科目 | (石油天然ガス勘定) 現金及び預金 | |
部局等 | 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構本部 | |
不要財産の概要 | 独立行政法人が保有する財産のうち、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる財産 | |
平成24年3月末現在の現金及び預金の額 | 809億4014万余円 | |
上記のうち不要財産として国庫納付すべき額 | 1462万円 |
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(平成14年法律第94号。以下「機構法」という。)に基づき、石油等及び金属鉱物の探鉱等に必要な資金の供給、石油等及び金属鉱物資源の開発を促進するために必要な業務等を行っている。そして、機構は、経理を石油天然ガス勘定等5つの勘定に分けて整理している。
独立行政法人の利益及び損失の処理については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第44条第1項において、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならないこととされている。そして、同条第2項において、毎年度、損益計算において損失を生じたときは、同条第1項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならないこととされている。
機構は、機構法第13条の規定に基づき、中期目標期間の最終年度において上記により積立金の整理を行った後、当該積立金の額から次の中期目標期間の業務の財源に充てるために経済産業大臣の承認を受けて繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫納付しなければならないこととされている。
独立行政法人は、平成22年の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、同法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。上記の主務省令で定める重要な財産は、「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令」(平成16年経済産業省令第9号。以下「財会省令」という。)第1条において、保有する財産であって、通則法第46条の2第1項又は第2項の認可に係る申請の日における帳簿価額(現金及び預金にあっては、申請の日におけるその額)が50万円以上のものその他経済産業大臣が定める財産とされている。
そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことなどを掲げている。
本院は、独立行政法人における不要財産の認定等の状況について、23年12月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条に基づく検査要請を受け、その検査結果を24年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について 」)。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、有効性等の観点から、機構が保有する資産のうち、不要財産となっているものがないかなどに着眼して、機構本部において、財務書類等の関係書類、不要財産の認定等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、石油天然ガス勘定において、機構設立時から23年度までの間に、政府からの出資に係る資産を譲渡しており、譲渡時の帳簿価額が50万円以上の資産に係る譲渡収入については、国庫に納付又は国庫に納付する予定としていた。
一方、機構は、譲渡時の帳簿価額が50万円未満の資産に係る譲渡収入額計674万余円を得ていたが、当該収入額に相当する現金及び預金のうち、機構法に基づき中期目標期間終了後に積立金として国庫納付した固定資産売却益相当額36万余円を除いた現金及び預金637万余円については、財会省令第1条に規定する50万円以上の重要な財産に該当するにもかかわらず、その使途等を検討することなく、機構内部に預金等として留保していた。
機構は、資産の譲渡に係る会計処理に関し、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)に従い、17年度から19年度までの各年度の損益計算書に、車両運搬具の譲渡に係る固定資産売却損計824万余円を計上していた。
上記の固定資産売却損は、キャッシュ・フローを伴わない費用として計上されるため、各年度の損益計算において、これと同額で現金の裏付けのある収益が相殺され、この収益に相当する額は、利益処分において積立金として整理されないこととなる。その結果、積立金として整理されなかった資金824万余円は、機構法に基づく中期目標期間終了後の国庫納付がされず、機構内部に預金等として留保されていた。
しかし、これら機構内部に留保されている資金1462万余円については、第2期中期目標期間(20年度から24年度まで)に係る中期計画において、今後の使用にる計画が定められておらず、予算にも組み込まれていないことなどから、機構において、当該資金を業務の財源に充てることは想定されていないと認められた。
したがって、このように将来にわたり機構の業務を確実に実施するために必要な財産とは認められない資金を保有していることは、前記通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとっていないものとなっていて適切とは認められず、通則法に基づき国庫納付する必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、機構において、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって資産の見直しを行い、将来にわたり機構の業務を確実に実施する上で必要がないと認められる資金を不要財産と認定することについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、24年7月に、経済産業大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、機構内部に留保されている資金1462万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。