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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

監査の実施状況


5 監査の実施状況

(1) 在外公館に対する監査の概要

 在外公館に対する監査には、外部監査に相当する会計検査院による会計検査及び総務省による行政評価・監視と内部監査に相当する査察使による査察等がある。このうち、在外公館に対する内部監査としての会計監査は、査察使による実地監査が行われている。書面監査は行われていないが、外務省では、これに代わるものとして、在外公館の運営等に関する事務を所掌している外務省大臣官房在外公館課が、会計検査院に提出する各在外公館の計算証明書類の調製や会計事務に関する支援等を行っており、その過程で証拠書類等の内容をしっかい的に確認しているとしている。
 査察は、通常、査察使1人のほか、査察補佐官として外務本省の監察査察室の会計調査班のうちの2人と、主に会計監査以外の事項について査察を行う1人を加えた計4人で行われている。監察査察室の会計調査班には、22年度末現在、在外公館や外務本省で会計事務の経験を積んだ職員2人と公認会計士の資格を有する任期付の国家公務員(任期は2年)2人が配置されており、通常、それぞれ1人ずつ計2人が会計担当の査察補佐官として査察使に随行している。
 22年度における査察施行箇所数は、図表5-1 のとおり、32か所で、査察実施人日数のうち会計担当の査察補佐官によるものは322人日(1か所当たり10人日)であった。

図表5-1
 査察の施行率等(平成17年度〜22年度)

平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
査察対象箇所数 (A) 223 223 226 230 232 233
施行箇所数 (B) 31 34 33 38 41 32
施行率(%) (B)/(A) 13.9 15.2 14.6 16.5 17.7 13.7
人日数(注)
(うち在外公館課等からの応援分)
372
(47)
428
(81)
484
(91)
413
(0)
409
(0)
322
(0)
 会計担当の査察補佐官の人日数

 なお、22年度における査察の施行率や査察実施人日数が前年度に比べて2割程度減少しているのは、23年3月に東日本大震災が発生したことも影響しているが、査察の施行率等は、図表5-1 のとおり、年度によりばらつきが生じており、これは主として以下のような要因によると考えられる。
 すなわち、査察使には、主として、待命の大使や外務省大臣官房監察査察官が任命されている(以下、査察使に任命された待命の大使を「査察担当大使」という。)。「待命」とは、在外公館での大使としての勤務を免ぜられた後、新たに在外公館に勤務することとなるまでの間のことであり、外務公務員法により、待命の大使は原則として待命の期間が1年を経過するとき待命の大使の職を免ぜられることとされているため、査察担当大使としての在任期間は1年以内となっている。そして、22年度における査察担当大使の人数をみても、2人の期間がある一方で、不在であった期間もあった。一方、監察査察官は、法務省の検事1人が併任されており、その併任期間は平均2年であるが、在外公館を対象とする査察のほかに外務本省内の各部局を対象とする監察の業務にも携わっている。
 査察の実施箇所や日程を決定する際には、このような査察担当大使の在任状況や監察査察官の業務の状況のほか、在外公館ごとに査察実施の必要性や国際会議等による業務の繁忙等を勘案する必要があり、結果として年度により施行率等にばらつきが生じていると考えられる。

(2) フォローアップ検査

 22年次の検査の結果及び所見並びに23年次のフォローアップ検査の結果は、以下のとおりである。

ア 22年次の検査の結果

(ア) 限られた人員で効率的・効果的に会計監査を実施するためには、監査の日程、勢力配分等を明確にするとともに、監査上の重点事項等を定めた監査計画を策定する必要があるが、査察に関する監査計画は、短期的な出張計画を作成しているだけで、年度ごとの監査の重点項目や監査テーマを定めていなかった。

(イ) 実地監査を実施する箇所の選定に当たっては、問題がある可能性が高い箇所を選定するとともに、監査の牽(けん)制機能を維持する見地から、多年にわたって監査を実施しない空白域を生じさせないようにすることが有効であるが、各年度の査察の施行率は平均16.0%となっていて、全査察対象箇所232か所(21年度末現在)のうち、6年間査察が実施されていない箇所が38か所あった。

(ウ) 査察の結果は、外務大臣に報告されているほか、査察を受けた在外公館、外務省大臣官房会計課、在外公館課等の外務本省の関係課に通知されている。会計監査の結果を有用な情報として活用定着させるためには、組織全体に周知することが有効である。各年度の査察の施行率が16%程度であり、各在外公館に共通的に見られる指摘事項があることから、査察の結果をすべての在外公館に周知して注意喚起を促すことが有効である。しかし、査察の結果のうち他の在外公館にも関係する事項を取りまとめてすべての在外公館に周知することは行われていなかった。

(エ) 監査の実効性を確保するためには、監査で指摘した事態に対して必要な改善の措置等が確実に執られるように、監査を行う組織がその経過及び結果をフォローアップすることが有効である。しかし、改善するまで査察のフォローアップが継続的に行われていなかったり、指摘内容の事後の調整・検証が十分でなかったりなどしたため、査察実施後長期間が経過しているのに事態が十分に改善されていない在外公館が6公館あった。

イ 22年次の検査の結果に対する所見

(ア) 査察に関する監査計画を充実させる。

(イ) 査察を実施する箇所の選定に当たっては、長期間にわたって査察が実施されない箇所が生じないよう努める。

(ウ) 査察における会計監査については、会計実地検査時の指摘により執ることとした監査結果を取りまとめて周知するなどの監査結果を有効に活用するための措置を確実に実施する。

(エ) 監査結果のフォローアップを適切に行い、査察で指摘した事態を確実に改善させる。

 以上のようにして、より効率的、効果的な会計監査の実施に努める。

ウ 23年次のフォローアップ検査の結果

 上記の所見について、外務省の改善の状況を検査した結果は、以下のとおりである。

(ア) 外務省は、査察の際に長期間利用されていない国有財産の現況確認を行うこととしたり、領事手数料の収納に関する査察項目を充実させたりするなどの改善を図っており、今後もより計画的・重点的な監査の実施に努めるとしている。

(イ) 外務省は、査察が長期間にわたって実施されていない在外公館が相当数あることについて、査察は会計監査と業務監査とを一体的に行っているものであり、在外公館の業務遂行の状況等を全般的に考慮して査察実施箇所を選定する必要があることなどによるものであるとしている。
 そして、22年度の査察の実施状況について検査したところ、外務省文書管理規則(平成18年外務省訓令第16号)により、会計帳簿類の保存期間は5年とされているが、その保存期間を超える6年間一度も査察が実施されていない箇所は、21年度末の38か所に対して、22年度末は45か所となっていた。

(ウ) 外務省は、会計検査院の22年次の会計実地検査時の指摘により、22年8月に、21年度の会計経理に関する査察の結果のうち各在外公館に共通的に見られる事項を取りまとめて周知しており、このうち帳簿金庫検査の適切な実施などの一部の事項については、査察実施の有無にかかわらず、自主的に点検するよう、全ての在外公館に指示するなどの処置を講じている。その結果、同様の事態が発見されて改善がなされたものが、検査した40公館のうち34公館で60事項となっていて、監査結果を有効に活用するための措置が相応の効果を上げているものと認められた。

(エ)外務省は、査察で指摘した事項の改善状況を在外公館から報告させることなどにより、査察の有効性の向上に努めているとしている。しかし、22年報告と同様に査察実施後長期間が経過しているのに査察で指摘を受けた事態が十分に改善されていない在外公館が、検査した40公館のうち7公館(注5-1) あった。
 特に、スイス大使館では、第2の1(3)ア のとおり、査察のフォローアップに関して、適切でない事態があった。
 外務省は、査察で指摘した事態が確実に改善されるようにするため、23年7月、監察及び査察に関する訓令(平成23年外務省訓令第10号)において、査察で指摘を受けた場合、事態を改善してその結果を正しく報告する義務があることなどを明示する処置を講じた。

 7公館  トリニダード・トバゴ、アイルランド、スイス、ルクセンブルク、オマーン各大使館、瀋陽、ウラジオストク両総領事館