独立行政法人造幣局(以下「造幣局」という。)は、業務を確実に実施するための財産的基礎として国から金属工芸品の材料である貴金属を承継し、これを金属工芸品として販売したり、在庫量の見直しのために売却したりしており、その売却等収入額の大部分を留保している。また、国から承継した建物等について道路整備事業のための移転補償による収入を得ている。しかし、上記の貴金属に係る留保額のうち金属工芸品の製造に係る業務を確実に実施する上で必要となる量(以下「適正保有量」という。)に比べて不足している貴金属を補充するための額(以下「必要購入資金額」という。)を上回る額と再建築しないこととしている建物の移転補償に係る額とをそれぞれ国庫に納付していない事態が見受けられた。
したがって、造幣局において、承継した貴金属の売却等収入額から必要購入資金額等を控除した額及び再建築しないこととしている建物の移転補償に係る額のそれぞれから負担した費用を控除した額を不要財産として国庫に納付するとともに、必要購入資金額等の見直しを行う体制を整備するよう、独立行政法人造幣局理事長に対して平成23年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、造幣局本局において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、造幣局は、本院指摘の趣旨に沿い、承継した貴金属の売却等収入額33億8070万余円から23年7月に国庫に納付した額8億6850万余円、必要購入資金額等12億6706万余円を控除した額12億4514万余円と再建築しないこととしている建物の移転補償に係る額1035万余円との合計12億5549万余円から造幣局が負担した費用122万余円を控除した額12億5426万余円を同年12月に国庫に納付するとともに、24年3月に、理事会が今後継続して適正保有量の検証等を行っていくこととして必要購入資金額等の見直しを行う体制を整備する処置を講じていた。