会計名及び科目 | 一般会計 (組織)経済産業本省 (項)地域経済活性化対策費 | ||
部局等 | 6経済産業局 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 (事業主体) |
2事業主体 | ||
補助事業 | 地域イノベーション創出共同体形成 | ||
補助事業の概要 | 地域のイノベーションを担う大学や公設試験研究機関等が参加する広域的連携組織の形成を通じ、各研究機関等が保有する人材、試験研究機器、研究成果等の研究開発資源の相互活用に取り組むもの | ||
購入した50万円以上の機器等の点数及び購入費 | 65点、 5億2645万余円 | (平成20年度) | |
有効に活用されていない機器等の点数及び購入費 | 41点、 3億5551万余円 | (平成20年度) | |
上記に対する国庫補助金交付額 | 3億5551万円 |
(前掲「地域イノベーション創出共同体形成事業で購入した一部の機械装置等が補助の目的を達していないもの 」参照)
(平成22年10月22日付け 経済産業大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
貴省は、地域経済の活性化等を図るため、大学や公設試験研究機関(注1)
(以下「公設試」という。)等が参加する広域的連携組織(以下「共同体」という。)の形成を通じ、各研究機関等(以下「共同体構成員」という。)が保有する人材、試験研究機器、研究成果等の研究開発資源(以下「研究開発資源」という。)の相互活用に取り組むことを目的として、平成20、21両年度に、事業に要する費用の一部について、各地域における産業支援機関等の事業主体に対して地域イノベーション創出共同体形成事業費補助金を交付しており、20年度の交付額は10億1013万余円(補助対象事業費同額)となっている。
そして、本件補助事業には、共同体を管理運営しその形成を促進させるための「共同体形成促進事業」、コーディネータ等の専門知識を有する人材により技術支援を行う「技術支援協働事業」及び企業の技術課題の解決に資する試験・評価・分析方法を研究により確立し、その方法を用いて技術支援を行うことにより研究開発資源の活用促進を図るための「研究開発環境支援事業」(以下「支援事業」という。)の3事業がある。
貴省は、支援事業では、企業の技術ニーズに迅速かつ的確にこたえるための試験・評価・分析方法の確立及び向上が可能な研究課題であることなどを条件に、その研究成果をマニュアル化することとしており、これに必要な試験研究機器等(以下「機器等」という。)を購入するための設備物品費及び人件費等を補助の対象としている。そして、設備物品費で取得した50万円以上の財産等については、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第22条に基づく財産の処分制限を受けるものとされている。
また、事業主体は、支援事業の実施に当たっては、従来、地元企業の技術支援を担ってきた公設試に、設備物品費で購入した機器等の大半を設置しており、公設試が中心となって事業主体、大学等と連携して研究を実施し、マニュアルの作成や技術支援等を実施することとしている。
支援事業の実施に要した事業費は前記3事業の中でも特に多額に上っている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、支援事業の研究成果として技術支援を行うために作成することとされているマニュアルが作成後有効に技術支援等に活用されているか、また、購入した機器等がマニュアル作成後においても機器等を設置している公設試(以下「設置公設試」という。)等において有効に活用されているかなどに着眼して検査した。
8経済産業局(注2) 管内で3事業主体(注3) が実施した20年度の支援事業に要した事業費6億5633万余円のうち、支援事業で購入し21公設試等に設置している50万円以上の機器等65点に係る5億2645万余円を対象に、購入した機器等の利用簿等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような状況が見受けられた。
検査の対象とした前記65点の機器等を用いて支援事業の研究成果として作成されたマニュアル22件の内容は、表1のとおりとなっていた。
マニュアル類型 | マニュアルの内容 | 購入した機器等 |
先進機器購入型 (16件) |
共同体形成地域における企業等の技術ニーズが高い、先進的な分析装置等を購入し、企業等がこれを利用することなどにより技術課題の解決に資することを想定して、当該機器等の操作手順、分析等の事例、分析等に当たっての技術的課題等をマニュアル化したもの | 味認識装置、音響特性評価装置等28点 |
試作型 (3件) |
公設試等が研究により今までにない装置や製品を試作し、その研究成果を企業等に提供するために、これをマニュアル化したもの | 高速液体クロマトグラフ、高速マイクロスコープ等21点 |
信頼性向上型 (3件) |
共同体構成員が保有する既存の機器等の精度を高めるための信頼性向上技術を確立してマニュアル化したもの | ボールテトラゲージ、ネットワークアナライザ等16点 |
これら22件のマニュアルは、いずれも、事業主体が、マニュアルを広く共同体構成員や共同体形成地域の企業等に配布するなどして、共同体構成員がマニュアルを用いた技術支援を行うために作成されたものである。
さらに、先進機器購入型や試作型のマニュアルを作成するために購入した機器等は、広く共同体形成地域の企業等の利用に供され(以下「利用開放」という。)、また、信頼性向上型のマニュアルを作成するために購入した機器等は、共同体構成員に対する技術支援に活用されるなど、いずれもマニュアル及び機器等を一体として広域的な相互活用が図られることにより、技術支援や研究成果の普及がより効果的なものとなり、補助事業の目的を十分に達成できるものである。
しかし、前記22件のマニュアルの活用状況についてみると、事業主体が共同体構成員や共同体形成地域の企業等への配布を行っていなかったり、共同体形成促進事業で作成したホームページへの掲載を行っていなかったり、マニュアルを用いた技術支援が行われていなかったりしていて、十分な活用が図られていない状況となっていた。
さらに、上記22件のマニュアルを作成するために購入した機器等65点の活用状況をみても、広域的な相互活用の取組が行われていた中部、近畿両経済産業局を除く6経済産業局の2事業主体(注4)
において購入し16公設試等に設置された機器等41点(購入費3億5551万余円、国庫補助金同額)については、マニュアルの作成後においても、設置公設試等の研究にのみ利用されるなどしていて、企業等からの依頼に基づく分析試験(以下「依頼分析」という。)や利用開放等が実施されずに広域的な相互活用が図られていない状況が表2のとおり見受けられた。
マニュアル類型 | マニュアル数 | 機器等総数 (単位:点)
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広域的な相互活用が図られていなかった機器等 | 左に係る国庫補助金交付額 | 左の事態が生じていた経済産業局、事業主体及び設置箇所 | |
(単位:件) | うち公設試に設置 | (単位:点) | (単位:千円) | |||
先進機器購入型 | 16 | 28 | (28) | 20 | 265,783 | 4 経済産業局 2 事業主体 9 公設試 |
試作型 | 3 | 21 | (16) | 19 | 67,179 | 2 経済産業局 2 事業主体 7 公設試等 |
信頼性向上型 | 3 | 16 | (0) | 2 | 22,554 | 1 経済産業局 1 事業主体 |
計 | 22 | 65 | (44) | 41 | 355,517 | 6 経済産業局 2 事業主体 16 公設試等 |
上記のように購入した機器等の広域的な相互活用が図られていないのは、主として次のア及びイの要因によるものであった。
ア 設置公設試が機器等を企業等の利用に供しようとしても、機器等を所有している事業主体の資産管理に関する内部規程上、原則として共同研究契約締結先等にしか機器等の利用が認められないなどのため利用開放等が実施できないこと
イ 設置公設試が企業等からの依頼分析を受けたり、企業等が機器等を直接利用したりする際には、機器等の利用に伴い生ずる光熱費や分析結果を交付する際の諸経費等を企業等に負担させる必要があるが、これらを徴するためには、公設試の設置者である地方公共団体の条例改正により利用料の設定を行わなければならない場合があり、特に、支援事業で購入した機器等のように公設試の所有財産ではないものについては、このような手続により利用料の設定等を行うことが困難であること
上記(2)ア及びイの要因に対して、一部の経済産業局管内の事業においては、次のような対応が執られていた。
ア 近畿経済産業局管内において、事業主体である独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という。)は、同局管内で補助事業を実施する拠点としている産総研関西センターが、前記(2)アの要因により、設置公設試において機器等を企業の利用に供することができなかったことから、同センターからの要望を受け、21年4月に設置公設試との間で「業務委託契約書」を締結し、企業からの依頼分析を受ける場合等に限り、企業の研究開発等に供することができることとしていた。
イ 中部経済産業局は、機器等の広域的な相互活用を図るため、20年12月に事業主体である財団法人中部科学技術センター(以下「センター」という。)に対して文書を発するなどして、補助事業終了後に、支援事業で購入した機器等を利用開放し、企業等が容易に利用可能である体制を構築するように指示していた。センターは、これを受けて、21年4月に設置公設試との間で「機械器具等使用貸借契約書」を締結して企業等が一定の条件の下に機器等の利用ができる体制を構築した。しかし、前記(2)イの要因により、設置公設試にとって所有財産ではない機器等の利用開放等は困難であったことから機器等の広域的な相互活用が十分に図られるまでには至らなかった。そこで、同年9月にセンターは同局の承認を受けて設置公設試に対して機器等の無償譲渡を行い、同年11月に設置公設試は自らのホームページにおいて機器等を一般に利用できる開放設備として掲載するなどして利用開放等を実施していた。
以上のことから、上記(3)ア及びイの対応が執られていた中部、近畿両経済産業局を除く6経済産業局の2事業主体において購入し16公設試等に設置された機器等41点は、作成したマニュアルを含めて広域的な相互活用が図られておらず、補助事業の目的を十分に達成していないと認められる。
地域経済の活性化を図るためには、各研究機関同士の、あるいは産学官での連携が重要であるとして、貴省は、前記3事業において共同体の形成を通じ、各研究機関同士の連携や、産学連携機能等の強化を図ってきた。
しかし、前記のとおり、国庫補助金の交付を受けて作成したマニュアル及び購入した機器等が、補助事業終了後において広域的な相互活用やこれらを用いた技術支援が行われずに、補助事業の目的が十分に達成されていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、前記(2)ア及びイの要因のほか、次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において、研究開発資源の広域的な相互活用に取り組むなどの補助事業の目的に対する理解が十分でなかったこと
イ 各経済産業局において、事業主体が購入した機器等が補助金適正化法の処分制限を受けることなどから、補助事業終了後の機器等の広域的な相互活用に当たって同法に基づく手続等を行うことに慎重となり、これを十分に検討しなかったこと
ウ 貴省において、支援事業で作成したマニュアル及び購入した機器等について、広域的に相互活用が図られるための統一的な活用方針やその手続等を明確に示していなかったこと
近年、我が国を取り巻く厳しい経済環境の中で、限られた研究開発資源の広域的な相互活用に取り組むことにより地域経済の活性化を図ることは貴省においても重要な施策の一つと位置付けられており、また、各地域において地元企業の技術支援等を担ってきた公設試の役割は、今後持続的・自立的な地域経済の活性化を図る上で、より重要なものになっていくものと見込まれる。
ついては、貴省において、次のような措置を講ずることなどにより、支援事業で作成したマニュアル及び購入した機器等が、補助事業終了後においても補助事業の目的に沿って十分活用されるよう意見を表示する。
ア 研究開発資源の広域的な相互活用に取り組むなどの補助事業の目的について、各経済産業局を通じて事業主体等への周知徹底を図ること
イ マニュアル及び購入した機器等が、補助金適正化法に基づく適切な手続を経た上で、広く利用開放されるなど広域的な相互活用が図られるよう、統一的な活用方針、手続等を明確に示すこと
(注2) | 8経済産業局 北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州各経済産業局
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(注3) | 3事業主体 独立行政法人産業技術総合研究所、財団法人北海道科学技術総合振興センター及び財団法人中部科学技術センター
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(注4) | 2事業主体 独立行政法人産業技術総合研究所及び財団法人北海道科学技術総合振興センター
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