中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)は、厚生労働省からの交付金を財源として基金を造成し、この基金を活用して、職業訓練の実施、受講者に対する支援給付金の支給、支援資金の貸付けなどの緊急人材育成支援事業を行っている。しかし、支援給付金の支給の要件である世帯の主たる生計者であること(以下「主たる生計者要件」という。)の確認が十分でなく、主たる生計者要件を満たしていない者に対して支援給付金を支給していたり、支給終了者一覧の作成が適切でなく、本来停止すべきであったのに停止されなかった支援資金の貸付けに係る返済免除等に伴い基金から補助金が交付されていたりしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、協会に対して、主たる生計者要件を満たさない支援給付金について速やかに返還等の措置を執らせるとともに、支援給付金の受給資格認定の審査に当たり、主たる生計者要件について、同一住所における申請者以外の受給資格者の有無を確認できる体制を整備させたり、支援給付金の申請書未提出者も適切に把握して支給終了者一覧を作成させたり、これらの処置が適切に執られるよう、指導監督を行い、基金からの支援給付金の支給及び支援給付金の返済免除等に伴う基金からの補助金の交付が適正なものとなるよう、厚生労働大臣に対して平成23年9月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、協会に対して、主たる生計者要件を満たさない支援給付金の返還等の措置を執らせるとともに、23年9月に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた
ア 主たる生計者要件の確認についての手順を定めて、緊急人材育成支援事業システムからのデータに基づき、同一住所における当該申請者以外の受給資格者の有無の確認を行う体制を整備させた。
イ 支援給付金の申請書未提出者の状況について、訓練実施機関から協会へ報告することとさせることなどにより申請書を提出していない受給資格者を適切に把握して支給終了者一覧を作成させることとした。
ウ ア及びイの処置が適切に執られるよう、協会に対して緊急人材育成支援事業に係る業務の適正な実施についての指導監督を行った。