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  • 平成21年10月

各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について


2 各府省所管の公益法人を契約相手方として国が発注している調査研究事業の状況

 各府省等において、各府省所管の公益法人を契約相手方として締結された調査研究事業に係る契約(少額随契等(注12) を除く。)のうち18年度、19年度及び20年度(9月まで)に締結されたものを対象として、その全体の状況、競争性の状況、予定価格作成の状況、契約の履行等の状況、成果物の公表等の状況について分析した結果を、以下に記述した。また、契約金額の規模、契約方式、契約の内容となっている業務等を勘案して抽出した個別の契約について検査した結果を、上記のそれぞれの分析結果とともに記述した。

 少額随契  予決令第99条の規定に基づき、契約に係る予定価格が少額である場合に行うことができるとされている随意契約

(1) 各府省所管の公益法人を契約相手方とする調査研究事業に係る契約全体の状況

 各府省等から提出された調書によると、各府省等が公益法人を契約相手方として締結した調査研究事業に係る契約の件数及び支払金額は、図表2-1のとおり、18年度は4.7千件、1593億円、19年度は3.9千件、1480億円、20年度(9月まで)は2.1千件、166億円(以下、20年度の支払金額は、20年9月までに支払われた金額である。)となっている。
 このうち、都道府県所管の公益法人を除いた各府省所管の公益法人(本検査要請の対象とされている法人)を契約相手方として締結された契約(以下「対象契約」という。)の件数及び支払金額は、18年度は4.3千件、1441億円、19年度は3.4千件、1260億円、20年度(9月まで)は1.6千件、136億円となっており、19年度では、前年度より、件数で19.4%、支払金額で12.5%減少している。
 さらに、対象契約のうち、自府省所管公益法人を契約相手方として締結した契約(以下「自府省所管公益法人分」という。)が占める割合は、各年度とも、件数で86%前後、支払金額で93%前後となっている。

図表2ー1 公益法人を契約相手方とする調査研究事業に係る契約の状況

(単位:件、百万円、%、%ポイント)

区分
年度
件数
支払金額
(参考)
公益法人を契約相手方とする契約全体
 
(参考)
公益法人を契約相手方とする契約全体
 
[対象契約]
うち各府省所管の公益法人を契約相手方とする契約
(A)
 
[対象契約]
うち各府省所管の公益法人を契約相手方とする契約
(C)
 
うち自府省所管公益法人分
(B)
左の対象契約に占める割合
((B)/(A))
うち自府省所管公益法人分
(D)
左の対象契約に占める割合
((D)/(C))
平成18年度(a)
4,771
4,341
3,782
(87.1)
159,354
144,146
133,266
(92.5)
19年度(b)
3,985
3,498
3,010
(86.0)
148,041
126,060
117,403
(93.1)
増減値(b)-(a)
△786
△843
△772
△1.1
△11,312
△18,085
△15,863
0.7
増減率(((b)/(a)-1)×100)
(△16.5)
(△19.4)
(△20.4)
(△7.1)
(△12.5)
(△11.9)
20年度(9月まで)
2,103
1,694
1,454
(85.8)
16,654
13,606
12,709
(93.4)

(対象契約に占める自府省所管公益法人分の状況(平成19年度))

(対象契約に占める自府省所管公益法人分の状況(平成19年度))

 以下、対象契約について、19年度分を中心に、府省等別、契約内容別、契約の種類別及び方法別、新規契約・継続契約別、契約の締結時期別並びに履行期間別に分析することとする。

ア 府省等別の契約状況

 19年度における対象契約及び自府省所管公益法人分の状況を府省等別にみると、図表2-2及び2-3のとおりとなっている。
 これをみると、対象契約全体では、国土交通省が件数、支払金額共に最も多く、次いで、件数では農林水産省、経済産業省の順、支払金額では経済産業省、文部科学省、農林水産省の順となっている。
 また、自府省所管公益法人分が対象契約に占める割合についても、件数、支払金額共に国土交通省、経済産業省及び農林水産省において、高い状況となっている。(20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-1参照

図表2ー2 府省等別の契約状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

区分
府省等
年度
件数
支払金額
[対象契約]
各府省所管の公益法人を契約相手方とする契約
(A)
 
[対象契約]
各府省所管の公益法人を契約相手方とする契約
(C)
 
うち自府省所管公益法人分
(B)
左の対象契約に占める割合
((B)/(A))
うち自府省所管公益法人分
(D)
左の対象契約に占める割合
((D)/(C))
内閣
平成18
8
(-)
889
(-)
19
6
(-)
920
(-)
内閣府
18
155
48
(31.0)
3,031
993
(32.8)
19
136
46
(33.8)
2,503
935
(37.4)
 
警察庁
18
5
2
(40.0)
34
27
(78.9)
19
4
2
(50.0)
30
8
(27.1)
金融庁
18
1
1
(100)
75
75
(100)
19
1
1
(100)
69
69
(100)
総務省
18
129
110
(85.3)
3,367
3,225
(95.8)
19
116
98
(84.5)
3,585
3,434
(95.8)
法務省
18
16
15
(93.8)
28
17
(62.6)
19
14
12
(85.7)
47
15
(32.4)
外務省
18
33
26
(78.8)
380
281
(74.1)
19
39
30
(76.9)
437
347
(79.3)
財務省
18
17
13
(76.5)
90
60
(66.6)
19
18
13
(72.2)
70
45
(65.2)
文部科学省
18
107
79
(73.8)
8,920
7,584
(85.0)
19
122
90
(73.8)
8,545
7,254
(84.9)
厚生労働省
18
63
38
(60.3)
621
423
(68.1)
19
44
21
(47.7)
484
250
(51.7)
農林水産省
18
569
523
(91.9)
8,856
8,405
(94.9)
19
434
388
(89.4)
6,999
6,529
(93.3)
経済産業省
18
469
429
(91.5)
48,144
47,060
(97.7)
19
395
361
(91.4)
41,960
41,214
(98.2)
国土交通省
18
2,389
2,229
(93.3)
64,440
61,345
(95.2)
19
1,829
1,710
(93.5)
55,494
53,708
(96.8)
環境省
18
280
214
(76.4)
4,730
3,575
(75.6)
19
269
202
(75.1)
4,582
3,459
(75.5)
防衛省
18
98
58
(59.2)
588
291
(49.5)
19
69
39
(56.5)
392
206
(52.7)
国会
18
8
(-)
53
(-)
19
5
(-)
32
(-)
裁判所
18
(-)
(-)
19
2
(-)
3
(-)
会計検査院
18
(-)
(-)
19
(-)
(-)
18
4,341
3,782
(87.1)
144,146
133,266
(92.5)
19
3,498
3,010
(86.0)
126,060
117,403
(93.1)

図表2ー3 対象契約及び自府省所管公益法人分の件数、支払金額等の多い上位5府省等(平成19年度)

<対象契約の件数が多い5府省等>

(単位:件)

府省等名
件数
国土交通省
1,829
農林水産省
434
経済産業省
395
環境省
269
内閣府
136

<対象契約の支払金額が多い5府省等>

(単位:百万円)

府省等名
支払金額
国土交通省
55,494
経済産業省
41,960
文部科学省
8,545
農林水産省
6,999
環境省
4,582

<自府省所管公益法人分の件数が多い5府省等>

(単位:件)

府省等名
件数
国土交通省
1,710
農林水産省
388
経済産業省
361
環境省
202
総務省
98

<自府省所管公益法人分の支払金額が多い5府省等>

(単位:百万円)

府省等名
支払金額
国土交通省
53,708
経済産業省
41,214
文部科学省
7,254
農林水産省
6,529
環境省
3,459

<自府省所管公益法人分の件数が対象契約に占める割合の大きい5府省等>

(単位:%)

府省等名
件数割合
国土交通省
93.5
経済産業省
91.4
農林水産省
89.4
法務省
85.7
総務省
84.5

<自府省所管公益法人分の支払金額が対象契約に占める割合の大きい5府省等>

(単位:%)

府省等名
支払金額割合
経済産業省
98.2
国土交通省
96.8
総務省
95.8
農林水産省
93.3
文部科学省
84.9

イ 契約内容の状況

 19年度の対象契約について、次の四つに分類して契約内容の状況をみると、図表2-4のとおりとなっている。
〔1〕 「調査」(実態調査、動向調査等の各種の調査)
〔2〕 「統計調査」(統計情報の収集整理等)
〔3〕 「研究」(科学技術等の研究に係る分析、解析、実証、実験等)
〔4〕 「競争的資金による研究」(資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家による評価に基づいて実施すべき課題を採択して、研究者等に配分する研究開発資金による研究)

 これをみると、対象契約全体では、「調査」が、件数で89.1%、支払金額で85.1%と大部分を占めており、そのほかでは、「研究」が、件数で6.1%、支払金額で9.7%となっている。

図表2ー4 契約内容の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

区分
契約内容
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
調査
3,118
89.1
107,313
85.1
統計調査
61
1.7
1,541
1.2
研究
212
6.1
12,169
9.7
競争的資金による研究
107
3.1
5,036
4.0
3,498
100
126,060
100

 また、府省等別に契約内容をみると、図表2-5のとおり、各府省等とも「調査」の件数割合が高く、過半数の府省等で90%以上となっている。一方、「研究」については、厚生労働省の件数割合が最も高く(63.6%)、次いで、文部科学省(23.0%)、内閣(16.7%)の順となっており、「競争的資金による研究」については、文部科学省の件数割合が最も高く(22.1%)なっている。こうした「研究」や「競争的資金による研究」の多い府省等では、相対的に「調査」の件数割合が低くなっている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-2参照

図表2ー5 府省等別の契約内容の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

契約内容
府省等
調査
統計調査
研究
競争的資金による研究
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
内閣
5
(83.3)
780
(84.9)
1
(16.7)
139
(15.1)
6
(100)
920
(100)
内閣府
114
(83.8)
1,907
(76.2)
8
(5.9)
255
(10.2)
12
(8.8)
282
(11.3)
2
(1.5)
58
(2.3)
136
(100)
2,503
(100)
 
警察庁
3
(75.0)
10
(34.6)
1
(25.0)
20
(65.4)
4
(100)
30
(100)
金融庁
1
(100)
69
(100)
1
(100)
69
(100)
総務省
103
(88.8)
3,337
(93.1)
4
(3.4)
62
(1.7)
3
(2.6)
148
(4.1)
6
(5.2)
37
(1.1)
116
(100)
3,585
(100)
法務省
14
(100)
47
(100)
14
(100)
47
(100)
外務省
36
(92.3)
389
(88.9)
3
(7.7)
48
(11.1)
39
(100)
437
(100)
財務省
18
(100)
70
(100)
18
(100)
70
(100)
文部科学省
66
(54.1)
5,412
(63.3)
1
(0.8)
2
(0.0)
28
(23.0)
2,293
(26.8)
27
(22.1)
837
(9.8)
122
(100)
8,545
(100)
厚生労働省
15
(34.1)
218
(45.2)
1
(2.3)
4
(1.0)
28
(63.6)
260
(53.8)
44
(100)
484
(100)
農林水産省
392
(90.3)
5,327
(76.1)
6
(1.4)
286
(4.1)
34
(7.8)
1,335
(19.1)
2
(0.5)
50
(0.7)
434
(100)
6,999
(100)
経済産業省
276
(69.9)
31,846
(75.9)
7
(1.8)
220
(0.5)
49
(12.4)
6,005
(14.3)
63
(15.9)
3,887
(9.3)
395
(100)
41,960
(100)
国土交通省
1,753
(95.8)
53,366
(96.2)
33
(1.8)
702
(1.3)
43
(2.4)
1,425
(2.6)
1,829
(100)
55,494
(100)
環境省
253
(94.1)
4,188
(91.4)
1
(0.4)
6
(0.1)
8
(3.0)
222
(4.8)
7
(2.6)
165
(3.6)
269
(100)
4,582
(100)
防衛省
66
(95.7)
383
(97.8)
3
(4.3)
8
(2.2)
69
(100)
392
(100)
国会
5
(100)
32
(100)
5
(100)
32
(100)
裁判所
2
(100)
3
(100)
2
(100)
3
(100)
会計検査院
3,118
(89.1)
107,313
(85.1)
61
(1.7)
1,541
(1.2)
212
(6.1)
12,169
(9.7)
107
(3.1)
5,036
(4.0)
3,498
(100)
126,060
(100)

ウ 契約の種類及び方法の状況

 19年度の対象契約について、契約種類の状況をみると、図表2-6のとおり、件数、支払金額共に、〔1〕 委託契約が約33%、〔2〕 請負契約が約66%となっており、請負契約の割合が全体の約3分の2を占めている。
 これを契約内容別にみると、「競争的資金による研究」はすべて委託契約により実施されており、また、「研究」も委託契約の割合が、件数、支払金額共に請負契約よりも高くなっている。一方、「調査」及び「統計調査」は、請負契約の割合の方が、件数、支払金額共に高くなっている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-3参照

図表2ー6 契約種類の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

契約種類
契約内容
委託契約
請負契約
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
調査
927
29.7
26,815
25.0
2,191
70.3
80,497
75.0
3,118
100
107,313
100
統計調査
8
13.1
476
30.9
53
86.9
1,064
69.1
61
100
1,541
100
研究
122
57.5
10,064
82.7
90
42.5
2,105
17.3
212
100
12,169
100
競争的資金による研究
107
100
5,036
100
107
100
5,036
100
1,164
33.3
42,392
33.6
2,334
66.7
83,667
66.4
3,498
100
126,060
100

 次に、19年度の対象契約について、契約方法の状況をみると、図表2-7のとおり、〔1〕 確定契約(契約金額が契約締結時に確定しているもの)が件数で72.1%、支払金額で68.7%、〔2〕 概算契約(契約金額が契約締結時には確定しておらず、概算額で契約して、履行が完了した段階で額を確定させるもの)が件数で27.9%、支払金額で31.3%となっており、確定契約が、件数、支払金額共に、全体の3分の2以上を占めている。
 これを契約内容別にみると、「調査」及び「統計調査」は、確定契約の割合が、件数、支払金額共に概算契約よりも高くなっている。一方、「競争的資金による研究」はすべて概算契約により実施されており、また、「研究」も概算契約の割合の方が、件数、支払金額共に高くなっている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-4参照

図表2ー7 契約方法の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

契約方法
契約内容
確定契約
概算契約
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
調査
2,381
76.4
83,528
77.8
737
23.6
23,784
22.2
3,118
100
107,313
100
統計調査
54
88.5
1,089
70.7
7
11.5
451
29.3
61
100
1,541
100
研究
88
41.5
1,925
15.8
124
58.5
10,244
84.2
212
100
12,169
100
競争的資金による研究
107
100
5,036
100
107
100
5,036
100
2,523
72.1
86,543
68.7
975
27.9
39,516
31.3
3,498
100
126,060
100

 さらに、19年度の対象契約について、契約種類別に契約方法の状況をみると、図表2-8のとおり、請負契約では、件数、支払金額共に、99%以上が確定契約により実施されている。一方、委託契約では、件数で82.0%、支払金額で92.6%が概算契約により実施されている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-5参照

図表2ー8 契約種類別にみた契約方法の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

契約方法
契約種類
確定契約
概算契約
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
請負契約
2,313
99.1
83,398
99.7
21
0.9
269
0.3
2,334
100
83,667
100
委託契約
210
18.0
3,145
7.4
954
82.0
39,247
92.6
1,164
100
42,392
100
2,523
72.1
86,543
68.7
975
27.9
39,516
31.3
3,498
100
126,060
100

エ 新規契約と継続契約の状況

 調査研究事業には、単年度で完了するもののほか、「統計調査」のように毎年度同一の対象から得られるデータを収集して調査分析を行うものや、一つの目的のために複数年度にわたって調査研究を計画的に実施するものなど、同一業務に係る契約を年度ごとに引き続き締結しているものがある。
 そこで、19年度の対象契約について、当該年度において新規に契約したものを「新規契約」、前年度以前から同一業務に係る契約を年度ごとに締結しているものを「継続契約」として、その状況をみると、図表2-9のとおりとなっている。
 すなわち、件数割合でみると、新規契約が51.9%と継続契約を少し上回っているが、支払金額割合では、継続契約が全体の71.1%を占めている。また、継続契約の内訳をみると、16年度以前から実施しているものが、件数、支払金額共に最も多くなっており、支払金額では対象契約全体の50.2%を占めている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-6参照

図表2-9 新規契約と継続契約の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
新規・継続区分
契約相手方
新規契約
継続契約
合計
平成19年度
18年度〜
17年度〜
16年度以前〜
各府省所管の公益法人
1,817
(51.9)
495
(14.2)
240
(6.9)
946
(27.0)
1,681
(48.1)
3,498
(100)
 
うち自府省所管公益法人
1,573
(52.3)
429
(14.3)
212
(7.0)
796
(26.4)
1,437
(47.7)
3,010
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
新規・継続区分
契約相手方
新規契約
継続契約
合計
平成19年度
18年度〜
17年度〜
16年度以前〜
各府省所管の公益法人
36,389
(28.9)
14,665
(11.6)
11,757
(9.3)
63,247
(50.2)
89,670
(71.1)
126,060
(100)
 
うち自府省所管公益法人
33,462
(28.5)
13,383
(11.4)
11,191
(9.5)
59,365
(50.6)
83,940
(71.5)
117,403
(100)

オ 契約の締結時期及び履行期間の状況

 19年度の対象契約について、契約の締結時期の状況をみると、図表2-10のとおり、件数で、第1四半期が33.2%、第2四半期が30.0%となっており、第4四半期に締結されたものも9.3%となっている。
 これを新規契約・継続契約別にみると、新規契約の件数は、第3四半期が35.6%と最も多くなっており、継続契約の件数は、第1四半期が48.8%と半数近くを占めている。

図表2-10 契約の締結時期の状況(平成19年度)
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約の締結時期
区分
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
合計
各府省所管の公益法人を契約相手方とする契約
新規契約
340
(18.7)
591
(32.5)
647
(35.6)
239
(13.2)
1,817
(100)
継続契約
821
(48.8)
458
(27.2)
314
(18.7)
88
(5.2)
1,681
(100)
合計
1,161
(33.2)
1,049
(30.0)
961
(27.5)
327
(9.3)
3,498
(100)
 
うち自府省所管公益法人分
新規契約
296
(18.8)
526
(33.4)
553
(35.2)
198
(12.6)
1,573
(100)
継続契約
689
(47.9)
398
(27.7)
279
(19.4)
71
(4.9)
1,437
(100)
985
(32.7)
924
(30.7)
832
(27.6)
269
(8.9)
3,010
(100)

 次に、19年度の対象契約について、契約で設定された履行期間の状況をみると、図表2-11のとおり、平均履行期間は、6.9か月となっており、履行期間6か月以上の契約件数が57.1%と過半を占めているが、3か月未満のものも13.0%あり、このうち1か月未満のものが1.3%となっている。

図表2-11 契約の履行期間の状況(平成19年度)
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約の履行期間
契約相手方
3か月未満
 
3か月以上6か月未満
 
6か月以上
平均
1か月未満
1か月以上2か月未満
2か月以上3か月未満
3か月以上4か月未満
4か月以上5か月未満
5か月以上6か月未満
各府省所管の公益法人
453
(13.0)
44
(1.3)
235
(6.7)
174
(5.0)
1,046
(29.9)
322
(9.2)
372
(10.6)
352
(10.1)
1,999
(57.1)
3,498
(100)
6.9か月
 
うち自府省所管公益法人
368
(12.2)
40
(1.3)
189
(6.3)
139
(4.6)
918
(30.5)
278
(9.2)
330
(11.0)
310
(10.3)
1,724
(57.3)
3,010
(100)
6.9か月

(2) 契約の競争性の状況

 国の契約方式等の概要については、前記第1-3-(2) のとおりであるが、以下、対象契約について、その競争性の状況を分析することとする。

ア 契約方式の状況

(ア) 契約方式の全体状況

 対象契約について契約方式の全体状況をみると、図表2-12のとおり、18年度では、随意契約が、件数で84.4%、支払金額で93.3%と大部分を占めていたが、19年度では、件数で11.8ポイント、支払金額で11.1ポイント低下して、それぞれ72.6%、82.2%となっている。このうち、企画競争等を経ない随意契約についてみると、18年度では、件数、支払金額共に5割近くを占めていたが、19年度では、件数で38.9ポイント、支払金額で33.7ポイントと大きく低下している。
 一方、競争契約の割合は、19年度では件数で27.4%、支払金額で17.8%となっており、18年度に比べて上昇していて、同様に総合評価方式の割合も大きく伸びている。また、企画随契の割合は、19年度では、件数で2.3ポイント上昇しているものの、支払金額で3.2ポイント低下している。
 そして、20年度(9月まで)における件数割合をみると、競争契約は33.8%(うち総合評価方式15.5%)と大幅に上昇しているのに対して、随意契約は66.2%と引き続き低下している。中でも、企画競争等を経ない随意契約は、5.0%に低下している一方、企画随契は大幅に上昇して58.4%となっている。
 このような推移となっているのは、価格競争のみの競争を実施することが困難なものがある調査研究事業に係る契約においても、各府省等が、公共調達の適正化を推進する中で、企画競争等を経ない随意契約から競争性の高い契約方式等に移行してきていることや、研究開発及び調査業務に関する入札に係る総合評価方式について、財務大臣との包括協議が18年7月に整い、個別の協議が不要となったことなどが背景となっていると考えられる。

図表2-12 契約方式の全体状況
〔1〕 件数 (単位:件、%、%ポイント)
契約方式
年度等
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
平成18年度
件数
割合(A)
460
(10.6)
11
(0.3)
219
(5.0)
679
(15.6)
11
(0.3)
3,662
(84.4)
1,205
(27.8)
2,044
(47.1)
4,341
(100)
19年度
件数
割合(B)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)
増減値(B)-(A)
12.7
9.7
△1.0
11.8
9.7
△11.8
2.3
△38.9
20年度(9月まで)
件数
割合
502
(29.6)
252
(14.9)
71
(4.2)
10
(0.6)
573
(33.8)
262
(15.5)
1,121
(66.2)
989
(58.4)
85
(5.0)
1,694
(100)
〔2〕 支払金額
(単位:百万円、%、%ポイント)

契約方式
年度等
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
平成18年度
金額
6,237
(4.3)
112
(0.1)
3,450
(2.4)
9,687
(6.7)
112
(0.1)
134,458
(93.3)
56,001
(38.9)
71,221
(49.4)
144,146
(100)
19年度
金額
割合(B)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)
増減値(B)-(A)
11.4
10.3
△0.3
11.1
10.3
△11.1
△3.2
△33.7
20年度(9月まで)
金額
割合
1,557
(11.4)
1,302
(9.6)
160
(1.2)
62
(0.5)
1,717
(12.6)
1,365
(10.0)
11,889
(87.4)
9,819
(72.2)
1,975
(14.5)
13,606
(100)

(件数)

13,606

(支払金額)

(支払金額)

(注)
 「随意契約」及び「うち企画随契」には、公募を経たものも含めている。以下の図表において同じ。

 また、対象契約について公募の実施状況をみると、図表2-13のとおり、19年度では、件数は1,151件で対象契約全体に占める割合は32.9%となっている。そして、これらについて公募実施後の状況をみると、随意契約(不落・不調随契及び企画随契を除く。)が99.7%となっている。また、20年度(9月まで)では、対象契約全体に占める割合は1.5%と大幅に低下している。
 これは、公共調達の適正化を推進するため、従来随意契約で行っていた調査研究事業について、まず従来の契約相手方のほかに履行可能な者がいないかを確認するための公募を行う方法に移行して、その後、更に競争性の高い契約方式等に移行したことによると考えられる。

図表2ー13 公募の実施状況

(単位:件、%)

契約方式
区分
競争契約
随意契約
合計
不落・不調随契
企画随契
左の二つを除く随意契約
公募を経た契約
平成19年度
件数(A)
割合
3
(0.3)
1,148
(99.7)
1,151
(100)
1,151
(100)
20年度(9月まで)
件数(B)
割合
1
(3.8)
2
(7.7)
23
(88.5)
25
(96.2)
26
(100)
契約全体
19年度
<(A)/(C)>
件数(C)
959
<->
54
<->
1,050
<0.3>
1,435
<80.0>
2,539
<45.3>
3,498
<32.9>
20年度(9月まで)
<(B)/(D)>
件数(D)
573
<0.2>
24
<->
989
<0.2>
108
<21.3>
1,121
<2.2>
1,694
<1.5>

 さらに、19年度及び20年度(9月まで)の対象契約のうち、企画競争等を経ない随意契約について、随意契約とした法令上の適用理由をみると、図表2-14のとおり、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」(会計法第29条の3第4項)に該当するためとしているものが、両年度とも、件数で90%弱を占める状況となっている。

図表2-14 企画競争等を経ない随意契約とした法令上の適用理由

(単位:件、%)

年度等
法令上の適用理由
平成19年度
20年度(9月まで)
件数
件数割合
件数
件数割合
契約の性質又は目的が競争を許さない場合(会計法第29条の3第4項)
254
88.5
75
88.2
緊急の必要により競争に付することができない場合(同上)
20
7.0
2
2.4
競争に付することが国に不利と認められる場合(同上)
3
1.0
国の行為を秘密にする必要があるとき(予決令第99条第1号)
10
3.5
8
9.4
287
100
85
100

(イ) 府省等別の契約方式の状況

 19年度における対象契約の契約方式を府省等別にみると、図表2-15のとおりとなっている。
 すなわち、随意契約より競争契約の割合の方が高いのは、件数では、法務省、総務省、防衛省、経済産業省、厚生労働省及び内閣府、支払金額では、法務省、総務省、防衛省及び厚生労働省となっている。このうち、総合評価方式による競争契約の実施状況をみると、件数割合では、経済産業省が60.0%と最も高くなっている。
 さらに、企画随契の割合が50%を超えているのは、件数では、農林水産省、外務省及び文部科学省、支払金額では、農林水産省、外務省及び経済産業省となっている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-7参照

図表2-15 府省等別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
府省等
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
内閣
6
(100)
1
(16.7)
5
(83.3)
6
(100)
内閣府
65
(47.8)
32
7
(23.5)
(5.1)
72
(52.9)
32
(23.5)
64
(47.1)
16
(11.8)
12
(8.8)
136
(100)
 
警察庁
3
(75.0)
3
(75.0)
1
(25.0)
4
(100)
金融庁
1
(100)
1
(100)
1
(100)
総務省
90
(77.6)
15
(12.9)
90
(77.6)
15
(12.9)
26
(22.4)
21
(18.1)
2
(1.7)
116
(100)
法務省
13
(92.9)
13
(92.9)
1
(7.1)
14
(100)
外務省
4
(10.3)
4
(10.3)
35
(89.7)
26
(66.7)
4
(10.3)
39
(100)
財務省
8
(44.4)
5
(27.8)
8
(44.4)
5
(27.8)
10
(55.6)
8
(44.4)
18
(100)
文部科学省
29
(23.8)
27
(22.1)
29
(23.8)
27
(22.1)
93
(76.2)
73
(59.8)
12
(9.8)
122
(100)
厚生労働省
24
(54.5)
24
(54.5)
20
(45.5)
9
(20.5)
7
(15.9)
44
(100)
農林水産省
73
(16.8)
23
(5.3)
96
(22.1)
338
(77.9)
325
(74.9)
2
(0.5)
434
(100)
経済産業省
252
(63.8)
237
(60.0)
252
(63.8)
237
(60.0)
143
(36.2)
75
(19.0)
56
(14.2)
395
(100)
国土交通省
117
(6.4)
1
(0.1)
103
(5.6)
220
(12.0)
1
(0.1)
1,609
(88.0)
385
(21.0)
137
(7.5)
1,829
(100)
環境省
104
(38.7)
30
(11.2)
1
(0.4)
105
(39.0)
30
(11.2)
164
(61.0)
103
(38.3)
39
(14.5)
269
(100)
防衛省
36
(52.2)
9
(13.0)
45
(65.2)
24
(34.8)
8
(11.6)
8
(11.6)
69
(100)
国会
5
(100)
2
(40.0)
5
(100)
裁判所
1
(50.0)
1
(50.0)
1
(50.0)
1
(50.0)
2
(100)
会計検査院
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
府省等
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
内閣
920
(100)
14
(1.6)
905
(98.4)
920
(100)
内閣府
1,053
(42.1)
554
(22.2)
55
(2.2)
1,109
(44.3)
554
(22.2)
1,394
(55.7)
347
(13.9)
280
(11.2)
2,503
(100)
 
警察庁
28
(92.6)
28
(92.6)
2
(7.4)
30
(100)
金融庁
69
(100)
69
(100)
69
(100)
総務省
3,070
(85.6)
419
(11.7)
3,070
(85.6)
419
(11.7)
514
(14.4)
326
(9.1)
6
(0.2)
3,585
(100)
法務省
46
(98.0)
46
(98.0)
0
(2.0)
47
(100)
外務省
37
(8.6)
37
(8.6)
400
(91.4)
292
(66.9)
79
(18.2)
437
(100)
財務省
34
(48.5)
15
(21.5)
34
(48.5)
15
(21.5)
36
(51.5)
22
(31.9)
70
(100)
文部科学省
1,860
(21.8)
1,848
(21.6)
1,860
(21.8)
1,848
(21.6)
6,685
(78.2)
2,528
(29.6)
3,695
(43.2)
8,545
(100)
厚生労働省
265
(54.7)
265
(54.7)
219
(45.3)
136
(28.1)
58
(12.1)
484
(100)
農林水産省
587
(8.4)
246
(3.5)
833
(11.9)
6,165
(88.1)
6,047
(86.4)
11
(0.2)
6,999
(100)
経済産業省
10,036
(23.9)
9,975
(23.8)
10,036
(23.9)
9,975
(23.8)
31,924
(76.1)
26,137
(62.3)
5,310
(12.7)
41,960
(100)
国土交通省
1,541
(2.8)
5
(0.0)
2,241
(4.0)
3,782
(6.8)
5
(0.0)
51,711
(93.2)
6,925
(12.5)
8,271
(14.9)
55,494
(100)
環境省
1,031
(22.5)
317
(6.9)
9
(0.2)
1,040
(22.7)
317
(6.9)
3,542
(77.3)
2,164
(47.2)
1,129
(24.7)
4,582
(100)
防衛省
264
(67.4)
37
(9.5)
301
(76.9)
90
(23.1)
25
(6.4)
34
(8.8)
392
(100)
国会
32
(100)
5
(18.1)
32
(100)
裁判所
1
(41.0)
1
(41.0)
1
(59.0)
1
(59.0)
3
(100)
会計検査院
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)

(ウ) 契約内容別の契約方式の状況

 19年度における対象契約の契約方式を契約内容別にみると、図表2-16のとおり、競争契約の割合は、相対的に仕様が確定していると考えられる「統計調査」(件数41.0%、支払金額44.5%)において比較的高くなっている。また、総合評価方式は、「競争的資金による研究」(随意契約の割合が100%)以外の契約内容において実施されている。
 一方、企画随契の割合は、事業ごとに複数の者を選定するため競争契約によることのできない「競争的資金による研究」(件数66.4%、支払金額75.7%)で最も高くなっており、また、企画競争等を経ない随意契約の割合は、「競争的資金による研究」(件数33.6%、支払金額24.3%)及び「研究」(件数19.8%、支払金額37.2%)において高くなっている。

図表2-16 契約内容別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約内容
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
調査
745
(23.9)
328
(10.5)
136
(4.4)
881
(28.3)
328
(10.5)
2,237
(71.7)
886
(28.4)
196
(6.3)
3,118
(100)
統計調査
18
(29.5)
2
(3.3)
7
(11.5)
25
(41.0)
2
(3.3)
36
(59.0)
12
(19.7)
13
(21.3)
61
(100)
研究
53
(25.0)
17
(8.0)
53
(25.0)
17
(8.0)
159
(75.0)
81
(38.2)
42
(19.8)
212
(100)
競争的資金による研究
107
(100)
71
(66.4)
36
(33.6)
107
(100)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約内容
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
調査
16,960
(15.8)
11,120
(10.4)
2,454
(2.3)
19,415
(18.1)
11,120
(10.4)
87,897
(81.9)
36,927
(34.4)
13,874
(12.9)
107,313
(100)
統計調査
551
(35.8)
195
(12.7)
133
(8.7)
685
(44.5)
195
(12.7)
856
(55.5)
464
(30.2)
164
(10.7)
1,541
(100)
研究
2,319
(19.1)
1,818
(14.9)
2,319
(19.1)
1,818
(14.9)
9,849
(80.9)
3,768
(31.0)
4,525
(37.2)
12,169
(100)
競争的資金による研究
5,036
(100)
3,810
(75.7)
1,226
(24.3)
5,036
(100)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)

(エ) 契約相手方別の契約方式の状況

 19年度における対象契約のうち自府省所管公益法人分について契約方式の状況をみると、図表2-17のとおり、対象契約全体とほぼ同様の傾向となっているが、自府省所管公益法人分においては、競争契約の割合が、件数、支払金額共に若干低く、また、企画随契の割合が、支払金額で若干高い状況となっている。  (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-8参照

図表2-17 契約相手方別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約相手方
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
各府省所管の公益法人
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)
 
うち自府省所管公益法人
650
(21.6)
277
(9.2)
91
(3.0)
741
(24.6)
277
(9.2)
2,269
(75.4)
910
(30.2)
242
(8.0)
3,010
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約相手方
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
各府省所管の公益法人
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)
 
うち自府省所管公益法人
17,478
(14.9)
11,776
(10.0)
1,967
(1.7)
19,445
(16.6)
11,776
(10.0)
97,957
(83.4)
42,351
(36.1)
18,311
(15.6)
117,403
(100)

(オ) 新規契約・継続契約別の契約方式の状況

 19年度における対象契約の契約方式を新規契約・継続契約別にみると、図表2-18のとおり、競争契約の割合は、件数、支払金額共に、新規契約の方が継続契約よりも高く、件数で27.9%(うち総合評価方式11.9%)、支払金額で21.9%(同14.1%)となっている。また、企画随契の割合は、件数で新規契約の方が高くなっているが、支払金額では逆に継続契約の方が高くなっている。一方、企画競争等を経ない随意契約の割合は、件数、支払金額共に、新規契約の方が継続契約より低く、件数で4.5%、支払金額で3.6%となっていて、特に継続契約の支払金額割合(20.6%)との差は大きくなっている。
 (20年度(9月まで)の状況は、巻末別表2-9参照

図表2-18 新規契約・継続契約別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
新規・継続区分
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
新規契約
473
(26.0)
216
(11.9)
34
(1.9)
507
(27.9)
216
(11.9)
1,310
(72.1)
590
(32.5)
81
(4.5)
1,817
(100)
継続契約
343
(20.4)
131
(7.8)
109
(6.5)
452
(26.9)
131
(7.8)
1,229
(73.1)
460
(27.4)
206
(12.3)
1,681
(100)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
新規・継続区分
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
新規契約
7,802
(21.4)
5,124
(14.1)
182
(0.5)
7,984
(21.9)
5,124
(14.1)
28,405
(78.1)
11,804
(32.4)
1,308
(3.6)
36,389
(100)
継続契約
12,029
(13.4)
8,010
(8.9)
2,406
(2.7)
14,435
(16.1)
8,010
(8.9)
75,234
(83.9)
33,165
(37.0)
18,482
(20.6)
89,670
(100)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)

(カ) 契約の締結時期別及び履行期間別の契約方式の状況

 19年度における対象契約の契約方式を契約の締結時期別にみると、図表2-19のとおり、競争契約の割合は、件数、支払金額共に、契約の締結時期によって大きな差はないが、第2四半期以降少しずつ増加する傾向が見受けられる。これは各府省等が公共調達の適正化のため、より競争性の高い契約方式等に移行を進めていることが一因にあると考えられる。
 また、企画随契の割合は、件数、支払金額共に、第4四半期(件数56.9%、支払金額66.0%)において極めて高くなっている一方、企画競争等を経ない随意契約の割合は、第1四半期(件数13.6%、支払金額20.6%)において高くなっている。

図表2-19 契約締結時期別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約締結時期
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
第1四半期
230
(19.8)
111
(9.6)
89
(7.7)
319
(27.5)
111
(9.6)
842
(72.5)
333
(28.7)
158
(13.6)
1,161
(100)
第2四半期
228
(21.7)
89
(8.5)
22
(2.1)
250
(23.8)
89
(8.5)
799
(76.2)
307
(29.3)
58
(5.5)
1,049
(100)
第3四半期
265
(27.6)
124
(12.9)
17
(1.8)
282
(29.3)
124
(12.9)
679
(70.7)
224
(23.3)
58
(6.0)
961
(100)
第4四半期
93
(28.4)
23
(7.0)
15
(4.6)
108
(33.0)
23
(7.0)
219
(67.0)
186
(56.9)
13
(4.0)
327
(100)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約締結時期
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
第1四半期
11,516
(14.1)
9,416
(11.6)
2,167
(2.7)
13,683
(16.8)
9,416
(11.6)
67,765
(83.2)
33,285
(40.9)
16,774
(20.6)
81,448
(100)
第2四半期
4,055
(16.8)
1,923
(8.0)
243
(1.0)
4,299
(17.8)
1,923
(8.0)
19,848
(82.2)
6,241
(25.8)
1,491
(6.2)
24,147
(100)
第3四半期
3,428
(20.4)
1,585
(9.4)
98
(0.6)
3,526
(21.0)
1,585
(9.4)
13,255
(79.0)
3,013
(18.0)
1,385
(8.3)
16,782
(100)
第4四半期
830
(22.6)
210
(5.7)
80
(2.2)
910
(24.7)
210
(5.7)
2,769
(75.3)
2,429
(66.0)
138
(3.8)
3,680
(100)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)

 次に、19年度における対象契約の契約方式を契約で設定された履行期間別にみると、図表2-20のとおり、競争契約の割合は、件数、支払金額共に、「3か月未満」、「3か月以上6か月未満」、「6か月以上」の順に低くなっているが、「3か月未満」のうち「1か月未満」については、件数で9.1%、支払金額で13.2%と極めて低くなっている。
 一方、随意契約の割合は、件数で、「1か月未満」において際立って高くなっており、特に、企画競争等を経ない随意契約の割合は、件数で36.4%、支払金額で30.8%と高くなっている。

図表2-20 契約履行期間別の契約方式の状況(平成19年度)
〔1〕 件数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約履行期間
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
3か月未満
130
(28.7)
27
(6.0)
27
(6.0)
157
(34.7)
27
(6.0)
296
(65.3)
203
(44.8)
43
(9.5)
453
(100)
 
うち1か月未満
4
(9.1)
2
(4.5)
4
(9.1)
2
(4.5)
40
(90.9)
21
(47.7)
16
(36.4)
44
(100)
3か月以上6か月未満
282
(27.0)
127
(12.1)
20
(1.9)
302
(28.9)
127
(12.1)
744
(71.1)
242
(23.1)
60
(5.7)
1,046
(100)
6か月以上
404
(20.2)
193
(9.7)
96
(4.8)
500
(25.0)
193
(9.7)
1,499
(75.0)
605
(30.3)
184
(9.2)
1,999
(100)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)

〔2〕 支払金額
上段:支払金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
契約方式
契約履行期間
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
3か月未満
1,108
(23.5)
235
(5.0)
182
(3.9)
1,291
(27.3)
235
(5.0)
3,432
(72.7)
2,502
(53.0)
348
(7.4)
4,723
(100)
 
うち1か月未満
52
(13.2)
45
(11.5)
52
(13.2)
45
(11.5)
344
(86.8)
178
(45.0)
122
(30.8)
396
(100)
3か月以上6か月未満
3,511
(19.3)
1,597
(8.8)
149
(0.8)
3,661
(20.2)
1,597
(8.8)
14,489
(79.8)
3,047
(16.8)
1,474
(8.1)
18,150
(100)
6か月以上
15,211
(14.7)
11,303
(11.0)
2,255
(2.2)
17,467
(16.9)
11,303
(11.0)
85,718
(83.1)
39,419
(38.2)
17,966
(17.4)
103,186
(100)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)

イ 応札者数、応募者数等の状況

(ア) 競争契約における応札者数の状況

 随意契約より競争性の高い契約方式である競争契約の利点が発揮されるためには、なるべく多数の者が応札する状況の下で適切な競争が行われることが重要である。
 そこで、対象契約について競争契約における応札者数の状況を件数割合でみると、図表2-21のとおり、19年度では、1者応札が最も高く58.3%と半数以上を占めている。また、競争契約のうち総合評価方式は、1者応札の件数割合が73.2%と更に高くなっている。
 そして、このような状況は、20年度(9月まで)でも同様となっており、必ずしも多数の者が応札する状況の下で競争が行われておらず、競争契約の利点が発揮されにくい状況となっている。

図表2-21 競争契約における応札者数の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
応札者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
平成19年度の競争契約
559
(58.3)
239
(24.9)
63
(6.6)
28
(2.9)
70
(7.3)
959
(100)
 
 
うち総合評価方式
254
(73.2)
65
(18.7)
21
(6.1)
4
(1.2)
3
(0.9)
347
(100)
一般競争契約
545
(66.8)
155
(19.0)
56
(6.9)
26
(3.2)
34
(4.2)
816
(100)
 
うち総合評価方式
254
(73.2)
65
(18.7)
21
(6.1)
4
(1.2)
3
(0.9)
347
(100)
指名競争契約
14
(9.8)
84
(58.7)
7
(4.9)
2
(1.4)
36
(25.2)
143
(100)
 
うち総合評価方式
20年度(9月まで)の競争契約
337
(58.8)
146
(25.5)
38
(6.6)
14
(2.4)
38
(6.6)
573
(100)
 
 
うち総合評価方式
199
(76.0)
41
(15.6)
12
(4.6)
4
(1.5)
6
(2.3)
262
(100)
一般競争契約
328
(65.3)
93
(18.5)
32
(6.4)
14
(2.8)
35
(7.0)
502
(100)
 
うち総合評価方式
195
(77.4)
37
(14.7)
10
(4.0)
4
(1.6)
6
(2.4)
252
(100)
指名競争契約
9
(12.7)
53
(74.6)
6
(8.5)
3
(4.2)
71
(100)
 
うち総合評価方式
4
(40.0)
4
(40.0)
2
(20.0)
10
(100)

各府省所管の公益法人を契約相手方として国が発注している調査研究事業の状況の図1

(イ) 企画競争における応募者数の状況

 企画競争においても、優れた企画書等の選定が可能となるためには、なるべく多数の者が応募して適切な競争が行われることが重要である。
 そこで、対象契約について企画競争における応募者数の状況を件数割合でみると、図表2-22のとおり、19年度では、1者応募が最も高く55.8%と半数以上を占めている。このうち、「競争的資金による研究」は、その性格上、5者以上応募が97.2%とほとんどを占めているが、「競争的資金による研究以外のもの」は、約6割が1者応募により行われている状況となっている。
 そして、このような状況は、20年度(9月まで)でもほぼ同様となっており、企画競争において複数の業者の中から優れた企画を提案した者を選定する手続の実効性を確保しにくい状況となっている。

図表2-22 企画競争における応募者数の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
応募者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
平成19年度の企画競争
586
(55.8)
188
(17.9)
81
(7.7)
39
(3.7)
156
(14.9)
1,050
(100)
 
競争的資金による研究
1
(1.4)
1
(1.4)
69
(97.2)
71
(100)
競争的資金による研究以外のもの
585
(59.8)
188
(19.2)
81
(8.3)
38
(3.9)
87
(8.9)
979
(100)
20年度(9月まで)の企画競争
552
(55.8)
181
(18.3)
80
(8.1)
40
(4.0)
136
(13.8)
989
(100)
 
競争的資金による研究
51
(100)
51
(100)
競争的資金による研究以外のもの
552
(58.8)
181
(19.3)
80
(8.5)
40
(4.3)
85
(9.1)
938
(100)

938

(ウ) 公募における応募者数の状況

 公募は、契約の透明性を確保する上で重要な手続であるが、対象契約について公募における応募者数の状況を件数割合でみると、図表2-23のとおり、19年度では、1者応募の割合が99.8%とほとんどすべてを占めている。
 そして、20年度(9月まで)では、1者応募の割合は88.5%となっている。

図表2-23 公募における応募者数の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
応募者数
年度
1者
2者
3者
平成19年度
1,149
(99.8)
2
(0.2)
1,151
(100)
20年度(9月まで)
23
(88.5)
2
(7.7)
1
(3.8)
26
(100)

(エ) 企画競争等を経ない随意契約における見積書を徴した業者数の状況

 企画競争等を経ない随意契約においても、競争の原理を応用する必要があると考えられており、同契約によろうとするときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴することとされている。
 そこで、対象契約について企画競争等を経ない随意契約における見積書を徴した業者数の状況を件数割合でみると、図表2-24のとおり、19年度では、見積書を徴した業者数が1者のみのものが99.7%とほとんどすべてを占めている。
 そして、このような状況は、20年度(9月まで)でも同様となっており、企画競争等を経ない随意契約においては契約の相手方が事実上1者に限定される場合があるという事情も考えられるが、競争の原理を応用しにくい状況となっている。

図表2-24 企画競争等を経ない随意契約における見積書を徴した業者数の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
業者数
年度
1者
2者
3者
平成19年度
286
(99.7)
1
(0.3)
287
(100)
20年度(9月まで)
83
(97.6)
1
(1.2)
1
(1.2)
85
(100)

ウ 落札率の状況

 契約金額の予定価格に対する比率を示す落札率は、予定価格の妥当性や契約方式の特性等から、その高低だけをもって一律に評価することはできない面はあるものの、契約の競争性や予算執行の経済性及び効率性を評価する際の指標の一つと考えられる。この落札率の状況をみると、次のとおりとなっている。
 対象契約について契約方式別に落札率の状況をみると、図表2-25のとおり、平均落札率は、19年度では、競争契約が87.7%(一般競争契約87.9%、指名競争契約86.8%)、随意契約が98.5%となっていて、随意契約の方が競争契約よりも10.8ポイント高くなっている。また、20年度(9月まで)でも、ほぼ同様の状況となっており、随意契約の方が競争契約よりも11.9ポイント高くなっている。

図表2-25 契約方式別の落札率の状況

(単位:%、%ポイント)

契約方式
区分
競争契約
 
随意契約
一般競争契約
指名競争契約
平成19年度契約の平均落札率(A)
87.7
87.9
86.8
98.5
95.6
20年度(9月まで)契約の平均落札率(B)
86.7
86.9
85.8
98.6
94.7
増減値(B)-(A)
△1.0
△1.0
△1.0
0.1
△0.9

 次に、競争契約について応札者数と平均落札率の関係をみると、図表2-26のとおり、19年度では、1者応札の場合は平均落札率が92.6%となっているのに対して、応札者数が2者の場合は8ポイント以上、3者以上の場合は14ポイント以上、これを下回っている。また、20年度(9月まで)でも、ほぼ同様の状況となっている。このように落札率からみた場合、競争契約であっても1者応札の場合には実質的な競争性を確保しにくい状況となっている。

図表2-26 競争契約における応札者数別の落札率の状況

(単位:件、%)

応札者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
平成19年度
件数
550
224
61
27
67
929
平均落札率
92.6
84.2
78.2
71.7
74.5
87.7
20年度(9月まで)
件数
320
136
36
14
38
544
平均落札率
92.5
82.0
78.7
71.4
68.9
86.7
(注)
 対象契約から単価契約を除いている。

エ 総合評価方式及び企画競争の実施状況

 今回会計実地検査を行った29省庁の内部部局における総合評価方式及び企画競争の実施に係る要領等の整備状況を示すとともに、地方支分部局等分も含めた19年度及び20年度(9月まで)の対象契約について、審査を実施している者の構成の状況、評価項目及び評価点配分の事前開示の状況、価格面の評価の状況等をみると、以下のとおりである。

(ア) 総合評価方式の実施状況

a 要領等の整備

 総合評価方式の実施に当たり、提案書等の審査がし意的に行われると、契約の競争性、公平性及び透明性が確保されなくなることから、その実施方法の内容は極めて重要である。
 そこで、29省庁の内部部局における総合評価方式の実施に係る要領等の整備状況を、21年4月1日現在でみると、図表2-27のとおり、部内で統一的な要領等を作成しているのは24省庁となっている。そして、残りの5省庁は、総合評価方式を実施する必要のある契約案件がなかったり、技術等の評価が必要な業務を企画随契により実施していたりなどしていることから、要領等を作成していないとしている。

図表2-27 総合評価方式の実施に係る要領等の整備状況(平成21年4月1日現在)
要領等の整備状況
省庁
統一的な要領等を作成しているもの
総合評価方式を実施する都度要領等を作成するとしているもの
要領等を作成していないもの
(参考)
公益法人を契約相手方とする調査研究事業に係る競争契約(総合評価方式)の件数(平成19年度)
内閣
内閣官房
内閣府
内閣本府
32
宮内庁
公正取引委員会
警察庁
金融庁
総務省
総務本省
10
公害等調整委員会
消防庁
5
法務省
法務本省
外務省
外務省
財務省
財務本省
5
国税庁
文部科学省
文部科学本省
27
文化庁
厚生労働省
厚生労働本省
社会保険庁
農林水産省
農林水産本省
林野庁
水産庁
経済産業省
経済産業本省
119
資源エネルギー庁
89
特許庁
26
中小企業庁
3
国土交通省
国土交通本省
気象庁
1
海上保安庁
環境省
環境省
30
防衛省
防衛省
29
24
5
347

b 審査を実施している者の構成

 総合評価方式の参加者から提出された提案書等の審査については、実質的に契約相手方の決定に影響することから、審査過程の透明性を担保するために契約担当部局も審査に関与することが望ましく、また、業務内容によっては外部専門家・外部有識者の専門的な知見が必要となる場合がある。
 そこで、総合評価方式による契約において審査を実施している者の構成の状況をみると、図表2-28のとおりとなっており、19年度、20年度(9月まで)共に、調査研究事業の担当課職員のみが審査を行っているものが2割前後見受けられる。

図表2-28 総合評価方式による契約において審査を実施している者の構成の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
審査を実施している者
年度
担当課職員
 
契約担当課職員
担当課及び契約担当課以外の職員
外部専門家・外部有識者
その他
うち担当課職員のみ
平成19年度
346
(99.7)
81
(23.3)
182
(52.4)
141
(40.6)
74
(21.3)
12
(3.5)
347
(100)
20年度(9月まで)
261
(99.6)
47
(17.9)
118
(45.0)
142
(54.2)
71
(27.1)
3
(1.1)
262
(100)
(注)
 審査を実施している者の区分が複数ある場合があるため、審査を実施している者別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。

c 評価項目及び評価点配分の事前開示

 提案書等の審査における評価項目及び評価点配分を事前に業者に開示することは、公正な競争を確保するために必要であると考えられる。
 そこで、総合評価方式による契約におけるこれら事項の事前開示の状況をみると、19年度、20年度(9月まで)共に、すべての契約において、評価項目及び評価点配分に関する情報は事前に公表されている状況となっている。

d 評価点の配分等

 総合評価方式においては、価格及び技術等について評価が行われており、入札者の入札価格の得点に、技術等に関する各評価項目(以下「技術的要件」という。)の得点を加えて、合計得点の最も高い者が落札者とされる。このうち、入札価格に係る得点配分について、前記の財務大臣との包括協議では、「研究開発」は全体の4分の1以上、「調査」は全体の3分の1以上と定められている。また、技術的要件は、必須項目とその他の項目に区分されていて、前者を満たしていない者は不合格となる。
 そこで、総合評価方式による契約について、〔1〕 入札価格、〔2〕 技術的要件(必須項目)、〔3〕 技術的要件(その他の項目)のそれぞれに係る得点配分をみると、図表2-29のとおり、19年度、20年度(9月まで)共に、平均では、〔1〕 が約3分の1、〔2〕 が約4分の1、〔3〕 が約4割となっている。
 このうち、これを満たしていない者は不合格となる〔2〕 についてみると、その評価点の配分が50%以上となっているものが、20年度(9月まで)で3.1%見受けられた。また、〔2〕 として過去の契約実績を求めているかどうかをみると、19年度では32.3%、20年度(9月まで)では36.6%のものにおいて過去の契約実績を必須項目としている。

図表2-29 総合評価方式による契約における評価点の配分等の状況

(単位:%)

区分
年度
評価点の配分(平均)
〔2〕 の評価点の配分が50%以上のものの割合
〔2〕 として過去の契約実績を求めているものの割合
〔1〕
入札価格
〔2〕
技術的要件(必須項目)
〔3〕
技術的要件(その他の項目)
平成19年度
33.2
25.6
41.2
32.3
20年度(9月まで)
33.4
25.5
40.7
3.1
36.6

(イ) 企画競争の実施状況

a 要領等の整備

 29省庁の内部部局における企画競争の実施に係る要領等の整備状況を、21年4月1日現在でみると、図表2-30のとおり、〔1〕 部内で統一的な要領等を作成しているのは19省庁となっている。また、〔2〕 統一的な要領等は作成していないが企画競争を実施する都度、契約案件ごとに事前に作成するとしているのは10省庁であり、このうち、今後、統一的な要領等を作成する予定としている4省庁を除く6省庁は、企画競争を実施する契約が少ないことなどから今後も統一的な要領等の作成予定はないとしている。

図表2-30 企画競争の実施に係る要領等の整備状況(平成21年4月1日現在)
要領等の整備状況
省庁
統一的な要領等を作成しているもの
企画競争を実施する都度要領等を作成するとしているもの
要領等を作成していないもの
(参考)
公益法人を契約相手方とする調査研究事業に係る競争契約(総合評価方式)の件数(平成19年度)
内閣
内閣官房
1
内閣府
内閣本府
15
宮内庁
公正取引委員会
警察庁
○※
金融庁
1
総務省
総務本省
9
公害等調整委員会
消防庁
12
法務省
法務本省
外務省
外務省
26
財務省
財務本省
8
国税庁
文部科学省
文部科学本省
73
文化庁
厚生労働省
厚生労働本省
9
社会保険庁
農林水産省
農林水産本省
215
林野庁
57
水産庁
53
経済産業省
経済産業本省
○※
63
資源エネルギー庁
○※
1
特許庁
11
中小企業庁
○※
国土交通省
国土交通本省
385
気象庁
海上保安庁
環境省
環境省
103
防衛省
防衛省
8
29
19
10
1,050
(注)
 「企画競争を実施する都度要領等を作成するとしているもの」の「※」は、今後、統一的な要領等を作成する予定としているものを示す。

b 参加者の募集方法

 企画競争を行うに当たっての参加者の募集方法の状況をみると、図表2-31のとおり、広く一般に募集している「一般募集」がほとんどであるが、参加者を限定して募る「限定募集」も、19年度で2.1%、20年度(9月まで)で2.8%見受けられる。

図表2-31 企画競争における参加者の募集方法の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
募集方法
年度
一般募集
限定募集
平成19年度
1,028
(97.9)
22
(2.1)
1,050
(100)
20年度(9月まで)
961
(97.2)
28
(2.8)
989
(100)

c 審査を実施している者の構成

 企画競争において審査を実施している者の構成の状況をみると、図表2-32のとおりとなっており、調査研究事業の担当課職員のみが審査を行っているものが、19年度では14.2%、20年度(9月まで)では18.7%見受けられる。

図表2-32 企画競争において審査を実施している者の構成の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
審査を実施している者
年度
担当課職員
 
契約担当課職員
担当課及び契約担当課以外の職員
外部専門家・外部有識者
その他
うち担当課職員のみ
平成19年度
971
(92.5)
149
(14.2)
522
(49.7)
518
(49.3)
172
(16.4)
22
(2.1)
1,050
(100)
20年度(9月まで)
934
(94.4)
185
(18.7)
468
(47.3)
500
(50.6)
183
(18.5)
30
(3.0)
989
(100)
(注)
 審査を実施している者の区分が複数ある場合があるため、審査を実施している者別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。

d 評価項目及び評価点配分の事前開示

 企画競争における評価項目及び評価点配分の事前開示の状況をみると、図表2-33のとおり、19年度では、評価項目は80.6%の契約で事前に開示されている一方、評価点配分は44.1%の事前開示にとどまっている。また、20年度(9月まで)では、評価項目、評価点配分共に、事前開示の割合が上昇している。

図表2-33 企画競争における評価項目及び評価点配分の事前開示の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
区分
年度
件数
評価項目
評価点配分
事前開示している
事前開示していない
事前開示している
事前開示していない
平成19年度
1,050
(100)
846
(80.6)
204
(19.4)
463
(44.1)
587
(55.9)
20年度(9月まで)
989
(100)
893
(90.3)
96
(9.7)
639
(64.6)
350
(35.4)

e 価格面の評価

 企画競争の実施においても、価格面の妥当性を検証するなどのため、応募者が提示した見積価格を評価の対象としているものが見受けられる。
 そこで、価格面の評価の状況をみると、図表2-34のとおり、19年度では22.2%、20年度(9月まで)では8.6%で価格面の評価が実施されている。そして、その評価点の配分は、平均で、19年度では12.7%、20年度(9月まで)では6.5%となっているが、30%以上となっているものが、19年度では8.2%、20年度(9月まで)では3.5%見受けられた。

図表2-34 企画競争における価格面の評価の状況

(単位:件、%)

区分
年度
件数
(A)
価格面の評価の実施
価格面の評価点の配分
実施件数
(B)
割合
(B)/(A)
評価点の平均値
価格面の評価点の配分が30%以上のものの割合
平成19年度
1,050
233
22.2
12.7
8.2
20年度(9月まで)
989
85
8.6
6.5
3.5

オ 個別の契約における競争性等

 抽出した対象契約について、競争契約や企画競争等における入札や応募の手続等、総合評価方式や企画競争における審査の実施方法等を検査したところ、競争性及び透明性の確保に関して検討の必要があったと認められたものが25件(この中には、第2-2-(3)(4) 及び(5) と重複している事態が4件ある。)見受けられた。主なものを示すと次のとおりである。

<事例>


[企画競争における募集期間が短いもの]
〔1〕  国土交通本省は、平成19年度に、船内居住環境を改善するためのモデル設計を行う業務について、企画随契(1者応募)により財団法人日本造船技術センターと確定契約(契約金額6,993千円)を行った。
 しかし、本件契約に係る手続については、19年5月14日に公示予定情報を公開した後、6月1日に募集公告を行ったが、同月11日に提案要領の最終確認を行うためとして説明会を開催して、その翌日の12日を応募受付締切日としていて、説明会の開催日と応募受付締切日までの期間が極めて短くなっており、応募できる者が限定された可能性があることから、より多くの者の参加が可能となるよう、説明会と応募締切日の間に必要な日程を十分確保すべきであったと認められる。

[履行期間が短いもの]
〔2〕  水産庁は、平成19年度に、共有化された津波観測データの活用により、津波発生時の漁港地域の初動体制等を検討する調査業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人漁港漁場漁村技術研究所と概算契約(契約金額2,600千円)を行った。
 しかし、本件契約の履行期間は20年3月10日から同月26日までとなっていて、業務の履行のためには短期間で多数の人員を要することになり、特定の者以外は応募が困難になることから、より多くの者の募集が可能となるよう、履行期間を十分確保すべきであったと認められる。

[履行期間の設定について留意すべきであったもの]
〔3〕  環境省関東地方環境事務所は、平成18年度に、小笠原地域の外来動物対策に係る調査業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人自然環境研究センターと、履行期間を19年2月1日から同年3月30日までとして、確定契約(契約金額28,192千円)を行った。
 しかし、上記の履行期間では業務に対する地元住民の理解を得るのに時間を要したなどの理由により、2度の契約変更(最終変更後の履行期限:同年6月29日)を経たうえで業務が完了されており、当初の履行期間では契約の履行が困難であったと考えられることから、より多くの者の参加が可能となるよう、履行期間の設定について十分留意すべきであったと認められる。

[公募の条件が制限的なものとなっているものなど]
〔4〕  宮内庁は、平成19年度に、皇居西地区の伝統的な木造構築物に係る現地調査、耐震性評価等を行う業務について、公募を行ったところ応募者がいなかったため、従来の契約相手方である財団法人建築保全センターと随意契約により確定契約(契約金額19,425千円)を行った。
 しかし、上記公募の条件について、「中立性・公平性に関する要件」として、「建築物の設計(積算を含む。)、建設を業として行っていないこと」を示しているが、この条件の必要性に疑義があること、現に同財団法人では、業務の一部を建設業者1者に再委託(14,700千円)していることから、より多くの者の募集が可能となるよう、上記の公募要件を緩和すべきであったと認められる。また、公募に当たっては、その公告において契約予定相手方を記載していて、これにより公募への参加が制限された可能性があるため、特定の業者名を契約予定相手方として表示せずに公告すべきであったと認められる。

[公募において契約予定相手方名を表示しているものなど]
〔5〕  環境省は、平成20年度に、希少鳥類の定点調査業務について、公募を行ったところ応募者がいなかったため、従来の契約相手方である財団法人日本鳥類保護連盟と随意契約により確定契約(契約金額1,799千円)を行った。
 しかし、上記の公募に当たっては、その公告において契約予定相手方を記載していて、これにより公募への参加が制限された可能性があるため、特定の業者名を契約予定相手方名として表示せずに公告すべきであったと認められる。また、全国60か所に120人の調査員を確保できることを公募条件として示しているが、実際の調査員が40人であったことから、より多くの者の募集が可能となるよう、上記の公募要件を緩和すべきであったと認められる。

[応募要領における業務に関連する著作権の記載を明確にすべきであったもの]
〔6〕  農林水産本省は、平成19年度に、環境配慮に関する情報収集や意見交換を行うネットワーク(環境情報掲示板)の運営・管理、環境配慮の取組事例の調査、データベースの更新等を行う業務について、企画随契(1者応募)により、社団法人農村環境整備センターと、履行期間を19年10月1日から20年3月25日までとして、概算契約(契約金額16,000千円、最終変更後19,600千円)を行い、事業完了後に同社団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を最終変更額と同額と確定し、支払っていた。
 しかし、企画競争に当たって示した応募要領だけをみると、環境情報掲示板の著作権は同本省と同社団法人の両者に帰属し、その改良には同社団法人の了解が必要と記載されており、同社団法人以外の者が応募可能であることが明確となっていないが、実際には、同社団法人に帰属しているのは同掲示板に掲載されている情報の一部であることから、説明会で同掲示板の著作権について説明しているとのことであるが、より多くの者の参加が可能となるよう、応募要領において同掲示板の著作権に係る記載内容を明確にすることについて検討すべきであったと認められる。

[納入実績の要件が制限的なものとなっているもの]
〔7〕  総務本省は、平成19年度に、無線通信システムの技術基準等を策定する際の基礎データとするため、電波雑音の調査を行う業務について、一般競争契約(1者応札)により、社団法人電波産業会と確定契約(契約金額165,900千円)を行った。
 しかし、本件契約に係る手続については、入札参加者が提出を義務付けられている「適合証明書」において、「過去5年間において、電波の雑音に関する調査研究等の納入実績が5件以上あること」が参加条件とされているが、過去の実績をこのように限定する必要はないと考えられることから、より多くの者の参加が可能となるよう、この条件を緩和すべきであったと認められる。

[企画競争における審査の方法について検討すべきであったもの]
〔8〕  外務省は、平成19年度に、欧州委員会における研究開発枠組計画の概要や同枠組計画に参加する場合の規制等を調査する業務について、企画随契(3者応募)により社団法人日本外交協会と確定契約(契約金額3,787千円)を行った。
 しかし、企画案の審査は、〔1〕 企画書の審査と〔2〕 ヒアリングにより実施されており、〔1〕 の際に、(a)団体としての類似調査業務の経験と調査実施能力等、(b)業務実施予定者としての類似業務の経験に、合わせて100点満点中25点を配分するとともに、〔2〕 においても業務実施予定者の経験・能力に50点満点中20点を配点しているが、類似の項目について二重に審査する必要性はないと考えられることから、審査の方法について検討すべきであったと認められる。

[総合評価方式における評価基準が制限的なものとなっているもの]
〔9〕  資源エネルギー庁は、平成20年度に、石油製品の適正な流通の確保及び安定供給のため、石油製品の価格について定期的に調査する業務について、一般競争入札(総合評価方式)(1者応札)により財団法人日本エネルギー経済研究所と概算契約(契約金額267,960千円)を行った。
 しかし、技術等の審査方法については、「組織としての専門性」に係る評価基準として、「本事業の従業者の実績が豊富である」(必須項目:200点満点中10点)を設定しているが、実績が「豊富」であることまで必須項目とする必要はないと考えられることから、より多くの者の参加が可能となるよう、この審査項目を緩和すべきであったと認められる。

[総合評価方式における審査の方法について検討すべきであったもの]
〔10〕  気象庁は、平成20年度に、火山噴火予知連絡会の検討資料とするため、中長期的に噴火の可能性の高い火山に関する資料の調査・収集等を行う業務について、一般競争契約(総合評価方式)(1者応札)により、財団法人砂防・地すべり技術センターと確定契約(契約金額4,620千円)を行った。
 しかし、技術等の審査方法については、事業実施担当部局等の職員8名が合議により評価を行っているが、特定の職員の評価が全体の評価に影響を及ぼすおそれがあると考えられることから、審査の公正性及び透明性を向上させるため、各職員が個別に評価した結果に基づいて審査すべきであったと認められる。

[継続契約における各年度の仕様書の記載が明確でないもの]
〔11〕  水産庁は、平成18、19両年度に、漁港海岸保全施設の整備状況の把握、分析等により今後の整備目標等の検討を行う業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人漁港漁場漁村技術研究所と、履行期間をそれぞれ18年11月15日から19年3月23日まで、19年4月2日から20年3月14日までとして、概算契約(契約金額:18年度3,950千円、19年度4,000千円)を行った。
 しかし、実施要領では、18年度に、〔1〕 漁港海岸保全施設の整備状況と課題の把握・分析、〔2〕 今後の整備目標の検討、〔3〕 アウトカム指標に関する検討等のすべての業務を上記の履行期間中に実施することとされ、19年度は、〔1〕 に関して津波対策等の具体的な観点が追加されたほかは、おおむね18年度と同様の業務を実施することとされており、〔1〕 〜〔3〕 の業務を両年度で履行するように受け取られるものとなっているため、18年度の契約相手方以外の者が19年度の企画競争に参加することは困難であったと考えられることから、より多くの者の参加が可能となるよう、本件契約における各年度の業務の範囲を実施要領で明確にすべきであったと認められる。

[業務を一括することにより経済的な契約が可能となるもの]
〔12〕  国土交通本省は、平成19年度に、国土交通白書の第I部(総論)の基礎資料とするため、「地球温暖化に係る交通・物流に関する意識調査」及び「地球温暖化に係るまちづくりと住まい方に関する意識調査」を行う業務について、一般競争契約(それぞれ2者応札、1者応札)により、社団法人中央調査社と確定契約(契約金額:各2,047千円、計4,095千円)を行い、本件業務が完了したとして、それぞれ上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、同社団法人の見積書や成果物等を検査したところ、本件業務のように定型的な世論調査では、質問の単価はその数の増加に従って段階的に低減することとなっており、両業務を一括して契約を行うことにより安価な発注を行うことができたと考えられ、本件契約の発注方法について検討すべきであったと認められる。

 また、各府省等の中には、競争性を高めるための工夫を行っているものがあり、この事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>

参考〔1〕  経済産業本省は、公共調達の適正化を推進する中で、多数の競争参加者を確保するための取組として、「『委託調査』及び『広報』の今後の執行について」(平成20年8月)を定めており、調査・広報事業に係る契約については、競争参加者が当該事業に係る入札書の作成等に必要、十分な準備期間を確保できるように、公告期間を20日間以上設定することとしており、これを「委託事業等における総合評価落札方式による一般競争入札マニュアル」(20年11月)に反映している。

(3) 予定価格作成の状況

 国は、競争契約又は随意契約を行う場合、契約金額を決定するための基準となる予定価格を当該契約に係る仕様書等に基づいて作成することとされている。そして、予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないとされている。
 以下、調査研究事業に係る契約について、19年度分を中心に、各府省等における予定価格の算定方法、算定方法別の人件費単価及び諸経費の状況を分析するとともに、参考として公益法人の財務データによる諸経費率の試算を行うこととする。

ア 予定価格の算定方法

 調査研究事業に係る契約の積算項目としては、一般的に、人件費、業務費(旅費、諸謝金、事務用品費等)等の直接費と、一般管理費、技術経費等の間接費(以下、この間接費を「諸経費」という。)とがあるが、個別の契約における積算項目は区々となっていて、統一的に比較しにくい面がある。
 そこで、対象契約の積算項目のうち、主に共通的に積算されている人件費(人件費単価×人日数)及び諸経費について、次の四つに分類して算定方法の状況(複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。)をみると、図表2-35のとおりとなっている。
〔1〕 「積算基準による算定」(各府省等で定めた積算基準を使用又は準用しているもの)
〔2〕 「参考見積書による算定」(相手方から徴した参考見積書又は相手方が定めている受託規程等に記載されている人件費単価等を参考にしているもの)
〔3〕 「過去の実績による算定」(過去の同種の契約実績や予定価格を参考にしているもの)
〔4〕 「市販資料による算定」(市販資料を参考にしているもの)
 すなわち、19年度では、人件費のうちの人件費単価及び諸経費については、「積算基準による算定」の件数割合が最も高く約8割を占めている。一方、人件費のうちの人日数については、「過去の実績による算定」の件数割合が42.5%と最も高く、次いで、「参考見積書による算定」(31.2%)、「積算基準による算定」(26.1%)となっている。
 そして、20年度(9月まで)では、人件費単価、人日数及び諸経費率のすべてについて、「積算基準による算定」の件数割合が若干減少している一方、「参考見積書による算定」の件数割合は増加している。

図表2-35 積算項目別の算定方法の状況

〔1〕 人件費単価

〔1〕人件費単価

(注)
 複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。〔2〕 人日数、〔3〕 諸経費、図表2-38及び図表2-40においても同じ。

〔2〕 人日数

〔2〕人日数

〔3〕 諸経費

〔3〕諸経費

 また、予定価格の算定方法のうち、相手方の情報に基づいて積算を行う「参考見積書による算定」(受託規程等を参考にしているものを除く。)について、参考見積書を徴した業者数の状況をみると、図表2-36のとおり、人件費単価、人日数及び諸経費のいずれも1者が70%以上を占めている。

図表2-36 参考見積書を徴した業者数の状況
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
業者数等
区分
「参考見積書による算定」としている契約
1者
2者
3者
4者
5者以上
人件費単価
平成19年度
276
(100)
204
(73.9)
43
(15.6)
19
(6.9)
6
(2.2)
4
(1.4)
20年度(9月まで)
143
(100)
103
(72.0)
20
(14.0)
17
(11.9)
1
(0.7)
2
(1.4)
人日数
平成19年度
618
(100)
496
(80.3)
87
(14.1)
19
(3.1)
8
(1.3)
8
(1.3)
20年度(9月まで)
368
(100)
294
(79.9)
44
(12.0)
20
(5.4)
4
(1.1)
6
(1.6)
諸経費
平成19年度
312
(100)
240
(76.9)
48
(15.4)
15
(4.8)
5
(1.6)
4
(1.3)
20年度(9月まで)
164
(100)
129
(78.7)
18
(11.0)
14
(8.5)
1
(0.6)
2
(1.2)
(注)
 受託規程等を参考にしているものを除く。図表2-37においても同じ。

 これを契約方式別にみると、図表2-37のとおり、人件費単価、人日数及び諸経費のいずれも企画随契及び企画競争等を経ない随意契約における1者の件数割合は、競争契約と比較して、80〜90%台と極めて高い状況となっている。

図表2-37 契約方式別にみた参考見積書を徴した業者数の状況
〔1〕 人件費単価
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
業者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
合計
平成19年度
競争契約
13
(18.3)
36
(50.7)
17
(23.9)
2
(2.8)
3
(4.2)
71
(100)
276
随意契約
191
(93.2)
7
(3.4)
2
(1.0)
4
(2.0)
1
(0.5)
205
(100)
 
うち企画随契
169
(94.9)
6
(3.4)
1
(0.6)
1
(0.6)
1
(0.6)
178
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約
13
(81.3)
3
(18.8)
16
(100)
20年度(9月まで)
競争契約
8
(20.5)
14
(35.9)
16
(41.0)
1
(2.6)
39
(100)
143
随意契約
95
(91.3)
6
(5.8)
1
(1.0)
1
(1.0)
1
(1.0)
104
(100)
 
うち企画随契
85
(92.4)
4
(4.3)
1
(1.1)
1
(1.1)
1
(1.1)
92
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約
〔2〕 人日数
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
業者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
合計
平成19年度
競争契約
30
(23.6)
74
(58.3)
15
(11.8)
2
(1.6)
6
(4.7)
127
(100)
618
随意契約
466
(94.9)
13
(2.6)
4
(0.8)
6
(1.2)
2
(0.4)
491
(100)
 
うち企画随契
272
(94.1)
10
(3.5)
2
(0.7)
3
(1.0)
2
(0.7)
289
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約
56
(93.3)
1
(1.7)
3
(5.0)
60
(100)
20年度(9月まで)
競争契約
20
(28.2)
32
(45.1)
16
(22.5)
1
(1.4)
2
(2.8)
71
(100)
368
随意契約
274
(92.3)
12
(4.0)
4
(1.3)
3
(1.0)
4
(1.3)
297
(100)
 
うち企画随契
251
(92.3)
10
(3.7)
4
(1.5)
3
(1.1)
4
(1.5)
272
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約
〔3〕 諸経費
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
業者数
区分
1者
2者
3者
4者
5者以上
合計
平成19年度
競争契約
15
(20.5)
41
(56.2)
13
(17.8)
1
(1.4)
3
(4.1)
73
(100)
312
随意契約
225
(94.1)
7
(2.9)
2
(0.8)
4
(1.7)
1
(0.4)
239
(100)
 
うち企画随契
174
(95.1)
6
(3.3)
1
(0.5)
1
(0.5)
1
(0.5)
183
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約
37
(92.5)
3
(7.5)
40
(100)
20年度(9月まで)
競争契約
13
(32.5)
13
(32.5)
13
(32.5)
1
(2.5)
40
(100)
164
随意契約
116
(93.5)
5
(4.0)
1
(0.8)
1
(0.8)
1
(0.8)
124
(100)
 
うち企画随契
95
(92.2)
5
(4.9)
1
(1.0)
1
(1.0)
1
(1.0)
103
(100)
うち企画競争等を経ない随意契約

イ 算定方法別の人件費単価及び諸経費の状況

 個別の契約における状況の比較が可能な人件費単価及び諸経費について、算定方法別に、その状況をみると、次のとおりである。

(ア) 算定方法別の人件費単価

 対象契約の人件費単価には、〔1〕 人件費のみを計上しているものと、〔2〕 人件費に間接費を含めて計上しているものとがある。
 そこで、個別の契約における状況を比較するために〔1〕 について分析することとして、19年度の対象契約の中から予定価格算定調書を徴した96件(複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。)について、人件費単価の分布状況を算定方法別にみると、図表2-38のとおりとなっている。
 これをみると、契約により内容や履行の難易度に違いがあるため一律に比較できないものの、「積算基準による算定」は8,847円/日〜69,636円/日(平均30,686円/日)であるのに対して、「参考見積書による算定」は7,238円/日〜87,000円/日(平均42,504円/日)となっていて、「参考見積書による算定」は「積算基準による算定」と比較して若干ばらつきが大きく、平均も高くなっている。

図表2-38 算定方法別の人件費単価の分布状況(平成19年度)

(単位:件、円/日)

算定方法
契約件数
人件費単価
左の平均値
積算基準による算定
52
8,847〜69,636
30,686
参考見積書による算定
27
7,238〜87,000
42,504
過去の実績による算定
13
13,438〜67,185
33,863
市販資料による算定
4
22,800〜36,153
27,674
96
7,238〜87,000
34,315
(注)
 人件費単価は、契約ごとの平均単価である。

(注)

(イ) 算定方法別の諸経費

 諸経費は、通常、対象経費に諸経費率を乗じて算定されている。今回会計実地検査を実施した29省庁の内部部局における諸経費の算定に係る積算基準等の状況をみると、図表2-39のとおり、各省庁間で、諸経費率の水準や対象経費の範囲が区々となっている。

図表2-39 諸経費の算定に係る積算基準等の状況(平成21年4月1日現在)
積算基準等の状況
省庁
諸経費率
左の率を乗じる対象経費
根拠
備考
(参考)
人件費単価
(単位:円/日)
内閣
内閣官房
10%以内
人件費、事務費の合計
調査に関する入札に係る総合評価落札方式の標準マニュアル
 
7,238〜58,061
内閣府
内閣本府
10%以内
人件費、事務費の合計
調査に関する入札に係る総合評価落札方式の標準マニュアル
 
8,847〜69,636
宮内庁
業務に合わせて140%、100%、30%
直接人件費,試験費,間接費の合計
官庁施設の設計業務等積算基準」(国土交通省大臣官房官庁営繕部)及び「設計業務等標準積算基準書」(国土交通省)を準用
技術経費を含む。
23,766〜28,017
公正取引委員会
10%
人件費、事務費の合計
民間業者の標準的な率として適用
 
22,800〜28,944
警察庁
90%
直接人件費
 
35,252〜36,289
金融庁
 
総務省
総務本省
 
19,528〜61,696
公害等調整委員会
 
29,267
消防庁
 
35,000〜45,633
法務省
法務本省
 
外務省
外務省
おおむね10%
人件費、事務費の合計
過去の各種契約における諸経費率を勘案
 
46,928
財務省
財務本省
0〜20%
人件費、海外出張費
 
45,222〜87,000
国税庁
 
文部科学省
文部科学本省
おおむね10%
人件費、事務費の合計
「委託事業等における一般競争入札マニュアル」
 
12,000〜39,736
文化庁
おおむね10%
人件費、事務費の合計
「委託事業等における一般競争入札マニュアル」
 
31,454
厚生労働省
厚生労働本省
 
13,438〜36,153
社会保険庁
 
農林水産省
農林水産本省
100%以内
直接人件費
「公益法人に対する委託契約について」
 
26,000〜38,260
林野庁
100%以内
直接人件費
「公益法人に対する委託契約について」
 
30,655〜35,000
水産庁
100%以内
直接人件費
「公益法人に対する委託契約について」
 
25,322〜38,487
経済産業省
経済産業本省
原則10%
直接人件費
予定価格積算単価資料
 
19,778〜57,121
資源エネルギー庁
原則10%
直接人件費
予定価格積算単価資料
 
28,949〜77,991
特許庁
原則10%以内
直接人件費、事業費(外注費、再委託費を除く。)
委託費に係る事務執行マニュアル
 
21,333〜67,185
中小企業庁
10%以内
直接人件費
予定価格積算単価資料
 
53,313〜86,659
国土交通省
国土交通本省
140%〜180%
直接人件費
類似過去事例・参考見積・「設計業務等積算基準」
技術経費を含む。
24,791〜39,224
気象庁
140%〜180%
直接人件費
「建設業務等標準積算基準書」
技術経費を含む。
26,247〜35,060
海上保安庁
140%
直接人件費
「港湾請負工事積算基準」(国土交通省)を準用
技術経費を含む。
24,098〜35,099
環境省
環境省
15%
人件費、事務費(外注費を除く。)
「平成19年度調査解析・研究等請負契約予定価格調書の積算方法について」
 
28,892〜42,220
防衛省
防衛省
 
23,831〜31,074
(注)
 「(参考)人件費単価」欄は、平成19年度の対象契約の中から予定価格調書を徴した142件のうち直接人件費の記載のないものなどを除いた133件について、契約ごとの平均単価を求めたものである。

 各府省等は、上記の積算基準等を様々な調査研究事業に適用して契約業務を実施している。そこで、個別の契約における実際の諸経費の算定状況をみるため、19年度の対象契約の中から予定価格算定調書を徴した91件(複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。)について、諸経費を、人件費に事務費等を加えた直接費全体で除した場合の諸経費率(以下「直接費に対する諸経費率」という。)として計算すると、図表2-40のとおり、「積算基準による算定」及び「参考見積書による算定」ではばらつきが大きく、平均では「積算基準による算定」で最も高くなっていて、98.8%となっている。
 なお、各府省等から調査研究業務を受注する公益法人は様々な内容の業務を実施しているが、調査研究事業の中には、契約相手方となる公益法人の収支計算書等の財務データに基づいて、個別の契約に係る諸経費率を算定しているものが見受けられることから、今回会計実地検査を実施した37公益法人のうち管理費を把握することのできる36法人について、それぞれの19事業年度の収支計算書における「管理費支出」を「事業費支出」で除するなどして、各公益法人の直接費に対する諸経費率を参考のために試算すると、図表2-40のとおりとなっている。
 すなわち、これらの法人における直接費に対する諸経費率は1.6%〜145.4%であり、平均では、25.2%となっていて、個別の契約について算定した諸経費率(平均56.5%)の方が公益法人の財務データから算定した諸経費率より高くなっている。

図表2-40 個別の契約データにおける直接費に対する諸経費率(平成19年度)

(単位:%、%ポイント)

各府省所管の公益法人を契約相手方として国が発注している調査研究事業の状況の図1

注(1)
 「市販資料による算定」は該当する契約がない。
注(2)
 「会計実地検査を実施した公益法人(調査研究事業に係る契約を受注)のデータ」の36法人の事業年度は、平成19年4月〜20年3月(35法人)及び19年7月〜20年6月(1法人)である。

ウ 個別の契約における予定価格の算定等

 抽出した対象契約について、各府省等における予定価格の算定状況を検査したところ、合理的な諸経費の算定に留意する必要があると認められたものが3件(この中には、第2-2-(2) 及び(4) と重複している事態が2件ある。)見受けられた。主なものを示すと次のとおりである。

<事例>

[同一の財団法人が実施する業務に係る諸経費が大きく異なっているもの]
〔13〕  (a)経済産業本省及び(b)国土交通本省は、平成19年度に、以下の調査業務について、財団法人日本自動車研究所と契約を締結している。
(a)カーナビなどのITS(高度道路交通システム)を国際規格化するための調査[企画随契(1者応募(他の1者との共同応募))、概算契約、契約金額171,000千円(同財団法人分122,847千円)]
(b)自動車に装着する排出ガス低減装置に関する調査[一般競争契約(1者応札)、確 定契約、契約金額3,267千円]
 これら契約の予定価格算定調書等を検査したところ、予定価格の算定における諸経費が、(a)直接費全体(外注費を除く。)の10%、(b)直接人件費の140%(技術経費を含む。)として積算されており、これを「直接費に対する諸経費率」に換算すると、下表のとおりとなっている。

契約
直接費に対する諸経費率
(a)
6.4%
(b)
111.4%

 このように、調査業務の内容等は異なるものの、同一の財団法人が実施する調査業務に係る諸経費が大きく異なっていることから、合理的な諸経費の算定に留意する必要がある。

[同一の財団法人が実施する業務に係る諸経費が区々となっているもの]
〔14〕  (a)環境省、(b)文化庁及び(c)農林水産本省は、平成19年度に、以下の調査業務について、財団法人自然環境研究センターと契約を締結している。
(a)サンゴ礁の保全を目的とした国際的な協力の枠組みに係る調査等[随意契約、確 定契約、契約金額38,220千円]
(b)カモシカのモニタリング調査結果の集計、解析等[公募を経た随意契約、確定契 約、契約金額3,494千円]
(c)外来生物に関する実態調査等[企画随契(1者応募)、概算契約、契約金額6,289千円]
 これら契約の予定価格算定調書等を検査したところ、予定価格の算定における諸経費が、(a)直接費全体(外注費を除く。)の15%、(b)直接費全体(印刷製本費等を除く。)の10%、(c)直接人件費の80%として積算されており、これを「直接費に対する諸経費率」に換算すると、下表のとおりとなっている。

契約
直接費に対する諸経費率
(a)
13.6%
(b)
9.9%
(c)
41.6%

 このように、調査業務の内容等は異なるものの、同一の財団法人が実施する調査業務に係る諸経費が区々となっていることから、合理的な諸経費の算定に留意する必要がある。

(4) 契約の履行及びその確認の状況

 調査研究事業に係る契約においては、調査研究の結果として有用な成果物が得られることが重要であり、このため、契約の履行体制の確立と発注者におけるその把握が不可欠と考えられる。また、契約の適正な履行を確保するために、契約担当官等は、仕様書に記載した業務内容に変更が生じた場合には適宜契約変更を行うとともに、給付の完了を確認するための検査を行う必要がある。
 以下、調査研究事業に係る契約について、契約の履行体制等の把握、再委託の状況、概算契約における額の確定の状況を分析することとする。

ア 契約の履行体制等の把握

 各府省等は、業務の履行状況を把握するため、公益法人から業務実施計画等のスケジュールや業務担当者のリストなどを事前に提出させて、これらを契約書の一部としたり、業務着手後の打合せなどの際に確認したりなどしている。
 一方、契約を受注した公益法人は、契約対象業務の具体的内容や履行期限等を考慮して、必要に応じて業務の一部を更に第三者に再委託(下請を含む。以下同じ。)するなどして業務を履行している。再委託については、これを無条件に認めると、当該契約相手方を選定した発注者の意図に沿わない結果となったり、契約履行の責任の所在が不明確になって適正な履行の確保ができなくなったりするおそれがあるため、一括再委託が禁止されており、一般的に、再委託には発注者の承認が必要とされている。
 各府省等の中には、再委託の状況を把握するため、公益法人から事前に提出させた履行体制図を審査して、これを契約の一部としているところもあるが、大部分の府省等は、再委託に係る承認手続のために公益法人からその承認申請書が提出された段階になって再委託の状況を把握する場合が多い。

イ 再委託の状況

 19年度の対象契約について再委託の状況をみると、図表2-41のとおり、再委託が行われているとしている契約(以下「元契約」という。)の割合は、件数で13.4%、支払金額で20.2%となっており、この割合は、自府省所管公益法人分でもほぼ同様となっている。

図表2-41 再委託の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

区分
契約相手方
再委託が行われている
再委託が行われていない
再委託の有無を把握していない
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
件数
支払金額
各府省所管の公益法人
467
(13.4)
25,450
(20.2)
2,939
(84.0)
99,495
(78.9)
92
(2.6)
1,115
(0.9)
3,498
(100)
126,060
(100)
 
うち自府省所管公益法人
419
(13.9)
23,731
(20.2)
2,517
(83.6)
92,764
(79.0)
74
(2.5)
907
(0.8)
3,010
(100)
117,403
(100)

 次に、19年度の元契約467件について、再委託率(国の支払金額に占める再委託支払金額の割合をいう。)の状況をみると、図表2-42のとおり、再委託率が50%以上となっている契約の割合は件数で9.0%、支払金額で12.9%となっており、このうち再委託率が90%以上となっているものは件数で0.9%、支払金額で4.9%となっている。

図表2-42 再委託率の状況(平成19年度)

(単位:件、百万円、%)

区分
再委託率
件数
件数割合
支払金額
支払金額割合
 
90%以上
4
0.9
1,251
4.9
80%以上90%未満
6
1.3
520
2.0
70%以上80%未満
5
1.1
196
0.8
60%以上70%未満
6
1.3
549
2.2
50%以上60%未満
21
4.5
759
3.0
50%以上
42
9.0
3,277
12.9
 
40%以上50%未満
120
25.7
6,141
24.1
30%以上40%未満
95
20.3
3,934
15.5
20%以上30%未満
84
18.0
5,175
20.3
10%以上20%未満
65
13.9
2,324
9.1
10%未満
61
13.1
4,595
18.1
50%未満
425
91.0
22,172
87.1
467
100
25,450
100

ウ 概算契約における額の確定の状況

 国が概算契約により発注する調査研究事業は、成果物が完成した時点で、それに要した実際の事業費が決まり、その後、当初契約金額(変更契約を実施している場合は変更後契約金額)を上限とした額の確定を行って最終支払金額とするものである。
 この額の確定の状況についてみると、以下のとおりである。

(ア) 額の確定方法に係る要領等の整備状況

 今回会計実地検査を行った29省庁の内部部局における契約金額の確定方法に係る要領等の整備状況を、21年4月1日現在でみると、図表2-43のとおり、部内で統一的な要領等を作成しているのは13省庁となっており、このうち10省庁は現地調査による確認に関する規定を設けている。

図表2-43 額の確定方法に係る要領等の整備状況(平成21年4月1日現在)
要領等の整備状況
省庁
統一的な要領等を作成しているもの
左の要領等における以下の項目に関する規定の有無
現地調査による確認
提出書類による確認
 
左のうち、領収書、作業日報等の根拠書類による確認
内閣
内閣官房
内閣府
内閣本府
宮内庁
公正取引委員会
警察庁
金融庁
総務省
総務本省
公害等調整委員会
消防庁
法務省
法務本省
外務省
外務省
財務省
財務本省
国税庁
文部科学省
文部科学本省
文化庁
厚生労働省
厚生労働本省
社会保険庁
農林水産省
農林水産本省
林野庁
水産庁
経済産業省
経済産業本省
資源エネルギー庁
特許庁
中小企業庁
国土交通省
国土交通本省
気象庁
海上保安庁
環境省
環境省
防衛省
防衛省
29
13
10
13
13

(イ) 額の確定方法の状況

 19年度の対象契約のうち概算契約によるものについて、額の確定方法の状況をみると、図表2-44のとおり、現地で書類等により確認しているものの件数割合は56.4%、提出書類だけで確認しているものの件数割合は43.6%となっている。
 これを府省等別にみると、概算契約が10件を超える7府省のうち、現地で書類等により確認しているものの件数割合が50%以上となっているのは、経済産業省(98.4%)、文部科学省(61.9%)及び内閣府(61.3%)であり、提出書類だけで確認しているものの件数割合が50%以上となっているのは国土交通省(99.0%)、環境省(94.7%)及び農林水産省(56.7%)となっている。
 概算契約に係る額の確定に当たっては、その適正を期するため、統一的な要領等を作成するとともに、必要に応じて、経費の区分経理や証拠書類等の作成の状況等を現地で確認することが重要である。

図表2-44 額の確定方法の状況(平成19年度)
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
確定方法
府省等
現地で書類等により確認するとともに提出書類で確認しているもの
現地で書類等により確認しているもの
提出書類だけで確認しているもの
合計
内閣
-
2
(33.3)
2
(33.3)
4
(66.7)
6
(100)
内閣府
4
(12.9)
15
(48.4)
19
(61.3)
12
(38.7)
31
(100)
 
警察庁
-
-
-
-
-
金融庁
-
-
-
1
(100)
1
(100)
総務省
-
-
-
9
(100)
9
(100)
法務省
-
-
-
-
-
外務省
1
(5.6)
-
1
(5.6)
17
(94.4)
18
(100)
財務省
-
-
-
7
(100)
7
(100)
文部科学省
73
(61.9)
-
73
(61.9)
45
(38.1)
118
(100)
厚生労働省
-
1
(25.0)
1
(25.0)
3
(75.0)
4
(100)
農林水産省
116
(35.6)
25
(7.7)
141
(43.3)
185
(56.7)
326
(100)
経済産業省
158
(50.2)
152
(48.3)
310
(98.4)
5
(1.6)
315
(100)
国土交通省
-
1
(1.0)
1
(1.0)
98
(99.0)
99
(100)
環境省
2
(5.3)
-
2
(5.3)
36
(94.7)
38
(100)
防衛省
-
-
-
4
(100)
4
(100)
国会
-
-
-
-
-
裁判所
-
-
-
-
-
会計検査院
-
-
-
-
-
354
(36.3)
196
(20.1)
550
(56.4)
425
(43.6)
975
(100)

エ 個別の契約における履行状況等

 抽出した対象契約について、契約の履行状況や額の確定方法の状況を検査したところ、契約の履行の確認等に関して検討の必要があったと認められたものが50件(この中には、第2-2-(2) 及び(3) と重複している事態が2件ある。)見受けられた。主なものを示すと次のとおりである。

<事例>

[履行の実態に見合った履行期間の設定を行っていないもの]
〔15〕  内閣本府は、平成18、19両年度に、アジア地域における多国間の防災協力推進等に関する調査業務について、随意契約により、財団法人都市防災研究所と、履行期間をそれぞれ18年9月5日から19年3月30日まで、19年11月2日から20年3月31日までとして、確定契約(契約金額:18年度173,993千円、19年度170,344千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、国際会議の開催やデータベースの維持更新作業等の仕様書に定められた業務が本件契約の締結前にも実施されており、契約履行の実態が履行期間とかい離している状態となっていたことから、実態に見合った履行期間の設定について検討すべきであったと認められる。

[履行の実態に見合った履行期間の設定を行っていないものなど]
〔16〕  環境省は、平成18、19両年度に、低濃度のメチル水銀が胎児の精神発育や運動機能に与える影響を調査する業務について、随意契約により、財団法人日本公衆衛生協会と、履行期間をそれぞれ18年4月5日から19年3月30日まで、19年7月25日から20年3月31日までとして、確定契約(契約金額:18年度25,095千円、19年度25,809千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件業務の実施に係る謝金や旅費等の経費が、上記履行期間外の19年3月31日から同年7月24日までの期間に同財団法人から支払われており、契約履行の実態が履行期間とかい離している状態となっていたことから、実態に見合った履行期間の設定について検討すべきであったと認められる。
 また、成果物について、18年度分が履行期限を1年以上経過して印刷されていたり、19年度分が、検査実施時点(21年2月)においても「案」の状態で、印刷されていなかったりしていたことから、履行状況の管理を十分に行うべきであったと認められる。

[企画競争の結果を仕様書に反映させるべきであったもの]
〔17〕  防衛省は、平成19年度に、豪州の安全保障戦略や国防戦略の調査、分析を行う業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人平和・安全保障研究所と確定契約(契約金額4,903千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、仕様書では、「主要な情報源・情報提供者に対しては直接アクセスし、調査・聞き取り等を実施すること」とされているものの、現地調査に関する明確な記述はなかったが、同財団法人が提出した企画には豪州等の現地調査を行うとされていることから、企画競争の結果を仕様書に明記すべきであったと認められる。

[業務の実態が仕様書とかい離しているのに契約変更を行っていないもの]
〔18〕  国土交通本省は、平成19年度に、日本の自動車環境対策の経緯及び欧米の自動車環境対策の動向等に関する情報を整理する調査業務について、一般競争契約(1者応札)により、財団法人運輸低公害車普及機構と、履行期間を20年1月28日から3月28日までとして、確定契約(契約金額9,884千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約の履行状況について、同本省は、履行期限日に成果物の提出を受けていたが、その直前に同財団法人に対して、同年4月以降に開催される国際会議等の資料の編さん及び印刷を依頼しており、同財団法人はこれに係る所要の作業を行って、同年10月に同本省に再度成果物として納品していて、業務の実態が仕様書とかい離していることから、契約変更又は新規契約を行うべきであったと認められる。

[実績が仕様書とかい離しているのに契約変更を行っていないもの]
〔19〕  環境省は、平成19年度に、化学物質の関連施策について現地調査するなどして国際動向等を調査する業務について、随意契約により、財団法人地球環境戦略研究機関と確定契約(契約金額25,200千円、最終変更後31,500千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、日本で開催された会議への海外参加者の招へい国が仕様書と異なっていたり、海外で開催される国際会議への参加を取りやめていたりしていて、実績が仕様書とかい離している状態となっていたことから、契約変更を行うべきであったと認められる。

[再委託について承認手続がとられていないもの]
〔20〕  総務本省は、平成19年度に、航空機内での携帯電話等の使用による航空機内外への影響に関する調査を行う業務について、一般競争契約(1者応札)により、社団法人電波産業会と確定契約(契約金額89,250千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件業務のうち調査票の作成、分析等に係る業務が、契約上必要な申請承認の手続を経ないまま再委託(再委託金額50,432千円、本体契約の56.5%)されていたことから、当該再委託について、所定の申請承認手続をとるべきであったと認められる。

[外注の内容を確認できないもの]
〔21〕  国土交通本省は、平成19年度に、沿道騒音の発生原因を分析するなどして、有効な沿道騒音対策を検討する業務について、公募を経た随意契約により、財団法人道路環境研究所と確定契約(契約金額29,400千円、最終変更後28,875千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件業務の一部は外注(外注金額20,475千円、本体契約(最終変更後)の70.9%)されており、外注に係る成果物が保存されていないため、外注業務の具体的な内容を確認できない状況であり、同外注業務が本件契約において申請承認手続が必要とされる再委託に該当するかどうかを判断することもできない状況となっていた。

[外注の内容を確認できないもの]
〔22〕  国土交通省関東地方整備局横浜港湾空港技術調査事務所は、平成19年度に、東京港臨海道路の設計における建設コスト縮減のための技術検討を体系的に整理・評価する業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人沿岸技術研究センターと確定契約(契約金額13,965千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件業務の一部は外注(外注金額7,560千円、本体契約の54.1%)されており、外注に係る成果物は、外注の仕様書に従い分散して提出されたものが本件契約の成果物の中に取り込まれているとのことであり、まとまった成果物としては外注の具体的な内容を網羅的に判断できない状況であり、同外注業務が本件契約において申請承認手続が必要とされる委託業務に該当するかどうかを確認することもできない状態となっていた。

[再委託について承認手続がとられていなかったり、概算契約において区分経理されていなかったりしているもの]
〔23〕  農林水産省東北農政局西奥羽土地改良調査管理事務所は、平成19年度に、水利施設の劣化状態等を調査する業務について、企画随契(2者応募)により、社団法人農業土木機械化協会と概算契約(契約金額25,200千円)を行い、事業完了後に同社団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を同額と確定し、支払っていた。
 しかし、本件業務の一部は外注(外注金額5,355千円、本体契約の21.3%)されていたが、6件に分割して1件当たりの金額を1,000千円以下とすることにより、契約書上申請承認手続を要しないとされる「軽微な再委託」としていたことから、所定の申請承認手続をとるべきであったと認められる。
 また、契約書では本件契約に係る経費を区分して経理することとされているのに、同社団法人は直接人件費について区分経理を行っておらず、本件契約に係る直接人件費を把握できないため、精算報告書には根拠が明確でない金額を記載して報告していた。そして、同事務所は、本件契約に係る契約金額の確定に当たり、直接人件費に係る金額を不十分な証拠書類で確認していたことから、より適正な額の確定方法について留意すべきであったと認められる。

[外注の内容を確認できなかったり、概算契約において区分経理されていなかったりしているもの]
〔24〕  国土交通本省は、平成18、19両年度に、老朽化マンションの効率的な再生方策を検討する調査業務について、両年度とも、公募を経た随意契約により、社団法人全国市街地再開発協会と概算契約(契約金額:18年度17,200千円、19年度16,500千円)を行い、事業完了後に同社団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額をそれぞれ上記と同額と確定し、支払っていた。
 しかし、本件業務の一部は外注(外注金額:18年度14,150千円(本体契約の82.3%)、19年度13,500千円(同81.8%))されていたが、外注に係る成果物は保存されておらず、外注業務の具体的な内容を確認できないため、同外注業務が本件契約において申請承認手続が必要とされる再委託に該当するかどうかを判断することができない状況となっていたことから、契約の履行状況の把握について留意すべきであったと認められる。
 また、契約書では、本件契約に係る経費について区分経理することとされているのに、同社団法人はこれを行っておらず、本件契約に係る経費を把握できないことから、精算報告書には実施計画書(契約書の一部)と同額を記載して報告していた。そして、同本省は、本件契約に係る契約金額の確定を、上記の精算報告書にのみ基づいて行っていたことから、より適正な額の確定方法について留意すべきであったと認められる。

[概算契約において区分経理されていないもの]
〔25〕  国土交通本省は、平成18、19両年度に、国内外における都市交通に係る調査等の事例収集、課題の整理等を行う調査業務について、18年度は随意契約、19年度は公募を経た随意契約により、財団法人計量計画研究所と概算契約(契約金額:18年度80,000千円、19年度104,500千円(最終変更後134,500千円))を行い、事業完了後に同財団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額をそれぞれ上記と同額と確定し、支払っていた。
 しかし、契約書では、本件契約に係る経費について区分経理することとされているのに、同財団法人はこれを行っておらず、本件契約に係る経費を把握できないことから、精算報告書には実施計画書(契約書の一部)と同額を記載して報告していた。そして、同本省は、本件契約に係る契約金額の確定を、上記の精算報告書にのみ基づいて行っていたことから、より適正な額の確定方法について留意すべきであったと認められる。

[履行期間後にも業務を実施しているもの]
〔26〕  国土交通本省は、平成19年度に、成田国際空港周辺の観光を促進するため、観光ニーズの調査、実証実験等を行い、観光交流プログラムを検討する業務について、企画随契(2者応募)により、財団法人社会経済生産性本部(21年4月以降は財団法人日本生産性本部)と、履行期限を20年3月28日として確定契約(契約金額9,995千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、仕様書等では、上記のプログラムを取りまとめるため、検討会を「3回程度」開催することとされていたが、成果物の中に、第3回検討会が履行期間終了後の20年4月21日に開催されたことを示す議事録が含まれていることから、履行状況の管理を十分に行うべきであったと認められる。

[成果物の納品等が遅延しているもの]
〔27〕  内閣本府は、平成19年度に、食品添加物のリスク評価ガイドラインを作成するための基礎的な情報収集を行う調査業務について、一般競争契約(総合評価方式)(2者応札)により、財団法人国際医学情報センターと、履行期限を20年3月14日として、確定契約(契約金額:13,060千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約の履行状況については、成果物(案)が20年3月に提出されたものの、完成版の印刷は同年5月以降となっていたり、業務の一部である調査結果の報告会が同年7月となっていたりしていたことから、履行状況の管理を十分に行うべきであったと認められる。

[成果物の納品が遅延しているもの]
〔28〕  環境省は、平成19、20両年度に、風力発電施設に鳥類が衝突する事故の発生状況を把握する調査業務について、履行期限をそれぞれ20年3月31日、21年3月31日として、19年度は企画随契(3者応募)、20年度は随意契約により財団法人日本気象協会と概算契約(契約金額:19年度109,997千円、20年度109,997千円)を行い、事業完了後に同財団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を上記と同額と確定し、支払を行っていた(20年度は検査実施時点(21年4月)で額の確定未済)。
 しかし、本件契約の履行状況については、成果物が、19年度は21年3月に印刷されており、20年度は印刷費が精算報告書に計上されているものの、検査実施時点で成果物の印刷が行われておらず、成果物の納品が履行期限後に行われたと考えられることから、履行状況の管理を十分に行うべきであったと認められる。

[成果物の記載内容が不十分となっているもの]
〔29〕  環境省は、平成18年度に、狩猟鳥獣の見直し手法の検討を行う業務について、企画随契(1者応募)により、財団法人自然環境研究センターと確定契約(契約金額2,999千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約の成果物である報告書については、導入部分や結論部分の記述はあるものの、その他の部分は関連する情報や図表が断片的に掲載されている状態となっており、成果物の記載内容が不十分なものとなっていたことから、給付完了を確認するための検査を十分に行うべきであったと認められる。

[当初の目標を達成していないもの]
〔30〕  経済産業本省は、平成19年度に、ベンチャー企業を公募して、それらの経営、財務、技術等の実力評価を実施するとともに、高評価を受けた企業に対してベンチャーキャピタルの紹介等を行う調査業務について、一般競争契約(総合評価方式)(1者応札)により、財団法人ベンチャーエンタープライズセンターと概算契約(契約金額19,709千円)を行い、事業完了後に同財団法人から提出された実績報告書に基づいて契約金額を16,491千円と確定し、同額を支払っていた。
 しかし、本件業務においては、実力評価の対象企業として100社程度を目標としていたが、実際には27社にとどまっていたことから、本件契約は、当初の目標を達成していないと認められる。

[当初の目標を達成していないもの]
〔31〕  資源エネルギー庁は、平成19年度に、太陽光発電システム(戸建て住宅)のモニターから情報を収集して分析し、その結果を新規設置者等に情報提供する調査業務について、一般競争入札(総合評価方式)を行ったが落札者がいなかったことから、随意契約により財団法人新エネルギー財団と概算契約(契約金額221,894千円、最終変更後28,231千円)を行い、事業完了後に同財団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を26,577千円と確定し、同額を支払っていた。
 しかし、本件業務に係るモニター数は当初予定の14,000件を大幅に下回る442件にとどまり、当初仕様書で予定していた分析結果をホームページで公開し、新規設置者等に情報提供するまでに至っていないことから、本件は、当初契約の目標を達成していないと認められる。

 また、各府省等の中には、契約の適正な履行を確保するための工夫を行っているものがあり、この事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>

参考〔2〕  経済産業本省は、「第4四半期からの委託事業開始の制限について」(平成20年11月)において、委託業務の適正な履行を確保するため、第4四半期においては委託事業を開始することを原則認めないこととしており、同期間に業務を実施する場合には、担当部局から、その理由及び短期間で十分な成果を見込める事業計画を大臣官房会計課に提出して、執行の是非を個別に判断することとしている。

(5) 成果物の公表及び管理の状況

 調査研究事業の結果を取りまとめた成果物は、これを各府省等が行う施策に活用することにより一層精度の高い施策を実行することができたり、その内容を公表することにより、他の府省等の参考に資するだけでなく施策に対する国民の信頼を確保することにつながるとともに、国民にとっても有用な情報が利用可能となったりする。
 以下、19年度の対象契約3,498件に係る成果物4,300件(契約によって複数の成果物があるため、契約件数とは一致しない。)について、その公表の状況及び管理の状況を分析することとする。

ア 成果物の公表の状況

(ア) 公表の状況

 上記成果物4,300件の公表の状況をみると、図表2-45のとおり、公表しているものは件数で1,714件(うちインターネットによる公表617件)、割合で39.9%(同14.3%)であり、一方、全く公表していないものは件数で2,586件、割合で60.1%となっている。
 これを契約内容別にみると、「競争的資金による研究」で公表しているものの割合が70.0%(同45.8%)と最も大きくなっており、成果物を公表する仕組みを制度的に組み込んでいるものが多いことによる。次いで、この割合が大きいのは「研究」の50.0%(同20.3%)となっている。
 また、自府省所管公益法人分の成果物についてみると、インターネットによる公表の割合は、対象契約全体の場合を若干下回っている。

図表2-45 成果物の公表の状況(平成19年度)

4,300件
計4,300件
〔1〕 調査
3,812件
〔1〕調査3,812件
〔2〕 統計調査
102件
〔2〕統計調査102件
〔3〕 研究
266件
〔3〕研究266件
〔4〕 競争的資金による研究
120件
〔4〕競争的資金による研究120件

 次に、これを府省等別にみると、図表2-46のとおり、公表しているものの件数割合が70%以上となっているのは環境省、文部科学省及び経済産業省となっている。また、インターネットによる公表の割合が最も大きいのは財務省(39.1%)で、次いで、文部科学省、内閣府、総務省の順となっている。

図表2-46 府省等別の成果物の公表の状況(平成19年度)
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%)
区分
府省等
公表しているもの
 
公表していないもの
うちインターネットによる公表
内閣
27
(100)
27
(100)
内閣府
106
(47.3)
72
(32.1)
118
(52.7)
224
(100)
 
警察庁
1
(14.3)
6
(85.7)
7
(100)
金融庁
1
(100)
1
(100)
総務省
91
(62.3)
46
(31.5)
55
(37.7)
146
(100)
法務省
3
(5.7)
3
(5.7)
50
(94.3)
53
(100)
外務省
18
(32.1)
7
(12.5)
38
(67.9)
56
(100)
財務省
9
(39.1)
9
(39.1)
14
(60.9)
23
(100)
文部科学省
98
(76.0)
45
(34.9)
31
(24.0)
129
(100)
厚生労働省
14
(30.4)
5
(10.9)
32
(69.6)
46
(100)
農林水産省
231
(43.3)
63
(11.8)
303
(56.7)
534
(100)
経済産業省
445
(73.7)
154
(25.5)
159
(26.3)
604
(100)
国土交通省
473
(22.7)
166
(8.0)
1,607
(77.3)
2,080
(100)
環境省
224
(77.0)
47
(16.2)
67
(23.0)
291
(100)
防衛省
77
(100)
77
(100)
国会
7
(100)
7
(100)
裁判所
2
(66.7)
1
(33.3)
3
(100)
会計検査院
1,714
(39.9)
617
(14.3)
2,586
(60.1)
4,300
(100)

(イ) 公表の時期及び方法

 公表している成果物1,714件について、その公表時期をみると、図表2-47のとおり、60%以上が成果物の受領後3か月以内に公表されているが、中には公表までに1年以上経過しているものも6.8%あった。

図表2-47 成果物の公表時期(平成19年度)

(単位:件、%)

公表時期
成果物受領後1か月以内
1か月超3か月以内
3か月超6か月以内
6か月超1年以内
1年超
件数
(割合)
746
(43.5)
373
(21.8)
160
(9.3)
319
(18.6)
116
(6.8)
1,714
(100)

 また、インターネットによる公表の状況については、上記の(ア)に示したとおりであるが、これも含めた公表方法別の件数及び割合をみると、図表2-48のとおりとなっている。
 すなわち、「印刷物の作成配布」が46.4%と最も大きくなっているが、これは、成果物を関係機関等に印刷物で配布しているものが多いためである。次いで、「インターネットによる公表」が36.0%、「国立国会図書館への納本」が29.5%などとなっている。

図表2-48 成果物の公表方法(平成19年度)

(単位:件、%)

公表方法
インターネットによる公表
印刷物の作成配布
府省等外での会議・講演会などでの報告
国会図書館への納本
その他
件数
(割合)
617
(36.0)
795
(46.4)
364
(21.2)
506
(29.5)
265
(15.5)
1,714
(100)
(注)
 一つの成果物の公表方法が複数の場合があるため、公表方法別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。

(ウ) インターネットによる公表及び国立国会図書館への納本

 上記(ア)のとおり、成果物4,300件のうち、インターネットによる公表の件数割合は、まだ14.3%にとどまっている。
 そこで、これらの成果物について、当初想定した利用者の範囲とインターネットによる公表状況の関係をみると、図表2-49のとおりとなっている。
 すなわち、成果物4,300件のうち、〔1〕 広く一般的な利用を想定したとしているものは1,136件(26.4%)、〔2〕 限定された範囲での利用を想定したとしているものは、3,164件(73.6%)となっているが、これらのうちインターネットによる公表は、〔1〕 についても43.5%しかなく、また、〔2〕 については3.9%と非常に低い割合となっている。
 インターネットが急速に普及している現状を考えると、〔1〕 の成果物はもちろんのこと、〔2〕 についても、公表が可能なものについては、基本的にインターネットで公表することが有効であると考えられることから、成果物の納入形態として印刷物だけでなく電子媒体を加えたり、成果物(電子媒体)の容量が大きい場合にはその概要をホームページで紹介したりなど工夫することにより、インターネットによる公表の推進を図ることが望まれる。

図表2-49 利用者の想定とインターネットによる公表状況(平成19年度)

図表2-49利用者の想定とインターネットによる公表状況(平成19年度)

 次に、国立国会図書館への納本については、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)の規定により、国の諸機関により出版物が発行されたときは、当該機関に納本が義務付けられており、これによって、成果物が記載された「目録」のインターネットなどによる公開を通じて、同図書館における国民の閲覧等が可能となるものである。
 そこで、各府省等の内部部局において同図書館への納本制度に関する周知の状況を検査したところ、大部分の府省等において、各府省等の図書館(国立国会図書館の支部図書館及びその分館)が毎年各部局に対して周知のための連絡文書を発しており、一部の府省等では契約相手方からの成果物の提出が集中する年度末の前後に、同文書を複数回発して納本率を向上させる工夫をしているものもみられる。しかし、各府省等の図書館では、調査研究事業に係る契約の実施状況を把握できないため、連絡文書の発送後は、図書館への成果物の提出は調査研究事業の実施担当部局にゆだねられることから、成果物の納本率を更に向上させるためには、各部局間の調整等により成果物に関する情報の一元的な把握を行うなど、各府省等全体での取組が行われる必要があると認められた。

(エ) 公表していない成果物の状況

 公表していない成果物2,586件について、公表していない理由をみると、図表2-50のとおり、「府省等内の特定の用途のみに利用」としているものが1,964件、75.9%と最も高くなっている。そこで、1,964件のうち、他の理由との重複分を除いた1,704件について「特定の用途」の内容をみると、図表2-51のとおり、「省庁独自の施策の推進」としているものが77.8%と最も多くなっている。
 しかし、公表していない成果物の中にも、国民にとって有用な情報が含まれていると考えられることから、支障のない範囲内で公表の可能性を検討する必要があると考えられる。

図表2-50 公表していない理由(平成19年度)

(単位:件、%)

公表していない理由
安全性(セキュリティ)確保
機密保持
個人情報の保護
府省等内の特定の用途のみに利用
特定の工事のみに利用
権利関係による
その他
件数
(割合)
64
(2.5)
194
(7.5)
123
(4.8)
1,964
(75.9)
320
(12.4)
58
(2.2)
258
(10.0)
2,586
(100)
(注)
 一つの成果物に対して公表していない理由が複数の場合があるため、公表していない理由別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。


図表2-51 府省等内の特定の用途の内容(平成19年度)

(単位:件、%)

特定の用途の内容
省庁独自の施策の推進
政府全体の施策の推進
法令の制定、改正
研究開発
職員の研修
その他
件数
(割合)
1,325
(77.8)
87
(5.1)
44
(2.6)
211
(12.4)
17
(1.0)
186
(10.9)
1,704
(100)
(注)
 一つの成果物に対して特定の用途の内容が複数の場合があるため、特定の用途の内容別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。

イ 成果物の管理の状況

(ア) 成果物の管理部署及び管理形態

 成果物の管理部署の状況をみると、図表2-52のとおり、担当部局課で管理を行っているものが98.8%と最も高くなっている。
 調査研究事業については、府省等内での情報共有を推進するため成果物及びそれに関する情報の一元的な管理が有効と考えられるが、一元的管理を行っているものは2.6%と低くなっている。しかし、中には、局内の部署がどのような調査研究事業を行っているかの情報を提供するため、成果物をデータベース化することにより情報を共有しているものも見受けられる。
 また、府省等の図書館での管理を積極的に推進することは重要であると考えられるが、図書館で管理されているものは7.5%にとどまっている。

図表2-52 成果物の管理部署の状況(平成19年度)

(単位:件、%)

成果物の管理部署
担当部局課
府省等内の図書館
外部の団体
成果物に関する情報を一元的に管理している部局課
その他
件数
(割合)
4,250
(98.8)
322
(7.5)
126
(2.9)
110
(2.6)
24
(0.6)
4,300
(100)
(注)
 一つの成果物に対して成果物の管理部署が複数の場合があるため、成果物の管理部署別の件数及び割合を合計しても「計」欄の数値と一致しない。

 なお、成果物の管理形態をみると、成果物の管理部署において成果物の名称等をデータベース化しているものが25.4%となっている。

(イ) 成果物の著作権の帰属

 契約条項における成果物の著作権の帰属に関する規定の設定状況についてみると、図表2-53のとおり、規定のない契約に係る成果物が24.2%となっている。
 成果物の著作権は、契約条項において各府省等への帰属の規定がない場合、著作権法(昭和45年法律第48号)の規定により、成果物を作成した契約相手方に帰属することとなり、各府省等が利用する場合にはその同意が必要となる。このため、各府省等に著作権を帰属させるべき成果物については、契約条項において著作権の帰属に関する規定を明確に設定しておく必要がある。

図表2-53 成果物の著作権の帰属に関する規定の設定状況(平成19年度)

(単位:件、%)

著作権に関する規定
あり
なし
件数
(割合)
3,260
(75.8)
1,040
(24.2)
4,300
(100)

ウ 個別の契約における成果物の公表、管理等の状況

 抽出した対象契約について、成果物の公表、管理等の状況を検査したところ、その妥当性に関して検討の必要があったと認められたものが17件(この中には、第2-2-(2) と重複している事態が2件ある。)見受けられた。主なものを示すと次のとおりである。

<事例>

[成果物についてより有効な公表方法を検討すべきもの]
〔32〕  文部科学本省は、平成19年度に、全国の中学校で実施された交通安全教育の先進的事例の収集を行う調査業務について、一般競争契約(総合評価方式)(1者応札)により、財団法人日本交通安全教育普及協会と概算契約(契約金額1,849千円)を行い、事業完了後に同財団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を1,662千円と確定し、同額を支払っていた。
 しかし、同事業の成果物については、事例集(2,000部)を作成して、仕様書に従って全国の都道府県・市区町村教育委員会へ配布したほか、インターネット上に公表し、検索・閲覧が可能な状態にはなっているものの、掲載場所が同財団法人のホームページであることから、同本省のホームページに公表したり、同財団法人のホームページとのリンクを設けたりするなどして、より有効な公表の方法を検討すべきであったと認められる。

[成果物についてより有効な公表方法を検討すべきもの]
〔33〕  林野庁は、平成19年度に、森林を活用した長期体験活動の実態を把握して、運営のガイドラインなどを作成する調査業務について、企画随契(1者応募)により、社団法人全国森林レクリエーション協会と概算契約(契約金額6,888千円)を行い、事業完了後に同社団法人から提出された精算報告書に基づいて契約金額を同額と確定し、支払っていた。
 しかし、成果物については、上記の活動を推進するため、取組事例等を紹介したガイドライン(300部)を作成して、都道府県や関係団体等に配布しているが、同庁のホームページには掲載されていないことから、より有効な公表の方法を検討すべきであったと認められる。

[成果物についてより有効な公表方法を検討すべきもの]
〔34〕  中小企業庁は、平成19年度に、中小企業の創業支援を行う民間支援ビジネスの実態調査等を行う業務について、一般競争契約(総合評価方式)(2者応札)により、財団法人日本システム開発研究所と確定契約(契約金額8,981千円)を行い、同業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、成果物については、各種支援策のモデルとなる成功事例等を記載した報告書(150部)を作成して、中小企業関係の支援機関に配布(120部)しているが、同庁のホームページには掲載されていないことから、より有効な公表の方法を検討すべきであったと認められる。

[成果物の印刷部数について検討すべきであったもの]
〔35〕  消防庁は、平成20年度に、原子力施設における消防訓練の在り方に関して検討を行う業務(成果物の作成・配布業務を含む。)について、一般競争契約(総合評価方式)(2者応札)により財団法人原子力安全技術センターと確定契約(契約金額6,871千円)を行い、仕様どおりに本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約では、成果物として報告書及びCD-ROMの作成部数を、全国の各消防本部等分1,000部とし、作成・配布していたが、同庁は同報告書の内容をホームページで公表しており、必要な場合にはそこから入手することが可能であることから、本件のように調査対象が限定されている契約においては、成果物の印刷部数の基礎となる配布先について検討すべきであったと認められる。

[成果物の印刷部数等について検討すべきであったもの]
〔36〕  外務省は、平成19年度に、IC旅券について、欧州の技術動向等に基づいてその高度化を検討する調査業務について、一般競争契約(1者応札)により、社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会と確定契約(契約金額19,683千円)を行った。
 しかし、本件契約に係る予定価格の積算において、成果物である報告書及びCD-ROM(各30部)について、報告書は外部に配布されるため、複写するとシリアルナンバーがコピーされる特殊な仕様となっていたが、一方、CD-ROMはそのような特殊な仕様のものでないのに、1枚当たりの単価が16千円と高価となっており、また、必要に応じてコピーを作成することができることから、CD-ROMに係る予定価格の積算及び作成部数について検討すべきであったと認められる。

[契約書等に著作権に関する規定のないもの]
〔37〕  公正取引委員会は、平成19、20両年度に、表示に関する公正競争規約の遵守状況を把握するため、試買表示検査会を実施する調査業務(19年度2契約、20年度1契約)について、いずれも一般競争契約(1者応札)により社団法人全国公正取引協議会連合会と確定契約(契約金額:19年度1,394千円及び927千円、20年度1,364千円)を行い、本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約の契約書、仕様書には成果物の著作権の帰属に係る規定がないため、著作権は成果物を作成した同社団法人に帰属することになる。同委員会では、内部資料として使用しているとのことであるが、外部に公表して活用する場合もあることから、著作権は同委員会に帰属すべきものであり、本件契約においてその旨を明確に定めるべきであったと認められる。

[契約書等に著作権に関する規定のないもの]
〔38〕  防衛省は、平成19年度に、飛行場周辺の住宅防音工事について、屋内の環境基準を満たす工法の策定等を検討する業務について、一般競争契約(1者応札)により、財団法人防衛施設周辺整備協会と確定契約(契約金額31,500千円)を行い、本件業務が完了したとして上記の契約金額を支払っていた。
 しかし、本件契約の契約書、仕様書には成果物の著作権の帰属に係る規定がないため、著作権は成果物を作成した同財団法人に帰属することになるが、同省では成果物の内容を業務に様々な形で活用していく必要があることから、著作権は同省に帰属すべきものであり、本件契約においてその旨を明確に定めるべきであったと認められる。

 また、各府省等の中には、成果物の公表、管理等について工夫を行っているものがあり、この事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>

参考〔3〕  財務本省は、「調査委嘱等ガイドライン及び企画競争の手続きについて」(平成19年5月)において、調査業務等を外部に委嘱する場合の統一的な基準を定めており、このうち、成果物の事後評価及び管理に関する主な内容は次のとおりである。すなわち、事後評価については、事後評価書には、成果物の企画立案等への反映結果や今後の活用予定に加えて、当該調査業務等の費用対効果等、今後の調査委嘱等の実施に有用な事項を記載することとされている。
 また、成果物の管理については、〔1〕 成果物は、原則公表することとして、その一部又は全部を公表しない場合にはその理由を会計課に登録すること、〔2〕 成果物の管理方法としては、各担当部局等において管理簿を作成すること、〔3〕 成果物等のデータベース化については、会計課がポータルサイトを作成して、各局が登録又は自由に閲覧することとされている。

参考〔4〕  環境省は、「総合評価落札方式の入札に関する留意事項及び参考例について」(平成20年4月)等の契約手続に関する連絡文書において、〔1〕 成果物としての報告書及び電子媒体の作成部数は、国立国会図書館への納本に必要な部数を含めたものとすること、〔2〕 原則として、報告書の一部としてサマリーを作成して、業務終了後速やかに同省のホームページに掲載することを定めている。

参考〔5〕  林野庁は、同庁図書館が、調査研究事業に係る成果物を含む出版物の国立国会図書館への納本について、連絡文書により担当部局に周知しているほか、国立国会図書館への納本を推進するため、調査研究事業に係る契約リストを同庁林政課から入手して、納本対象となる成果物の作成を予定している契約については、当該担当課に対して、成果物の提出を依頼している。

参考〔6〕  経済産業本省は、同省図書館が、調査研究事業に係る成果物を含む出版物の国立国会図書館への納本に関する周知を行うため、主として受注者から同省への納品が集中する年度末を中心に、毎年複数回、担当部局に連絡文書を発している。そして、平成20年6月の連絡文書においては、契約書における成果物の数量について、国立国会図書館への納本を適切に行うため、納本に必要な部数を含めたものとするよう依頼している。