会計名及び科目 | 特許特別会計 (項)事務取扱費 | ||
部局等 | 特許庁 | ||
契約名 | (1) | 業務・システム最適化に係る新事務処理システムの設計・開発業務 | |
(2) | 新事務処理システム設計・開発のプロジェクト管理支援業務 | ||
契約の概要 | (1) | 特許庁運営基盤システムの設計・開発業務 | |
(2) | 特許庁運営基盤システムの全般的な作業進捗の管理等において特許庁を支援する管理支援業務 | ||
契約の相手方 | (1) | 東芝ソリューション株式会社 | |
(2) | アクセンチュア株式会社 | ||
契約 | (1) | 平成18年12月 契約1件(一般競争契約) | |
(2) | 平成18年12月ほか契約2件(一般競争契約1件、随意契約1件) | ||
支払 | (1) | 平成19年4月ほか | |
(2) | 平成19年4月ほか | ||
支払額 | (1) | 2,487,020,238円 | (平成18年度〜21年度) |
(2) | 2,964,073,875円 | (平成18年度〜23年度) | |
計 | 5,451,094,113円 | ||
不当と認める支払額 | (1) | 2,487,020,238円 | (平成18年度〜21年度) |
(2) | 2,964,073,875円 | (平成18年度〜23年度) | |
計 | 5,451,094,113円 |
特許庁は、出願人等の利便性の向上、世界最高レベルの迅速かつ的確な審査の実現、業務の抜本的見直し及びシステム経費の削減等の目的を達成するため、平成16年10月に「特許庁業務・システム最適化計画」を策定し、従来の特許庁システムを更新して、特許庁運営基盤システム(以下「運営基盤システム」という。)を構築することとしている。
特許庁は運営基盤システムの構築に当たり、特許庁を中心として、複数の業者に参画させることとして、全体の設計及び基盤機能の開発を行う設計・開発業務、設計・開発業務を含む各種開発担当業者についての全般的な作業進捗の管理、各担当業者間の調整等において特許庁を支援する管理支援業務等から成る、運営基盤システムの構築に係るプロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)を実施している。
特許庁は、設計・開発業務に係る契約(以下「設計・開発業務契約」という。)を、18年度に一般競争契約(総合評価落札方式)により、契約額9,922,500,000円(22年度に変更契約を締結。変更後の契約額は9,750,871,964円)で東芝ソリューション株式会社(以下「TSOL」という。)と締結している。また、本プロジェクトにおける管理支援業務に係る契約(以下「管理支援業務契約」という。)を、18年度については一般競争契約(総合評価落札方式)により契約額67,200,000円、19年度については随意契約により契約額3,367,228,410円、計3,434,428,410円でいずれもアクセンチュア株式会社(以下「アクセンチュア」という。)と締結している。
そして、特許庁は、上記の各契約に係る代金として、18年度から21年度までの間にTSOLに対して計2,487,020,238円、18年度から23年度までの間にアクセンチュアに対して計2,964,073,875円、合計5,451,094,113円を支払っている。
本プロジェクトについては、進捗の遅れが生じていることから、特許庁は、24年1月に、運営基盤システムの設計・開発を中断する処置を講じている。
そこで、本院は、本プロジェクトについて、有効性の観点から、特許庁は本プロジェクトの目的の達成のために必要な措置を講じていたかなどに着眼して、前記の各契約を対象として、特許庁及び契約相手方2者において契約関係資料等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
設計・開発業務契約において、特許庁は、運営基盤システムを設計・開発する期間に85か月を要するとし、運営基盤システムの稼働時期を26年1月としていたが、工程に大幅な遅延が生じていた。すなわち、特許庁は、本プロジェクトを中断した24年1月(設計・開発業務の作業開始から61か月経過)時点には、契約上は全ての基本設計を終えて詳細設計を概成しているとしていたが、実際の作業は基本設計(契約上は、設計・開発業務の作業開始から34か月後までの間に完成)が完了しておらず、2年以上の遅延が生じていた。
また、設計・開発業務の実施に当たり、TSOLは、21年4月頃から、業務に必要な機能同士の関係を独立させるため、システム上に生成される全ての業務画面ごとにプログラムを作成する方針とした上で、共通する機能については設計書を共通化し、これを用いてプログラムを作成することにしていた。そして、上記の基本設計の一部の遅延等から、設計書の共通化も実現しなかったため、システムの設計・開発に膨大な工数を要することとなっていた。
しかし、特許庁、TSOL及びアクセンチュアは、これに対する実効ある改善策を執ることができておらず、上記の設計・開発の遅延が早期に解消する可能性は低いと認められ、運営基盤システムが完成して稼働する見通しが立っていない状況となっている。
このため、運営基盤システムの運用により26年1月に実現することとしていた、出願人等の利便性の向上、迅速かつ的確な審査の実現、業務の抜本的見直し及びシステム経費の削減等のプロジェクトの目的を適期に達成することは極めて困難となっている。
したがって、本プロジェクトは、所期の目的を達成することが極めて困難となっていることから、設計・開発業務契約に係るTSOLへの支払金額2,487,020,238円及び管理支援業務契約に係るアクセンチュアへの支払金額2,964,073,875円、計5,451,094,113円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、特許庁並びに契約相手方であるTSOL及びアクセンチュアの3者が本プロジェクトを適切に実施できなかったことによるが、特許庁において、本プロジェクトの開始以降の各段階で運営基盤システムを適期に完成させて稼働させるために発注者として必要な本プロジェクトの管理を十分に行っていなかったことなどによると認められる。
本件事態等の検査状況について、「第4章 第3節 特定検査対象に関する検査状況」に「特許庁運営基盤システムの構築について
」を掲記した。