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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第8 厚生労働省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

医療保険において、介護保険との突合情報を活用した効率的なレセプト点検を実施することなどにより、医療給付と介護給付との給付調整が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


(2) 医療保険において、介護保険との突合情報を活用した効率的なレセプト点検を実施することなどにより、医療給付と介護給付との給付調整が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)医療保険給付諸費
(項)生活保護費
(項)障害保健福祉費
平成19年度は、 (項)生活保護費
(項)老人医療・介護保険給付諸費
(項)国民健康保険助成費
年金特別会計(健康勘定) (項)保険料等交付金
平成20年度は、 (項)保険給付費及保険者納付金
19年度は、 (項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
船員保険特別会計 (項)疾病保険給付費及保険者納付金
(平成19年度は、 (項)老人保健拠出金)
部局等 厚生労働本省
国の負担の根拠 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等
医療保険における介護保険との給付調整の概要 同一の疾病又は負傷について、介護保険法に基づく介護給付を受けることができる場合に、医療保険において行われる給付の調整を行うもの
保険者等 国、全国健康保険協会、県3、市59、特別区1、町9、後期高齢者医療広域連合28、国民健康保険組合8、計110保険者等
医療機関等数 医療機関60、薬局79
過大に支払われていた医療費の件数 16,897件(平成19年度〜24年度)
過大に支払われていた医療費の額
1億4356万余円
(平成19年度〜24年度)

上記のうち国の負担額
5603万円
 

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 医療保険における医療給付と介護保険における介護給付との給付調整について

(平成24年10月26日付け 厚生労働大臣宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 医療保険における医療給付等の概要

(1) 医療給付の概要

 貴省は、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)等(以下、これらを「医療保険各法」という。)に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、都道府県に設置されている後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)等(以下「保険者等」という。)が行う医療保険における医療給付に関して、保険者等並びに医療機関及び薬局(以下、医療機関と薬局を合わせて「医療機関等」という。)に対する指導等を行うとともに、医療給付に要する費用の一部を負担している。
 これらの医療給付においては、被保険者(被扶養者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、保険者等及び被保険者である患者がこれらの費用を医療機関等に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
 そして、診療報酬等の請求、審査及び支払の手続は、次のとおりとなっている。

ア 医療機関等は、診療報酬等のうち患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については各保険者等に請求する。

イ 医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に医療費の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを審査支払機関であり都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)等に毎月1回送付する。

ウ 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

エ 請求を受けた保険者等は、医療費についての審査点検を行って金額等を確認した上で、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。

(2) 医療給付と介護給付との給付の調整

 医療機関等は、医療サービスの提供を行うほか、介護サービスの事業者として、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村の認定を受けた要介護被保険者等に対して介護給付の一環として医療サービスを提供できることとなっている。
 ただし、同一の疾病等について要介護被保険者等が医療機関等で提供された医療サービスのうち介護保険法に基づく介護給付を受けることができる場合は、医療給付は行われないこととされるなど給付の調整(以下、この調整を「給付調整」という。)を行うこととされている。

(3) 給付調整に係る医療費等の適正化の取組

 国保連合会は、医療保険のうち国民健康保険及び後期高齢者等(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害状態にある者をいう。)を被保険者とする後期高齢者医療制度の診療報酬等の審査支払機関であるとともに、介護保険の介護報酬の審査支払機関も兼ねている。
 このことから、国保連合会は、平成15年度から、社団法人国民健康保険中央会(24年4月1日以降は公益社団法人国民健康保険中央会)が貴省から交付された国庫補助金で導入した国保連合会介護給付適正化システム(以下「適正化システム」という。)により、医療給付と介護給付の給付の整合性が確認できるよう、患者ごとに医療保険と介護保険の給付情報を突合している。そして、20年度からは、老人保健制度に代わり後期高齢者医療制度が創設されて、介護保険法により介護給付の対象となる同制度の被保険者及び国民健康保険の40歳以上75歳未満の被保険者に係る給付情報が適正化システムによる突合の対象として加えられるなど、突合の対象の範囲が拡充されてきている。
 また、国保連合会は、適正化システムによる突合を行い、給付調整について確認の必要性が高い患者を抽出して、当該患者の要介護度、要介護認定の有効期間開始日と終了日、被保険者番号、受診医療機関等名、抽出事由等(以下、これらを合わせて「突合情報」という。)が記載された一覧表を作成している。
 そして、市町村及び広域連合は、一覧表に記載された突合情報を基に介護サービス事業所及び医療機関等に照会を行うことなどにより、介護保険と医療保険の給付内容等を確認すれば、給付調整について効率的なレセプト点検を実施できることになる。
 このため、貴省は、20年6月に、都道府県の介護保険担当部局及び後期高齢者医療担当部局に対して通知(以下「活用通知」という。)を発して、市町村及び広域連合において、医療保険と介護保険との担当部局間の連携を密にするとともに、突合情報等を積極的に活用し、介護給付に加えて医療給付の適正化の推進等を図るよう指示している。また、21年4月に、広域連合に対して通知(以下「実施通知」という。)を発して、突合情報等を活用してレセプト点検を実施するよう指示している。

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 国民医療費は逐年増加する傾向にあり、21年度には36兆0067億円に達している。このうち、国民健康保険における65歳以上75歳未満の前期高齢者の被保険者及び後期高齢者医療制度の被保険者に係る医療費は、高齢化の急激な進行等により、17兆5236億円と国民医療費全体に占める割合は約48.7%に上っている。また、要介護被保険者等の数は23年度末には約514万人に達しており、65歳以上の総人口に占める割合は約17.0%に上っている。
 このように医療費の抑制が喫緊の課題となっている中、貴省は、給付調整に関して、市町村及び広域連合が突合情報を活用してレセプト等の点検を効率的に実施するよう医療給付の適正化に向けての取組を行っている。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、国民健康保険及び後期高齢者医療制度における給付調整について突合情報を活用した効率的なレセプト点検が実施されているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 本院は、27府県(注) において、管内の保険者等が行った医療費の支払について、突合情報やレセプト等の関係書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について、突合情報等により給付内容の確認等を行うとともに、給付調整の実施について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方厚生(支)局及び府県に対して調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

 27府県  京都、大阪両府、岩手、山形、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、福井、山梨、岐阜、静岡、愛知、兵庫、奈良、広島、山口、徳島、香川、高知、福岡、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 (検査の結果)

 検査の結果、27府県に所在する60医療機関及び79薬局において給付調整を行わないまま診療報酬等を算定して、医療費の請求を行っていた。そして、上記の医療機関等に対して110保険者等が行った19年度から24年度までの間における医療費の支払について、市町村の国民健康保険担当部局(以下「市町村国保部局」という。)及び広域連合において、当該市町村の介護保険担当部局(以下「市町村介護部局」という。)又は国保連合会との連携が十分でなかったなどのため、国保連合会から突合情報の一覧表の提供を受けていなかったり、突合情報の一覧表の提供を受けていたのにこれを活用していなかったりしていて、給付調整について効率的なレセプト点検を実施していないなどしていた。このため、給付調整が適切に行われておらず、医療費の支払が16,897件、計1億4356万余円過大となっていて、これに対する国の負担額5603万余円は負担の必要がなかったと認められる。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

 香川県後期高齢者医療広域連合は、実施通知等に対する認識が欠けていたため、レセプトの点検に当たり、給付調整を点検項目としておらず、また、香川県国民健康保険団体連合会との連携が十分でなく、同連合会から突合情報の一覧表の提供を受けていなかった。
 しかし、同広域連合が同連合会から上記一覧表の提供を受け、これを活用してレセプト点検を実施するなどしていれば、医療機関等において給付調整が適切に行われないまま請求が行われていた1,438件、計20,266,416円の医療費を支払う必要はなかったと認められる。

 (是正改善を必要とする事態)

 医療機関等において給付調整が適切に行われないまま医療費の請求が行われているのに、市町村国保部局及び広域連合において適正化システムにより提供される突合情報を活用した効率的なレセプト点検を実施するなどしていなかったため、医療費の支払が過大になっている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 貴省において、前記のとおり、活用通知を都道府県の介護保険担当部局及び後期高齢者医療担当部局に対して発していたものの、都道府県の国民健康保険担当部局に対しては発していなかったことなどから、突合情報の活用について市町村国保部局まで周知されていないこと

イ 都道府県において、市町村国保部局又は広域連合が行う給付調整に関するレセプト点検の実施状況を十分に把握しておらず、突合情報の活用が十分でない市町村国保部局又は広域連合に対して必要な指導を行っていないこと

ウ 市町村国保部局及び広域連合において、給付調整に関するレセプト点検を実施することの必要性についての認識が十分でなかったこと、また、市町村介護部局又は国保連合会との間で突合情報を活用するための連携が十分でないこと

エ 貴省及び都道府県において、診療報酬等の算定に際しての給付調整の適切な実施について、医療機関等に対する指導が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 我が国の国民医療費は、高齢化の急激な進行等により逐年増加する傾向にあり、医療費の抑制は喫緊の課題となっている。
 ついては、貴省において、適正化システムによる突合情報を活用した効率的なレセプト点検を実施するための態勢整備を図ることなどにより、給付調整が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 都道府県の国民健康保険担当部局に通知を発するなどして、市町村国保部局に対して、レセプト点検の方法として突合情報を活用することを周知すること

イ 都道府県等に対して次のような技術的助言等を行うこと

(ア) 市町村国保部局又は広域連合に対して医療事務に関する指導監査等を行う際に、給付調整に関するレセプト点検の実施状況を十分に把握して、レセプト点検を実施する必要性について市町村等に周知徹底すること
(イ) 市町村国保部局又は広域連合に対して、給付調整に関するレセプト点検における突合情報の活用状況を確認して、活用が十分でない場合には、当該市町村介護部局又は国保連合会との連携を十分に図り、突合情報の活用を図るよう指導を徹底すること

ウ 都道府県を通じるなどして、医療機関等に対して、給付調整の適切な実施について改めて周知し、診療報酬等の算定を適正に行うよう指導を徹底すること