(平成20年度決算検査報告 参照)
政府は、行政の情報化を積極的に推進することとしており、各府省等は、その一環として、電子申請等関係システムを整備・運用してきている。しかし、内閣に設置されている高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が策定した施策を受け、各府省等において原則としてすべての手続を一律にオンライン化してきたこと、電子申請率が低迷しているシステムについて費用対効果の検討が十分でなく、抜本的な見直しを行っていないことなどのほか、内閣官房においてシステムを停止等させる際の基準となる指標や停止等に至るまでの手順等を明確にしていないことなどから、内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省(以下「10府省等」という。)が運用している12システムについて、電子申請率が10%以下と低迷していて、システムの整備・運用等に係る経費に対して効果が十分発現していない事態が見受けられた。
したがって、内閣官房において、システムの停止等の抜本的な措置を執る際の基準となる指標や当該措置を執るに至るまでの手順等を明確化することについて、各府省等と所要の調整を行うよう、内閣総理大臣に対して平成21年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
また、10府省等において、システムの停止、簡易なシステムへの移行等、費用対効果を踏まえた措置を執るよう、それぞれの長に対して21年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、内閣官房及び10府省等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、10府省等においては、本院の指摘の趣旨に沿い、電子申請等関係システムについて、停止等の見直しを図るべきシステムの範囲について検討を行うことなどのため電子政府評価委員会の下に設置されたオンライン申請等手続システム評価ワーキンググループの意見等を踏まえ、10府省等のうち内閣府本府等7府省等は、21年度末までに、汎用受付等システム(内閣府本府)、オンライン共通受付システム(公正取引委員会)、電子申請・届出システム(警察庁)、総務省電子申請・届出システム(総務省)、財務省電子申請システム(財務省)、国税庁電子開示請求システム(国税庁)及び農林水産省電子申請システム(農林水産省)の7システムをそれぞれ停止する処置を講じていた。また、10府省等のうち総務省等4省は、政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム(総務省)、労働保険適用徴収システム(厚生労働省)、経済産業省汎用電子申請システム(経済産業省)、貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS)(経済産業省)及び国土交通省オンライン申請システム(国土交通省)の5システムについて、それぞれ運用を継続するものの、その継続に当たっては、利用の拡大、経費の節減、簡易なシステムへの移行等、費用対効果の十分な発現を図るとともに、22年度以降も引き続き利用の拡大や経費の節減を図ることとする処置を講じていた。
また、内閣官房は、電子申請率が低迷しているシステムに係る停止等の抜本的な措置に関する指標や手順等を明確にするための所要の調整について、前記の戦略本部において22年5月に決定された新たな情報通信技術戦略等を踏まえ、22年度中に取りまとめを行う予定であるとしている。