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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

厚生年金保険等の適用事業所から提出された全喪届の処理に当たり、実地調査対象事業所を的確に把握した上で事業実態の確認を確実に行うことなどにより、全喪届の事務処理等を適切に実施するよう改善の処置を要求したもの


(8) 厚生年金保険等の適用事業所から提出された全喪届の処理に当たり、実地調査対象事業所を的確に把握した上で事業実態の確認を確実に行うことなどにより、全喪届の事務処理等を適切に実施するよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 年金特別会計 (健康勘定) (款)保険収入
   (項)保険料収入
  (厚生年金勘定) (款)保険収入
   (項)保険料収入
部局等 厚生労働本省(平成21年12月31日以前は社会保険庁)
厚生年金保険等の事業に関する事務の一部を委任又は委託している相手方 日本年金機構(平成22年1月1日以降)
実地調査等が実施されていなかった事業所数 4,013事業所
上記事業所の全喪の処理時の被保険者に係る月額の保険料相当額 9億3161万円(背景金額)

【改善の処置を要求したものの全文】

  全喪届の事務処理及びこれに係る業務監察の状況について

(平成22年10月28日付け    厚生労働大臣
日本年金機構理事長
あて)

 

 

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 全喪届の事務処理の概要

(1) 制度の概要

ア 日本年金機構への事務の委託

 厚生労働省は、平成22年1月1日に社会保険庁が廃止されたことに伴い、従来同庁が所掌していた厚生年金保険等の事業に関する事務を所掌することとなった。そして、同省は、当該事業に関する事務の一部を同日に設立された日本年金機構(以下「機構」という。)に委任又は委託して、機構は、同省の監督の下に、本部並びに全国9ブロック本部及び312年金事務所等において当該委任又は委託された事務を実施している。

イ 全喪届の事務処理

 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)等の規定により、常時従業員を使用する事業所は、厚生年金保険等が適用される事業所(以下「適用事業所」という。)になるなどとされている。この適用事業所が解散したり休業したりするなどして、厚生年金保険等の被保険者となっている全員が被保険者資格を喪失した場合には、当該事業所の事業主は、厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)等の規定に基づき、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(以下「資格喪失届」という。)及び健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届(以下「全喪届」という。)を機構の年金事務所(21年12月31日以前は、社会保険庁地方社会保険事務局の社会保険事務所又は地方社会保険事務局社会保険事務室。以下、これらを年金事務所と合わせて「社会保険事務所等」という。)に提出することとされている。
 そして、社会保険事務所等は、事業主から提出を受けた全喪届に記載内容を確認することができる書類が添付されていることを確認して、その届出内容が適正であるかの審査を行った上で、届出内容について入力処理を行うこととされている。
 全喪届については、事業主から資格喪失届は提出されたが、その一方で全喪届が提出されていないなどの場合があり、このような場合には、毎月出力される厚生年金保険料等の納入告知額一覧表(以下「告知額一覧表」という。)に、当該事業所の被保険者が0人になった旨が表示されることになっている(以下、当該事業所を「0人事業所」という。)。0人事業所については、社会保険事務所等は、その原因を調査して必要に応じて補正することとされている(以下、0人事業所に対する調査等の事務処理を「0人事業所の処理」という。)。

ウ 厚生年金保険法施行規則等の改正の経緯

 全喪届の事務処理(以下「全喪の処理」という。)については、休業を理由として全喪届を提出した1,048事業所のうち298事業所が、全喪の処理後も事業を継続又は再開していたのに、厚生年金保険等の適用を受けていない事態が見受けられたので、13年11月に、本院が社会保険庁長官に対して、会計検査院法第36条の規定により、改善の処置を要求した ところである。
 そして、厚生労働省及び社会保険庁は、本院の改善の処置の要求に対して、15年2月に厚生年金保険法施行規則等を改正して、適用事業所に該当しなくなった場合の届出に関する規定を新たに設けて届け書の記載内容を明確に示すとともに、適用事業所に該当しなくなったことを証する書類を添付させることとするなどの処置を講じた。
 その後、社会保険庁は、15年11月に、上記改正規則等の具体的内容を定めた通知(以下「15年通知」という。)を発出して、これにより、全喪届には、〔1〕 雇用保険適用事業所廃止届事業主控の写、〔2〕 解散登記の記載がある登記簿謄本の写のいずれかを添付させることとされた。ただし、これらのいずれかの写しの添付が困難な場合は、〔3〕 給与支払事務所等の廃止届の写、〔4〕 事業廃止等を議決した取締役会議事録の写等を添付させることとされた。
 また、社会保険庁は、16年9月に事務連絡を発出して、これにより、第三者の確認がない上記〔3〕 、〔4〕 等の書類を添付している事業所については、全喪届の提出を受けた社会保険事務所等は、原則として3か月を超えない期間内に、当該事業所に電話や文書による照会を行ったり、実地調査を行ったりするなど(以下、これらを合わせて「実地調査等」という。)して、休業や廃業の実態を把握することとされた。
 これらの15年通知等は、機構の成立後において、厚生労働省年金局から機構に対して発せられたものとみなすとされている。

エ 全喪の処理及び0人事業所の処理と年金記録の正確性

 前記のとおり、本院が13年に実施した会計実地検査において、全喪届を提出した事業所が全喪の処理後も事業を継続するなどしていたのに、厚生年金保険等の適用を受けていない事態が見受けられた。また、厚生労働省等が改善の処置を講じた後の16年に社会保険庁が実施した調査によれば、全喪届に添付書類が無い事業所等10,708件のうち、事業を継続又は再開等していたものが194件見受けられるなどしていた。
 そして、全喪の処理及び全喪届が提出されていない0人事業所の処理が適切に行われない場合には、事業所が事業を継続するなどしていて厚生年金保険等の被保険者資格を取得すべき者が存在している事態を見過ごしている可能性があり、これによって、被保険者資格を取得すべき者の年金記録の正確性が損なわれるおそれがある。

(2) 業務監察の実施

 社会保険庁は、内部統制における監視活動の一環として、同庁の定めた社会保険庁業務監察規程(平成18年社会保険庁訓第24号。以下「監察規程」という。)に基づいて業務監察を実施していた。監察規程によれば、業務監察を実施した結果、指摘事項がある場合は、業務 監察の対象である地方社会保険事務局長等に対して文書で通知することとされていて、指摘を受けた地方社会保険事務局及び社会保険事務所等は、改善を要する事項に対する措置の結果又は措置の方針について取りまとめた改善報告書を本庁に提出することとされていた。
 この改善報告書において、社会保険事務所等が改善の措置を講じたものは「達成済」としてその措置の結果を記載することとされていた。一方、改善報告書提出時点において改善の措置が講じられていないものについては「継続取組」又は「未着手」としてその措置の方針を記載して、3か月経過後に、当該社会保険事務所等から、再度、本庁に対してその改善状況について改善報告書を提出することとされていた。
 また、前記業務監察の実施結果については、社会保険庁長官に対して報告を行うとともに、その概要を取りまとめたものを庁内LANに掲示することにより全職員に周知しているとしていた。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 前記のとおり、全喪の処理及び0人事業所の処理が適切に行われない場合には、厚生年金保険等の被保険者資格を取得すべき者が存在している事態を見過ごしている可能性がある。
 そして、社会保険庁は、内部統制における監視活動の一環として実施した20、21両年度の業務監察の重点的な監査項目の中で、全喪の処理及び0人事業所の処理を挙げていた。この業務監察の状況については、20年6月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づく検査要請を受けて、その検査結果を21年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告した「年金記録問題に関する会計検査の結果について 」の中で記述したところである。
 これらのことから、本院は、合規性、有効性等の観点から、全喪の処理及び0人事業所の処理が、前記の厚生年金保険法施行規則等や15年通知等に基づき適切に実施されているか、また、業務監察において全喪の処理及び0人事業所の処理についての指摘事項があった場合、これに対する改善の措置は的確に実施されているかなどに着眼して検査を実施した。

(検査の対象及び方法)

 札幌東等127社会保険事務所等において、〔1〕 各社会保険事務所等が行った全喪の処理及び0人事業所の処理の実態を確認するとともに、〔2〕 20年4月から21年12月までの間に社会保険庁が実施した業務監察の指摘事項に対する改善の状況を改善報告書により確認するなどして会計実地検査を実施した。

(検査の結果)

検査したところ、全喪の処理及び0人事業所の処理並びにこれらに係る業務監察について、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 全喪の処理及び0人事業所の処理の状況

ア 全喪の処理の実施状況

(ア) 全喪届の添付書類と実地調査等の実施

 本院は、20年4月から21年12月までの間に127社会保険事務所等が処理した全喪届のうち、主として解散又は休業を原因とする全喪の処理の実施状況を確認した。
 その結果、厚生年金保険法施行規則等に定められた添付書類が無いまま全喪の処理を了していたり、第三者の確認が無い書類である「給与支払事務所等の廃止届の写」等が添付されていたりしていて、15年通知等に基づく実地調査等を実施する必要があるのに、これを実施していないものが、108社会保険事務所等において4,013件見受けられた。
 この4,013件の全喪の処理時における各事業所の被保険者数は計14,900人となっており、これらの者に係る厚生年金保険料等の合計は月額で9億3161万余円となっている。
 また、上記の4,013件に添付されていた書類のうち、第三者の確認が無い書類である「給与支払事務所等の廃止届の写」及び「取締役会議事録の写」が計1,934件と約半数を占めている。これは、全喪届の様式の裏面に、上記の第三者の確認が無い書類が、全喪届の記載内容を確認できる書類として例示されていることによるものである。

(イ) 社会保険事務所等における実地調査等の実施

 前記の実地調査等を実施していない全喪届4,013件のうちの367件については、各社会保険事務所等が、今回の本院の会計実地検査での指摘を踏まえて、22年4月以降に実地調査等を実施していた。
 その調査結果を確認したところ、実際には事業が継続されていることが判明したものが9件見受けられた。

<事例>

第三者の確認が無い書類が添付された全喪届を提出した事業所において全喪の処理後も事業が継続されていたもの

 目黒社会保険事務所は、平成21年8月にA社から代表取締役が高齢であることから休業を原因とした全喪届の提出を受けて全喪の処理を了していた。この全喪届には、事業を休業する旨の取締役会議事録しか添付されていなかったが、同事務所はその後、実地調査等を行っていなかった。
 しかし、目黒年金事務所が22年5月に登記簿を取り寄せたり、電話での聴取を行ったりするなどした結果、A社は全喪届の提出に先立つ21年7月に代表取締役が交代しており、同年8月以降も事業を継続していたことが判明した。

イ 0人事業所の処理の実施状況

 会計実地検査の直近月に出力された告知額一覧表により確認したところ、0人事業所は、表1のとおり、127社会保険事務所等管内で計81,328事業所となっていて、同管内の厚生年金保険適用事業所の総数の約9%を占めていた。
 そして、127社会保険事務所等において、告知額一覧表から、各社会保険事務所等でおおむね50事業所、全体で6,258事業所を抽出して、被保険者が0人となった時期をみると、表1のとおり、会計実地検査時から2年以上さかのぼった19年以前のものが全体の約43%を占めていた。これらについては、2年以上調査等の事務処理が十分に行われていないことになる。
 また、0人事業所について、機構が22年8月に取りまとめた調査結果によれば、無作為に抽出した4,073件のうち、事業所の事業実態が認められたものが128件あり、被保険者資格を取得すべき者が212名存在することが判明したとしている。

表1  0人事業所の件数等  (単位:件、%)
社会保険事務所等数 0人事業所数(a) 適用事業所総数(b) 比率(a/b) 0人事業所の抽出数(c) 左のうち平成19年以前に被保険者が0人となった事業所数(d) 比率(d/c)
127 81,328 909,363 8.9 6,258 2,714 43.3

 以上のア及びイのとおり、各社会保険事務所等において、15年通知等に基づく実地調査等が適切に行われていなかったり、0人事業所の処理が長期間にわたって十分に実施されていなかったりしていて、全喪の処理及び0人事業所の処理が適切に行われていないと認められる。

(2) 業務監察の状況

ア 業務監察の指摘の状況

 社会保険庁は、20、21両年度に127社会保険事務所等のうち68社会保険事務所等を対象として業務監察を実施した。
 本院が、このうち59社会保険事務所等の状況を確認したところ、全喪の処理及び0人事業所の処理について、主として次の事態が不適切な事務処理であると指摘されている。

〔1〕  事業主から提出された全喪届に第三者の確認が無い書類が添付されている場合には、15年通知等に基づく実地調査等を行う必要があるのに、社会保険事務所等においてこれを行っていない事態

20、21両年度 計44社会保険事務所等

〔2〕  告知額一覧表に、被保険者が0人になった旨が表示されている場合には、その原因を調査し必要に応じて補正する必要があるのに、社会保険事務所等においてこれを行っていない事態

20、21両年度 計45社会保険事務所等

イ 業務監察の指摘事項に対する改善措置の状況

(ア) 改善報告書において「達成済」としているもの

 前記ア〔1〕 の15年通知等に基づく実地調査等を行っていない事態について指摘を受けた44社会保険事務所等のうち、改善報告書で「達成済」としているものは25社会保険事務所等となっている。
 また、前記ア〔2〕 の0人事業所の処理を行っていない事態について指摘を受けた45社会保険事務所等のうち、改善報告書で「達成済」としているものは12社会保険事務所等となっている。
 しかし、これらの「達成済」としているものの中には、業務監察で前記ア〔1〕 の指摘を受けた事業所について実地調査等を行っただけであって、15年通知等に基づく実地調査等を行う必要があるその他の事業所については、これを全く行っていなかったり、前記ア〔2〕 の指摘に対して、全喪届の提出を勧奨したにとどまっていて、その後、調査等を十分に行っていなかったりしているものが見受けられている。これらについては、改善の措置として十分ではないと認められる。

(イ) 改善報告書において「継続取組」又は「未着手」としているもの

 前記ア〔1〕 の指摘を受けた44社会保険事務所等のうち、改善報告書で「継続取組」又は「未着手」としているものが19社会保険事務所等と半数近くを占めている。また、前記ア〔2〕 の指摘を受けた45社会保険事務所等のうち、「継続取組」等としているものが33社会保険事務所等と過半数を占めている。
 そして、これらの「継続取組」等としているものの中には、その改善の措置に着手する時期及び内容を明記しておらず、改善の措置が確実に講じられることが担保されていないものが見受けられており、これらについては、改善の措置の方針として十分ではないと認められる。

(3) 業務監察の効果

 社会保険庁が実施した20、21両年度の業務監察の後に、本院が実施した22年次の会計実地検査において、前記のとおり、108社会保険事務所等で15年通知等に基づく実地調査等が適切に行われていなかったり、127社会保険事務所等で0人事業所の処理が長期間にわたって十分に実施されていなかったりしている事態が見受けられた。
 そこで、これらの事態が見受けられた社会保険事務所等の一部について業務監察の実施状況をみると、表2のとおりとなっていた。

表2  22年次の会計実地検査において不適切な事態が見受けられた社会保険事務所等に対する業務監察の実施状況  (単位:箇所)
事態 会計実地検査において不適切な事態が見受けられた社会保険事務所等の数  
業務監察について会計実地検査を実施したもの   〔3〕 業務監察が実施されなかったなどのもの
〔1〕 業務監察で指摘を受けたもの   〔2〕 業務監察で指摘を受けなかったもの
改善の措置で「達成済」としていたもの
15年通知等に基づく実地調査等が行われていなかったもの 108 52 39 20 13 56
0人事業所の処理が行われていなかったもの 127 59 45 12 14 68

 そして、表2〔1〕 のとおり、15年通知等に基づく実地調査等が適切に行われていなかった108社会保険事務所等に対する業務監察の実施状況をみると、業務監察のあった52社会保険事務所等のうち39社会保険事務所等が当該事態について指摘を受けていたが、このうち20社会保険事務所等は、指摘に対する改善の措置を「達成済」としていた。
 また、0人事業所の処理が適切に行われていなかった127社会保険事務所等に対する業務監察の実施状況をみると、業務監察のあった59社会保険事務所等のうち45社会保険事務所等が当該事態について指摘を受けていたが、このうち12社会保険事務所等は「達成済」としていた。
 このように、業務監察後の22年次に実施した会計実地検査で15年通知等に基づく実地調査等及び0人事業所の処理が適切に行われていない事態が見受けられた社会保険事務所等については、その相当数が業務監察の指摘を受けていたにもかかわらず、その後も当該事務処理を適切に行っていなかったものである。特に、「達成済」としていた社会保険事務所等は、改善報告書提出後においても当該事務処理を適切に行っていなかったものである。
 また、表2の〔2〕 及び〔3〕 のとおり、業務監察で指摘を受けなかったもの及び業務監察が実施されなかったなどのものにおいても、15年通知等に基づく実地調査等が計69社会保険事務所等で、0人事業所の処理が計82社会保険事務所等で、適切に行われていなかった。
 以上のとおり、業務監察の効果が十分に波及しておらず、内部統制における監視活動が十分に機能していない事態は適切とは認められない。

(改善を必要とする事態)

 上記のとおり、多数の社会保険事務所等において、15年通知等に基づく実地調査等が適切に行われていなかったり、0人事業所の処理が長期間にわたって十分に行われていなかったりしている事態や、内部統制における監視活動が十分に機能していない事態が見受けられている。
 このような事態は、全喪届を提出した事業所が事業を継続するなどしていたり、0人事業所において被保険者資格を取得すべき者が存在していたりする可能性があるのに、社会保険事務所等においてこれを看過することになりかねず、このことは、当該事業所において厚生年金保険等の被保険者資格を取得すべき者の年金記録の正確性確保が損なわれることにもつながりかねないもので、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 以上のような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 各社会保険事務所等において、15年通知等に基づく実地調査等を行ったり、0人事業所の処理を行ったりすることについての認識が十分でないこと
イ 社会保険庁において
(ア) 15年通知等に基づく実地調査等や0人事業所の処理が適切に行われていない事態が生じた要因を把握した上で改善策を策定し、これにより事務処理を適切に行うことを社会保険事務所等に周知徹底することが十分に行われていなかったこと
(イ) 法令等に基づく適切な事務処理の実施を目的として構築されるべき内部統制における監視活動が十分に機能していなかったため、業務監察における指摘事項に対する改善の措置の実施状況等を十分に確認していなかったこと

3 本院が要求する改善の処置

 全喪の処理及び0人事業所の処理は、資格喪失届及び全喪届を提出した当該事業所に雇用されている従業員の年金記録の正確性確保に密接に関連するものであり、機構は、前記のとおり、15年通知等に基づく実地調査等を適切に実施することが求められている。
 そして、機構においては、内部統制システムの構築に係る取組方針に「業務運営及び内部統制の実効的な監視及び改善」が挙げられており、監査結果に基づく、定期的なフォローアップ、不適切な事務処理への改善提言等を行うこととされている。このようなことから、機構の内部監査部門では、22年2月以降に実施した内部監査での指摘の都度、改善に向けた取組内容等を改善計画書に記載させる運営を行ったり、同年7月に機構本部の事業実施部門に対して全喪の処理及び0人事業所の処理の指摘事項に対する改善を要請したりしている。
 ついては、厚生労働省及び機構において、全喪の処理及び0人事業所の処理を適切に実施するよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 機構において

(ア) 15年通知等に基づく実地調査等が適切に行われていない事態及び0人事業所の処理が長期間にわたって十分に行われていない事態が生じた要因を的確に把握した上で、次の事務処理等についての改善策を策定し、各年金事務所に対し周知徹底すること
a 全喪届の記載内容を確認できる書類として届け書の様式に例示されている書類を、第三者の確認があるものと第三者の確認がないものに区分すること
b 15年通知等に基づく実地調査等の際には、あらかじめ、法人登記簿を取得して解散の登記を確認するなどして実地調査対象事業所を的確に把握した上で、事業実態の確認を確実に行うこと
c 告知額一覧表に0人事業所である旨が長期間にわたって出力され続けている事業所については、実地調査等による確認を行うこと
(イ) 次のことを内部監査規程等に定めて、内部監査の指摘事項に対する改善に向けた取組を徹底して、不適切な事務処理の再発防止を図ること
a 改善報告書に事務処理の改善に向けた取組内容等を記載させること
b 不適切な事務処理に対する改善策の策定等を事業実施部門に要請すること

イ 厚生労働省において

(ア) 機構が行う全喪の処理及び0人事業所の処理に対する監督を的確に実施すること
(イ) 今後も引き続き、全喪の処理及び0人事業所の処理を含む厚生年金保険の事務処理を適切に実施する観点から監査を実施するなどして、機構に内部統制の確立に向けた取組を確実に実施させること