会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)高齢者等雇用安定・促進費 |
労働保険特別会計(雇用勘定) | (項)地域雇用機会創出等対策費 | |
部局等 | 厚生労働本省 | |
補助の根拠 | 予算補助 | |
補助事業者 | 7都県 | |
緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業の概要 | 国からの交付金により創設した基金を財源として、雇用機会を創出するなどの事業を民間企業等に委託するなどして実施するもの | |
受託者が消費税の免税事業者である委託契約に係る委託費の支払額 | 68億3550万余円 | (平成21、22両年度) |
上記のうち受託者が負担する必要がないのに計上されていた消費税相当額(1) | 5151万円 | |
受託者が消費税の課税事業者である委託契約に係る委託費の支払額 | 139億2126万余円 | (平成21、22両年度) |
上記のうち重複して計上されていた消費税相当額(2) | 915万円 | |
(1)及び(2)の計 | 6066万円 |
平成20年秋以降、深刻な経済不安を背景にして、派遣労働者のいわゆる雇止めなどの雇用不安が社会問題化するなど、地域の雇用情勢は全国的に急激に悪化した。このような状況に対処するため、厚生労働省は、20年度に都道府県に対して、平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発職第0130003号)に基づき緊急雇用創出事業臨時特例交付金(以下「緊急雇用交付金」という。)1500億円を、また、平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発職第0130002号)に基づきふるさと雇用再生特別交付金2500億円をそれぞれ交付した。その後、緊急雇用交付金については、23年度第3次補正予算まで累次の追加交付があり、累計で1兆2010億円が都道府県に交付されている。
そして、交付金の交付を受けた都道府県は、緊急雇用交付金により緊急雇用創出事業臨時特例基金を、また、ふるさと雇用再生特別交付金によりふるさと雇用再生特別基金をそれぞれ創設し、都道府県及び市町村等(以下「都道府県等」という。)は、両基金を財源として、雇用機会を創出するなどの事業である緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業(以下、これらを合わせて「基金事業」という。)を実施している。
基金事業は、都道府県等が事業を民間企業等へ委託する方法(以下、民間企業等へ委託して行う基金事業を「委託事業」という。)等により実施されている(基金事業の概要については、前掲の「緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を補助の目的外に使用していたもの」
参照)。
消費税法(昭和63年法律第108号)によれば、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の課税対象は、国内において事業者が行った事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供とされている。
委託契約は、このうち役務の提供に該当するため、受託者が消費税の課税事業者である場合は、委託費は受託者の課税売上げとなり、消費税の課税の対象となる。
一方、受託者が課税期間に係る基準期間(法人の場合は前々事業年度)における課税売上高が1000万円以下である事業者である場合は、当該事業者は消費税の納税義務を免除される免税事業者となる。
委託事業の受託者には特定非営利活動法人等の比較的小規模な法人、団体等が含まれている。そこで、本院は、経済性等の観点から、厚生労働本省、7都県(注1) 及びその管内の市町村等(以下「7都県等」という。)において、受託者が消費税の免税事業者であるか否かを適切に確認した上で委託費における消費税の計上を行っているか、委託費に係る消費税相当額は適切に計上されているかなどに着眼して、21、22両年度に実施された委託事業を対象として、委託契約書、実績報告書等の書類を精査するなどの方法により会計実地検査を行った。検査に当たっては、21、22両年度に実施された委託事業に係る委託契約について消費税の取扱いに関する調書を徴するなどして受託者が免税事業者か課税事業者かを確認し、受託者が消費税の免税事業者である契約計1,676件、支払額計68億3550万余円、受託者が消費税の課税事業者である契約計691件、支払額計139億2126万余円、委託契約合計2,367件、支払額合計207億5676万余円について検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
受託者が消費税の免税事業者である契約1,676件のうち、7都県等が、免税事業者である受託者が負担する必要のない消費税相当額が計上された委託費を支払っていた契約が計304件あり、その支払額における負担する必要がなかった消費税相当額は計5151万余円となっていた。このうち257件については、7都県等は、契約締結時及び支払額の確定時に、受託者が消費税の免税事業者であるか否かの確認を行っていなかった。また、残りの47件については、5都県(注2) 等は、受託者が消費税の免税事業者であることを確認していたものの、消費税相当額が委託費に計上されていることを看過するなどしていた。
受託者が消費税の課税事業者である契約691件のうち、7都県等が、消費税額を含む事業費に更に消費税率5%を乗じて消費税額を算定していたため、事業費に係る消費税相当額が重複して計上された委託費を支払っていた契約が計119件あり、その支払額における重複して計上された消費税相当額は計915万余円となっていた。
以上のように、委託事業の実施に当たり、受託者が消費税の免税事業者である場合に受託者が負担する必要のない消費税相当額が計上された委託費を支払っていたり、受託者が消費税の課税事業者である場合に消費税相当額が重複して計上された委託費を支払っていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 厚生労働省において、委託事業に係る委託契約の締結時等に受託者が消費税の免税事業者であるか否かを確認することなどの消費税の適切な取扱いについて都道府県への周知徹底が十分でなかったこと
イ 都道府県等において、委託事業の委託費に係る消費税の適切な取扱いに対する認識が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、24年3月に、各都道府県の基金事業担当部局長宛てに通知を発して、委託事業の実施に当たり、受託者が消費税の免税事業者であることの確認を適切に行わせることとするとともに、同通知において課税事業者及び免税事業者それぞれの場合についての具体的な消費税相当額の計上方法等を示し、委託費に係る消費税相当額の計上が適切なものとなるよう周知徹底を図る処置を講じた。