農林水産省は、所管する国有財産に関する管理等の事務を、各地方農政局長に分掌させている。しかし、各地方農政局管内の国営土地改良事業所等において、国が所有する建物は表示に関する登記の申請義務の適用が除外されているとして、地方公共団体以外の個人、法人等からの借地に新築等した建物について、財産の保全のため第三者に対する対抗要件を備える必要があるかどうか十分検討することなく、登記所への登記の嘱託を行わないままとなっている事態が多数見受けられた。
したがって、農林水産省において、借地に新築等した建物について、どのような場合に登記の嘱託を行わなければならないかを明確に定め、これを国営土地改良事業所等の長に周知するとともに、登記の嘱託を行うことが必要と判断された建物については、登記の嘱託を行わせるなどの処置を講ずるよう、農林水産大臣に対して平成21年9月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、21年4月に発出した事務連絡に基づき、国等以外の者からの借地に建物を新築等した場合は登記の嘱託を行うことを明確に定めて、これを国営土地改良事業所等の長に周知するとともに、財産の保全のために登記の嘱託を行うことが必要な建物については、登記の嘱託を行うなどの処置を講じていた。