独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)が行っているバリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付事業において、同資金の借受者が入居者の募集開始時までに貸付対象物件を高齢者円滑入居賃貸住宅として登録することが貸付条件であるのに、機構がその履行確認を行っていないために、貸付条件違反が常態化しているなどの事態や貸付対象物件における高齢者の入居率が著しく低い状況となっていて、事業の効果が十分発現していない事態が見受けられた。
したがって、機構において、借受者が募集開始時までに登録を行っていない物件等に対しては貸付けを行わないこととするなど貸付条件を遵守させる措置を早急に講ずるとともに、広報活動を積極的に行ったり、貸付対象物件が高齢者の入居を拒まないものである旨を募集の際に明示したりすることなどにより、高齢者の入居に結びつくようなより実効性のある措置を講ずるよう、独立行政法人住宅金融支援機構理事長に対して平成21年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、機構本店において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 22年1月に支店等に対して通知を発して、貸付条件である登録の時期について、「総額決定時まで」と変更していたものを「募集開始時まで」と元に戻すとともに、高齢者を入居対象に含めること、登録を継続することなどを新たに貸付条件とし、これに違反した場合は、機構から融資が受けられなくなり、融資を既に受けている場合は貸付金を全額繰上償還請求されても異存がない旨の約諾書を提出させることなどを定め、申込内容の審査段階における確認等を十分に行うこととした。
イ 22年5月に貸付対象物件の情報を機構ホームページに掲載するとともに、同年6月には、各都道府県住宅部局等に対して、高齢者福祉部局と連携し、その情報を周知するチラシを行政窓口、福祉事務所等に配布して備え付けることなどについて協力を要請した。また、前記の通知において、入居者募集の際に行う広告には、高齢者であることを理由に入居を拒否することはない旨の記載を行うこと、高齢者優先募集期間を一般の募集に先立って設けることなどを貸付条件とするとともに、高齢者の入居状況の追跡調査を毎年行うこととした。