険事務所等に拡大した。また、適用促進の民間委託が拡大されたことにより、各社会保険事務所等に設置されていた、社会保険適用指導員はほとんど廃止された。
 (イ)については、18年度から旅客自動車運送事業者の加入状況のリストを国土交省地方運輸局より提供を受けている。
 (ウ)については、社会保険庁は、各地方社会保険事務局に対し各種業界団体等からの情報収集等を行い、未適用事業所を的確に把握して適用促進を図るよう指導している。
 (エ)の職権適用については、18年度が15人以上の事業所であったが、19年度は10人以上の事業所と対象を拡大している。そして、職権適用を行った事業所は73事業所、当該事業所に係る被保険者数は483人となっている。