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  • 平成21年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

道路用地を取得するために保有している代替地用地について、早急に被補償者等に売買契約等の締結を求めるなどの措置を執るよう適宜の処置を要求し及び代替地用地の取得、管理、処分が適切に行われるよう是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求したもの


(8) 道路用地を取得するために保有している代替地用地について、早急に被補償者等に売買契約等の締結を求めるなどの措置を執るよう適宜の処置を要求し及び代替地用地の取得、管理、処分が適切に行われるよう是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求したもの

部局等 関東地方整備局、北海道開発局釧路開発建設部
国有財産の区分 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)所属
(平成19年度以前は、道路整備特別会計所属)
(分類)普通財産(区分)土地
代替地用地の概要 事業に必要な用地の取得に際して代替地を要望する被補償者に提供するための土地
保有している代替地用地の面積及び国有財産台帳価格
35,054.1m2
24億2461万余円
(平成21年度末)
上記のうち管理が適切でなかった代替地用地の面積及び国有財産台帳価格相当額
6,912.1m2
9699万円
具体的な提供の可能性が確認できないまま保有している代替地用地の面積及び国有財産台帳価格相当額
29,291.8m2
23億4281万円
(背景金額)(平成21年度末)

「管理が適切でなかったため、被補償者に提供するために取得した代替地用地が第三者に使用されていたもの」 を参照)

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求したものの全文】

道路整備事業の実施に伴う代替地用地の取得、管理及び処分について

(平成22年10月28日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 事態の概要

 貴省は、道路整備事業の実施に伴い、道路として必要な用地(以下「道路用地」という。)の取得を行っており、その取得に当たっては、道路用地の所有者、道路用地の上に自己の居住の用に供する建物を所有する者等(以下、これらを合わせて「被補償者」という。)に対して、適正な損失補償を行うこととしている。
 そして、貴省は、原則として、金銭により損失補償を行うこととしているが、「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う代替地対策に係る事務処理要領について」(昭和62年建設省経整発第51号建設事務次官通達。以下「要領」という。)等により、被補償者が金銭による損失補償に代えて代替地の提供を要望する場合には、必要に応じて代替地のあっせん及び提供に努めることとしている。また、貴省は、代替地の要望が多く、個々の被補償者の要望に対する適宜のあっせん及び提供では代替地の確保が困難であると認められる場合等には、将来、代替地として提供するための土地(以下「代替地用地」という。)をあらかじめ取得して保有し、これを提供することとしている。この代替地用地の取得及び提供に当たっては、代替地の位置、面積、価格及び取得資金に関する被補償者の希望等についての調査(以下「意向調査」という。)を必要に応じて反復して行うこととしている。
 貴省は、要領等に基づき意向調査を行い、その結果を踏まえて被補償者の土地の利用状況、他の道路整備事業における代替地の提供の実績を調査するなどして代替地の必要面積等を決定し、これにより代替地用地を取得している。そして、この代替地用地は、道路用地の取得に当たり、貴省と被補償者が売買契約又は交換契約(以下「売買契約等」という。)を締結するなどして、当該被補償者に代替地として提供される。
 上記の代替地用地は、貴省が、将来、被補償者に代替地として提供するという特定の目的を持って取得する普通財産であり、取得してから代替地として提供するまでの間、国有財産法(昭和23年法律第73号)により、良好な状態で維持及び保存を行い、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わなければならないこととされている。また、要領によると、取得した代替地用地のうち、代替地として提供されない土地が生じた場合は、関係地方公共団体等の事業の代替地として活用するなど、適切に処理するものとされている。
 貴省は、平成21年度末現在で、前記のようにあらかじめ取得した代替地用地を、北海道開発局釧路開発建設部(以下「釧路開発建設部」という。)及び関東地方整備局首都国道事務所(以下「首都国道事務所」という。)において保有している。
 このうち、釧路開発建設部においては、北海道目梨(めなし)郡羅臼町(らうす)における一般国道335号の拡幅事業の実施に伴う代替地の要望に対応するため、7年度から12年度までの間に、買収した土地や、これに隣接する海浜地等を埋め立てた土地を造成するなどして、計19,186.8m2 の代替地用地を取得している。そして、21年度末現在で保有する代替地用地の面積は10,622.2m2 (国有財産台帳価格1億4245万余円)となっている。
 また、首都国道事務所においては、一般国道298号の道路整備事業の実施に伴う代替地の要望に対応するため、昭和55年度から平成10年度までの間に、千葉県松戸市及び市川市において用地買収を行い、計39,505.5m2 の代替地用地を取得している。そして、21年度末現在で保有する代替地用地の面積は計24,431.8m2 (国有財産台帳価格計22億8216万余円)となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 道路整備事業の実施に伴う代替地用地の取得には多額の費用が投入されていることから、その取得、管理及び処分は適切に行うことが求められている。
 そこで、本院は、合規性、経済性、効率性等の観点から、貴省が道路整備事業の実施に伴い取得した代替地用地について、取得、管理及び処分が事業の実施に伴い適時適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 釧路開発建設部及び首都国道事務所(以下「2開発建設部等」という。)において、2開発建設部等が21年度末現在保有する代替地用地計35,054.1m2 (国有財産台帳価格計24億2461万余円)を対象として、国有財産台帳等の書類、現地の状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 釧路開発建設部における代替地用地の取得、管理及び処分の状況

ア 代替地用地の管理の状況について

 前記のとおり、釧路開発建設部は、21年度末現在、代替地用地10,622.2m2 を保有しているが、このうち、1,148.9m2 (国有財産台帳価格相当額1318万余円)について、10年以降、被補償者ではない第三者により、業務用の倉庫の敷地等として長期間にわたり使用されていた。また、このほかに、近隣の漁業者等により資材置場等に使用されている代替地用地もあった。

イ 代替地に係る売買契約等の締結について

 釧路開発建設部は、造成した代替地用地について、不動産登記法(平成16年法律第123号。16年6月全部改正。)に基づく表示に関する登記等が完了するまでに数年を要することなどから、事業の早期の進ちょくを図るため、造成が完了した代替地用地から順次被補償者に対して代替地として提供し、代替地用地の表示に関する登記等が完了した後に被補償者と売買契約等を締結することにしていた。そして、7年度から前記の一般国道335号の拡幅工事が完了した10年度までの間に、順次代替地を提供して、家屋等を移転させていた。
 しかし、上記の代替地として被補償者に提供した代替地用地のうち、計5,763.1m2 (国有財産台帳価格相当額計8380万余円)については、12年度に表示に関する登記等が完了していたが、その後速やかに当該被補償者と売買契約等を締結していなかった。そして、22年5月の会計実地検査時においても売買契約等を締結しないまま長期間にわたり使用させている状況となっていた。

ウ 代替地用地の取得及び処分の状況について

 釧路開発建設部が取得した前記の計19,186.8m2 の代替地用地の取得の経緯をみると、釧路開発建設部は、3年度に、被補償者に対して代替地の要望の有無についての意向調査を行ったものの、要望する面積等については調査しておらず、代替地を要望する被補償者の所有地又は借地の面積に当該被補償者が業務に使用している海浜地等の面積を加えるなどした面積を取得することにしていた。また、6年度に、代替地の位置等の要望を確認するため、2回目の意向調査を行っていた。そして、この意向調査によると、3年度の意向調査においては代替地を要望していたものの、その要望を撤回した者がいて、代替地用地として必要となる面積が減少するなどしていたが、これを代替地用地の取得面積に十分に反映させることなく、前記のとおり、計19,186.8m2 の代替地用地を取得していた。
 一方、この代替地用地の処分の状況をみると、被補償者と売買契約等を締結して代替地として提供した代替地用地の面積は、21年度末現在、計8,564.5m2 となっていて、前記イの売買契約等を締結しないまま提供している5,763.1m2 を含めても、提供した面積は、計14,327.7m2 にとどまっており、残りの計4,860.0m2 については、未提供のまま保有している状況となっていた。
 そして、前記のとおり、拡幅工事は10年度に完了していて、今後、新たに道路用地を取得する計画はないことから、上記の未提供のまま長期間保有している代替地用地計4,860.0m2 (国有財産台帳価格相当額計6065万余円)は、今後も、代替地として提供する見込みのないものとなっていた。また、釧路開発建設部は、羅臼町と7年に協定を締結して、代替地として提供されない代替地用地を同町に売り渡すこととしていたが、22年5月の会計実地検査時においても、同町と売買契約を締結するための具体的な計画は策定されていなかった。

(2) 首都国道事務所における代替地用地の取得、管理及び処分の状況

 首都国道事務所が取得した前記の計39,505.5m2 の代替地用地の取得の経緯をみると、松戸市内分については、昭和55年に意向調査を行い、これに基づくなどして計18,007.5m2 を取得していた。一方、市川市内分については、地元調整等の状況により意向調査を行うことが困難であったことから、過去に市川市内で実施された公共事業に伴う代替地の要望、提供の実績や関係機関との協議等に基づくなどして計21,498.0m2 を取得していた。
 そして、平成21年度末現在で、前記の一般国道298号の道路整備事業に係る道路用地の全体計画面積の約97%(面積963,904.5m2 )が取得済みとなっている一方で、上記の代替地用地計39,505.5m2 のうち、代替地として提供した面積は計10,557.3m2 (松戸市内分9,703.3m2 、市川市内分853.9m2 )で、取得面積(39,505.5m2 )に対する割合は26.7%(松戸市内分53.8%、市川市内分3.9%)にとどまっていた。なお、このほかに、市川市内分については、本件道路整備事業の道路区域の変更に伴い、道路用地となった代替地用地が4,519.1m2 あった。
 その結果、21年度末現在で未提供のまま保有している代替地用地面積は計24,431.8m2 (松戸市内分8,307.4m2 、市川市内分16,124.3m2 )で、取得面積に対する割合は61.8%(松戸市内分46.1%、市川市内分75.0%)となっていた。
 そして、本件道路整備事業については、未取得の道路用地に係る被補償者の意向調査等を現時点においても行うまでに至っていないことなど、これまでの用地交渉の経緯等を考慮すると、上記の未提供のまま保有している代替地用地計24,431.8m2 (国有財産台帳価格計22億8216万余円)は、今後、代替地として提供する具体的な可能性が確認できない状況となっていた。
 なお、この代替地用地については、除草作業等を毎年度実施しており、20、21両年度の除草費用として計440万余円を要していた。
 したがって、このままの状況で推移すると、取得した代替地用地の多くが代替地として提供されないまま長期間にわたって遊休するだけでなく、今後も除草費用が発生するなどの事態が生ずるおそれがあると認められる。

(是正及び是正改善並びに改善を必要とする事態)

 上記のように、代替地用地が被補償者ではない第三者等により使用されていたり、売買契約等を締結しないまま被補償者に代替地用地を長期間にわたり使用させていたりしている事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。また、代替地用地の取得に当たり、被補償者に対する意向調査の結果が代替地用地の取得に十分に反映されていない事態及び代替地としての具体的な提供の可能性が確認できないまま代替地用地を長期間にわたって保有している事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、釧路開発建設部において、代替地用地を適切に管理することなどについての認識及び代替地用地の取得を適切に行うことについての検討が十分でなかったこと、2開発建設部等において、長期間にわたり未処分のまま保有することがないよう代替地用地を計画的、効率的に処分していくことについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置並びに要求する改善の処置

 道路整備事業の実施に伴う代替地用地の取得には、多額の費用が投入されていることから、取得した代替地用地については、長期間にわたり未処分のまま保有するなどの事態がないよう、その取得、管理及び処分を適時適切に行う必要がある。
 ついては、貴省において、第三者等に使用されていたり、売買契約等を締結しないまま被補償者に使用させていたりしている代替地用地については、早急に被補償者等に売買契約等の締結を求めるなどの措置を執るよう是正の処置を要求するとともに、代替地用地の取得、管理及び処分が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求する。
ア 取得した代替地用地を国有財産法等の規定に基づいて適切に管理するよう、地方整備局等を通じて国道事務所等に対して周知徹底すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)
イ 代替地用地の取得に当たっては、可能な限り被補償者に対する意向調査を行い、その結果を代替地用地の取得に適切に反映させるよう、地方整備局等を通じて国道事務所等に対して周知徹底すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)
ウ 未提供のまま保有している代替地用地については、道路整備事業の用地交渉の進ちょく状況や将来の代替地としての提供の可能性を十分検討した上、効率的な処分計画等を定めるなどして、長期間にわたり未処分のまま保有することがないよう、地方整備局等を通じて国道事務所等に対して周知徹底すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)