独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「機構」という。)は、平成15年4月1日に新エネルギー・産業技術総合開発機構が基盤技術研究促進センターから承継した産業投資特別会計からの出資金183億1236万余円等を同年10月1日に承継している。承継した政府出資金等は、機構の鉱工業承継勘定において、承継した株式処分業務及び債権管理回収業務に必要な資金に充てるべきものとされている。そして、株式処分業務は19年6月に終了して、債権管理回収業務についても承継時100億0465万余円の貸付金元本残高が19年度末時点で17億0085万余円まで減少している。このように承継業務の規模が年々縮小するなどしているのに、政府出資金の大部分を投資有価証券等の形で保有し続けている事態は、 現下の財政状況等に鑑みると、国の資産の有効活用の面から適切とは認められない。
したがって、経済産業省において、機構の鉱工業承継勘定における出資金の額の適切な規模を検討して、出資金の減資を行うことにより生ずる資金の国庫返納を可能とする検討を行うよう、経済産業大臣に対して20年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、経済産業本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、経済産業省は、本院指摘の趣旨に沿い、機構に対して、貸付債権の回収の最大化、経費の縮減等に向けて努力するよう指導、助言するとともに、機構の鉱工業承継勘定における出資金の額の適切な規模を検討し、不要財産を国庫納付するための処理方法等を規定した「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成22年法律第37号)等が22年11月27日に施行されたことを受けて、出資金の減資を行うことにより生ずる資金を機構に国庫返納させることとする処置を講じていた。
そして、機構は、23年3月に168億円を国庫に返納していた。