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  • 第3章 個別の検査結果|
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本来属すべき会計年度と異なる会計年度から支払を行ったり、歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったりするなどの不適正な会計経理を行うなどしていたもの


(30) 本来属すべき会計年度と異なる会計年度から支払を行ったり、歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったりするなどの不適正な会計経理を行うなどしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)許可及手数料
  (組織)外務本省 (項)外務本省共通費
  (項)領事政策費
  (平成19年度以前は、 (項)外務本省)
  (組織)在外公館 (項)在外公館共通費
  (項)在外公館施設費
  (項)広報文化交流及報道対策費
  (項)領事政策費
  (平成19年度以前は、 (項)在外公館)
部局等 在スイス日本国大使館
検査の対象とした歳入金及び前渡資金の額 収納済歳入額 81,417,430円(平成17年度〜22年度)
  (892,233.44スイス・フラン)
前渡資金支払済額 2,014,713,775円(平成17年度〜22年度)
  (21,958,365.61スイス・フラン)
上記会計経理の内容 在外公館における査証発行等に係る手数料等の収納及び相手国政府等との交渉、邦人の保護等の業務に関する支払
不適正な会計経理の額 収納済歳入額 48,329,530円(平成17年度〜22年度)
  (523,367.85スイス・フラン)
前渡資金支払済額 381,809,760円(平成17年度〜22年度)
  (4,046,077.38スイス・フラン)
430,139,290円
  (4,569,445.23スイス・フラン)

1 会計経理の概要

(1) 在外公館の会計経理の概要

 外務省は、在外公館会計規程(昭和48年外務省訓令第7号)等により在外公館の会計機関 を官職で指定しており、原則として、在外公館の長(以下「館長」という。)を歳入徴収官等、館長の代理となる者を出納官吏(収入官吏及び資金前渡官吏)等としている。館長は、報償費の取扱責任者とされているほか、会計機関等の事務を補助させるため、会計担当者を指定している。
 そして、館長は、在外公館の事務を統括する責任者として、会計経理に対する指導・監督を行うこととされている。
 在外公館においては、収入官吏が収納した収入金を国庫に払い込むための銀行口座(以下「歳入金口座」という。)、前渡資金を取り扱うための銀行口座(以下「前渡資金口座」という。)及び報償費を取り扱うための銀行口座(以下「報償費口座」という。)を設けて、それぞれを区分して出納保管し、その出納状況を所定の帳簿に登記することとされている。
 出納官吏は、外務大臣が各館長に発した通達により、毎月1回、帳簿の現金預金残高と実際の銀行口座の残高及び手許保管現金の残高が一致することを確認して、その結果を館長に報告することとなっている。また、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)により、毎年3月31日又は出納官吏が交替するときは、指定された検査員が出納官吏の帳簿金庫の検査をすることとなっている。そして、上記の通達によると、3月末の帳簿金庫検査実施時及び9月末には、出納官吏が帳簿及び銀行から徴した取引明細書等の計数により作成された歳入歳出金等現在高調書(以下「現在高調書」という。)を確認した上で、在外公館から外務本省へ提出することになっている。

(2) 本院が要求した是正改善の処置及び外務省が講じた処置

 本院は、平成16年10月に、在外公館の会計経理について、歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったり、会計法令等に従った会計事務の処理が行われていなかったりしていた事態が見受けられたことから、外務大臣に対して、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求 した。
 外務省は、本院の指摘に基づいて、内部統制等を十分機能させ、会計法令等に従って適正かつ適切に執行するよう、各種通達を在外公館に発し、歳入徴収官等が徴収決議書を用いて徴収の意思決定を行うようにしたり、資金前渡官吏が小切手(銀行に口座振替を指示する振替指示書を含む。)の署名を自ら行うようにしたり、前渡資金の科目残高を超えた支払を行ってはならないことや実際の出納が帳簿の登記と相違してはならないことを周知徹底したりするなどの処置を講じている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、在外公館の会計経理について、21年6月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条に基づく検査要請を受け、その検査結果を22年10月 及び23年10月 に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「在外公館に係る会計経理について」)。今回、在スイス日本国大使館(以下「大使館」という。)において、合規性等の観点から、会計経理は会計法令等に従って適正に行われているか、館長及び出納官吏はそれぞれの職責に応じた会計経理への指導・監督を適切に行っているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、17年度から22年度までの会計経理の執行状況(徴収決定件数計1,448件、収納済歳入額892,233.44スイス・フラン(邦貨換算額81,417,430円)及び支払決定件数計4,503件、前渡資金支払済額21,958,365.61スイス・フラン(同2,014,713,775円))について、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等を確認するとともに、大使館において会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり、適正又は適切とは認められない事態が見受けられた。

ア 歳出の会計年度所属区分が適正を欠いている事態

 歳出の会計年度所属区分は、予決令により定められており、例えば、物件の購入代価等で相手方の行為の完了があった後に支払うものの会計年度は、その支払をなすべき日の属する年度とされている。
 しかし、大使館においては、17年度から22年度までの間の前渡資金の支払に当たり、外務本省から配賦を受けた額以上の債務負担を行っていたことから、毎年度、庁費等の科目について、一時的に支払額が科目残高を超えていた。
 そして、配賦を受けた額以上の債務負担を前年度に行ったため予算が不足することとなった場合に、前年度に支払ったものを現年度の予算から支払ったこととしていたり、前年度の予算で支払うべきものを現年度の予算から支払っていたり、また、現年度の債務負担が配賦を受けた額を下回り予算に余剰が生じた場合に、翌年度の予算から支払うべきものを現年度の予算から支払っていた。このように歳出の会計年度所属区分が適正を欠いている事態が17年度から22年度までの間に支払決定件数計198件、前渡資金支払済額320,321.63スイス・フラン(邦貨換算額29,232,351円)あった。
 これを、態様別に示すと次のとおりである。

(ア) 前年度に物品が納入されるなどして、その代金を債権者に支払っているのに、その支払に係る決裁済の支払決議書を破棄し現年度分として虚偽の支払決議書を作成するなどして現年度の予算から支払ったこととしていたもの

64件、115,450.02スイス・フラン(邦貨換算額10,671,060円)

(イ) 前年度に物品が納入されるなどしているのに、現年度分として支払決議書を作成して現年度の予算から支払っていたもの

103件、161,950.10スイス・フラン(同14,703,067円)

(ウ) 翌年度に物品が納入されるなどしているのに、現年度分として支払決議書を作成して現年度の予算から支払っていたもの

31件、42,921.51スイス・フラン(同3,858,224円)

イ 歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者によって行われていないなどの事態

(ア) 歳入徴収官等が行うべき徴収の意思決定について

 大使館においては、17年10月から22年9月までの間の領事手数料の徴収決定に当たり、歳入徴収官又は歳入徴収官の代行機関(収入官吏)が自ら行うべき徴収の意思決定が当該者により行われておらず、16年10月から22年9月まで会計担当者であったA書記官が徴収決議書の決裁欄に館長の印鑑を独断で押印していたものが徴収決定件数計1,134件、収納済歳入額523,367.85スイス・フラン(邦貨換算額48,329,530円)あった。

(イ) 資金前渡官吏が行うべき支払の決定及び振替指示書への署名について

 大使館においては、21年1月から同年6月まで資金前渡官吏を任ぜられていた者の在任期間中の支払決議書及び振替指示書の作成に当たり、資金前渡官吏が自ら行うべき支払の決定及び振替指示書への署名が当該者により行われておらず、同期間において、A書記官が支払決議書及び振替指示書に署名していたものが支払決定件数計310件、前渡資金支払済額1,700,194.38スイス・フラン(邦貨換算額165,118,485円)あった。そして、この事態は、他の資金前渡官吏の在任中にも、一部の支払において行われていた。
 また、大使館においては、債権者に対する支払に当たって、支払決議書の決裁日より前に債権者の銀行口座に入金し、支払っているものが、17年度から22年度までの間で、証拠書類等に基づき本院が特定できた範囲で支払決定件数計195件、前渡資金支払済額2,411,752.36スイス・フラン(邦貨換算額224,167,705円)あった。

(ウ) 帳簿への登記と実際の出納保管について

 大使館においては、17年度から22年度までの間に、前渡資金による支払の決定をして、前渡資金の帳簿に登記しているのに、前渡資金口座から支払うことなく報償費口座から支払ったり、報償費口座から支払うものを前渡資金口座から支払ったりなどしており、帳簿への登記と実際の出納保管が相違していたものが支払件数計130件、支払額108,256.24スイス・フラン(邦貨換算額9,793,782円)あった。

 そして、上記の事態を解消するなどのために口座間で資金が移動していた。

ウ 出納官吏による予算執行状況等の確認等が適切に行われていない事態

 大使館においては、外務本省に提出した現在高調書の前渡資金の帳簿残高が実際の帳簿残高と一致していなかったり、前渡資金口座の取引明細書と帳簿の記載が一致していなかったりなどしており、出納官吏による予算執行状況等の確認や指定された検査員が行う帳簿金庫検査が適切に行われたとは認められない状況となっていた。また、出納官吏等は、債務負担の状況を把握することになっているにもかかわらず、前記のとおり、科目残高を超える支払が毎年度行われていた。
 外務本省においては、3月末又は9月末の時点で支払決議書の決裁を経ず前渡資金口座から債権者の口座に入金された不適正な額が現在高調書に「立替金」と記載して計上されるなどしていたことを看過していた。また、外務本省が実施した査察の状況について確認したところ、イ(イ)の事態及び上記の出納官吏による予算執行状況等の確認が適切に行われていない事態については、19年12月に実施した査察において同様な趣旨の指摘が行われており、大使館は適切に改善したとする報告を外務本省に行いながら実際には改善していなかった。
 したがって、以上のように、本来属すべき会計年度と異なる会計年度から支払を行ったり、前記の16年10月の本院の処置要求を受けて外務省が講じた処置が遵守されず、歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったり、帳簿への登記と実際の出納保管が相違していたりなどしている事態が長期にわたっていたことは適正とは認められず、また、これらに対する出納官吏による予算執行状況等の確認等が十分に行われていない事態は適切とは認められず、17年度から22年度までの徴収決定件数計1,134件、収納済歳入額523,367.85スイス・フラン(邦貨換算額48,329,530円)、支払決定件数計689件、前渡資金支払済額4,046,077.38スイス・フラン(同381,809,760円(注) )、合計1,823件、4,569,445.23スイス・フラン(同430,139,290円)が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、大使館において、会計担当者に会計経理を適正に行う認識が欠如していたこと、出納官吏に公金の取扱いに関する認識が十分なかったこと、館長及び出納官吏のそれぞれの職責に応じた会計経理に対する指導・監督が十分でなかったこと、また、外務本省において、大使館が提出した現在高調書等の審査が十分でなかったこと、査察で指摘した事態を確実に改善させていなかったことなどによると認められる。

 ア、イ(イ)及びイ(ウ)の各事態の間には重複しているものがあるため、それぞれの事態を合計した件数、金額とは一致しない。