財政安定化基金は、都道府県が管内の市町村の介護保険財政の財源に不足が生じた場合に資金の貸付け・交付を行うために設置するもので、国、都道府県及び市町村は、それぞれその造成額の3分の1を拠出するなどすることとなっている。そして、都道府県は、管内市町村における3年間の介護給付費の見込額の総額に国が定めた標準拠出率を参考にして条例で定めた拠出率を乗ずるなどして拠出金を算定することとなっている。検査を実施した24都道府県における造成額に対する貸付け・交付額の割合が、第1期(平成12年度から14年度まで)では17都道府県、第2期(15年度から17年度まで)では19都道府県で30% を下回っているなど、基金の保有額は多くの都道府県で基金需要に対応した規模を大きく上回るものとなっている。
したがって、厚生労働省において、財政安定化基金を適切な規模に保つために、都道府県が基金の一部を各拠出者に返還することが適切と判断した場合には基金規模を縮小できるような制度に改めたり、標準拠出率の算定の考え方を都道府県に対して示すとともに都道府県が適切な拠出率を定めるよう助言したりするなどの処置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して20年5月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、20年8月に、国が定める標準拠出率の算定の考え方を都道府県に対して示すとともに、各都道府県が基金の保有状況、貸付状況等を十分に検討するなどして適切な拠出率を定めるよう助言する処置を講じていた。なお、各都道府県では、国の助言に基づくなどして、条例で定める拠出率を0とし、新たな基金積立は行わないこととしていた。
そして、基金規模を縮小できるような制度に改めることについては、引き続き検討を行っていくこととしている。