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年金記録相談等において判明した年金記録について、基礎年金番号への統合が適切に行われていなかったため、老齢厚生年金等が適正に支給されないなどしていたもの


(126) 年金記録相談等において判明した年金記録について、基礎年金番号への統合が適切に行われていなかったため、老齢厚生年金等が適正に支給されないなどしていたもの

会計名及び科目 年金特別会計(厚生年金勘定) (項)保険給付費
部局等 厚生労働本省(平成21年12月31日以前は社会保険庁)
厚生年金保険等の事業に関する事務の一部を委託している相手方 日本年金機構(平成22年1月1日以降)
138 人
基礎年金番号への統合が行われていなかった年金受給者等 (1) 平成20年度決算検査報告においても統合が行われていないとして掲記した者 103人
(2) 年金記録相談により判明した者 92人
(3) 黄色便により判明した者 2,218人
2,413人
上記に係る年金支給見込額の増加額等 (1) そ及して支給される年金の見込額 42,008,936円
(2) 年金支給見込額の増加額(年額) 9,309,250円
そ及して支給される年金の見込額 2,034,098円
(3) 年金支給見込額の増加額(年額) 104,654,343円
158,006,627円

1 年金記録の基礎年金番号への統合に係る処理の概要

 日本年金機構(以下「機構」という。)の年金事務所(平成21年12月31日以前は地方社会保険事務局の社会保険事務所又は地方社会保険事務局社会保険事務室)又は事務センター(以下、これらを合わせて「年金事務所等」という。)は、基礎年金番号以外の年金手帳等の記号番号(以下「手帳番号」という。)に係る年金記録(注1) が判明した場合は、老齢厚生年金等を適正に支給するため、社会保険オンラインシステムの端末装置により、当該年金記録を基礎年金番号に統合することとされている(年金記録の基礎年金番号への統合に係る処理の概要については、「年金記録相談等において判明した年金記録について、基礎年金番号への統合を適切に行うことにより、老齢厚生年金等を適正に支給するなどするよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの」 参照)。

(注1)
年金記録  年金受給者、被保険者等の手帳番号、氏名、性別、生年月日等に関する記録

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、20、21両年次の検査の結果、年金記録相談において判明した年金記録について基礎年金番号への統合が適切に行われていなかったため、老齢厚生年金等が適正に支給されないなどしている事態を平成20年度決算検査報告に不当事項 として掲記した。これに対し、厚生労働省は、本院が指摘した事案について統合処理等を進めるとしていた。
 そこで、本年次は、合規性等の観点から、年金記録の基礎年金番号への統合が適切に行われているかなどに着眼して、機構の全国9ブロック本部の管轄区域内に所在する179年金事務所等において、次の年金受給者(年金の裁定(注2) を受けて年金を受給している者をいう。以下同じ。)、年金受給権者又は被保険者等(以下、これらを合わせて「年金受給者等」という。)を対象として厚生年金保険被保険者加入期間照会申出書(以下「照会申出書」という。)、被保険者記録照会回答票等の関係書類により会計実地検査を行った。
〔1〕  平成20年度決算検査報告に、基礎年金番号への統合が適切に行われていなかったため老齢厚生年金等が適正に支給されていないなどとして掲記した者
〔2〕  年金事務所等が、年金記録相談において年金受給者等から照会申出書の提出を受けて手帳番号に係る年金記録が判明したと回答した者(平成20年度決算検査報告に掲記した者を除く。)
〔3〕  「年金記録の確認のお知らせ(黄色い封筒)」(以下「黄色便」という。)の送付を受けた年金受給者等(以下「送付対象者」という。)が手帳番号の持ち主であると判明した者

(注2)
裁定  年金を受給する資格ができたときに必要となる手続

(2) 検査の結果

 検査したところ、117年金事務所等において、年金受給者等3,252人に係る厚生年金保険の手帳番号の年金記録3,801件を基礎年金番号に統合する必要があるのに、統合していないなどの事態が次のとおり見受けられた。
〔1〕  平成20年度決算検査報告に掲記した年金受給者等について、本院が22年5月及び6月に実施した会計実地検査時点においても依然として基礎年金番号への統合を行っていないため、そ及して支払われるべき年金が支給されていないなどしていた。
565人、678件
〔2〕  年金記録相談において、平成20年度決算検査報告に掲記した事態と同様に、届け書又は年金再裁定申出書(注3) が未提出となっている年金受給者等に対し、これを提出するよう勧奨するなどの基礎年金番号への統合に向けた処理を行っていなかった。
365人、421件
〔3〕  年金事務所等は、黄色便において送付対象者本人の年金記録であることが判明していて、速やかに基礎年金番号に統合する必要があるのに、事務処理が遅滞しているとして統合を行っていなかったり、年金再裁定申出書を提出していない者の把握が十分でなく、この者に対する提出の勧奨が十分でないため統合の処理を行っていなかったりしていた。
2,322人、2,702件

 そして、上記〔1〕 、〔2〕 及び〔3〕 の統合の処理が行われていなかった年金受給者等3,252人に係る年金記録3,801件のうち、年金支給見込額(注4) が増加しない者839人に係る1,022件を除いた2,413人に係る2,779件の年金支給見込額の増加額及びそ及して支給される年金の見込額の内訳は、次のとおりである。
前記〔1〕 に係る年金受給者等
103人 139件(注5)  そ及して支給される年金の見込額 42,008,936円
前記〔2〕 に係る年金受給者等(注6)
92人 102件 件年金支給見込額の増加額(年額) 9,309,250円
7人 7件 そ及して支給される年金の見込額 2,034,098円

前記〔3〕 に係る年金受給者等
2,218人 2,538件(注7)  年 金支給見込額の増加額(年額) 104,654,343円

 したがって、年金記録相談及び黄色便において判明した未統合の年金記録を基礎年金番号に統合する必要があったのに、これを行っておらず、その結果、老齢厚生年金等158,006,627円が年金受給者に適正に支給されないなどしているのは適切でなく、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、年金事務所等において、氏名の変更(訂正)又は生年月日の訂正に係る届け書等を提出するよう年金受給者等に勧奨することや、未統合の年金記録について年金受給者等からの届出が無くとも基礎年金番号への統合の処理を行う必要があることの認識が十分でなかったこと、機構において、年金事務所等に対する指導が十分でなかったこと、厚生労働省において、機構に対する監督が十分でなかったことなどによると認められる。

(注3)
年金再裁定申出書  再裁定(当初の年金支給開始の際に行った裁定の変更をいう。)を行うための年金受給者からの申出書
(注4)
年金支給見込額  被保険者について現に加入している制度の被保険者記録を受給権発生日又は60歳のいずれか早く到来する時点まで延長した場合等の額である。この額は、必ずしも将来における実際の年金支給額となるものではない。
(注5)
103人 139件  103人(139件)に係る年金支給見込額の増加額6,650,800円(年額)は、平成20年度決算検査報告において指摘金額としており、本件指摘と重複するため含めていない。
(注6)
下段の年金受給者等7人(7件)は上段の92人(102件)と重複している。
(注7)
2,218人 2,538件  2,218人(2,538件)のうち年金受給者及び年金受給権者に係るそ及して支給される年金の見込額は、統合すべき年金記録が判明した時点では、年金事務所等においてこの額を試算していない。