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  • 平成23年10月

国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について


3 検査の状況

(1) 基金の設置及び保有の状況

ア 基金の概況

 22年度末の基金の状況は、図表1 のとおりであり、3,859基金(都道府県1,091基金、市区町村2,082基金、公益法人その他団体686基金)における基金保有額は3兆4397億余円となっている。このうち国庫補助金等相当額は2兆8459億余円(都道府県2兆3257億余円、市区町村1046億余円、公益法人その他団体4155億余円)で全体の82%(小数点以下切捨て)を占めている。
 都道府県別に22年度末の状況をみると、基金数は北海道(管内の市町村等を含む。)が247基金で最も多くなっているが、これは20年度に介護従事者処遇改善臨時特例基金が各市区町村ごとに設置造成されたため、市町村数の最も多い北海道の基金数が増加したことによるものである。また、基金保有額が最も多いのは東京都(管内の市区町村等を含む。)の2246億余円であり、このほかに1000億円以上の基金を保有しているのは、いずれも政令指定都市が所在する9道府県となっている。これは、基金事業の対象者数等に応じて国庫補助金等の交付が行われている基金が多いためである。
 18年度から22年度までの各年度末の基金数及び基金保有額の推移についてみると、基金数は838基金(18年度末)から3,859基金(22年度末)に、基金保有額は7591億余円(国庫補助金等相当額4271億余円)から3兆4397億余円(同2兆8459億余円)にそれぞれ増加しており、いずれも約4倍の規模となっている。このように大幅に基金規模が拡大したのは、前記のとおり、緊急経済対策等の一環として、20、21両年度に、基金事業団体に基金が多数設置造成されたことによる。

図表1 都道府県別の基金数及び基金保有額の推移(平成18年度〜22年度) 

(単位:基金、百万円)
( )
都道府県
平成18年度末 19年度末 20年度末 21年度末 22年度末
基金数 基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金数 基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金数 基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金数 基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
基金数 基金保有額
(うち国庫補助金等相当額)
北海道 37 59,702
(36,238)
41 64,024
(40,629)
205 98,612
(75,527)
247 195,669
(168,048)
247 167,516
(140,519)
青森県 48 18,742
(11,123)
56 24,061
(16,179)
113 47,769
(35,187)
136 85,539
(75,292)
136 68,775
(53,076)
秋田県 19 10,414
(5,269)
23 12,368
(7,038)
54 27,951
(22,114)
69 57,400
(51,474)
69 46,007
(39,987)
山形県 25 9,728
(4,281)
29 11,404
(5,893)
74 27,850
(21,664)
94 61,430
(54,955)
94 48,538
(41,841)
栃木県 15 10,697
(5,387)
19 12,550
(7,237)
53 27,540
(21,962)
68 76,382
(63,746)
68 64,587
(52,690)
群馬県 13 9,582
(4,842)
16 11,998
(7,039)
61 28,070
(20,693)
76 65,164
(57,583)
76 58,043
(50,356)
埼玉県 12 15,459
(8,064)
17 21,300
(13,877)
86 53,163
(44,753)
109 122,912
(113,491)
109 105,179
(94,549)
千葉県 10 18,726
(7,923)
14 24,162
(12,861)
73 52,964
(40,426)
101 121,549
(108,724)
101 108,748
(90,301)
東京都 8 31,391
(15,285)
14 42,216
(25,657)
81 101,764
(83,113)
108 263,282
(205,068)
108 224,672
(170,887)
神奈川県 12 21,896
(11,095)
15 28,207
(17,349)
57 69,892
(57,970)
80 155,283
(142,374)
80 127,726
(113,694)
新潟県 23 20,551
(12,543)
55 27,526
(19,493)
93 67,291
(37,561)
118 131,566
(97,084)
118 114,675
(77,355)
富山県 16 10,268
(4,895)
32 11,871
(6,248)
51 24,678
(18,335)
71 61,460
(54,896)
71 50,651
(43,889)
石川県 17 8,386
(3,773)
22 10,092
(4,974)
44 21,936
(16,655)
61 89,699
(49,006)
61 83,991
(40,587)
福井県 20 17,361
(11,909)
56 24,655
(19,025)
81 37,889
(31,999)
99 62,656
(56,590)
99 50,244
(44,048)
山梨県 12 7,698
(3,402)
15 8,450
(4,051)
42 16,895
(12,233)
64 39,622
(34,152)
64 33,585
(27,852)
長野県 18 16,480
(6,304)
22 18,538
(8,011)
94 35,497
(24,472)
119 91,684
(77,240)
119 69,369
(54,701)
岐阜県 15 10,558
(5,829)
21 13,879
(8,451)
65 29,296
(23,008)
83 68,769
(62,127)
83 60,536
(53,924)
静岡県 17 15,838
(7,762)
21 19,508
(11,401)
62 42,099
(33,459)
82 110,171
(100,995)
82 98,625
(88,931)
愛知県 13 20,773
(9,913)
28 27,922
(16,277)
95 66,378
(53,239)
116 150,338
(136,470)
116 122,384
(108,397)
三重県 13 11,898
(6,739)
17 14,057
(8,339)
50 29,656
(22,723)
72 80,460
(69,229)
72 61,240
(49,717)
滋賀県 17 6,920
(3,708)
21 7,713
(4,464)
49 23,049
(19,124)
65 51,257
(46,987)
65 40,565
(35,930)
京都府 16 11,283
(6,277)
19 14,839
(9,514)
54 32,437
(25,679)
73 80,688
(73,651)
73 71,312
(63,831)
大阪府 9 27,202
(12,395)
14 37,475
(21,426)
65 85,623
(66,054)
88 201,580
(180,739)
88 185,662
(163,486)
兵庫県 17 42,869
(32,589)
29 50,746
(39,680)
77 83,928
(71,383)
105 177,766
(160,114)
105 155,772
(137,003)
奈良県 12 10,760
(6,280)
16 12,326
(7,705)
65 24,485
(19,491)
82 58,719
(53,353)
82 48,280
(42,677)
和歌山県 15 10,859
(5,218)
19 12,411
(6,615)
61 24,911
(18,609)
76 51,447
(45,034)
76 40,317
(33,842)
鳥取県 19 8,224
(4,298)
23 8,863
(4,842)
50 23,287
(15,070)
70 51,088
(42,489)
70 42,844
(34,134)
島根県 23 11,148
(4,886)
26 11,605
(6,100)
48 24,377
(18,074)
70 58,612
(51,143)
70 46,934
(38,875)
岡山県 22 11,497
(5,670)
27 14,080
(7,974)
62 28,323
(21,675)
83 76,724
(69,785)
83 60,395
(53,356)
広島県 16 13,809
(5,567)
23 16,659
(8,388)
54 36,324
(26,490)
76 84,683
(74,144)
76 67,544
(56,455)
山口県 22 11,567
(6,295)
28 13,692
(8,243)
59 26,924
(21,051)
79 66,048
(59,369)
79 56,432
(49,780)
徳島県 18 9,776
(4,831)
22 12,847
(5,714)
58 25,581
(17,622)
74 54,966
(46,357)
74 46,895
(40,024)
香川県 12 7,363
(3,423)
18 8,430
(4,493)
43 17,707
(13,594)
60 42,609
(37,675)
60 38,079
(32,624)
愛媛県 19 11,357
(5,575)
22 13,708
(7,904)
48 26,962
(20,873)
69 66,288
(59,788)
69 56,762
(49,509)
高知県 18 7,744
(3,979)
22 8,761
(4,984)
58 20,732
(16,741)
89 58,166
(53,323)
89 49,814
(44,504)
福岡県 18 67,760
(43,093)
29 73,236
(48,518)
71 105,372
(75,700)
100 198,651
(164,226)
100 171,512
(136,700)
佐賀県 27 28,408
(24,425)
31 30,077
(25,913)
48 41,021
(36,458)
66 78,035
(68,257)
66 65,257
(54,362)
長崎県 26 26,588
(16,263)
37 28,086
(17,228)
65 52,273
(33,824)
82 90,033
(71,774)
82 75,106
(56,653)
熊本県 22 20,414
(9,266)
27 23,214
(11,878)
77 40,280
(28,710)
96 91,752
(79,929)
96 80,492
(68,268)
大分県 25 10,057
(5,241)
29 12,012
(7,007)
62 28,033
(19,560)
86 73,041
(61,164)
86 58,640
(44,217)
宮崎県 26 9,197
(4,791)
32 10,712
(6,304)
73 27,106
(20,793)
94 67,025
(57,784)
94 52,431
(41,651)
鹿児島県 58 18,020
(9,247)
61 20,250
(11,209)
109 38,638
(28,894)
136 100,590
(89,151)
136 80,486
(67,719)
沖縄県 18 30,108
(21,247)
21 30,868
(22,012)
50 50,715
(41,331)
67 91,304
(72,437)
67 83,060
(63,058)
838 759,101
(427,158)
1,129 901,418
(558,163)
2,940 1,795,297
(1,373,913)
3,859 4,062,125
(3,497,239)
3,859 3,439,706
(2,845,981)
対前年度増減基金保有額     142,317   893,878   2,266,828   △622,419

(うち国庫補助金等相当額)
   
(131,005)
 
(815,750)
 
(2,123,325)
 
(△651,258)
 管内の市区町村、都道府県所管公益法人その他団体を含む。

 18年度から22年度までの各年度末における基金保有額のうち国庫補助金等相当額について、交付元府省別にみると、図表2のとおりであり、18年度に障害者自立支援対策臨時特例基金(22年度末1371億余円)及び20年度に緊急雇用創出事業臨時特例基金(同4490億余円)が設置造成されたことに加えて、21年度に介護職員処遇改善臨時特例基金(同2429億余円)等の基金が設置造成されたことから、厚生労働省を交付元とする基金が最も多くなっている。また、各年度の推移をみると、一部の省を除いて、20、21両年度に国庫補助金等相当額が大きく増加している。これは、前記のとおり、政府の経済対策等による20・21補正基金が多数設置造成されたことによるものである。これらの基金の中には、22年度補正予算においても多額の交付金が交付され、積増しされているものもある。

図表2 交付元府省別国庫補助金等相当額の推移(平成18年度〜22年度)
(単位:基金、百万円)
国庫補助金等交付元府省名 平成18年度末 19年度末 20年度末 21年度末 22年度末
基金数 国庫補助金等相当額 基金数 国庫補助金等相当額 基金数 国庫補助金等相当額 基金数 国庫補助金等相当額 基金数 国庫補助金等相当額
内閣府 4 24,220 4 24,211 48 38,786 91 50,429 91 42,269
総務省 1 9 1 8 80 30,684 306 361,795 306 223,812
文部科学省 6 1,135 6 1,469 7 6,625 50 54,579 50 43,937
厚生労働省 131 181,946 218 290,468 1,846 1,050,169 2,106 2,610,143 2,106 2,206,133
農林水産省 403 53,843 562 63,653 573 70,057 747 190,407 747 134,354
経済産業省 235 130,001 247 140,272 260 135,870 280 135,451 280 126,357
国土交通省 8 25,203 24 26,136 38 26,568 48 26,681 48 26,565
環境省 50 10,797 50 10,798 50 10,764 182 62,175 182 36,671
防衛省 17 1,145 38 4,385 49 5,575 49 5,880
838 427,158 1,129 558,163 2,940 1,373,913 3,859 3,497,239 3,859 2,845,981
対前年度増加額     131,005   815,750   2,123,325   △651,258
対前年度増加率 30% 146% 154% △18%
(注)
 基金数の集計において、国庫補助金等が2府省以上から交付されている基金については、国庫補助金等交付額が最も多い府省の基金として集計している。

イ 国庫補助金等の配分方法

 基金を設置造成するために交付された国庫補助金等の総額は、基金ごとに各府省において決定されている。そして、18年度以降の国庫補助金等の配分方法についてみると、各基金事業団体への配分額は、各基金事業団体に対して基金事業に関する要望調査を行い全国の計画額総額に対する各基金事業団体の計画額の割合によって案分したり、実質的な要望調査を行わずに予算額を基金事業の全国の対象者数等に対する各基金事業団体の対象者数等の割合で案分したりするなどの方法により、各府省において決定されている。

ウ 20・21補正基金の設置等の状況

 20・21補正基金の設置等の状況は、図表3のとおりである。

図表3 20・21補正基金の設置等の状況
(単位:基金、百万円)
設置年度 国庫補助金等別基金名 国庫補助金等交付元府省 基金数 国庫補助金等交付額A 平成20年度から22年度までの取崩額
B(A-C)
執行率(22年度末時点)B/A 22年度末に保有している国庫補助金等相当額C 当初終了年度 延長された年度等

20、21年度
地域活性化・生活対策臨時交付金等により設置造成された基金
総務省

304

369,368

184,340

49.9%

185,028

23年度

20年度 消費者行政活性化基金 内閣府 43 21,980 9,114 41.4% 12,866 23年度 24年度
安心こども基金 文部科学省及び厚生労働省 43 348,524 144,620 41.4% 203,903 22年度(一部23年度) 最長の事業で26年度
妊婦健康診査支援基金 厚生労働省 43 84,224 42,719 50.7% 41,504 22年度 23年度
国保介護従事者処遇改善基金 厚生労働省 43 16,299 15,143 92.9% 1,155 22年度
介護従事者処遇改善臨時特例基金 厚生労働省 1,415 64,246 49,134 76.4% 15,112 23年度
緊急雇用創出事業臨時特例基金 厚生労働省 43 828,697 379,670 45.8% 449,026 23年度 24年度
ふるさと雇用再生特別基金 厚生労働省 43 226,770 120,910 53.3% 105,859 23年度
20年度計 1,673 1,590,742 761,314 47.8% 829,428  
21年度 地域自殺対策緊急強化基金 内閣府及び厚生労働省 43 11,459 4,109 35.8% 7,350 23年度 24年度
高校生修学支援基金 文部科学省 43 47,105 14,793 31.4% 32,311 23年度
介護基盤緊急整備等臨時特例基金 厚生労働省 43 293,873 87,564 29.7% 206,308 23年度
社会福祉施設等耐震化臨時特例基金 厚生労働省 43 113,684 32,433 28.5% 81,250 23年度
医療施設耐震化臨時特例基金 厚生労働省 42 159,974 17,081 10.6% 142,892 22年度 耐震化整備事業終了まで
介護職員処遇改善等臨時特例基金 厚生労働省 43 439,918 196,922 44.7% 242,996 23年度
地域医療再生臨時特例基金 厚生労働省 43 221,564 26,877 12.1% 194,687 25年度
森林整備加速化・林業再生基金 農林水産省 43 127,859 70,502 55.1% 57,357 23年度
優良繁殖雌牛更新支援基金 農林水産省 30 6,822 666 9.7% 6,156 22年度 23年度
学校給食地場農畜産物利用拡大基金 農林水産省 36 2,849 注(4)
654
22.9% 2,140 22年度
グリーンニューディール基金 環境省 132 56,074 注(5)
28,402
50.6% 26,171 23年度
需要即応型水田農業確立推進基金
農林水産省

(42)

(58,396)

(41,922)

(71.7%)


22年度

21年度中に終了
自給力向上戦略的作物等緊急需要拡大対策事業基金
農林水産省

(40)

(3,281)

(957)

(29.1%)


22年度

21年度中に終了
21年度計 541 1,481,186 480,008 32.4% 999,623  
合計 2,518 3,441,298 1,425,663 41.4% 2,014,079
注(1)  「国庫補助金等交付額」欄の金額は、平成21、22両年度の追加交付額を含む。また、設置年度が20年度及び21年度の基金には、地域活性化・生活対策臨時交付金等により積増しされた交付額を含む。
注(2)  地域活性化・生活対策臨時交付金等により設置造成された基金とは、平成20年度交付の地域活性化・生活対策臨時交付金、21年度交付の地域活性化・経済危機対策臨時交付金及び地域活性化・公共投資臨時交付金により設置造成された基金である。これらについては、交付金ごとの取崩額、保有額の特定が困難なため、三つの交付金の合計を計上している。
注(3)  需要即応型水田農業確立推進基金及び自給力向上戦略的作物等緊急需要拡大対策事業基金は、平成22年度末の保有額が0円であることから、調査分析の対象としていないため21年度計及び合計には加えていない。
注(4)  平成21年度に神奈川、熊本、大分各県から農林水産省に返還された計5464万円は取崩額に含めていない。
注(5)  平成22年度に三重県から環境省に返還された15億円は取崩額に含めていない。

 20・21補正基金は、19基金事業、計2,518基金、国庫補助金額等相当額計2兆0140億余円に上っており、調査分析の対象とした基金総数に占める割合は65%、基金保有総額に占める割合は58%となっている。
 府省別にみると、厚生労働省所管の国庫補助金等による基金が最も多く、特に、20年度に設置造成された介護従事者処遇改善臨時特例基金は、前記のとおり、各市区町村等が事業主体となることから、その数は1,415基金となっており、20・21補正基金の56%と過半数を占めている。
 また、20・21補正基金は、経済対策等の一環で設置造成され、短期間に集中して事業を実施するためのものであることから、当初、19基金事業のうち6基金事業が22年度を、12基金事業が23年度をそれぞれ終了年度とするなど、あらかじめ全ての基金で事業期間が定められている。各基金事業の22年度末時点の執行率(取崩額の合計額を国庫補助金等交付額で除したもの。以下同じ。)についてみると、20年度設置造成分は2基金事業を除き50%前後となっていて、平均で47%となっている。21年度設置造成分は50%を超えるものがある一方、10%に満たないものもある状況で、平均で32%となっている。
 全体としては執行率が低くなっている基金事業においても、都道府県ごとにみると既に全額を執行しているところもあり、執行率のばらつきが大きくなっている基金事業もある。これは、基金事業団体ごとに基金事業を取り巻く環境が異なっていることなどが影響していることによると思料される(後記(3)ウ参照 )。
 そして、消費者行政活性化基金等7基金事業については、当初設定された期間では事業を十分に実施できないなどとして、事業期間の延長が行われている。
 なお、21年度補正予算により創設された基金事業については、21年9月に各交付元府省が執行の是非について点検することとなり、点検の結果、農林水産省所管の需要即応型水田農業確立推進基金及び自給力向上戦略的作物等緊急需要拡大対策事業基金が、21年度末までに廃止され、基金の残余額212億3432万余円(国庫補助金等相当額同額)は22年度中に国に返還されている。

エ 基金の分類

 検査の対象とした3,859基金について、基金の使途及び運営形態に着眼すると、次のような態様に分類できる。

(ア) 使途別分類

a 貸付事業基金(251基金、うち20・21補正基金数0基金)

 沿岸漁業者の近代的な漁業技術の導入を促進するための資金の貸付けなど、貸付事業の財源として基金を使用するもの

b 債務保証事業基金(16基金、同0基金)

 中小企業者の研究開発資金の借入金に対する債務を保証するなど、事業の信用力の基盤となる財源として基金を使用するもの

c 利子助成事業基金(1基金、同0基金)

 阪神・淡路大震災により被災した住宅の再建を促進するために借入金に係る利子の一部を助成する事業の財源として基金を使用するもの

d 補助・補填事業基金(981基金、同417基金)

 妊婦の健康診査に対する助成等、各種事業への補助金等を支給する事業の財源として基金を使用するもの

e 施設整備等事業基金(358基金、同253基金)

 基金事業団体が行う学校等の公共施設の改築、公園整備等、施設整備等の事業の財源として基金を使用するもの

f 広報等事業基金(225基金、同0基金)

 基金事業団体が環境保全対策のために行うパンフレットの作成、講演会の開催等、広報、研修その他事業の財源として基金を使用するもの

g 補助・補填及び広報等事業基金(1,900基金、同1,848基金)

 使途別分類が複数存在する基金であり、介護従事者処遇改善臨時特例基金のように、介護保険料の上昇を抑制するための保険料への補助・補.事業と、この助成事業を被保険者に周知するためのパンフレット等による広報等事業の異なる二つの事業を行うための財源として基金を使用するもの

h 貸付及び補助・補填事業基金(127基金、同0基金)

 使途別分類が複数存在する基金であり、後期高齢者医療財政安定化基金のように、保険給付費の増大による財政赤字に対する貸付事業と、保険料収入の不足による財政赤字の補助・補填事業の異なる二つの事業を行うための財源として基金を使用するもの

(イ) 運営形態別分類

a 取崩型(3,176基金、うち20・21補正基金数2,518基金)

 基金を補助・補填、施設整備、広報等の各事業の財源に充てることによって費消していくもの

b 回転型(251基金、同0基金)

 使途別分類の貸付事業基金がこれに該当し、基金を繰り返し回転させて使用するもの

c 保有型(16基金、同0基金)

 使途別分類の債務保証事業基金がこれに該当し、基金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するもの

d 運用型(289基金、同0基金)

 基金を運用元本として、その運用益を広報等の事業等の財源に充てていくもの

e 回転・取崩型(127基金、同0基金)

 使途別分類の貸付及び補助・補填事業基金がこれに該当し、一つの基金の中で、基金を繰り返し回転させて使用する場合と、基金を費消していく場合が併存しているもの

 基金数及び基金保有額について、使途別及び運営形態別に分類して整理すると図表4のとおりである。

図表4 基金の使途別及び運営形態別の分類(平成22年度末)
(単位:基金、百万円)
使途別 区分 基金数
基金保有額
左の運営形態別
取崩型 回転型 保有型 運用型 回転・取崩型
貸付 基金数 251(6.5%) 251(6.5%)
保有額 64,500(1.8%) 64,500(1.8%)
債務保証 基金数 16(0.4%) 16(0.4%)
保有額 2,399(0.0%) 2,399(0.0%)
利子助成 基金数 1(0.0%) 1(0.0%)
保有額 23,081(0.6%) 23,081(0.6%)
補助・補填 基金数 981(25.4%) 905(23.4%) 76(1.9%)
保有額 1,067,440(31.0%) 975,911(28.3%) 91,528(2.6%)
施設整備等 基金数 358(9.2%) 354(9.0%) 4(0.1%)
保有額 376,719(10.9%) 365,978(10.6%) 10,740(0.3%)
広報等 基金数 225(5.8%) 16(0.4%) 209(5.4%)
保有額 128,739(3.7%) 3,346(0.1%) 125,393(3.6%)
基金数 1,832(47.4%) 1,276(33.0%) 251(6.5%) 16(0.4%) 289(7.4%)
保有額 1,662,881(48.3%) 1,368,318(39.7%) 64,500(1.8%) 2,399(0.0%) 227,662(6.6%)
補助・補填及び広報等 基金数 1,900(49.2%) 1,900(49.2%)
保有額 1,412,081(41.0%) 1,412,081(41.0%)
貸付及び補助・補填 基金数 127(3.2%) 127(3.2%)
保有額 364,743(10.6%) 364,743(10.6%)
基金数 2,027(52.5%) 1,900(49.2%) 127(3.2%)
保有額 1,776,825(51.6%) 1,412,081(41.0%) 364,743(10.6%)
合計 基金数 3,859(100%) 3,176(82.3%) 251(6.5%) 16(0.4%) 289(7.4%) 127(3.2%)
保有額 3,439,706(100%) 2,780,399(80.8%) 64,500(1.8%) 2,399(0.0%) 227,662(6.6%) 364,743(10.6%)

 使途別分類で基金数が最も多いのは、補助・補填及び広報等事業基金の1,900基金であり、このうち、20・21補正基金は1,848基金となっている。また、運営形態別分類で基金数が最も多いのは、補助等を行うために基金を取り崩す取崩型の3,176基金であり、このうち20・21補正基金は2,518基金となっている。
 20・21補正基金は、使途別分類ではいずれも設置した基金から補助等を行う補助・補填事業基金、施設整備等事業基金又は補助・補填及び広報等事業基金に分類され、運営形態別分類では全て取崩型に分類される。これは、緊急経済対策等の一環として、後年度に具体的事業箇所の割り付けを行うため当該年度において財源を手当てする基金を設置したという20、21両年度の補正予算の成り立ちによるものである。

(2) 基金の運営状況等

ア 使途別及び運営形態別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

 18年度から22年度までの各年度末の基金数及び基金保有額は、図表1 のとおり、20・21補正基金が多数設置造成されたことから、この両年度に急増している。そして、この間の事業実績額(注3) は、18年度308億余円から22年度1兆4472億余円に大幅に増加している。

 事業実績額  基金事業の内容には種々のものがあり、例えば貸付事業基金については、基金の貸付け、貸付金の回収等が、債務保証事業基金については、債務保証の引受け、代位弁済等がある。本報告の分析において、各年度の事業実績額としているのは、保有基金の使用と直接又は間接に結び付くものとして、貸付事業基金については新規貸付額、債務保証事業基金については新規債務保証額、利子助成事業基金については利子助成支払額、補助・補填事業基金については補助金等の支払額、施設整備等事業基金については事業費用の支払額、広報等事業基金については広報等に係る費用の支払額としている。

(ア) 使途別にみた状況

 使途別に基金数、事業実績額及び基金保有額の推移についてみると、次のとおりとなっている。

a 貸付事業基金は、18年度以降、基金数は251と変化がなく、近年新規に設置造成された基金はない。また、事業実績額は減少傾向にあり、22年度は29億余円と18年度の55億余円の半分程度にまで減少している。基金保有額は686億余円から645億余円に減少しているものの、ほぼ横ばいで推移している(図表5 a参照 )。

b 債務保証事業基金は、18年度以降、基金数は16と変化はなく、基金保有額は24億円前後で推移している(図表5 b参照 )。この基金の大部分は、経済産業省所管の産業再配置促進環境整備費補助金を基に設置造成された基金であり、近年では事業実績はほとんどない。

c 利子助成事業基金は、国土交通省所管の被災住宅再建対策事業費補助金による住宅復興助成基金のみが該当する(図表5 c参照 )。本基金については、17年度以降事業実績がないにもかかわらず基金保有額が200億円を超えており、基金保有額が過大と認められたので、23年10月に、会計検査院法第36条の規定により、使用する見込みのない資金を早期に国庫に返還するなど基金規模の見直しを図るよう改善の処置を要求 した(後記(3)カ(イ)参照 )。

d 補助・補填事業基金は、22年度末の基金保有額が1兆0674億余円であり、21年度末の1兆1698億余円より減少しているものの、18年度末の1229億余円と比べて9444億余円の増加となっている。また、22年度の事業実績額4909億余円は18年度の135億余円と比べて4773億余円の増加となっていて、18年度以降で最も多くなっている(図表5 d参照 )。これは、20・21補正基金が、基金設置から1年以上経過し事業が本格化したため事業実績額が増加したことによるものである。

e 施設整備等事業基金は、基金保有額が20年度以降に大きく増加し、22年度末の基金保有額は3767億余円となっている。また、事業実績額も20年度以降年々増加しており、22年度には1754億余円となっている(図表5 e参照 )。これは、補助・補填事業基金と同様に、20・21補正基金の基金保有額及び事業実績額が増加したことによるものである。

f 広報等事業基金は、事業実績額及び基金保有額がほぼ横ばいとなっている(図表5 f参照 )。これは、広報等事業基金は運用型の基金が多く、低金利の状態が継続しているため、運用益が低調となっていることによるものである。

g 補助・補填及び広報等事業基金は、事業実績額が18年度63億余円から22年度7481億余円、基金数及び基金保有額が19年度末52基金、852億余円から22年度末1,900基金、1兆4120億余円とそれぞれ急増している(図表5 g参照 )。これは、18年度に設置造成された障害者自立支援対策臨時特例基金の事業実績が基金設置から1年を経過して増加してきたこと、また、20年度補正予算により、各市区町村に介護従事者処遇改善臨時特例基金が設置造成されたことなどによるものである。

h 貸付及び補助・補填事業基金は、事業実績額が21年度の30億余円から、22年度には260億余円と大きく増加した(図表5 h参照 )。これは、20年度に設置造成された後期高齢者医療財政安定化基金の事業実績額が222億余円と大きく伸びたことなどによるものである。

図表5 使途別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移(平成18年度〜22年度)

検査の状況の図1
 
検査の状況の図2
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 251 251 251 251 251
事業実績額 5,513 6,283 4,671 4,117 2,900
基金保有額 68,603 67,959 67,419 65,974 64,500
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 16 16 16 16 16
事業実績額 4 3 3 2 2
基金保有額 2,488 2,488 2,489 2,399 2,399

検査の状況の図3
 
検査の状況の図4
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 1 1 1 1 1
事業実績額 0 0 0 0 0
基金保有額 22,319 22,563 22,759 22,950 23,081
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 156 434 596 981 981
事業実績額 13,598 34,908 203,860 354,678 490,913
基金保有額 122,987 273,028 512,753 1,169,883 1,067,440

検査の状況の図5
 
検査の状況の図6
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 69 78 129 358 358
事業実績額 1,567 1,794 29,820 81,285 175,497
基金保有額 29,368 39,266 88,174 487,335 376,719
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 210 213 222 225 225
事業実績額 2,500 2,681 3,478 4,417 3,662
基金保有額 129,917 129,560 129,994 129,645 128,739

検査の状況の図7
 
検査の状況の図8
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 51 52 1,598 1,900 1,900
事業実績額 6,300 31,619 45,995 326,157 748,170
基金保有額 115,479 85,220 652,883 1,838,175 1,412,081
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 84 84 127 127 127
事業実績額 1,328 1,740 2,496 3,009 26,052
基金保有額 267,936 281,332 318,824 345,762 364,743

(イ) 運営形態別にみた状況

 運営形態別に基金数、事業実績額及び基金保有額の推移についてみると、次のとおりとなっている。

a 取崩型は、18年度以降、基金数、事業実績額及び基金保有額のいずれも増加傾向にあり、特に20年度以降は補正予算により集中的に設置造成されている(図表6 a参照 )。20・21補正基金の全てが取崩型となっているのは、基金を設置造成することにより速やかに財源を確保し事業を実施することにより、緊急経済対策等としての事業効果の早期発現を目的としているためである。22年度末基金保有額(2兆7803億余円)は21年度末(3兆4188億余円)を下回っているが、これは21年度までに設置造成された基金を取り崩して事業を実施していることによるものである。

b 回転型は、貸付事業基金が該当するが、前記のとおり、近年事業実績は低調となっている(図表6 b参照 )。

c 保有型は、債務保証事業基金が該当するが、前記のとおり、近年事業実績は低調となっている(図表6 c参照 )。

d 運用型は、近年事業実績が低調となっている(図表6 d参照 )。これは、低金利の状態が継続しているため、運用益が低調となっていることによるものである。

e 回転・取崩型は、貸付及び補助・補填事業基金が該当するが、前記のとおり、22年度において、後期高齢者医療財政安定化基金の事業の増加等により事業実績額が増加している(図表6 e参照 )。

図表6 運営形態別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

検査の状況の図9
 
検査の状況の図10
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 199 490 2,257 3,176 3,176
事業実績額 19,425 66,237 277,344 277,344 1,413,274
基金保有額 186,488 315,991 1,175,092 3,418,825 2,780,399
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 251 251 251 251 251
事業実績額 5,513 6,283 4,671 4,117 2,900
基金保有額 68,603 67,959 67,419 65,974 64,500

検査の状況の図11
 
検査の状況の図12
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 16 16 16 16 16
事業実績額 4 3 3 2 2
基金保有額 2,488 2,488 2,489 2,399 2,399
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 288 288 289 289 289
事業実績額 4,542 4,766 5,809 6,285 4,970
基金保有額 233,585 233,646 231,472 229,165 227,662

検査の状況の図13
   
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 84 84 127 127 127
事業実績額 1,328 1,740 2,496 3,009 26,052
基金保有額 267,936 281,332 318,824 345,762 364,743
   

 回転型基金及び保有型基金は、使途別ではそれぞれ、貸付事業基金及び債務保証事業基金であるが、事業実績が低調であることから、今後の各事業の需要を踏まえて、基金の必要性、基金規模等について検討する必要がある。
 運用型基金は、近年の低金利の状況の下、基金保有額に比べ運用益は少なく、事業実績額は低位のまま推移している。国所管の公益法人等が保有する運用型基金については、資産の効率性の観点から資金の国庫返還を含む見直しが行われているなどしており、基金事業団体に設置造成された基金についても、基金の必要性、基金規模等について更に検討する必要がある。

イ 20・21補正基金の執行状況

(ア) 使途別及び運営形態別にみた状況

 使途別に20・21補正基金についてみると、図表7のとおり、d補助・補填事業基金、e施設整備等事業基金並びにg補助・補填及び広報等事業基金に分類される。そして、いずれの使途別分類においても、基金保有額は21年度の国庫補助金等の交付状況を反映して急増している。しかし、事業実績額は毎年度増加しているものの、基金保有額ほどには増加していない。
 また、運営形態別に20・21補正基金についてみると、全ての基金が取崩型基金に分類される。これについてみると、事業実績額は、20年度344億余円、21年度4459億余円、22年度1兆0638億余円と毎年度増加しているものの、基金保有額は、22年度末には2兆2169億余円と多額となっている(図表7 a参照 )。

図表7 使途別(d、e、g)及び運営形態別(a)にみた20・21補正基金の状況
検査の状況の図14   検査の状況の図15
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 120 417 417
事業実績額 8,526 87,897 221,066
基金保有額 118,291 715,504 615,093
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 40 253 253
事業実績額 24,997 78,251 165,120
基金保有額 53,409 446,312 340,272
検査の状況の図16   検査の状況の図17
     
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 1,546 1,848 1,848
事業実績額 901 279,794 677,712
基金保有額 529,919 1,616,306 1,261,554
 
(単位:基金、百万円)
年度 平成18 19 20 21 22
基金数 1,706 2,518 2,518
事業実績額 34,425 445,943 1,063,899
基金保有額 701,620 2,778,123 2,216,920

(イ) 基金の事業終了予定年度別にみた状況

 20・21補正基金を事業終了予定年度で分類し、基金ごとの執行率をみると、図表8のとおりとなっている。

図表8 20・21補正基金の執行状況
(単位:百万円)
終了予定年度 当初終了年度 国庫補助金等別基金名 国庫補助金等交付額 A 平成20年度から22年度までの取崩額B(A-C) 執行率(22年度末時点)B/A 22年度末に保有している国庫補助金等相当額 C 設置年度
22年度 22年度 国保介護従事者処遇改善基金 16,299 15,143 92.9% 1,155 20年度
22年度 22年度 学校給食地場農畜産物利用拡大基金 2,849 注(2)
654
22.9% 2,140 21年度
22年度終了基金計 19,149 15,798 82.5% 3,296  
23年度 23年度 地域活性化・生活対策臨時交付金等により設置造成された基金 369,368 184,340 49.9% 185,028 20、21年度
23年度 22年度 妊婦健康診査支援基金 84,224 42,719 50.7% 41,504 20年度
23年度 23年度 介護従事者処遇改善臨時特例基金 64,246 49,134 76.4% 15,112 20年度
23年度 23年度 ふるさと雇用再生特別基金 226,770 120,910 53.3% 105,859 20年度
23年度 23年度 高校生修学支援基金 47,105 14,793 31.4% 32,311 21年度
23年度 23年度 介護基盤緊急整備等臨時特例基金 293,873 87,564 29.7% 206,308 21年度
23年度 23年度 社会福祉施設等耐震化臨時特例基金 113,684 32,433 28.5% 81,250 21年度
23年度 23年度 介護職員処遇改善等臨時特例基金 439,918 196,922 44.7% 242,996 21年度
23年度 23年度 森林整備加速化・林業再生基金 127,859 70,502 55.1% 57,357 21年度
23年度 22年度 優良繁殖雌牛更新支援基金 6,822 666 9.7% 6,156 21年度
23年度 23年度 グリーンニューディール基金 56,074 注(4)
28,402
50.6% 26,171 21年度
23年度終了予定基金計 1,829,946 828,390 45.2% 1,000,056  
24年度 23年度 消費者行政活性化基金 21,980 9,114 41.4% 12,866 20年度
24年度 23年度 緊急雇用創出事業臨時特例基金 828,697 379,670 45.8% 449,026 20年度
24年度 23年度 地域自殺対策緊急強化基金 11,459 4,109 35.8% 7,350 21年度
25年度 25年度 地域医療再生臨時特例基金 221,564 26,877 12.1% 194,687 21年度
最長の事業で26年度 22年度(一部23年度) 安心こども基金 348,524 144,620 41.4% 203,903 20年度
耐震化整備事業終了まで 22年度 医療施設耐震化臨時特例基金 159,974 17,081 10.6% 142,892 21年度
24年度以降終了予定基金計 1,592,202 581,475 36.5% 1,010,727  
合計 3,441,298 1,425,663 41.4% 2,014,079
注(1)  「国庫補助金等交付額」欄の金額は、平成21、22両年度の追加交付額を含む。また、設置年度が20年度及び21年度の基金には、地域活性化・生活対策臨時交付金等により積増しされた交付額を含む。
注(2)  平成21年度に神奈川、熊本、大分各県から農林水産省に返還された計5464万円は取崩額に含めていない。
注(3)  地域活性化・生活対策臨時交付金等により設置造成された基金とは、平成20年度交付の地域活性化・生活対策臨時交付金、21年度交付の地域活性化・経済危機対策臨時交付金及び地域活性化・公共投資臨時交付金により設置造成された基金である。これらについては、交付金ごとの取崩額、保有額の特定が困難なため、三つの交付金の合計を計上している。
注(4)  平成22年度に三重県から環境省に返還された15億円は取崩額に含めていない。

 20・21補正基金は、緊急経済対策等の一環として、早期に事業を執行し、効果を発現させることを目的としているものであるが、全19基金事業のうち23年度に事業終了予定である11基金事業の執行率は、事業終了を1年後に控えた22年度末時点においても45%にすぎず、定められた事業期間内で22年度末の基金保有額1兆0000億余円全てを執行することは困難であり、基金事業終了後に多額の執行残が生ずると思料される。
 また、24年度以降に事業終了予定とされている基金事業の22年度末時点の執行率は、36%にとどまっていて、22年度末の基金保有額は1兆0107億余円に上っている。これらの基金事業は、当初から25年度に事業終了予定としていた1基金事業を除いて、当初設定された23年度までの期間では事業を十分に実施できないなどとして、事業終了年度の延長が行われているものの、基金事業終了後に相当程度の執行残が生ずると思料される。

ウ 基金の運用状況

 基金の運用について、全ての基金事業団体に適用される規定や基準はないが、地方自治法の規定により、都道府県及び市町村は、基金について、条例で定める特定の目的に応じ、及び確実かつ効率的に運用しなければならないとされている。また、条例において、基金に属する現金は、金融機関への預金その他確実かつ有利な方法で保管し、必要に応じて最も確実かつ有利な有価証券に代えることができるとされているのが一般的となっている。
 22年度末の基金の運用方法について運営形態別に分類してみると、図表9のとおりとなっている。

図表9 運営形態別の運用方法(基金保有額に対する割合)(平成22年度末)
運営形態 運用方法
定期預金 普通預金 決済用普通預金 譲渡性預金 預金計 地方債 国債 繰替運用 その他
取崩型 37.3% 10.0% 6.6% 30.9% 84.9% 1.1% 1.7% 8.3% 3.8% 100%
回転型 53.5% 10.6% 15.5% 12.9% 92.7% 7.2% 100%
保有型 12.2% 9.7% 4.1% 26.0% 30.8% 27.6% 15.3% 100%
運用型 15.1% 0.9% 1.3% 8.8% 26.3% 31.9% 24.7% 3.4% 13.4% 100%
回転・取崩型 40.2% 1.8% 1.2% 35.8% 79.2% 3.6% 0.4% 11.4% 5.2% 100%
36.3% 8.8% 5.9% 29.6% 80.7% 3.3% 3.0% 8.1% 4.5% 100%

 取崩型及び回転型の基金では、定期預金等の預金での保有の割合がそれぞれ84%及び92%となっている。これは、これらの基金の多くが、毎年度、年度末等のほぼ同時期に取り崩されているため、1年未満の定期預金等での運用が多くなっていることによる。
 保有型の基金では、1年以上の長期運用となる地方債及び国債での保有の割合がそれぞれ30%及び27%で計58%となっており、運用型の基金では、地方債及び国債での保有割合がそれぞれ31%及び24%で計56%となっている。これは、保有型及び運用型の基金は基金自体を取り崩さず、基金の運用益を事業等の財源に充てている場合が多いため、預金に比べて、より多くの運用収入を得られる債券で保有しているものと思料される。
 基金全体の運用についてみると、定期預金等の預金での運用が80%、地方債及び国債の債券での運用が6%となっている。このほか、都道府県、市区町村等の一般会計等における一時的な資金不足を補うなどのために一定期間基金の現金を貸し出す繰替運用の割合が8%となっている。また、公益法人が保有する基金の中には、その一部を外国債等で運用しているものも見受けられ、外国債等の22年度末の時価評価額(約95億円)は帳簿価額(約114億円)の82%となっている。これらの基金は保有型又は運用型であり、基金事業の終了時期が定められておらず、償還期限まで長期に保有し続けることを前提として外国債等で運用している。しかし、保有型又は運用型基金については、前記ア(イ) のとおり事業実績が低調であることから、基金の必要性、基金規模等について検討する必要があり、検討の結果、外国債等の償還期限まで保有し続けることができないことも考えられる。このようなことから、外国債等の運用については、現時点で損失が確定しているものではないが、今後の基金事業の動向を注視しながら運用管理していくことが必要である。
 なお、基金の運用益については、運用型の基金を除いて、一旦当該基金に繰り入れるなどした後、基金事業の財源として使用することとされている。

エ 基金の監査状況

 都道府県及び市区町村に設置造成された基金は、地方自治法の規定により、監査委員による監査の対象となっており、毎会計年度少なくとも一回以上期日を定めて行う定期監査の一環として監査を受けているものが多い。
 また、公益法人その他団体に設置造成された基金についても、監査委員が行う財政援助団体等に対する監査の一環として複数年度に一回の頻度で監査を受けている。そして、22年度に公益法人その他団体の686基金のうち監査委員の監査を受けた割合は、図表10のとおり、42%となっている。

図表10 基金の監査状況
年度 都道府県 市区町村 公益法人その他団体
監査委員監査を受けた基金 平成21年度 63.6% 72.0% 49.1% 65.6%
22年度 85.1% 72.6% 42.2% 70.7%
(注)
 図表は、基金担当部署から提出された調書の回答を集計したものである。また、平成21年度の都道府県の割合が63.6%となっているのは、20・21補正基金が設置造成されて間もないことから、監査を受けていない基金もあるためと思料される。

(3) 個別基金の状況

 都道府県等に設置造成された基金について個別に検査したところ、基金事業終了後に国庫補助金の大半が国庫に返還されることとなっていたり、基金の執行率が低くなっていたりなどしているものが見受けられた。これらについて示すと次のとおりである。

ア 執行率が低くなった結果、22年度の基金事業終了後に、交付された国庫補助金の大半が国庫に返還されることとなったもの

 (学校給食地場農畜産物利用拡大基金(交付元 農林水産省)検査の対象とした36基金に係る国庫補助金交付額計 28億4999万余円)
 農林水産省は、21年度第1次補正予算の地産地消・産直緊急事業推進費補助金により、学校給食地場農畜産物利用拡大基金を、財団法人北海道学校給食会等40事業主体に設置造成させていた。この基金は、学校給食における地場の農畜産物の利用拡大及び定着を図るため、地場農畜産物利用拡大献立の導入・実証事業等を行った事業者に対し助成金を交付することを目的としている。
 同省は、補助金の交付に当たり、事業実施の要望を道府県等を通じて2回調査するなどして交付額を決定していた。しかし、基金事業終了時の22年度末時点における上記36基金の執行率をみると全体で22%にとどまっており、23年4月以降、基金事業の終了に伴って、残余額計21億4084万余円が国に返還されている。また、神奈川、熊本、大分各県の事業主体では、使用見込みがないとして、事業終了前に、計5464万円を自主的に国庫に返還していた。
 会計実地検査を行った12道府県(17都道府県のうち、この基金が設置造成されていない5都県を除く。)の事業主体の基金についてみると、補助金の交付額に対する最終的な執行率は図表11のとおりであり、最高は62%、最低は1%、全体では21%にとどまっていた。
 これらは、事前に事業の実施要望調査を行っているものの、基金設置造成後の具体的な実施計画の策定段階において、21年に流行した新型インフルエンザへの対応もあり、学校給食関係者間で十分に調整する時間がなかったこと、地場農畜産物の調達や納入方法について関係者の合意が得られず事業の実施ができなかった市町村等があったことなどによると認められる。

図表11 12道府県の事業主体における学校給食地場農畜産物利用拡大基金の執行状況

(単位:千円)

道府県 事業主体 国庫補助金交付額A 実績額 注(1)
返還額
執行率(22年度末時点)B/A
平成21年度 22年度 実績額計B
北海道 財団法人北海道学校給食会 43,781 734 3,086 3,821 39,975 8.7%
神奈川県 社団法人神奈川県畜産会 注(2)
41,812
(16,700)
4,413 8,784 13,197 3,510 注(2)
31.5%
(79.0%)
静岡県 財団法人静岡県学校給食会 50,962 6,605 19,826 26,431 24,531 51.8%
愛知県 財団法人愛知県学校給食会 331,181 33,418 72,349 105,767 225,413 31.9%
京都府 財団法人京都府学校給食会 268,907 939 4,128 5,067 263,932 1.8%
大阪府 財団法人大阪府学校給食会 269,975 17,714 31,942 49,657 220,317 18.3%
兵庫県 財団法人兵庫県体育協会 373,693 27,765 66,257 94,023 279,669 25.1%
鳥取県 財団法人鳥取県学校給食会 34,876 3,457 3,555 7,012 27,871 20.1%
愛媛県 財団法人愛媛県学校給食会 35,418 484 1,657 2,141 33,286 6.0%
福岡県 財団法人福岡県学校給食会 20,210 1,401 11,138 12,540 7,675 62.0%
熊本県 熊本県学校給食地場農畜産物利用拡大協議会 注(4)
22,883
(4,940)
506 3,556 4,062 877 注(4)
17.7%
(82.2%)
沖縄県 財団法人沖縄県学校給食会 48,096 2,895 9,618 12,513 35,582 26.0%
1,541,794 100,335 235,900 336,235 1,162,644 21.8%
注(1)  返還額は、基金事業終了後に国庫に返還された額であり、基金事業終了前に自主的に返還された額は含まないが、運用益は含んでいる。
注(2)  ( )書きは、使用見込みがないとして、基金事業終了前に自主的に返還された25,112,000円を除いた金額及び執行率である。
注(3)  平成22年3月31日以前は財団法人大阪府スポーツ・教育振興財団
注(4)  ( )書きは、使用見込みがないとして、基金事業終了前に自主的に返還された17,943,000円を除いた金額及び執行率である。

 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 財団法人京都府学校給食会の学校給食地場農畜産物利用拡大基金は、平成22年3月に、農林水産省から地産地消・産直緊急事業推進費補助金2億6890万余円の交付を受けて設置造成されており、基金事業の期間は22年度末までとされている。
 検査したところ、京都府は、同府内の各市町村等に対して、地場農畜産物利用拡大献立の導入・実証等(以下「助成事業」という。)の実施要望調査を行い、その結果に基づき、21年度は京都市等12市町村等(給食対象児童数101,157人)、22年度は京都市等15市町村等(給食対象児童数104,179人)で助成事業を実施するとして事業実施計画書を作成していた。
 しかし、京都市等11市町村が実施要望調査時に実施することとしていた助成事業の実施を見合わせたことから実際に事業を実施したのは、21年度亀岡市等3市等(給食対象児童数2,293人(計画の2%))、22年度城陽市等5市町等(給食対象児童数9,598人(計画の9%))であった。
 このような事態となっているのは、地場農畜産物の調達等について関係者の合意が得られず事業の実施ができなかった市町村等があったことなどによると認められる。
 以上のことから、国庫補助金交付額2億6890万余円に対する基金執行額は、21年度93万余円、22年度412万余円、計506万余円となり、執行率は1%と極めて低率であった。
 なお、基金の残余額2億6393万余円(国庫補助金相当額同額)は、基金事業終了後の23年8月に国庫に返還された。

イ 23年度が事業終了予定とされているものの、計画どおりに事業が実施されていないため、22年度末時点における執行率が全般的に低くなっているもの

 (社会福祉施設等耐震化臨時特例基金(交付元 厚生労働省)検査の対象とした43基金に係る交付金交付額計 1136億8400万余円)
 厚生労働省は、21年度第1次補正予算の社会福祉施設等耐震化等臨時特例交付金により、社会福祉施設等耐震化臨時特例基金を、47都道府県に設置造成させている。この基金は、地震又は火災発生時に自力で避難することが困難な者が多く入所する社会福祉施設等の安全・安心を確保するため、社会福祉施設等の耐震化及びスプリンクラーの整備を促進する特別対策事業を実施する事業者等に対して、事業に係る経費の一部を助成することを目的としている。
 同省は、交付金の交付に当たり、全体の予算額に全国の非耐震化施設棟数に対する当該都道府県の非耐震化施設棟数の割合を乗ずるなどして、交付額を決定していた。しかし、事業実施期間を1年残した22年度末時点の43基金の執行率をみると、全体で27%にとどまっている。
 会計実地検査を行った17都道府県の基金についてみると、22年度末時点の執行率は、図表12のとおりであり、最高は47%、最低は1%、全体では22%にとどまっていた。
 これらは、事業実施期間が23年度までと短期間であることや耐震化等の事業実施者等の自己資金の調達のめどが立たないことなどから、事業実施者等の申請が予定より少なかったことなどによると認められる。

図表12 17都道府県における社会福祉施設等耐震化臨時特例基金の執行状況  
  (単位:千円)
都道府県 交付金交付額
A
実績額 執行率(22年度末時点)
B/A
平成21年度 22年度 実績額計
B
北海道 7,170,640 78,061 1,269,512 1,347,573 18.7%
埼玉県 2,329,965 61,497 929,327 990,824 42.5%
千葉県 1,850,000 27,969 229,012 256,981 13.8%
東京都 6,713,705 3,160 253,046 256,206 3.8%
神奈川県 1,752,065 51,307 17,576 68,883 3.9%
静岡県 4,301,133 358,751 995,422 1,354,173 31.4%
愛知県 1,681,505 27,955 43,867 71,822 4.2%
京都府 2,136,000 17,393 240,941 258,334 12.0%
大阪府 5,016,626 55,163 1,292,952 1,348,115 26.8%
兵庫県 3,576,648 46,139 1,085,099 1,131,238 31.6%
鳥取県 2,267,641 37,567 37,567 1.6%
広島県 1,795,000 15,612 417,866 433,478 24.1%
徳島県 663,354 10,865 96,991 107,856 16.2%
愛媛県 2,066,961 61,173 256,157 317,330 15.3%
福岡県 5,540,759 119,416 2,115,842 2,235,258 40.3%
熊本県 2,400,274 243,367 898,362 1,141,729 47.5%
沖縄県 1,429,001 92,589 182,899 275,488 19.2%
52,691,277 1,270,417 10,362,438 11,632,855 22.0%

 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

 東京都社会福祉施設等耐震化臨時特例基金は、平成22年2月に、厚生労働省から社会福祉施設等耐震化等臨時特例交付金67億1370万余円の交付を受けて設置造成されており、基金事業の期間は23年度末までとされている。
 検査したところ、東京都は当初3年間で約26億円を執行する事業計画を立てていたが、同省は、都には対象となる社会福祉施設数が多いことなどから、これを上回る67億1370万余円の交付金を配分することとした。これを受けて都は、当初の事業計画を変更し、基金を21年度に7億5680万円、22年度に6億3321万余円、23年度に残額の53億2358万余円、計67億1370万余円を取り崩すという事業計画を作成した。
 しかし、事業実績額は21年度316万円、22年度2億5304万余円、計2億5620万余円にとどまっており、22年度末時点の執行率は3%と低くなっていた。
 このような事態となっているのは、都が算定した交付金の当初計画額を大幅に上回る交付金が結果的に同省により交付されたこと、また、実施期間が短く、耐震化工事に伴って必要となる代替施設の確保が困難であることなどから耐震化工事実施者が増加していないことなどによると認められる。
 以上のことから、23年3月に都が同省に報告した本基金の執行見込みでは、23年度末までの基金の執行見込額は12億8312万余円にとどまっており、54億3058万余円の残余額が生ずる見込みとなっている。

ウ 22年度末時点における執行率が、一部の基金では90%以上となっている一方で、全体としては低くなっているもの

 (高校生修学支援基金(交付元 文部科学省)検査の対象とした43基金に係る交付金交付額計 471億0513万余円)
 文部科学省は、21年度第1次補正予算の高等学校授業料減免事業等支援等臨時特例交付金により、高校生修学支援臨時特例基金を、47都道府県に設置造成させている。この基金は、経済的理由により就学困難な高等学校生徒の教育機会の確保に資するために実施する事業の推進に要する経費の財源に充てることを目的としており、20年度と比較して、当該年度の授業料減免対象人数及び奨学金貸与対象人数が増えた場合に、増加した人数分の減免額及び貸与額に基金を充てることとなっている。
 同省は、交付金の交付に当たり、全体の予算額に、全国の授業料減免事業及び奨学金事業の対象者数に対する当該都道府県の対象者数の割合を乗じて、交付額を決定していた。しかし、事業実施期間を1年残した22年度末時点の43基金の執行率をみると、90%以上となっていて23年度分が不足する可能性がある基金が3基金ある一方、全体では31%にとどまっている。
 会計実地検査を行った17都道府県の基金についてみると、22年度末時点の執行率は図表13のとおりであり、90%以上の基金が3基金(最高100%)ある一方、20%未満の基金も5基金(最低5%)あり、全体では31%にとどまっていた。
 これらは、奨学金事業等を都道府県自ら行ったり、指定した金融機関が行ったりするなど都道府県ごとに実施方法が異なるのに、それを考慮せずに交付金を奨学金事業等の各都道府県の対象生徒数と全国の対象生徒数の割合を基に全国一律に計算し交付していたことなどによると認められる。

図表13 17都道府県における高校生修学支援基金の執行状況
(単位:千円)
都道府県 交付金交付額
実績額 執行率(22年度末時点)
B/A
平成21年度 22年度 実績額計
北海道 1,842,456 105,385 105,385 5.7%
埼玉県 3,296,230 118,196 381,930 500,126 15.1%
千葉県 469,798 159,047 272,716 431,763 91.9%
東京都 4,665,042 592,776 1,514,177 2,106,953 45.1%
神奈川県 2,601,881 528,512 876,834 1,405,346 54.0%
静岡県 361,394 72,520 269,147 341,667 94.5%
愛知県 4,595,483 237,094 1,007,041 1,244,135 27.0%
京都府 749,346 124,645 626,570 751,215 100%
大阪府 10,055,930 348,572 1,363,315 1,711,887 17.0%
兵庫県 2,608,444 173,447 218,511 391,958 15.0%
鳥取県 386,279 30,785 38,260 69,045 17.8%
広島県 711,882 56,392 189,732 246,124 34.5%
徳島県 148,740 33,751 33,618 67,369 45.2%
愛媛県 437,619 73,221 70,480 143,701 32.8%
福岡県 3,306,356 595,330 1,214,614 1,809,944 54.7%
熊本県 704,872 125,336 241,191 366,527 52.0%
沖縄県 403,178 54,775 82,855 137,630 34.1%
37,344,930 3,429,784 8,400,991 11,830,775 31.6%
(注)
 北海道の平成22年度の実績額が「―」となっているのは、22年度分を23年度に取り崩す予定としているためである。

 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

 埼玉県私立高校生修学支援基金は、平成21年10月に、文部科学省から高等学校授業料減免事業等支援等臨時特例交付金32億9623万円の交付を受けて設置造成されており、基金事業の期間は23年度末までとされている。
 検査したところ、上記交付額の算定に当たっては、20、21両年度の同県の授業料減免対象人数及び奨学金貸与対象人数を合算した数値が用いられていた。
 しかし、同県は、私立高等学校等父母負担軽減事業として授業料減免事業を行っている一方、奨学金事業については、独立行政法人日本学生支援機構から同県に交付された交付金等を財源として行っていて、同県の自己資金を奨学金事業に充当していなかった。このため、同県の奨学金事業は基金事業の対象とならず、奨学金事業について基金を設置目的に沿って取り崩すことができない状況になっている。
 このような事態となっているのは、同県の奨学金事業が基金事業の対象とならない実施方法となっている一方、同省からは全国一律の交付金の配分方法により交付金が交付されたことによると認められる。
 以上のことから、22年度末時点の執行率は15%と低調であり、基金事業終了時の23年度末に19億3786万円の残余額が生ずる見込みとなっている。

エ 受託者が実績報告書に虚偽の記載を行うなどしたため、委託費が補助の目的外に使用されていて、結果として基金が設置目的に反して取り崩されていたもの

 (ふるさと雇用再生特別基金(交付元 厚生労働省)検査の対象とした43基金に係る交付金交付額計 2267億7000万円)
 厚生労働省は、20年度第2次補正予算のふるさと雇用再生特別交付金により、ふるさと雇用再生特別基金を、47都道府県に設置造成させている。この基金は、雇用失業情勢の厳しい地域において、民間企業等への委託により、地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会の創出を図ることを目的としている。
 検査したところ、委託事業の受託者が従前から雇用関係にあった者を新たに雇用したとするなど実績報告書に虚偽の記載を行っていたり、受託者から提出された実績報告書に賃金台帳の金額が誤って集計され人件費が過大に計上されたりなどした事態が見受けられた。このため、委託費が雇用機会の創出を図るという補助の目的外に使用されていて、結果として基金が設置目的に反して取り崩されていたと認められる。

オ 交付金交付時における実績見込みと基金の執行実績にかい離が生じているため、多額の余剰額が基金に滞留しているもの

 (後期高齢者医療制度臨時特例基金(交付元 厚生労働省)検査の対象とした43基金に係る交付金交付額計 2553億5974万余円)
 厚生労働省は、19年度に、高齢者医療制度円滑導入臨時特例交付金、20年度から高齢者医療制度円滑運営臨時特例交付金を、都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)に交付して、後期高齢者医療制度臨時特例基金を、47広域連合に設置造成させている。この基金は、高齢者医療制度の円滑な導入・運営を図るため、基金を取り崩して後期高齢者の保険料を軽減するための財源等に充てることを目的としている。
 同省は、交付金の交付に当たり、19年度以降、毎年度、各広域連合から提出される被保険者数及び保険料についての報告に基づき、翌年度に必要と見込まれる額を交付している。そして、基金事業の実施期間は25年度末までとされており、その時点で基金を解散し、解散する際に保有する基金の残余額を国庫に返還することとなっている。
 会計実地検査を行った17広域連合の基金についてみると、交付金交付額及び基金事業に伴って取り崩された実績額の状況は、図表14のとおりであり、交付金交付額が実績額を上回っていて、交付額から実績額を控除した余剰額は、22年度末で計142億9065万余円となっている。

図表14 17広域連合における交付金交付額・実績(取崩)額の状況
(単位:千円)
都道府県 交付金交付額
(平成19年度〜21年度) A
実績(取崩)額
(19年度〜22年度) B
余剰額
(22年度末)
A-B
北海道 9,747,543 8,549,964 1,197,579
埼玉県 7,588,361 6,624,278 964,083
千葉県 6,274,969 5,467,517 807,452
東京都 11,044,030 10,077,530 966,500
神奈川県 7,494,338 6,798,802 695,536
静岡県 5,278,977 4,437,100 841,876
愛知県 8,513,428 7,262,515 1,250,912
京都府 4,294,811 3,571,443 723,368
大阪府 11,539,761 10,246,618 1,293,143
兵庫県 8,065,666 7,111,558 954,107
鳥取県 1,731,638 1,181,941 549,696
広島県 4,538,508 3,861,083 677,424
徳島県 2,063,876 1,640,173 423,702
愛媛県 3,134,617 2,579,062 555,555
福岡県 9,343,781 8,090,371 1,253,409
熊本県 4,578,628 3,897,221 681,406
沖縄県 2,363,353 1,908,456 454,896
107,596,293 93,305,641 14,290,652

 これらは、同省によると、高齢者医療制度が施行された直後であり、所要見込額についての精緻な算出方法を各広域連合に示すことが困難であったことなどにより、交付額が過大になったことによるものであるとしている。
 以上のことから、22年度末の余剰額142億9065万余円が基金に滞留する事態となっている。なお、同省は、この余剰額については、保険料の大幅な上昇が予想される次期財政運営期間(24、25両年度)の保険料軽減措置に活用していくとしているが、余剰額解消に向けた具体的な方法等は示されていない状況である。
 したがって、上記事態について、引き続き注視していくこととする。

カ 基金事業の終了年度まで、使用見込みのない国庫補助金等が基金に滞留することが見込まれるもの

 検査の結果、基金事業の終了年度まで、使用見込みのない国庫補助金等が基金に滞留することが見込まれるものが見受けられたことから、23年10月に、会計検査院法第36条の規定により、「医療施設耐震化臨時特例交付金により造成された基金の有効活用について」 及び「被災住宅再建対策事業費補助金により造成された基金規模の見直しについて」 として、厚生労働大臣及び国土交通大臣に対して、それぞれ改善の処置を要求した。その概要は、次のとおりである。

(ア) 医療施設耐震化臨時特例交付金により造成された基金の有効活用について

 厚生労働省は、都道府県に対して、医療施設耐震化臨時特例基金(以下「基金」という。)の造成に必要な経費について、平成21、22両年度に医療施設耐震化臨時特例交付金を交付している。上記の基金は、都道府県が、災害拠点病院等のうち、緊急に耐震化整備を行うとして指定した医療機関に対して、耐震化のための新築、増改築又は耐震補強に係る事業(以下「耐震化整備事業」という。)に必要な経費を助成することを目的としている。しかし、3県の基金において、医療機関が指定を辞退したり、指定後に耐震化整備事業の実施を辞退したりしたことにより、交付金の交付額に対して残余が生ずることとなり、計16億2985万円が基金事業の終了年度まで基金に滞留すると見込まれる状況となっていた。
 したがって、同省において、指定した医療機関等が耐震化整備事業の実施を辞退して、交付金の交付額に対して残余が生ずることとなった場合、新たに耐震化整備事業を実施する医療機関を指定することが可能となるようにするなど基金の有効活用を図るとともに、新たに指定する医療機関がないなど基金を活用する見込みがない場合は、活用されずに不要となる交付金について早期に国庫に返還させる仕組みを作るよう改善の処置を要求する。

(イ) 被災住宅再建対策事業費補助金により造成された基金規模の見直しについて

 国土交通省は、阪神・淡路大震災により被災した住宅の再建を促進するため、兵庫県に被災住宅再建対策事業費補助金を交付している。そして、同県はこれを財団法人兵庫県住宅建築総合センター(以下「センター」という。)に交付し、センターは、これにより住宅復興助成基金を造成している。この基金は、再建住宅の建設又は購入を行う者が、独立行政法人住宅金融支援機構(平成19年3月31日以前は住宅金融公庫。以下「機構」という。)等の貸付けを受ける場合に、機構等の災害復興住宅融資等貸付利率のうち2.5%を超える部分(最大で0.5%)の利息相当額について5年間利子補給を行うものである。しかし、近年、利子補給業務の実績は全くなく、今後における基金の需要額をみても、利子補給業務を実施する場合に必要となる資金は、約2010万円となっている。したがって、基金の需要額に対し過大となっている約230億6090万円が、利子補給業務の完了まで、この基金に滞留する見込みとなっている。
 同省は、本院の指摘に基づき、23年8月に、利子補給業務に使用する見込みのない資金について、利子補給業務完了前に国庫に返納できるようにするなどの制度要綱等の改正をしたところである。ついては、同省において、改正した制度要綱等に基づき、早期に国庫に返納させる手続を進めるなどして、基金規模の見直しを図るよう改善の処置を要求する。

(4) 基金事業に係る基準の策定等の状況

 基金基準は、前記のとおり、地方自治の尊重という観点から、基金事業団体を対象としていない。そこで、検査の対象とした基金事業団体から調書を徴するなどして、基金事業に係る基準の策定等の状況を検査したところ、次のとおりとなっていた。

ア 基金事業を終了する時期等に関する基準の策定状況

 基金基準では、既に設置造成されている基金について、原則として27年度末を超えない範囲で事業の終了時期を設定するなどとされている。
 基金事業の終了時期の策定状況は、図表15のとおりであり、国庫補助金等の交付要綱等又は基金条例等(基金事業団体が各基金について定めた条例等)において終了時期が定められている基金の割合は、全体で82.5%と高くなっている。なお、20・21補正基金では全ての基金において終了時期が定められていたが、それ以外の基金では49.7%にとどまっている。

図表15 基金事業を終了する時期等に関する基準の策定状況
(単位:基金)
基金総数  
うち20・21補正基金 うち左以外の基金
基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
  うち交付要綱等又は基金事業団体の基金条例等に終了時期が定められている基金 3,185(82.5%) 2,518(100%) 667(49.7%)
  うち交付要綱等に従って基金条例等に定められている基金 2,244(58.1%) 2,007(79.7%) 237(17.6%)
うち交付要綱等に定めはないが、基金条例等に定められている基金 35(0.9%) 10(0.3%) 25(1.8%)
うち交付要綱等に定めがあるため、基金条例等に定めがない基金 906(23.4%) 501(19.8%) 405(30.2%)
うち交付要綱等及び基金事業団体の基金条例等に終了時期が定められていない基金 674(17.4%) 674(50.2%)

イ 基金事業の目標達成度の評価に関する基準の策定状況

 基金基準では、効率的・効果的に基金事業が実施されているかどうかについて検証することが必要であり、あらかじめ定められた目標に対する達成度を評価することとされている。
 基金事業の目標達成度の評価に関する基準の策定状況は、図表16のとおりであり、目標達成度に関する基準が定められている基金の割合は19.6%と低くなっている。
 また、基金事業の目標達成度について評価等が行われていない基金の割合は89.0%と高くなっている。基金基準策定後に設置造成されている20・21補正基金とそれ以外の基金とを比較すると、評価等が行われていない割合はそれぞれ91.9%、83.5%であり、大きな差異はないものの、20・21補正基金の割合の方が高くなっている。これは、基金基準策定後に定められた国庫補助金等の交付要綱等においても、基金事業の目標達成度について評価等を行うこととされていないことによるものと認められる。

図表16 基金事業の目標達成度の評価に関する基準の策定状況
(単位:基金)
基金総数  
うち20・21補正基金 うち左以外の基金
基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
  うち目標達成度に関する基準が定められている基金 760(19.6%) 432(17.1%) 328(24.4%)
  うち定量的な目標が定められている基金 452(11.7%) 253(10.0%) 199(14.8%)
うち定量的ではないが目標が定められている基金 308(7.9%) 179(7.1%) 129(9.6%)
うち目標達成度に関する基準が定められていない基金 3,099(80.3%) 2,086(82.8%) 1,013(75.5%)
  基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
うち目標達成度の評価等が行われていない基金 3,436(89.0%) 2,316(91.9%) 1,120(83.5%)

ウ 基金の保有割合に関する検証状況

 基金基準では、基金規模が過大となっていないか客観的に把握するため、基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有金額等の割合)を算出し、検証することとなっている。
 基金事業団体における保有割合の検証状況についてみると、図表17のとおりであり、基金事業団体による検証が行われた基金の割合は、全体で9.0%と低くなっている。20・21補正基金では、基金事業の終了時期や終了後に残余額の返還があらかじめ決まっている基金が多いことから、基金事業団体による保有割合に関する検証が行われた基金の割合は、3.1%と低くなっており、それ以外の基金でも、(4)ア のとおり基金事業の終了時期が定められていないものが50.2%あるにもかかわらず、基金事業団体による検証が行われた基金の割合は20.0%と低率にとどまっている。

図表17 基金の保有割合に関する検証状況
(単位:基金)
基金総数  
うち20・21補正基金 うち左以外の基金
基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
  うち保有割合について基金事業団体自らの検証が行われている基金 348(9.0%) 79(3.1%) 269(20.0%)
  うち自ら定めた基準等に従って検証が行われた基金 23(0.5%) 8(0.3%) 15(1.1%)
うち自ら定めた基準等はないが検証が行われた基金 325(8.4%) 71(2.8%) 254(18.9%)
うち保有割合について基金事業団体自らの検証が行われていない基金 3,511(90.9%) 2,439(96.8%) 1,072(79.9%)

エ 国庫補助金等相当額の返還に関する基準の策定状況

 基金基準では、使用見込みの低い基金を保有する基金法人は、定期的に見直しを行い、国庫補助金等の返還等その基金の取扱いを検討することとなっている。
 国庫補助金等相当額の返還に関する基準の策定状況についてみると、図表18のとおりであり、基金事業終了時に基金に残余額がある場合に国庫補助金等相当額を国に返還する旨の規定が定められている基金の割合は83.9%と高くなっており、基金事業団体の基金条例等に定められている基金の割合は、44.0%(20・21補正基金では60.6%、それ以外の基金では12.9%)となっている。また、交付要綱等の規定に従うこととしているため、基金条例等に定めた規定がないという基金の割合は39.8%(20・21補正基金では33.9%、それ以外の基金では51.0%)となっている。なお、残りの16.0%の基金(20・21補正基金では5.3%、それ以外の基金では36.0%)については、基金終了時の残余額を国に返還する旨の規定はない(これらに係る22年度末の国庫補助金等相当額2924億余円)。
 そして、基金事業の期間中に使用見込みのない余剰額がある場合に、当該余剰額のうち国庫補助金等相当額を国に返還する旨の規定が定められている基金の割合は、1.6%と低率にとどまっている。これは、基金事業団体が、基金に余剰が生ずることを想定していないことなどによるものである。

図表18 国庫補助金等相当額の返還に関する基準の策定状況
(単位:基金)
基金総数  
うち20・21補正基金 うち左以外の基金
基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
  うち終了時の国への返還についての規定が定められている基金 3,240(83.9%) 2,383(94.6%) 857(63.9%)
  うち基金事業団体の基金条例等に定められている基金 1,701(44.0%) 1,528(60.6%) 173(12.9%)
うち交付要綱等に定めがあるため、基金条例等に定めがない基金 1,539(39.8%) 855(33.9%) 684(51.0%)
うち終了時の国への返還についての規定が定められていない基金 619(16.0%) 135(5.3%) 484(36.0%)
  基金総数 3,859(100%) 2,518(100%) 1,341(100%)
うち余剰額の国への返還に関する規定が定められている基金 62(1.6%) 25(0.9%) 37(2.7%)