農林水産省は、都道府県の区域を事業実施区域とする農地保有合理化法人(以下「農業公社」という。)が、農地保有合理化事業(以下「合理化事業」という。)に係る業務運営体制の整備強化を図るための基金(以下「強化基金」という。)を造成する事業に対して、国庫補助金を交付している。しかし、合理化事業に係る業務運営体制の整備強化を図るための具体的な計画がなく、強化基金の運用益の使途や使用額が不明なままとなっているなど、強化基金が合理化事業に係る業務運営体制の整備強化に資するものとなっていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、強化基金の運用益を財源として実施する事業については原則として終了することとして強化基金を廃止し、農業公社が保有している強化基金のうち国庫補助金相当額を国庫に返還させることとして、財政資金の有効活用を図るよう、農林水産大臣に対して平成22年9月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、22年12月に地方農政局等に対して発出した通知において、強化基金の運用益を財源として実施する事業については原則として終了することとして強化基金を廃止し、45農業公社が保有している強化基金のうち国庫補助金相当額を国庫に返還させることとする処置を講じていた。
なお、上記の通知等に基づき、2農業公社については、保有していた強化基金のうち国庫補助金相当額を23年5月までに国庫に返還するとともに、残りの43農業公社についても、26年3月までに同様の措置を執ることとした基金返還計画を作成し、都府県知事の承認を受けていた。