国又は独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「機構」という。)は、厚生年金保険等の保険料を財源として設置した病院等の福祉施設の運営を財団法人厚生年金事業振興団(以下「厚生団」という。)、社団法人全国社会保険協会連合会(以下「全社連」という。)等への委託により行ってきており、厚生団においては病院等の運営により生じた多額の資金が、全社連においては民間等に譲渡された福祉施設に係る特別会計の清算による多額の剰余の資産がそれぞれ保有されていた。しかし、厚生労働省において、これらの資金及び剰余の資産が今後の病院等の運営に見込まれる経費の具体的な内容等からみて適切な規模であるかを十分に把握しておらず、その有効活用を図るための方策が十分に検討されていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、厚生団及び全社連が保有している資金及び剰余の資産について、厚生団及び全社連のこれまでの病院等の運営状況を分析したり、今後の病院等の運営に見込まれる経費の具体的な内容を資金の収支に係る計画等により精査したりするなどして、その適切な規模を把握した上で、今後、機構において必要となる東日本大震災により被害を受けた病院等の復旧等に係る費用や機構が独立行政法人地域医療機能推進機構に改組されることに伴う費用に充てたり、機構を通じて国に納付させたりするなど、その有効活用を図るための方策を速やかに検討するよう、厚生労働大臣に対して平成23年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、厚生団及び全社連が保有している資金及び剰余の資産について、今後の病院等の運営に見込まれる経費の具体的な内容を資金の収支に係る計画等により精査するなどして、その適切な規模を把握した上で、次のとおり有効活用を図るための方策を検討する処置を講じていた。
ア 厚生団が保有している資金については、病院等の運営に必要な設備、医療機器等の更新に要する経費や病院の耐震建替に要する経費等に充てることとした。
イ 全社連が保有している剰余の資産については、23年12月に川崎社会保険病院及び健康保険鳴門病院が譲渡対象病院として選定されたことから、両病院に係る特別会計の清算の一部に充てることとした。