会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 |
(項)各税受入金 | ||
部局等 | 国税庁 | |
課税の根拠 | 所得税法(昭和40年法律第33号) | |
消費税の還付金等に係る所得税の課税の概要 | 不動産所得等の計算において消費税を含めた経理を行っている所得税の申告者に対して支払われた消費税の還付金等は、所得税の所得の計算上、原則として、還付を受けた年分の不動産所得等の総収入金額に算入することにより所得税を課するもの | |
所得税の課税が適正でなかった納税者 | 43人 | |
徴収不足となっていた税額 | 8499万円(平成17年度〜20年度) |
所得税は、原則として、納税者が所得税額を計算し、計算書や明細書を添付した確定申告書を税務署に提出して納付することとされている。この納税者が申告すべき所得税額は、納税者の各種所得(不動産所得、事業所得、雑所得等)ごとに総収入金額から必要経費を差し引くなどして算出される総所得金額から各種の所得控除を行って課税所得金額を算出し、これに所定の税率を乗ずるなどして算出することとされている。
土地、建物等の不動産の貸付けによって生ずる所得は不動産所得となる。不動産所得を有する個人は、消費税及び地方消費税(以下、これらを合わせて単に「消費税」という。)の課税事業者である場合、建物の取得等の仕入れに係る消費税額が賃貸料等からなる売上高に係る消費税額を上回るときには、消費税の確定申告により、消費税が還付される。そして、個人が、不動産所得について、収入、経費の各項目の金額に消費税を含めた経理(以下「税込経理」という。)を行っている場合には、原則として、消費税の還付金は、還付を受けた年分の不動産所得の計算上、総収入金額に算入することとされている。また、個人が事業を営む場合の事業所得についても、税込経理を行っている場合の消費税の還付金は、還付を受けた年分の事業所得の計算上、総収入金額に算入することとされている。
そして、この還付金と合わせて還付加算金(注1)
が支払われる場合には、還付加算金は、雑所得の総収入金額に算入することとされている。
納税者は、毎年の所得税の確定申告書(以下「所得税申告書」という。)を翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に提出することとされている。税務署の個人課税部門は、所得税及び個人事業者に係る消費税の賦課事務を担当し、納税者が申告した内容が適正なものとなっているかについて申告審理を行っている。
そして、個人課税部門は、申告審理を行うに当たり、納税者が税込経理を行っている場合には、消費税の還付金及び還付加算金(以下、これらを合わせて「還付金等」という。)が不動産所得等の総収入金額に算入され、適正に申告されているかについて、所得税と消費税の申告内容を比較検討するなどして確認を行うこととされている。
また、個人課税部門は、消費税を還付する際に消費税の還付申告者に係る還付内容の検討資料として、国税総合管理システムを使用して消費税還付申告者名簿を作成しており、この名簿には、消費税の還付申告を行った者の氏名、還付金の額等が記載されている。
本院は、合規性等の観点から、所得税の不動産所得等の計算において、税込経理を行っている納税者に支払われた消費税の還付金等が総収入金額に算入され、適正に申告されているかなどに着眼して、平成19年10月から22年4月までの間に、301税務署において会計実地検査を行った。その結果、税込経理を行っている納税者が消費税の還付金等を不動産所得等の総収入金額に算入しておらず、申告所得税の徴収額が不足している事態を20年度決算検査報告及び本決算検査報告に不当事項として掲記している(平成20年度決算検査報告
及び前掲
を参照)。
そこで、税込経理を行っていて消費税の還付金等を不動産所得等の総収入金額に算入していない事態として上記の決算検査報告に掲記した34税務署(注2)
の納税者43人に係る徴収不足となっていた申告所得税額84,991,100円を対象として、合規性、効率性等の観点から、消費税の還付金等に係る課税資料の活用が適切に行われているかなどに着眼して、上記税務署の会計実地検査時に収集した関係書類により検査するとともに、国税庁において調査、報告及び関係資料の提出を求めるなどして実地に検査した。
検査したところ、上記34税務署の個人課税部門は、納税者43人の所得税申告書の申告審理に当たり、税込経理を行っている納税者が消費税の還付金等を不動産所得等の総収入金額に算入しているかについて、所得税と消費税の申告内容を比較検討することによる確認を行っていなかった。そして、上記の各税務署は、このことについて、所得税及び消費税の申告件数が多数に上っており、所得税の申告者に係る前年分の消費税の確定申告書の内容を個別に確認することが、必ずしも容易でないことによるとしていた。
しかし、34税務署の個人課税部門では、前記のとおり消費税還付申告者名簿を作成していたのであるから、この資料を課税資料として活用すれば、当該納税者43人に消費税の還付金等の収入があること、及び消費税の還付金等が不動産所得等の総収入金額に算入されていないことは容易に確認することができると認められた。
このように、34税務署において、消費税還付申告者名簿を課税資料として活用していなかったため、申告審理が適切に行われず前記の84,991,100円が徴収不足となっていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、納税者において、税込経理を行っている場合の消費税の還付金等を不動産所得等の総収入金額に算入する必要があることについての理解や認識が不足していたことにもよるが、次のことによると認められた。
ア 国税庁において、消費税の還付金等が不動産所得等の総収入金額に算入されているかの確認を行うため、消費税還付申告者名簿を課税資料として活用することを定めていなかったこと
イ 税務署において、納税者に消費税の還付金等の収入がある場合の所得税申告書の申告審理を適切に行うことについての認識が不足していたこと
ウ 国税庁、国税局等及び税務署において、税込経理を行っている場合の消費税の還付金等は、不動産所得等の総収入金額に算入する必要があることについて、納税者等に対する周知が十分なものとなっていなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、22年6月に、国税局等に通知を発するなどして、消費税の還付金等が支払われた場合の所得税の課税が適正なものとなるよう、次のような処置を講じた。
ア 消費税の還付金等が不動産所得等の総収入金額に算入されているかの確認を行うための課税資料として、消費税還付申告者名簿を活用する方法を定めた。
イ 国税局等及び税務署に対して、消費税還付申告者名簿を課税資料として活用することにより、消費税の還付金等が不動産所得等の総収入金額に算入されているか確認して申告審理を適切に行うよう指示して周知徹底を図った。
ウ 納税者が税込経理を行っている場合の消費税の還付金等を不動産所得等の総収入金額に算入する必要があることについて、納税者に配布する手引に明記するとともに、税務署等において、説明会等を通して納税者等に対する周知を図ることとした。