会計名 | 一般会計 | |
部局等 | 外務本省、11在外公館 | |
在外公館が管理している国有財産等の概要 | 在外公館が事務所、公邸及び宿舎の用途に利用するために取得した行政財産及びリース権並びにこれらを用途廃止して普通財産等となったもの | |
在外公館が管理している国有財産等の台帳価格の合計(平成21年度末) | 国有財産 1665億6704万余円 | |
リース権 126億4680万余円 | ||
上記のうち早期処分に向けた措置を講ずる必要があるものの件数及び台帳価格の合計(平成21年度末) | (1) 長期間利用されていない行政財産 | |
3在外公館 3件 5億8423万円 | ||
(2) 用途廃止したが処分されていない普通財産等 | ||
8在外公館 13件 16億7206万円 | ||
計 | 16件 22億5630万円 |
(平成22年10月6日付け 外務大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
貴省は、外国において相手国政府との交渉、邦人の保護、情報収集等を行うため、平成21年度末現在、大使館140公館(兼勤の特命全権大使に代わり臨時代理大使が常駐する7公館を含む。)、総領事館64公館、日本政府代表部7公館、計211公館を設置している。211公館のうち127公館は、国有財産法(昭和23年法律第73号。以下「法」という。)に基づき、土地、建物等の国有財産を管理している。
国有財産は、法により、国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供するものと決定したものなど国の行政の用に供するために所有する行政財産と、行政財産以外の普通財産とに分類され、このうち行政財産は、各省各庁の長が管理することとされている。
また、各省各庁の長は、行政財産を用途廃止して普通財産にした場合は、法により、これを財務大臣に引き継がなければならないとされている。ただし、外国に所在する貴省所管の行政財産を用途廃止して普通財産にした場合は、財務省の出先機関が外国に設けられておらず、当該普通財産の管理及び処分を財務大臣において行うことが技術等の関係から著しく不適当と認められるものとして、財務大臣に引き継ぐことなく外務大臣がこれを管理及び処分することとされている。
貴省は、外務本省及び在外公館が管理する国有財産の取扱いについて「外務省所管国有財産取扱規程」(昭和28年外務省訓令第1号。以下「取扱規程」という。)を定めており、これにより、国有財産に関する事務の統轄については貴省大臣官房会計課長が行うこととし、各在外公館の国有財産の管理及び処分に係る事務については各在外公館の長が分掌することとしている。各在外公館の長は、その管理する各在外公館の事務所、大使又は総領事の公邸及び職員宿舎の移転・廃止等に伴い従来の用途に利用しなくなった行政財産については、その後の用途及び利用計画を検討し、利用する計画がない場合は、取扱規程により、外務大臣の承認を得て用途廃止して普通財産にするとされている。そして、用途廃止して普通財産となった国有財産についても、引き続き在外公館の長が管理することとされている。
なお、普通財産の管理及び処分については、「普通財産取扱規則」(昭和40年大蔵省訓令第2号)によれば、原則として速やかに売払いその他の処分を行うこととされている。
また、貴省は、在外公館が普通財産を売却する場合は、「在外公館所管の国有財産を売払う場合における手続きについて」(平成11年外務省在外公館課)に基づき、以下の手続によることとしている。
〔1〕 現地の不動産鑑定業者に土地等の鑑定評価を依頼する。
〔2〕 鑑定評価額に基づき、予定価格を作成する。
〔3〕 現地の信用のおける不動産仲介業者に売却の仲介を依頼するなどして、購入希望者を募集する。
〔4〕 購入希望者との間で売買契約成立のめどがついた段階で、所在国の一般的な書式等に基づいて売買契約書案を作成し、これを本省に送付して承認を得る。
〔5〕 本省の承認を得た売買契約書案により、売買契約を締結する。
〔6〕 売却代金を受領し、売買契約書に定めた手続により土地等を引き渡す。
上記の国有財産のほか、貴省では、土地所有が認められていない国等において、行政の用に供するために土地、建物等の使用に係る権利(リース権)を取得して管理しており、21年度末現在、リース権を管理している在外公館は、31公館(うち23公館は国有財産も管理している。)となっている(以下、国有財産とリース権を合わせて「国有財産等」という。)。
貴省は、リース権を国有財産に準じて管理しており、リース権の対象となる土地、建物等について利用しなくなりその後も利用する計画がない場合は、行政財産の取扱いに準じて用途廃止することとしている(以下、普通財産と用途廃止した土地、建物等に係るリース権を合わせて「普通財産等」という。)。
本院は、14年に在外公館における会計経理について検査を実施して、その結果を平成13年度決算検査報告に特定検査対象に関する検査状況 として掲記した。この報告において、本院は、利用されていない国有財産等の土地(以下「未利用地」という。)が11公館において見受けられたことから、貴省において、未利用地の利活用の方針について必要な見直しを行い、施設整備を行って利用する必要があるものについては、早急にその計画を具体化することとして、また、今後利用する計画がないものについては、速やかに売却等の手続を行うなどして、国有財産等の有効な利活用を図っていく必要があることを所見として記述した。
本院は、経済性、有効性等の観点から、現在の厳しい財政状況にもかんがみ、平成13年度決算検査報告に掲記した状況を踏まえて、在外公館において未利用となっていて今後も利用計画がない行政財産やリース権はないか、在外公館が管理している普通財産等は用途廃止後速やかに処分が図られているかなどに着眼して、平成13年度決算検査報告に掲記した11公館及び21年度末現在で普通財産等を管理している17公館の計25公館(うち3公館は重複している。)について、貴省本省において、国有財産等の状況について説明を聴取するとともに、13公館において、現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 施設を整備するために取得したが具体的な施設整備計画が定められていない土地
施設を整備するために取得したが、予算の制約で緊急性の高い他の在外公館の施設整備を優先せざるを得ない事情が生じたなどとして、具体的な施設整備計画が定められないまま30年以上の長期にわたり利用されていないことから用途廃止しても支障がないと認められる行政財産が、表1のとおり、2公館で2件(国有財産台帳価格(注)
計2億4139万余円)あった。これら2件の土地は、いずれも前記の平成13年度決算検査報告に掲記した未利用地である。
表1 施設を整備するために取得したが具体的な施設整備計画が定められていない土地
(平成21年度末現在)
在外公館名 (所在国名) |
用途 | 取得年月 | 取得から21年度末までの経過年月 | 国有財産台帳価格(円) |
在マナウス日本国総領事館 (ブラジル連邦共和国) |
公邸 | 昭和53年3月 | 32年 | 89,102,465 |
在ハガッニャ日本国総領事館 (アメリカ合衆国)<事例1> |
公邸 | 昭和54年3月 | 31年 | 152,295,000 |
計(2公館、2件) | 241,397,465 |
在ハガッニャ日本国総領事館が管理しているグアム島に所在する土地(面積5,840、国有財産台帳価格152,295,000円)は、総領事公邸の敷地用として昭和54年3月に取得したものである。同総領事館は、公邸用地として管理していたが、平成13年度決算検査報告に未利用地として掲記されたことなどを受けて、利活用の方針等を検討した結果、当初の目的どおり公邸を建設して、その敷地として利用することとした。
しかし、貴省は、平成16年度にPFI手法(注)
による施設整備の適用可能性事前調査を実施したものの、その後、限られた予算の中で他の在外公館の施設整備を優先せざるを得ないとして、取得後31年が経過した21年度末現在においても具体的な施設整備計画がなく未利用のまま長期間保有している。
イ 建物を用途廃止した後、利用されていない土地
在ジッダ日本国総領事館は、隣接する土地1件(国有財産台帳価格3億4284万余円)を職員宿舎の建物の敷地として利用していたが、同総領事館は、職員数の減少、当該職員宿舎の老朽化等から12年7月に当該職員宿舎の建物を用途廃止した。そして、この建物の敷地として利用していた土地については、建物の用途廃止後も、同総領事館の事務所の警備対策上必要があるとして、行政財産として管理している(表2参照
)。
しかし、その後の状況をみると、警備対策上の必要性は小さくなっており、用途廃止しても支障がないと認められる。
(平成21年度末現在)
在外公館名 (所在国名) |
旧用途 | 取得年月 (当該土地上の建物の用途廃止年月) |
建物の用途廃止から21年度末までの経過年月 | 国有財産台帳価格
(円)
|
備考 |
在ジッダ日本国総領事館(サウジアラビア王国) | 宿舎 | 昭和50年5月(平成12年7月) | 9年8か月 | 342,841,304 | 用途廃止した職員宿舎の敷地 |
在外公館が管理している普通財産等のうち、21年度末現在、用途廃止後2年以上の間処分されていない土地、建物、工作物等が、表3のとおり、8公館で13件(国有財産台帳価格等計16億7206万余円、鑑定評価額計66億1550万余円)あった。
これら13件の普通財産等のうち、在フィンランド、在ドイツ両日本国大使館が管理している土地2件(国有財産台帳価格計1億6678万余円)は、平成13年度決算検査報告に掲記した未利用の行政財産であったが、その後、用途廃止されたものである。
(平成21年度末現在)
在外公館名 (所在国名) |
旧用途 (区分) |
用途廃止年月(21年度末までの経過年月) | 台帳価格
(円)
|
不動産仲介業者等への委託の有無(委託年月) | 直近の鑑定評価年月(21年度末までの経過年月) | |
在ペルー日本国大使館 | 公邸(土地) | 平成 13年8月 (8年7か月) |
86,239,000 | 無 | 平成 21年2月 (1年1か月) |
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在フィンランド日本国大使館 | 事務所(土地、工作物) | 16年12月 (5年3か月) |
142,878,284 | 有 (21年12月) |
20年3月 (2年) |
|
在ドイツ日本国大使館
<事例2>
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事務所(分室) (土地、工作物) |
17年2月 (5年1か月) |
25,946,334 | 無 | 20年3月 (2年) |
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在マレーシア日本国大使館 | 宿舎(土地、建物、工作物) | 19年3月 (3年) |
67,188,203 | 有 (19年10月) |
18年8月 (3年7か月) |
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在タイ日本国大使館 | 事務所(土地、立木竹、建物、工作物) | 19年3月 (3年) |
658,986,038 | 無 | 20年7月 (1年8か月) |
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在セネガル日本国大使館 | 宿舎(土地、工作物) | 19年3月 (3年) |
16,604,870 | 無 | 21年6月 (9か月) |
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在ナッシュビル日本国総領事館 (アメリカ合衆国) |
公邸(土地、建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
94,155,592 | 無 | 21年9月 (6か月) |
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在ナイジェリア日本国大使館 | 事務所(建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
424,608,590 | 有 (20年12月) |
20年3月 (2年) |
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宿舎(建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
16,968,620 | ||||
宿舎(建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
20,050,717 | ||||
宿舎(建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
16,396,208 | ||||
宿舎(建物、工作物) | 20年3月 (2年) |
102,044,944 | ||||
普通財産計(8公館、12件) | 1,672,067,400 | / | / | |||
在ナイジェリア日本国大使館 | 事務所、宿舎(土地) | 20年3月 (2年) |
0 注(1) |
有 (20年12月) |
20年3月 (2年) |
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リース権 計(1公館、1件) | 0 | / | / | |||
合計(8公館、13件) | 1,672,067,400 | 鑑定評価額合計
6,615,507,868円 注(2)
|
在ナイジェリア日本国大使館のリース権は、取得時に対価を支払っていないことから「台帳価格」は0円としている。
鑑定評価額は、直近の鑑定評価額を鑑定評価を行った日の属する年度の出納官吏レートによって邦貨換算した額である。
貴省は、普通財産等の処分に当たっては、売却代金の確実な収納、処分後の土地の利用方法等を考慮して、これらの普通財産等を管理する各在外公館が購入者の資金力や購入後の利用目的等を見極める必要があるとしている。そして、これらを見極めるには現地情勢の理解や不動産売買に関する専門知識等が必要になることから、原則として現地の事情に精通した信用のおける不動産仲介業者等に処分を委託するものとするとしている。
しかし、前記の普通財産等を処分していない8公館のうち5公館は、不動産仲介業者等に処分を委託していなかった(表3参照
)。そして、貴省本省も委託するよう指導していなかった。
また、予定価格作成の際に必要となる鑑定評価については、当該財産の状況や現地の経済事情、不動産取引状況等を適正に反映させるため、適時に実施する必要がある。
しかし、前記の8公館のうち4公館は、直近の鑑定評価から2年以上が経過しているのに、改めて鑑定評価を実施していなかった(表3参照
)。
在ドイツ日本国大使館が管理しているベルリン市内に所在する土地(面積956、国有財産台帳価格25,946,334円(昭和54年12月に設置した工作物(柵)の価格482,081円を含む。))は、ドイツ連邦共和国政府に接収されていた旧陸軍事務所跡地が39年12月に返還されたものである。貴省は、限られた予算の中で他の在外公館の施設整備を優先せざるを得ないため当面事務所等を建設できないとして、当該土地を行政財産のまま管理していたが、平成13年度決算検査報告に未利用地として掲記されたことを受けて、利活用方針等を再検討した結果、売却処分することを決定した。そして、平成16年11月から17年2月にかけて鑑定評価を行った上で、17年2月にこの土地を用途廃止した。その後、複数の購入希望者が現れたため、不動産仲介業者等に委託することなく直接売却交渉を行ったが、いずれの購入希望者も資金不足等を理由に購入を辞退した。さらに、20年2月から3月にかけて再度鑑定評価を実施して購入希望者を募集したところ、21年11月に購入希望者が現れたため、不動産仲介業者に委託することなく購入希望者の代理業務を務める不動産開発会社と交渉を行ったが、22年3月に同人は購入を辞退した。
在外公館において、整備計画を定めないまま行政財産を長期間保有するなどしていたり、用途廃止した土地、建物等の普通財産等が処分されないままとなっていたりする事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、在外公館が所在する各国の事情や近年の世界的な景気の低迷等にもよるが、貴省において、整備計画を定めないまま長期間保有するなどしている行政財産について用途廃止に向けた検討を十分に行っていなかったり、普通財産等の処分に当たって不動産仲介業者等への委託や鑑定評価額の適時の見直しを行っていなかったり、在外公館に対する早期処分に向けた指導及び助言が十分でなかったりなどしていることによると認められる。
整備計画を定めないまま長期間保有するなどしている行政財産や用途廃止した土地、建物等の普通財産等については、現在の厳しい財政状況を踏まえ、所定の手続を適切にとりつつ早期に処分する必要がある。
ついては、貴省において、長期間利用しておらず今後も利用する見込みのない行政財産について早期に用途廃止することを検討するとともに、普通財産等についてはより積極的に不動産仲介業者等に処分を委託したり、現地の経済事情等を反映させるために鑑定評価額を適時に見直したり、在外公館に対する指導及び助言を十分に行ったりするなど、これらの国有財産等について早期処分に向けた措置を講ずるよう意見を表示する。