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自衛隊病院等における診療料の施設基準等に係る届出を適時適切に行うなどして診療報酬を適切に算定するとともに、労災算定基準に基づいて労災診療費を適切に算定するよう是正改善の処置を求めたもの


(1) 自衛隊病院等における診療料の施設基準等に係る届出を適時適切に行うなどして診療報酬を適切に算定するとともに、労災算定基準に基づいて労災診療費を適切に算定するよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (部)官業益金及官業収入 (款)官業収入
        (項)病院収入
部局等 内部部局、自衛隊横須賀病院、防衛医科大学校病院
診療報酬等の概要 「診療報酬の算定方法」等により、医療に要する費用を所定の診療点数に単価を乗ずるなどして算定するもの
施設基準等に係る届出を適時適切に行うことにより増収が可能であった診療報酬の額
2559万円
(平成18年度〜22年度)

労災算定基準に基づいて算定することにより増収が可能であった労災診療費の額
275万円
(平成18年度〜22年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 自衛隊病院等における診療料の施設基準等に係る届出及び労災診療費の算定について

(平成23年10月28日付け 防衛大臣宛て)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求める。

1 事態の概要

(1) 自衛隊病院及び防衛医科大学校病院の概要

 貴省は、陸上、海上、航空各自衛隊の共同の機関として、自衛隊中央病院及び15か所の自衛隊地区病院(以下、これらを「自衛隊病院」という。)を設置している。自衛隊病院においては、自衛隊法(昭和29年法律第165号)等に基づき、自衛官、事務官、技官等の隊員及びその被扶養者(以下、これらを「隊員等」という。)の診療を行うとともに、診療に従事する隊員の専門技術に関する訓練等を行っている。自衛隊病院のうち、自衛隊中央病院等6自衛隊病院(注1) (以下「6自衛隊病院」という。)は、厚生労働大臣から逐次保険医療機関の指定を受け、隊員等のほか一般の患者も対象に診療を行っている。
 また、貴省は、医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練をつかさどる機関として防衛医科大学校を設置し、同大学校には、医学の教育及び研究に資するため、病院(以下、この病院を「防衛医科大学校病院」という。)を設置している。防衛医科大学校病院は、厚生労働大臣から保険医療機関の指定を受けるとともに、高度の医療技術を有する特定機能病院としての承認を得て、隊員等のほか一般の患者も対象に診療を行っている。

 自衛隊中央病院等6自衛隊病院  中央、札幌、横須賀、富士、阪神、福岡各病院。た だし、平成23年3月31日以前は、23年4月に保険医療機関の指定を受けた阪神病院を除く5病院

(2) 診療報酬の概要

 保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、医療に要する費用である診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。そして、保険医療機関は、「診療報酬の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第59号)等により、所定の診療点数(以下「健保点数」という。)に診療単価10円を乗ずるなどして診療報酬を算定することとなっている。
 診療報酬には、保険医療機関が、病院等の機能、設備、診療体制等について厚生労働大臣が定めた施設基準等(以下「施設基準等」という。)に適合していることを地方厚生(支)局(平成20年9月30日以前は地方社会保険事務局。以下「地方厚生局等」という。)に届け出て、受理された場合に算定し請求することができる基本診療料、特掲診療料、これらに係る加算等(以下、これらを「診療料」という。)がある。保険医療機関の指定を受けている6自衛隊病院及び防衛医科大学校病院における地方厚生局等に対する診療報酬に係る各種届出は、各病院が作成した届出書の内容を貴省内部部局において確認した上で、これらの病院の開設者である防衛大臣(19年1月8日以前は防衛庁長官)が行うこととなっている。
 施設基準等の届出に関して、本院は、平成18年度決算検査報告において、自衛隊病院における一般病棟の入院基本料の算定に当たって看護の実態に即した区分の届出を地方厚生局等に行っていなかった事態について、「自衛隊病院における入院基本料に係る診療報酬の請求について、看護の実態に即した適切な入院基本料の区分により行うよう改善させたもの」 として、掲記している。

(3) 労災診療費の算定

 労働者災害補償保険は、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)等に基づき、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対して療養の給付等の保険給付を行うなどするものである。この療養の給付等は、負傷又は発病した労働者の請求に基づき、病院等において診療を行うものであり、当該診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)は、都道府県労働局から支払われることとなっている。
 労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達。以下「労災算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。労災算定基準によると、労災診療費は、労災診療の特殊性等を考慮して、健保点数に診療単価11円50銭(法人税等が非課税となっている公立病院等以外の病院等については12円)を乗じて算定し、初診料、再診料、四肢の傷病に係る手術等の特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数、金額又は加算を別に定めて、これにより算定することができることとなっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、前記の平成18年度決算検査報告の指摘も踏まえ、効率性等の観点から、保険医療機関の指定を受けている6自衛隊病院及び防衛医科大学校病院について、診療料の施設基準等に係る届出が適時適切に行われ診療報酬が算定されているか、労災診療費が労災算定基準に基づいて適切に算定されているかなどに着眼して検査を実施した。
 検査に当たっては、保険医療機関の指定を受けている2自衛隊病院(注2) 及び防衛医科大学校病院において、地方厚生局等に提出した届出書を確認するとともに、18年4月から23年3月までの間の診療報酬明細書における診療報酬の算定内容を確認するなどの方法により、また、貴省内部部局において、診療料の施設基準等に係る届出及び労災診療費の算定に関する事務処理等について見解を徴するなどして会計実地検査を行った。

 2自衛隊病院  中央、横須賀両病院

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 診療料の施設基準等に係る届出について

ア 施設基準等に適合しているのに届出が行われていない診療料

 自衛隊横須賀病院は、救急医療管理加算・乳幼児救急医療管理加算(以下「救急医療管理加算」という。)及び運動器リハビリテーション料について、施設基準等に適合しているのに届出を行っていなかったり、同病院の診療体制等の実態に即した区分の届出を行っていなかったりしていた。
 したがって、これらの診療料について所定の施設基準等に適合している旨の届出を行って診療報酬を算定したとすると、表1のとおり、22年度において459万余円の増収が可能であったと認められる。

表1 施設基準等に適合しているのに届出が行われていない診療料
病院名 診療料名称 年度 増収可能額(円)
自衛隊横須賀病院 救急医療管理加算 平成22 4,084,800
運動器リハビリテーション料 506,260
4,591,060

<事例1>

 救急医療管理加算は、平成22年度に新設されたものであり、施設基準等に適合していることを地方厚生局等に届け出た保険医療機関において、緊急に入院を必要とする重症患者に対して所定の点数を加算するものである。
 自衛隊横須賀病院は、21年2月に、救急病院の認定を受けており、救急医療管理加算の新設時に届出を行えば、22年4月から救急医療管理加算の算定ができたのに、この施設基準等に係る届出を行っていなかった。

イ 病院内の体制の整備等を図ることにより、施設基準等に適合し、届出を行うことが可能となる診療料

 防衛医科大学校病院及び自衛隊横須賀病院は、一般病棟看護必要度評価加算等について、会計実地検査時において届出を行っていなかった。しかし、これらの診療料については、院内研修を実施したり内部規程を作成したりするなど病院内の体制を整えれば、施設基準等に適合することが可能となるものであった。
 したがって、これらの診療料について、病院内の体制の整備等を図った上で届出を行って診療報酬を算定したとすると、表2のとおり、18年度から22年度までの間において2100万余円の増収が可能であったと認められる。

表2 病院内の体制の整備等を図ることにより、施設基準等に適合し、届出を行うことが可能となる診療料
病院名 診療料名称 年度 増収可能額(円)
防衛医科大学校病院 一般病棟看護必要度評価加算
平成
22

6,588,800
診療録管理体制加算
 
19〜22

10,551,300
自衛隊横須賀病院 診療録管理体制加算
 
18〜22

496,440
栄養管理実施加算 3,364,560
21,001,100

<事例2>

 一般病棟看護必要度評価加算は、入院患者の重症度等の状態に係る看護必要度の測定評価を行い看護師等を適正に配置している病院を評価するものであり、対象入院患者の看護必要度について測定評価を行った場合に所定の点数を加算するものである。
 防衛医科大学校病院は、測定評価をおおむね実施していたが、測定評価者を育成するための院内研修を実施するなどの体制の整備等が十分でなかったため、測定評価者の離職等に伴って一時的に測定評価者が確保できず、一部の患者について測定評価が実施されない結果となっていた。このため、施設基準等に適合することができず届出を行っていなかった。

(2) 労災診療費の算定について

 自衛隊横須賀病院は、労災診療費の算定に当たり、労災算定基準で定められた診療単価や点数等を用いて算定することができるのに、診療単価について、労災算定基準で定められた11円50銭ではなく10円としていた。また、初診料、再診料、四肢の傷病に係る手術等の特定の診療項目について、労災算定基準で定められた点数等ではなく健保点数を用いて算定していた。
 したがって、この労災診療費について、労災算定基準に基づいて算定したとすると、18年度から22年度までの間において275万余円の増収が可能であったと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 前記のとおり、診療料の施設基準等に係る届出や施設基準等に関連する病院内の体制の整備等が適時適切に行われないまま診療報酬の算定が行われていたり、労災算定基準に基づかずに労災診療費が算定されていたりしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 貴省において、自衛隊横須賀病院及び防衛医科大学校病院に対する診療報酬の算定に係る事務処理体制の整備等についての指導監督が十分に行われていないこと、また、両病院において、施設基準等についての検討が十分でなく適時適切に地方厚生局等へ届出を行う体制が整っていないこと
イ 貴省において、労災診療費を算定する際には、労災算定基準に基づいて適切に算定するよう自衛隊横須賀病院に対して周知徹底を図っていないこと、また、同病院において、労災算定基準に基づいて労災診療費を算定することの認識が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 6自衛隊病院及び防衛医科大学校病院は、今後も保険医療機関として診療を継続して行っていくことから、病院運営の一層の効率化の推進及び適切な収入確保が求められている。
 ついては、貴省において、診療報酬等の算定が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 貴省において、保険医療機関の指定を受けている6自衛隊病院及び防衛医科大学校病院に対して、診療報酬の算定に係る事務処理体制の整備等を図り診療報酬を適切に算定するよう指導監督を徹底した上で、現時点で届出が可能な施設基準等については地方厚生局等へ速やかに届出を行うとともに、新たな予算措置等を伴うことなく病院内の体制の整備等を図ることにより施設基準等に適合し届出を行うことが可能となる診療料については早急に病院内の体制の整備等を図らせること、また、6自衛隊病院及び防衛医科大学校病院において、各病院の実態に即した診療報酬の算定が行われるよう、施設基準等の適合状況についての確認及び地方厚生局等への届出を適時適切に行う体制を整えること
イ 貴省において、6自衛隊病院に対して、労災診療費を算定する際には労災算定基準に基づいて適切に算定するよう周知徹底を図ること、また、6自衛隊病院において、労災算定基準に基づいて労災診療費を適切に算定するようにすること