国は、平成22年までに、1日当たり利用者数が5,000人以上の駅全てについてエレベーター等による高齢者、障害者等の円滑な通行に適する経路を確保するなどの移動等円滑化を実施する目標を定めており、鉄道事業者等が旅客施設等を新設等するときには、所定の省令(以下「円滑化基準」という。)に適合させなければならないこととしている。また、国土交通省は、旅客施設の標準的な整備内容等をガイドラインにより示している。そして、東京地下鉄、北海道旅客鉄道、四国旅客鉄道及び九州旅客鉄道各株式会社(以下、これらを合わせて「4会社」という。)は、駅の移動等円滑化のための設備を整備している。しかし、これらの設備が円滑化基準に適合せず又はガイドラインに沿っていないなど整備の効果が十分に発現していないなどの事態が見受けられた。
したがって、4会社において、〔1〕 移動等円滑化設備を整備する際に、円滑化基準及びガイドラインについて会社内に周知するとともに、円滑化基準に適合し又はガイドラインに沿っていることを確認するなどの手続の整備を図ること、〔2〕 整備した移動等円滑化設備について、その効果が十分に発現するよう、当該設備周辺の整備を適切に実施したり、当該設備を適切に管理したりするために、点検等の充実を図ること、〔3〕 高齢者、障害者等の安全性が確保されていない状況になっている箇所を把握して、優先度の高い箇所から移動等円滑化設備を整備していくなどの安全性確保のための方策について検討すること、〔4〕 他の企業等が管理する移動等円滑化設備により駅前広場等への経路を確保しているなどの場合において、当該設備を円滑化基準に適合したものとするなどして、駅の移動等円滑化設備の整備の効果を十分に発現させるように、他の企業等に適切に働きかけを行うなどすること、〔5〕 駅の移動等円滑化を計画的に推進するよう、駅の移動等円滑化を計画的に推進するための方針、計画等の策定について検討するよう、4会社の代表取締役社長等に対して23年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求し及び意見を表示した。
本院は、4会社の本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、4会社は、本院指摘の趣旨に沿い、24年7月までに次のような処置を講じていた。
ア 関係部署に対して文書を発したり、関係各部内の会議等を開催したりするなどして、円滑化基準及びガイドラインについて周知を図った。また、チェックリストを作成するなどして、計画、設計段階等から円滑化基準に適合し又はガイドラインに沿っていることなどを確認することとした。
イ 関係部署に対して文書を発するなどして、整備した移動等円滑化設備及び周辺の設備について、定期的な点検や報告を行わせるなどの点検等の充実を図った。
ウ 駅の移動等円滑化設備の点検調査を実施するなどして、高齢者、障害者等の安全性が確保されていない状況を把握するとともに、優先度の高い箇所から整備を行うための整備方第針を決定するなどして、安全性が確保できるような方策を検討した。
エ 他の企業等が管理する移動等円滑化設備により駅前広場等への経路を確保しているなどの場合において、駅の移動等円滑化設備の整備の効果を十分に発現させるように、当該設備を管理する他の企業等と協議を開始した。
オ 事業計画に駅の移動等円滑化設備の整備を推進する事項を盛り込んだり、計画の策定をすることとしたりした。