外務省が行う政府開発援助について、〔1〕 草の根・人間の安全保障無償資金協力において、贈与資金が長期にわたり事業実施機関で保有されたまま活用されていない事態、〔2〕 カンボジアにおける日本NGO連携無償資金協力による地雷除去及び不発弾処理事業において、技術移転をより効果的なものとする検討が十分でなかったり、経費の必要性について経済的な観点から精査する必要があったりしている事態が見受けられた。
したがって、外務省において、贈与資金を効率的かつ効果的に活用し、また、技術移転を効果的に行うよう、〔1〕 事業の進捗が長期にわたり滞っているなどの場合は事業実施機関へのモニタリングを適時適切に行うことにより問題点を的確に把握して、適切に対応を行うことに努めて、事業の実施を促したり、事業の実施が見込まれない場合には贈与資金の取扱いについて十分に協議を行ったり、〔2〕 技術がより多くの作業員に移転されるよう事業内容の調整を行ったり、人件費の計上について業務を行うために必要な範囲にとどめるよう明確にするとともに、事業対象経費の審査を十分に行うなど経済的な事業の実施について検討を行ったりするよう、外務大臣に対して平成23年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、外務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 草の根・人間の安全保障無償資金協力について、24年5月に「草の根・人間の安全保障無償資金協力ガイドライン」を改訂して、在外公館は、事業の進捗が長期にわたり滞っているなどの場合には事業実施機関へのモニタリングを適時適切に行って事業の実施を促したり、事業の実施が見込まれない場合には贈与資金の取扱いなどについて外務本省に相談してその指示を受けて事業実施機関と十分に協議したりすることとした。
イ カンボジアにおける日本NGO連携無償資金協力による地雷除去及び不発弾処理事業について、同年6月までに事業実施機関と事業内容を調整した結果、作業員を入れ替えるなどして技術移転の対象者を拡大し、より多くの作業員に技術移転を実施することとした。また、同年8月に「日本NGO連携無償資金協力申請の手引き(実施要領)」を改訂して、人件費の計上については業務を行うために必要な範囲にとどめるよう明確にするとともに、カンボジアにおける地雷除去及び不発弾処理事業の事業対象経費の審査を行うなど経済的な事業の実施について検討した結果、人件費を削減することとした。