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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(49) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)医療保険給付諸費
      (項)生活保護費
(項)障害保健福祉費
  平成19年度は、
  一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)児童保護費
(項)生活保護費
(項)障害者自立支援給付諸費
(項)老人医療・介護保険給付諸費
(項)国民健康保険助成費
  年金特別会計(健康勘定) (項)保険料等交付金
  平成20年度は、
  年金特別会計(健康勘定) (項)保険給付費及保険者納付金
  平成19年度は、
  年金特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
  船員保険特別会計 (項)疾病保険給付費及保険者納付金
  平成19年度は、
  船員保険特別会計 (項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等 厚生労働本省、社会保険庁(平成21年12月末まで)、8地方厚生(支)局(指導監督庁。20年10月以降)、31都道府県
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。平成20年3月31日以前は「老人保健法」)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等
医療給付の種類 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、生活保護法等に基づく医療
実施主体 国、全国健康保険協会、都府県23、市314、特別区20、町138、村15、後期高齢者医療広域連合41、国民健康保険組合35、計588実施主体
医療機関等数 医療機関150、薬局15
過大に支払われていた医療費に係る診療報酬項目等 入院基本料、入院基本料等加算、調剤報酬等
過大に支払われていた医療費の件数 95,073件(平成19年度〜24年度)
過大に支払われていた医療費の額 1,219,253,861円(平成19年度〜24年度)
不当と認める国の負担額  491,348,712円(平成19年度〜24年度)

1 医療給付の概要

(1) 医療給付の種類

 厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度(平成20年3月以前)、後期高齢者医療制度(20年4月以降)、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。

ア 20年3月以前は、老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療

イ 20年4月以降は、上記のアに代わるものとして創設された後期高齢者医療制度において、高齢者の医療の確保に関する法律(以下「高齢者医療確保法」という。)に基づき、各都道府県の区域内に住所を有する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して後期高齢者医療の事務を処理するために当該都道府県の区域内の全ての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)が行う医療

ウ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人及び後期高齢者を除く。)に対して行う医療

エ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法に基づき被保護者に対して行う医療等

(2) 診療報酬又は調剤報酬

 これらの医療給付においては、被保険者(上記エの被保護者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、広域連合、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
 診療報酬等の支払の手続は、次のとおりとなっている( 参照)。

 診療報酬の支払の手続

図診療報酬の支払の手続

(注)
調剤報酬の支払の手続についても同様となっている。

ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数又は調剤点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定する。

イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健法に係るものは市町村に、高齢者医療確保法に係るものは広域連合に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、生活保護法等に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。

(ア) 医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に医療費の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ) 審査支払機関は、請求書及びレセプトにより請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認した上で、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。

(3) 国の負担

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。

ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が次のように負担している。

(ア) 老人保健法により、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法等により、国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。

イ 高齢者医療確保法に係る医療費(以下「後期高齢者医療費」という。)については、広域連合が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が次のように負担している。

(ア) 高齢者医療確保法により、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が納付する後期高齢者支援金及び後期高齢者の保険料が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法により、国は全国健康保険協会(注1) が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(エ) 船員保険法により、国は全国健康保険協会が管掌する船員保険事業に要する費用の一部を負担している。

(注1)
平成20年10月1日から政府管掌健康保険が、また、22年1月1日から船員保険のうち職務外疾病部門が、それぞれ全国健康保険協会管掌健康保険として全国健康保険協会へ承継された。

ウ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である場合の医療費は全国健康保険協会が支払った額の16.4%(22年6月30日以前は13%)を、〔2〕 船員保険の被保険者である場合の医療費は全国健康保険協会が支払った額の一部を、〔3〕 市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の41%(23年度以前は43%)を、〔4〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。

エ 生活保護法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。

2 検査の結果

(1) 検査の観点及び着眼点

 国民医療費は逐年増加する傾向にあり、11年度以降毎年度30兆円を超えている。また、このうち後期高齢者医療費(19年度以前は老人医療費。以下同じ。)は、高齢化が急速に進展する中でその占める割合が3割を超えている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院は、後期高齢者医療費を中心に、合規性等の観点から、医療費の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
 そして、近年では医療機関等において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、別途介護保険制度の介護給付等として行われるものを医療費として請求したりしていて不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、合規性等の観点から、これらの点を中心に検査することとした。

(2) 検査の対象及び方法

 本院は、8地方厚生(支)局(注2) 及び31都道府県において、保険者等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方厚生(支)局及び都道府県に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(注2)
社会保険庁の地方社会保険事務局が行っていた保険医療指導監査業務等は、平成20年10月から地方厚生(支)局へ移管された。

(3) 過大に支払われていた事態

 検査の結果、31都道府県に所在する150医療機関及び15薬局の請求に対して588実施主体において、19年度から24年度までの間における医療費が、95,073件で1,219,253,861円過大に支払われていて、これに対する国の負担額491,348,712円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。
 これを診療報酬項目等の別に整理して示すと、次のとおりである。

診療報酬項目等 実施主体
(医療機関等数)
過大に支払われていた医療費の件数 過大に支払われていた医療費の額 不当と認める国の負担額
    千円 千円
  〔1〕 入院基本料   163市区町村等(61) 9,262 573,377 229,611
  〔2〕 入院基本料等加算   188市区町村等(16) 12,779 148,406 61,238
  〔3〕 在宅医療料   67市区町等(24) 11,532 134,940 53,359
  〔4〕 特定入院料   75市区町村等(3) 2,966 128,698 52,566
  〔5〕 初診料・再診料   130市区町村等(16) 18,478 56,785 23,441
  〔6〕 検査料   61市区町村等(3) 14,273 48,530 19,976
  〔7〕 医学管理料   62市町村等(10) 9,578 37,641 15,111
  〔8〕 処置料   53市区町村等(8) 3,457 20,764 8,520
  〔9〕 リハビリテーション料等   94市町等(9) 6,066 28,503 11,340
  〔1〕 −〔9〕 の計   576実施主体(150) 88,391 1,177,649 475,167
  〔10〕 調剤報酬   51市区町等(15) 6,682 41,604 16,181
  〔1〕−〔10〕の計   588実施主体(165) 95,073 1,219,253 491,348
注(1)
複数の診療報酬項目について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多額な診療報酬項目で整理した。
注(2)
計欄の実施主体数は、各診療報酬項目等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬項目等の実施主体数を合計したものとは符合しない。
注(3)
〔9〕 リハビリテーション料等には、リハビリテーション料のほかに、精神科専門療法料及び手術料を含む。

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

ア 実施主体及び審査支払機関において、医療機関等から不適正と認められる医療費の請求があったのにこれに対する審査点検が十分でなく、特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらず、その活用が十分でなく、また、地方厚生(支)局等と府県との連携が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方厚生(支)局等及び都道府県において、医療機関等に対する指導が十分でなかったこと

(4) 各事態の詳細

 上記の医療費が過大に支払われていた事態について、診療報酬項目等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 入院基本料

 入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。入院基本料のうち療養病棟入院基本料等は、患者の疾患、状態等について厚生労働大臣が定める区分に従い、所定の点数を算定することとされている。
 また、入院基本料は厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。
 検査の結果、28都道府県に所在する61医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが9,262件あった。その主な態様は、次のとおりである。

ア 療養病棟入院基本料等に定められた区分のうち、より低い点数の区分の状態等にある患者に対して高い区分の点数で算定していた。
イ 地方厚生(支)局長に届け出た区分より高い点数の区分の入院基本料を算定していた。

 このため、上記9,262件の請求に対して163市区町村等において、医療費が573,377,521円過大に支払われていて、これに対する国の負担額229,611,743円は負担の必要がなかったものである。

〔2〕 入院基本料等加算

 入院基本料等加算には、療養病棟療養環境加算、療養環境加算等があり、それぞれ所定の点数が定められている。そして、これらの加算の多くは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。ただし、療養病棟療養環境加算等は、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)を満たしていないなどの場合には算定できないこととされている。
 検査の結果、9都県に所在する16医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが12,779件あった。その主な態様は、医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していたものである。
 このため、上記12,779件の請求に対して188市区町村等において、医療費が148,406,855円過大に支払われていて、これに対する国の負担額61,238,117円は負担の必要がなかったものである。

〔3〕 在宅医療料

 在宅医療料のうち在宅患者訪問診療料等は、医療機関が、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合等に算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等の入所者に対しては、在宅患者訪問診療料等は算定できないこととされている。
 また、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料等は、医療機関が、在宅での療養を行っている患者等であって通院が困難なものに対して、診療に基づき計画的な医学管理を継続的に行い、当該医療機関の理学療法士等を訪問させて、基本的動作能力等の回復を図るための訓練等について必要な指導を行わせた場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等に対しては、この指導が別途介護保険制度の介護給付等として行われるものであることから、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料等は算定できないこととされている。
 さらに、往診料は、患者の求めに応じて患家に赴き診療を行った医療機関において算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等に配置されている医師(以下「配置医師」という。)が当該施設の入所者に行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われるものであることから、往診料等は算定できないこととされている。
 検査の結果、13都道府県に所在する24医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが11,532件あった。その態様は、次のとおりである。

ア 特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、在宅患者訪問診療料等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料等を算定していた。
ウ 配置医師が特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、往診料等を算定していた。

 このため、上記11,532件の請求に対して67市区町等において、医療費が134,940,422円過大に支払われていて、これに対する国の負担額53,359,279円は負担の必要がなかったものである。

〔4〕 特定入院料

 特定入院料には、精神療養病棟入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た医療機関において、その届出に係る所定の点数を算定することとされている。ただし、精神療養病棟入院料は、医療機関において、医師の数が標準人員を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
 検査の結果、3府県に所在する3医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが2,966件あった。その態様は、医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料を算定していたものである。
 このため、上記2,966件の請求に対して75市区町村等において、医療費が128,698,271円過大に支払われていて、これに対する国の負担額52,566,815円は負担の必要がなかったものである。

〔5〕 初診料・再診料

 初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があったときに、再診料はその後の診療行為の都度、それぞれ算定することとされている。ただし、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料及び再診料は算定できないこととされている。
 検査の結果、11道府県に所在する16医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが18,478件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料及び再診料を算定していたものである。
 このため、上記18,478件の請求に対して130市区町村等において、医療費が56,785,361円過大に支払われていて、これに対する国の負担額23,441,839円は負担の必要がなかったものである。

〔6〕 検査料

 検査料には、血液化学検査等の検体検査料等があり、それぞれの検査の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、診療の具体的方針として、検査は、診療上必要があると認められる範囲内において行うこと、また、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 検査の結果、3道県に所在する3医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが14,273件あった。その主な態様は、特別養護老人ホームの多くの入所者に対して血液化学検査等を画一的に実施して検査料を算定していたものである。
 このため、上記14,273件の請求に対して61市区町村等において、医療費が48,530,368円過大に支払われていて、これに対する国の負担額19,976,520円は負担の必要がなかったものである。

〔7〕 医学管理料

 医学管理料のうち特定疾患療養管理料等は、生活習慣病等を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合等に算定することとされている。ただし、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、特定疾患療養管理料等は算定できないこととされている。
 検査の結果、9道県に所在する10医療機関において、医学管理料等の請求が不適正と認められるものが9,578件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、特定疾患療養管理料等を算定していたものである。
 このため、上記9,578件の請求に対して62市町村等において、医療費が37,641,633円過大に支払われていて、これに対する国の負担額15,111,955円は負担の必要がなかったものである。

〔8〕 処置料

 処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、特別養護老人ホーム等の職員が入所者に対して行った処置は、処置料として算定できないこととされている。
 検査の結果、6府県に所在する8医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが3,457件あった。その主な態様は、特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った鼻腔栄養について処置料を算定していたものである。
 このため、上記3,457件の請求に対して53市区町村等において、医療費が20,764,972円過大に支払われていて、これに対する国の負担額8,520,639円は負担の必要がなかったものである。

〔9〕 リハビリテーション料等

 リハビリテーション料のうち運動器リハビリテーション料は、厚生労働大臣が定める患者に対して個別療法であるリハビリテーションを行った場合に算定することとされている。
 検査の結果、8道県に所在する9医療機関において、リハビリテーション料等の請求が不適正と認められるものが6,066件あった。その主な態様は、厚生労働大臣の定める患者に該当しないのに、運動器リハビリテーション料を算定していたものである。
 このため、上記6,066件の請求に対して94市町等において、医療費が28,503,608円過大に支払われていて、これに対する国の負担額11,340,276円は負担の必要がなかったものである。

〔10〕 調剤報酬

 調剤報酬のうち在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、この指導が別途介護保険制度の介護給付等として行われるものであることから、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できないこととされている。
 検査の結果、8府県に所在する15薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが6,682件あった。その態様は、介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していたものである。
 このため、上記6,682件の請求に対して51市区町等において、医療費が41,604,850円過大に支払われていて、これに対する国の負担額16,181,529円は負担の必要がなかったものである。
 これらを医療機関等の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名 実施主体(医療機関等数) 過大に支払われていた医療費の件数 過大に支払われていた医療費の額 不当と認める国の負担額  摘要
    千円 千円  
北海道 21市区町等
(9)
10,431 77,144 32,461  〔1〕 〔3〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔9〕
岩手県 10市町等
(4)
611 14,253 6,004  〔1〕 〔3〕 〔8〕
山形県 17市町等
(4)
1,663 23,449 8,661  〔1〕 〔7〕
福島県 52市区町村等
(10)
10,316 138,263 55,638  〔1〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔10〕
栃木県 29市区町等
(10)
4,586 60,006 23,639  〔1〕 〔5〕 〔7〕 〔9〕
東京都 67市区町等
(7)
1,742 54,604 21,469  〔1〕 〔2〕 〔3〕
神奈川県 52市区町等
(10)
5,931 46,342 17,712  〔1〕 〔3〕 〔5〕 〔8〕 〔9〕 〔10〕
新潟県 20市区町等
(6)
5,609 113,316 46,554  〔1〕 〔2〕 〔5〕
富山県 29市町村等
(4)
2,032 19,304 7,561  〔1〕 〔2〕
福井県 44市町等
(4)
2,927 35,769 13,316  〔1〕 〔9〕
山梨県 8市等
(3)
1,171 4,668 1,745  〔1〕 〔3〕 〔10〕
長野県 17市町村等
(4)
583 26,513 10,141  〔1〕
岐阜県 24市町等
(7)
4,025 32,425 12,011  〔1〕 〔3〕 〔5〕 〔10〕
静岡県 38市区町等
(9)
6,363 147,486 56,324  〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔7〕 〔10〕
愛知県 75市町等
(10)
7,383 30,936 12,723  〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔5〕 〔8〕 〔9〕 〔10〕
大阪府 46市町等
(10)
3,656 52,050 22,032  〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔8〕 〔10〕
兵庫県 27市町等
(8)
3,863 56,030 23,297  〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔7〕 〔9〕 〔10〕
奈良県 12市町等
(1)
64 2,726 1,034  〔1〕
和歌山県 11市町等
(5)
1,717 13,890 5,876  〔1〕 〔3〕 〔8〕 〔9〕
島根県 2市等
(1)
23 2,254 901  〔1〕
岡山県 1広域連合
(1)
38 3,094 1,232  〔1〕
広島県 30市町等
(6)
5,895 72,681 30,471  〔1〕 〔2〕 〔6〕
山口県 11市区等
(4)
3,077 10,441 3,955  〔1〕 〔5〕 〔7〕
徳島県 24市町等
(7)
2,132 19,338 7,764  〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔5〕
香川県 6市町等
(6)
880 26,791 10,514  〔2〕 〔3〕
高知県 18市町村等
(1)
996 5,325 1,900  〔2〕
福岡県 19市町等
(3)
580 41,140 15,745  〔1〕 〔9〕
佐賀県 9市町等
(2)
1,918 5,660 2,233  〔1〕 〔5〕
熊本県 1広域連合
(1)
334 9,689 3,825  〔1〕
鹿児島県 8市町等
(1)
439 2,503 1,113  〔7〕
沖縄県 33市町村等
(7)
4,088 71,146 33,485  〔1〕 〔4〕 〔7〕 〔8〕
588市区町村等
(165)
95,073 1,219,253 491,348  
注(1)
計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。
注(2)
摘要欄の〔1〕 〜〔10〕 は、本文 の過大に支払われていた事態の診療報酬項目等の別に対応している。

 介護保険の要介護被保険者等の在宅医療料等に係る医療費の支払については、意見を表示し又は処置を要求した事項1件(「医療保険において、介護保険との突合情報を活用した効率的なレセプト点検を実施することなどにより、医療給付と介護給付との給付調整が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの」 参照)を掲記した。