会計名及び科目 | 労働保険特別会計(労災勘定) | (項)保険給付費 |
部局等 | 厚生労働本省(支出庁) 9労働局(審査庁) |
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支払の相手方 | 66指定医療機関等 | |
過大に支払われていた労災診療費 | 入院料、手術料等 | |
過大支払額 | 27,388,725円(平成16年度〜23年度) |
労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病等に対して療養の給付等の保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うものである。
療養の給付は、保険給付の一環として、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)の請求により、都道府県労働局長の指定する医療機関又は労災病院等(以下「指定医療機関等」という。)において、診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの指定医療機関等は、都道府県労働局(以下「労働局」という。)に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、労働局で請求の内容を審査した上で支払額を決定して、これにより、厚生労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達。以下「算定基準」という。)に基づき算定することとなっている。算定基準によると、労災診療費は、労災診療の特殊性等を考慮して、〔1〕 健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕 初診料、再診料等の特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数、金額等を別に定めて、これにより算定することとなっている。
本院は、全国47労働局のうち、18労働局において会計実地検査を行い、合規性等の観点から、各労働局の審査に係る平成16年度から23年度までの間における労災診療費の支払が算定基準に基づき適正になされているかなどに着眼して、診療費請求内訳書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査の結果、9労働局の審査に係る労災診療費の診療項目のうち、過大に支払われていた入院料、手術料等が66指定医療機関等で計27,388,725円あり、不当と認められる。
上記について、その主な事態を示すと次のとおりである。
ア 入院料に係る事態
入院料のうち入院基本料及び特定入院料は、夜勤を行う看護職員1人当たりの月平均夜勤時間数が所定の時間数以下であることなどの厚生労働大臣が定める施設基準等に適合しているものとして届け出た病棟に入院している傷病労働者について、その基準に掲げる区分等に従って所定の点数を算定することとなっている。また、入院基本料及び特定入院料は、一定の要件を満たす場合に、その区分等に従ってそれぞれ所定の加算(以下「入院基本料等加算」という。)を算定できることとなっている。
しかし、7労働局管内の13指定医療機関等は、入院料について、入院基本料、特定入院料、入院基本料等加算等の算定に当たり、施設基準等に適合していないのに適合している場合の区分等に従った所定点数により算定するなどしていた。このため、入院料149件で計18,658,366円が過大に支払われていた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
A病院は、傷病労働者Bに係る入院基本料等の算定に当たり、施設基準等に適合しているとして、入院基本料の一般病棟入院基本料の健保点数1,092点に入院基本料等加算等の所定点数を加えた1,202点の30日分36,060点に12円を乗じて432,720円と算定していた。しかし、実際は、A病院は夜勤を行う看護職員の1人当たりの月平均夜勤時間数が所定の時間数を超えていたため、施設基準等に適合していなかった。したがって、入院基本料の特別入院基本料の健保点数575点に入院基本料等加算等の所定点数を加えた584点の30日分17,520点に12円を乗じて210,420円と算定すべきであり、このため入院基本料等222,480円が過大となっていた。
イ 手術料に係る事態
手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの健保点数により算定することとなっている。また、別途通知により算定できる要件が定められている区分については、その要件を満たす場合に、当該区分の健保点数により算定することとなっている。
しかし、7労働局管内の44指定医療機関等は、手術料について、本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により算定するなどしていた。このため、手術料55件で計5,336,419円が過大に支払われていた。
このような事態が生じていたのは、指定医療機関等が労災診療費を誤って算定して請求していたのに、9労働局においてこれに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことなどによると認められる。
上記の過大に支払われていた労災診療費の額を労働局ごとに示すと、次のとおりである。
労働局名
|
指定医療機関等数
|
過大支払件数
|
過大支払額
|
件
|
千円
|
||
北海道
|
5
|
6
|
507
|
秋田
|
6
|
56
|
2,206
|
埼玉
|
3
|
7
|
812
|
静岡
|
1
|
120
|
1,651
|
愛知
|
4
|
140
|
2,106
|
京都
|
12
|
125
|
1,444>
|
大阪
|
26
|
43
|
3,575
|
山口
|
5
|
8
|
1,004
|
佐賀
|
4
|
59
|
14,079
|
計
|
66
|
564
|
27,388
|
労災診療費の支払については、意見を表示し又は処置を要求した事項1件(「地方厚生局等が保有している診療報酬返還情報等を活用して労災診療費の支払に係る事後確認を適切かつ効果的に行うよう改善の処置を要求したもの」 参照)を掲記した。