会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 | (項)農業・食品産業強化対策費 |
(項)担い手育成・確保対策費 |
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(項)農業経営支援対策費 | ||
部局等 | 農林水産本省、5地方農政局、沖縄総合事務局 | |
補助の根拠 | 予算補助 | |
補助事業者 | 9道県 | |
補助事業者(事業主体) |
2任意団体 | |
間接補助事業者 | 26市町村 | |
間接補助事業者(事業主体) |
市2、町3、法人9、任意団体32 計46事業主体 | |
補助事業 | 農業・食品産業強化対策整備交付金事業等5事業 | |
補助事業の概要 | 食料安定供給の確保、農業の多面的機能の発揮、農業の持続的発展、農村の振興等の施策の推進を図るため、国庫補助金を交付するもの | |
事業費 | 39億3424万余円 | (平成18年度〜22年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 |
14億2342万余円 | |
事業費のうち仕入税額控除していた消費税額 |
2809万余円 |
(平成18年度〜22年度) |
上記に係る国庫補助金相当額 | 1321万円 |
(前掲「仕入税額控除した消費税額に係る交付金を返還していなかったもの」 参照)
(平成24年10月26日付け 農林水産大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、食料の安定供給の確保、農林水産業の発展、農林漁業者の福祉の増進、農山漁村及び中山間地域等の振興、農業の多面にわたる機能の発揮、森林の保続培養及び森林生産力の増進並びに水産資源の適切な保存及び管理を図ることを任務としている。そして、これらを達成するために国庫補助金(交付金等を含む。以下同じ。)を交付することにより各種の補助事業(交付金事業等を含み、また、間接補助事業を含む。以下同じ。)を実施している。
これらの補助事業は、地方公共団体や民間事業者等を事業主体として実施されており、貴省は、補助事業ごとに交付要綱等を制定するなどして、補助事業の目的、対象となる事業費の範囲、交付申請手続、実績報告、額の確定等の国庫補助金の交付についての手続や条件等を定めている。
消費税法(昭和63年法律第108号)等によると、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産及び流通の各段階の取引で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上げ(消費税の課税対象となる資産の譲渡等)に係る消費税額から課税仕入れ(消費税の課税対象となる資産の譲受け等)に係る消費税額を控除(以下「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。
また、確定申告に当たっては、課税期間(注1)
終了後2か月以内に確定申告書を提出することなどとされている。
補助事業の事業主体が補助対象の施設等を取得することなどは課税仕入れに該当するため、上記の仕組みにより確定申告に際して補助事業で取得した施設等に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は当該施設等に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
このため、貴省は、補助事業のそれぞれの交付要綱等において、事業主体における仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金の額の取扱方法を次のとおり定めている。
〔1〕 国庫補助金の交付申請書の提出に当たり、仕入税額控除できる消費税額に係る国庫補助金の額が明らかな場合には、これを減額して申請しなければならない。ただし、申請時においてこれが明らかでない場合は、この限りではない。
〔2〕 国庫補助金の実績報告書の提出に当たり、仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金の額が明らかになった場合には、これを減額して報告しなければならない。
〔3〕 国庫補助金の実績報告書の提出後、消費税の申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金の額が確定した場合には、その金額について速やかに農林水産大臣、地方農政局長等に報告書(以下、この報告書を「仕入税額控除報告書」という。)を提出するとともに、農林水産大臣、地方農政局長等の返還命令を受けてこれを返還しなければならない。
そして、貴省では、補助事業者に対する国庫補助金の交付決定通知書においても、上記〔2〕 及び〔3〕 と同様の内容を交付条件として明記するとともに、事業主体が間接補助事業者である場合には、補助事業者は同様の交付条件を付さなければならないこととしている。
貴省は、毎年、多数の補助事業を実施している。そして、本院は、貴省が所管する補助事業について検査を行って、補助対象事業費に係る消費税の取扱いが適切でなかったため国庫補助金を過大に受給していた事態について検査報告に不当事項として掲記しており、平成18年度から22年度までの検査報告においては計49件(指摘金額計1億1854万余円)を掲記している。
そこで、本院は、合規性等の観点から、補助事業における消費税の取扱いが適切に行われているか、また、適切に行われていない事態が継続して見受けられる原因はどのようなものかなどに着眼して、貴省が所管する補助事業を対象として、交付申請書、実績報告書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、18年度から22年度までの間に48事業主体(5市町、9法人、34任意団体)が実施した農業・食品産業強化対策整備交付金事業等5事業(注2) に係る52件の補助事業(補助対象事業費計39億3424万余円、国庫補助金交付額計14億2342万余円)において、実績報告書の提出後に消費税の確定申告を行い、補助対象事業費に含めていた消費税額を仕入税額控除していたのに、これに係る国庫補助金相当額計1321万余円について、仕入税額控除報告書の提出及びその返還をしていない事態が見受けられた。
農事組合法人下南さとうきび生産組合(沖縄県宮古島市所在)は、平成21年度に、農業・食品産業強化対策整備交付金事業を消費税を含めて事業費4097万余円(交付金交付額2458万余円)で実施し、22年3月に宮古島市に実績報告書を提出して、これにより交付対象事業費の精算を受けていた。
そして、同農事組合法人は、22年5月に消費税の確定申告を行い、本件交付金に係る消費税額195万余円を仕入税額控除していた。
しかし、同農事組合法人は、上記の仕入税額控除した消費税額195万余円に係る交付金の額117万余円について、仕入税額控除報告書の提出及びその返還をしていなかった。
事業主体が実績報告書を提出した後に、消費税の確定申告により補助対象事業費に含めていた消費税額を仕入税額控除しているのに、仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額について、仕入税額控除報告書の提出及びその返還を行っていないなどの事態が、過去の検査報告に不当事項として掲記されているにもかかわらず、引き続き同様の事態が新たに見受けられることは適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる
ア 事業主体において
(ア) 補助事業における消費税の取扱いについての理解が十分でないこと
(イ) 実績報告書の提出から最長では1年余り経過した後に消費税の確定申告を行うこととなるため、確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金の額が確定した場合に仕入税額控除報告書を提出しなければならないことを失念しやすいこと
イ 貴省、補助事業者等において
(ア) 補助事業における消費税の取扱いについての周知が十分でないこと
(イ) 事業主体から仕入税額控除報告書の提出がない場合に、補助対象事業費に含めていた消費税額について事業主体が消費税の確定申告により仕入税額控除を行っていないかなどについての確認が十分行われていないこと
貴省は、今後も引き続き多数の補助事業を実施して、地方公共団体、民間事業者等を事業主体として多額の国庫補助金を交付することが見込まれる。
ついては、貴省において、補助事業における消費税の取扱いが適切なものとなるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 事業主体に対して、消費税の申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金の額が確定した場合には、仕入税額控除報告書の提出及びその返還が必要であることを国庫補助金の額の確定通知書に明記するなどして周知徹底すること
イ 交付要綱等を改正するなどして、補助対象事業費に消費税を含めて国庫補助金の交付を受けた事業主体のうち、仕入税額控除報告書を提出していない全ての事業主体について、国庫補助金の額の確定から1年程度の一定の期間が経過した後に補助対象事業費に含めていた消費税額に係る仕入税額控除の状況を報告させることとするとともに、その報告に消費税の確定申告書等の写しを添付させて、貴省、補助事業者等において、報告内容について十分確認すること