生活保護費等負担金(平成19年度以前は生活保護費負担金。以下「負担金」という。)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護を行う場合に、その費用の一部を国が負担するものである。この保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力等あらゆるものを活用することを要件としている。
負担金の交付額は、次により算定することとなっている。
費用の額 | − | 返還金等の額 | = | 国庫負担対象事業費 | ||
国庫負担対象事業費 | × | 国の負担割合 (3/4) |
= | 負担金の交付額 |
この費用の額及び返還金等の額は、それぞれ次により算定することとなっている。
ア 費用の額は、次の〔1〕 及び〔2〕 に〔3〕 を加えて算定する。
〔1〕 保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、その所在地域、構成員の数、年齢等の別に応じて算定される生活費の額から、被保護世帯における就労収入、年金又は手当の受給額等を基に収入として認定される額を控除して決定された保護に要する費用(以下「保護費」という。)の額の合計額
〔2〕 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その全額又は一部を事業主体が負担するものとして決定された保護費の額の合計額
〔3〕 事業主体の事務経費
イ 返還金等の額は、急迫の場合等において、資力があるにもかかわらず保護を受けた者が、資産を売却するなどして収入を得たときに返還する保護費の額等の合計額とする。
本院が、25都道府県の143事業主体において会計実地検査を行ったところ、7都道県の13事業主体において、被保護者が就労して収入を得たり、特別児童扶養手当等を受給したりなどしているのに、計45世帯から事実と相違した届出がなされるなどしていたため、保護費が過大に支給されていた。このため、負担金計46,978,010円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 被保護世帯において事実と相違した届出を行っているのに、事業主体において、収入の認定等に当たって調査確認が十分でなかったこと
イ 都道県において、適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったこと
前記の保護費が過大に支給されていた事態について、事例を示すと次のとおりである。
事業主体Aは、平成5年8月に世帯Bを対象として保護を開始して、引き続き保護を実施している。そして、18年4月から23年3月までの保護費の支給に当たり、世帯主からの収入の届出に基づき、この間の同世帯の収入を4,428,511円と認定して、保護費の額を決定していた。
しかし、実際には、世帯Bの世帯主等は、この間に上記の収入のほかに、就労収入計4,602,664円を得ており、このため4,602,664円の保護費が過大に支給されていた。
以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者(事業主体) | 年度 | 国庫負担対象事業費 | 左に対する国庫負担金交付額 | 不当と認める国庫負担対象事業費 | 不当と認める国庫負担金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(147) | 北海道 | 札幌市 | 19〜24 | 71,897 | 53,922 | 8,593 | 6,445 | 手当収入を認定していなかったもの |
(148) | 同 | 釧路市 | 19〜22 | 10,897 | 8,173 | 2,214 | 1,660 | 同 |
(149) | 同 | 帯広市 | 19〜24 | 23,931 | 17,948 | 3,631 | 2,723 | 手当収入を認定していなかったものなど |
(150) | 埼玉県 | 川口市 | 19〜23 | 63,323 | 47,492 | 2,510 | 1,882 | 同 |
(151) | 同 | 三郷市 | 20〜23 | 25,340 | 19,005 | 2,876 | 2,157 | 手当収入を認定していなかったもの |
(152) | 千葉県 | 松戸市 | 19〜22 | 18,106 | 13,580 | 11,161 | 8,371 | 就労収入を認定していなかったもの |
(153) | 東京都 |
新宿区 | 19〜23 | 27,383 | 20,537 | 1,496 | 1,122 | 手当収入を認定していなかったものなど |
(154) | 同 | 墨田区 | 19〜23 | 88,535 | 66,401 | 7,110 | 5,332 | 同 |
(155) | 同 | 板橋区 | 19〜23 | 11,617 | 8,712 | 1,994 | 1,495 | 手当収入を認定していなかったもの |
(156) | 同 | 府中市 | 19〜24 | 77,960 | 58,470 | 10,595 | 7,946 | 手当収入を認定していなかったものなど |
(157) | 神奈川県 | 藤沢市 | 18〜22 | 17,680 | 13,260 | 5,916 | 4,437 | 就労収入を認定していなかったもの |
(158) | 静岡県 | 静岡市 | 18〜23 | 39,148 | 29,361 | 2,084 | 1,563 | 手当収入を認定していなかったものなど |
(159) | 沖縄県 | 那覇市 | 18〜23 | 50,652 | 37,989 | 2,451 | 1,838 | 手当収入を認定していなかったもの |
(147)−(159)の計 | 526,475 | 394,856 | 62,637 | 46,978 |
保護費の支給については、意見を表示し又は処置を要求した事項1件(「生活保護事業の実施において、特別児童扶養手当等の受給資格の有無を調査して確実に収入認定するための体制を整備することにより、生活保護費等負担金の交付が適正なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの」 参照)を掲記した。