第三者行為災害は、通勤途上の交通事故被害等のように労災保険給付の原因である事故が第三者の行為等によって生じて、当該事故の被災労働者等に対して第三者が損害賠償の義務を負う事故であり、被災労働者等が第三者や当該第三者の加入している保険等から損害賠償を受けたときは、国はその保険金等の額を限度として労災保険給付を行わないこと(以下「支給停止」という。)ができることとされている。しかし、厚生労働省が支給停止限度期間を一律に3年と定めていることから、都道府県労働局は、事故発生から3年経過後に支給停止を解除して労災保険給付を開始することとしていたため、同一の損害に対して保険金等と労災保険給付の二重填補が生じている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、支給停止の制度の趣旨を踏まえて、被災労働者等の保護という労災保険給付の目的等も勘案して、支給停止解除後の二重填補額が多額に上ることを避けるための方策を検討するよう、厚生労働大臣に対して平成23年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、支給停止解除後の二重填補額が多額に上ることを避けるための方策として、事故発生から一律3年と定められている支給停止限度期間を一定程度延長するよう検討を行っており、24年度中を目途に支給停止限度期間の在り方について決定し、25年度中に所要の処置を講ずることとしている。