会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)厚生労働本省 | (項)介護保険制度運営推進費 |
(平成19年度以前は、 | (項)老人医療・介護保険給付諸費) | ||
部局等 | 部局等厚生労働本省(交付決定庁)、8都県(支出庁) | ||
交付の根拠 | 交付の根拠介護保険法(平成9年法律第123号) | ||
交付先(保険者) | 26市区町、1広域連合 | ||
介護給付費負担金の概要 | 市町村の介護保険事業運営の安定化を図ることを目的として、当該年度の介護給付費等を交付の対象に、国が所定の割合を負担し、各市町村に交付するもの | ||
負担金交付額 | 435億0055万余円
(平成18年度〜21年度)
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過大に交付されていた負担金交付額 | 1億4937万円
(平成18年度〜21年度)
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介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者等を被保険者として、加齢による疾病等の要介護状態等に関して、保健医療サービス及び福祉サービスの給付を行う保険である。
介護保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う介護保険事業運営の安定化を図るため、国から市町村に対して介護給付費負担金(以下「負担金」という。)が交付されている(負担金の交付額の算定及び負担金の交付手続については、前掲の「介護給付費負担金が過大に交付されていたもの
」参照)。
介護保険事業状況報告(以下「事業状況報告」という。)は、保険者が作成する統計であり、都道府県を通して厚生労働省に報告され、その内容が公表されている。事業状況報告には審査決定又は支払決定された介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下、これらを「介護給付費等」という。)が記載されることとなっており、この額は、同一年度における介護給付費負担金事業実績報告書(以下「実績報告書」という。)の介護給付費等と、原則として一致することになる。
本院は、平成21、22両年次に本件負担金について検査した結果、負担金の交付額を過大に算定していた事態が見受けられたことから、平成20年度決算検査報告
及び平成21年度決算検査報告
に不当事項として掲記したところである。これに対し、厚生労働省は、事務連絡、担当課長会議等により、負担金の算定に誤りのないよう十分に審査及び確認を行うことを周知徹底するなどして、同様な事態の再発防止に取り組んでいた。
しかし、依然として負担金が過大に交付されている事態が見受けられたので、合規性等の観点から、負担金の算定は適切か、負担金の審査及び確認は効果的な方法により行うことができないかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、26都府県(注1)
の272市区町村、5一部事務組合及び8広域連合を対象として、18年度から21年度までの間に交付された負担金について、実績報告書、関係書類等により会計実地検査を実施した。そして、事業状況報告の介護給付費等のうち施設等分を集計した額と実績報告書の施設等分の額とを突合して両者が大きく異なっているなどしていた場合には、更に事業状況報告、収入額の基礎資料等の確認を行った。
検査したところ、事業状況報告の介護給付費等のうち施設等分を集計した額と実績報告書の施設等分の額が大きく異なっているなどしていた8都県(注2) の26市区町及び1広域連合において、次のとおり負担金を過大に算定していて、負担金交付額計435億0055万余円のうち計1億4937万余円が過大に交付されていた事態が見受けられた。
7都県25市区町及び1広域連合
(負担金交付額計385億4765万余円のうち過大交付額計1億3199万余円)
ア 施設等分とその他分を区分すべき特定入所者介護サービス費について、誤って、その全額をその他分としていたり、施設等分に区分すべき特定施設入居者生活介護費を誤ってその他分としていたりしていたもの
4県14市町
(負担金交付額計79億0983万余円のうち過大交付額計7686万余円)
新潟県南魚沼郡湯沢町は、平成18年度から20年度までの間の負担金の算定に当たり、施設介護サービス費のみを施設等分とし、それ以外の介護給付費等の全額をその他分としていた。
このため、同町は、本来は施設等分とその他分を区分すべき特定入所者介護サービス費や施設等分に区分すべき特定施設入居者生活介護費の全額を誤ってその他分としており、その結果、国の負担割合が高いその他分が過大に算定されて、負担金459万余円が過大に交付されていた。
イ 施設等分について集計を誤ったため、施設等分を過小に算出し、その結果、その他分を過大に算出していたもの
4都県3市及び1広域連合
(負担金交付額計60億4744万余円のうち過大交付額計3136万余円)
ウ 17年度以前に生じた介護給付費等に係る返還金等の収入額をその他分から控除すべきであったのに、誤って施設等分から控除していたもの
2都県8市区
(負担金交付額計245億9037万余円のうち過大交付額計2376万余円)
東京都は、平成19年にA社の経営する7特定施設入居者生活介護事業所に対して監査を実施し、その結果、介護報酬について人員基準を満たしていないのに減算せずに請求していた事態が見受けられたことなどから、A社に対して、改善勧告及び介護報酬の返還の指導を行った。
これを受け、港、墨田、目黒、杉並、豊島、荒川、江戸川各区は、被保険者が上記の7特定施設に入居していて介護給付費等を負担していたことから、A社に対して14年度分から18年度分までの間の介護給付費等の返還請求を行い、19年度に返還金を全額収納していた。
しかし、上記の各区は、19年度の負担金の算定に当たり、返還請求を行い収納した上記の返還金のうち17年度以前の分をその他分から控除すべきところ、誤って施設等分から控除して算定していたため、負担金2040万余円が過大に交付されていた。
1県1市
(負担金交付額計49億5290万余円のうち過大交付額計1738万余円)
このように、依然として介護給付費等に係る施設等分及びその他分の区分を誤るなどして、負担金が過大に交付されている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、市町村において法令等の理解が十分でなかったこと、都県における実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどにもよるが、厚生労働省において、市町村に対して、負担金の実績報告時等における事業状況報告を用いるなどした具体的な確認方法を示しておらず、また、都県に対して、同様な審査及び確認方法を示していなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、負担金が適正に算定されるよう、23年8月に都道府県に対して通知を発し、市町村に対して、負担金の算定誤りの具体的な事例とともに事業状況報告を用いるなどした具体的な確認方法を示し、実績報告時等に確認作業を行うよう周知徹底を図り、また、都道府県に対して、同様の方法による審査及び確認を行うよう周知徹底する処置を講じた。
(注1) | 26都府県 東京都、大阪府、秋田、福島、栃木、群馬、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、山梨、岐阜、愛知、三重、兵庫、和歌山、鳥取、広島、山口、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、沖縄各県
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(注2) | 8都県 東京都、福島、千葉、新潟、岐阜、鳥取、広島、熊本各県
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