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  • 平成24年10月

グリーン家電普及促進対策費補助金等の効果等について


3 検査の状況

(1) エコポイントの申請状況等

 会計検査院において、エコポイントの24年2月6日時点の申請状況等を集計したところ、表3 のとおり、エアコン737万台、冷蔵庫525万台、地デジ対応テレビ3320万台、計4584万台であり、この約72%を地デジ対応テレビが占めていた。

表3  エコポイントの申請状況

(単位:台)

分類
家電3品目
平成21年5月15日〜22年12月31日購入分 平成23年1月1日〜23年3月31日購入分(リサイクル券の添付あり)
リサイクル券の添付あり リサイクル券の添付なし

小計

エアコン 3,286,488 4,022,139 7,308,627 70,953 7,379,580
(割合) (12.2%) (25.5%) (17.1%) ( 2.2%) (16.1%)
冷房能力          
 3.6kW以上 911,061 1,094,697 2,005,758 27,981 2,033,739
 2.8kW、2.5kW 1,345,486 1,354,022 2,699,508 32,156 2,731,664
 2.2kW以下 1,029,941 1,573,420 2,603,361 10,816 2,614,177
冷蔵庫 3,623,858 1,462,991 5,086,849 172,328 5,258,177
(割合) (13.5%) ( 9.3%) (11.9%) ( 5.3%) (11.5%)
定格内容積          
 501L以上 887,918 211,482 1,099,400 59,363 1,158,763
 401〜500L 1,477,907 379,911 1,857,818 108,073 1,965,891
 251〜400L 852,721 294,308 1,147,029 3,311 1,150,340
 250L以下 405,312 577,290 982,602 581 983,183
地デジ対応テレビ 19,918,986 10,304,670 30,223,656 2,978,721 33,202,377
(割合) (74.2%) (65.3%) (70.9%) (92.5%) (72.4%)
地デジ対応テレビサイズ          
 46V以上 1,268,001 684,825 1,952,826 180,241 2,133,067
 42V、40V 4,301,733 1,804,992 6,106,725 643,570 6,750,295
 37V 1,807,927 648,065 2,455,992 171,406 2,627,398
 32V、26V 8,873,413 4,330,106 13,203,519 1,381,247 14,584,766
 26V未満 3,667,912 2,836,682 6,504,594 602,257 7,106,851
26,829,332 15,789,800 42,619,132 3,221,002 45,840,134
(割合) (100%) (100%) (100%) (100%) (100%)
(注)
 割合については、小数点第2位を四捨五入しているため、それぞれを合計しても100%にならない。

 そして、付与されたポイント数は、表4 のとおり、エアコン622億点、冷蔵庫560億点、地デジ対応テレビ5316億点、計6499億点であり、1ポイント1円換算であることから、エコポイントに係る経費に合計で6499億円が費やされることになる。そして、21年5月から23年3月までのエコポイント事業の期間に付与されたポイント数のうち約81%を地デジ対応テレビが占めていて、23年1月以降についてみると付与されたポイント数のうち約95%を地デジ対応テレビが占めていた。これは、同年7月の地上デジタル放送への完全移行に備える駆け込み需要がエコポイント事業の終了に合わせて前倒しされたことによるものと思料される。

表4  付与されたエコポイント数の内訳

(単位:千点)

分類
家電3品目
平成21年5月15日〜22年12月31日購入分 平成23年1月1日〜23年3月31日購入分(リサイクル券の添付あり)
リサイクル券の添付あり リサイクル券の添付なし 小計
エアコン 購入分 23,585,524 28,480,163 52,065,687 300,977 52,366,664
リサイクル分 9,859,464 - 9,859,464 - 9,859,464
(割合)
33,444,988
(7.6%)
28,480,163
(15.5%)
61,925,151
(9.9%)
300,977
(1.3%)
62,226,128
(9.6%)
冷蔵庫 購入分 28,196,376 8,932,670 37,129,046 848,275 37,977,321
リサイクル分 18,119,290 - 18,119,290 - 18,119,290
(割合)
46,315,666
(10.5%)
8,932,670
(4.9%)
55,248,336
(8.8%)
848,275
(3.6%)
56,096,611
(8.6%)

地デジ対応テレビ

購入分 303,285,051 146,408,877 449,693,928 22,211,125 471,905,053
リサイクル分 59,756,958 - 59,756,958 - 59,756,958
(割合)
363,042,009
(82.0%)
146,408,877
(79.6%)
509,450,886
(81.3%)
22,211,125
(95.1%)
531,662,011
(81.8%)
購入分 355,066,951 183,821,710 538,888,661 23,360,377 562,249,038

リサイクル分

87,735,712 - 87,735,712 - 87,735,712
(割合)
442,802,663
(100%)
183,821,710
(100%)
626,624,373
(100%)
23,360,377
(100%)
649,984,750
(100%)
(注)
 割合については、小数点第2位を四捨五入しているため、それぞれを合計しても100%にならない。

 また、リサイクル券の添付があった場合は買換え、リサイクル券の添付がなかった場合は新規購入として、買換えと新規購入の比率を示すと、表5 のとおりとなる。

表5  買換えと新規購入の状況

(単位:台、%)

分類
家電3品目
買換え 新規購入
台数 比率 台数 比率
エアコン
冷房能力
 3.6kW以上
 2.8kW、2.5kW
 2.2kW以下
3,357,441

939,042
1,377,642
1,040,757
45.5
【45.7】

46.2
50.4
39.8
4,022,139

1,094,697
1,354,022
1,573,420
54.5

53.8
49.6
60.2
冷蔵庫
定格内容積
 501L以上
 401〜500L
 251〜400L
 250L以下
3,795,186

947,281
1,585,980
856,032
405,893
72.2
【85.1】

81.7
80.7
74.4
41.3
1,462,991

211,482
379,911
294,308
577,290
27.8

18.3
19.3
25.6
58.7
地デジ対応テレビ
地デジ対応テレビサイズ
 46V以上
 42V、40V
 37V
 32V、26V
 26V未満
22,897,707

1,448,242
4,945,303
1,979,333
10,254,660
4,270,169
69.0
【100】

67.9
73.3
75.3
70.3
60.1

10,304,670

684,825
1,804,992
648,065
4,330,106
2,836,682
31.0

32.1
26.7
24.7
29.7
39.9
30,050,334 65.6 15,789,800 34.4
注(1)  比率は、小数点第2位を四捨五入している。
注(2)  買換え比率の【 】書きは、環境省がエコポイント事業の効果について、当初の算出過程において仮定していた買換え率である。

 環境省は、エコポイント事業の効果について、事業開始当初に二酸化炭素排出量の削減量を年間約400万tと算出する際に、リサイクル率(買換え率)をエアコン45.7%、冷蔵庫85.1%、地デジ対応テレビ100%とそれぞれ仮定していた。
 しかし、実際のリサイクル率は、表5 のとおりであり、冷蔵庫及び地デジ対応テレビについては、当初、リサイクル率を過大に見込んでいたことになる。特に、地デジ対応テレビについては、リサイクル率を100%と見込んでいたのに、実際は買換えが約69%、新規購入が約31%であった。

(2) エコポイントが付与された家電3品目

 会計検査院において、エコポイント事業でエコポイントが付与された家電3品目の製造メーカー等について調査したところ、エアコンは11社の2,173種類、冷蔵庫は19社の840種類、地デジ対応テレビは57社の1,364種類であった。
 これらの家電3品目について、表2 の区分ごとに、消費電力量が最も低い型式と最も高い型式の消費電力量を示し、さらに、各型式ごとの申請件数による消費電力量の加重平均を求めたところ、図2 のとおり、エアコンについては冷房能力が、地デジ対応テレビについてはサイズがそれぞれ大きくなるにつれて、消費電力量が大きくなっていた。一方、冷蔵庫については、定格内容積が大きくなっても必ずしも消費電力量が大きくなっておらず、消費電力量の加重平均は、定格内容積が251Lから400Lの場合が437kWhであるのに対して、定格内容積が501L以上の場合はその0.7倍の339kWhであった。
 しかし、付与されるポイント数は、前記のとおり、エアコン及び冷蔵庫はそれぞれ購入価格の5%相当程度、地デジ対応テレビは10%相当程度として、表2 のとおり定められていたことから、エアコン及び地デジ対応テレビについては、消費電力量が大きくなるにつれて大きなポイント数が付与されていた。
 また、「平成21年度エネルギー消費状況調査(民生部門エネルギー消費実態調査)(注4) 」(経済産業省資源エネルギー庁委託調査)によっても、冷蔵庫及びテレビの「1年以内に購入した機器の大型化の有無」に関する設問において、テレビは84.7%、冷蔵庫は69.0%が大型化したとされていた。また、エコポイント制度をきっかけにテレビを買換えたとする回答者のうち、前年からのエネルギー消費量が増加したと回答した者の割合が41%であったとされていた。
 これらのことから、消費者は、大きなポイント数が付与されることになっていた大型製品を購入するように誘引されていたと考えられ、エコポイント事業は、結果的に消費電力量の大きい製品の購入を促していたと思料される。

 「平成21年度エネルギー消費状況調査(民生部門エネルギー消費実態調査)」
 資源エネルギー庁の委託により、民間研究機関が実施した調査結果である。1年以内に購入した機器の大型化の有無については、テレビは1,645件、冷蔵庫は612件に対する割合である。また、エネルギー消費量は、エコポイント制度をきっかけにテレビを買い換えた122件の中からサンプル37件を抽出し、「電灯その他需要」の昨年からの増減を調べたところ、うち41%が増加する結果となったとされている。
 なお、「電灯その他需要」とは、冷暖房機器(エアコン、こたつ、電気カーペット等)、給湯(電気給湯)及び厨房(IH)の季節需要を除いた需要を指し、テレビ、エアコン、パソコン、洗濯機等のコンセント需要がそれに当たるとされている。

図2  家電3品目のエコポイントの区分ごとの消費電力量

図2家電3品目のエコポイントの区分ごとの消費電力量

グリーン家電普及促進対策費補助金等の効果等についての図1

グリーン家電普及促進対策費補助金等の効果等についての図2

(注)
縦線の上端は型式ごとの消費電力量の最大値、下端は最小値、▲印は申請件数による加重平均である。

(3) エコポイント事業の効果等

 3省は、前記のとおり、エコポイント事業開始当初の21年6月に、経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会において、エコポイント事業の効果として、〔1〕 二酸化炭素排出量の削減量は年間約400万t、〔2〕 経済効果は約4兆円の生産誘発効果、約12万人の雇用創出、〔3〕 地上デジタル放送化対策としての地デジ対応テレビの普及促進等を掲げていた。特に、総務省は、23年7月に地上デジタル放送への完全移行を決定していたことから、エコポイント事業を実施する以前から「デジタル放送推進のための行動計画(第7次)」(平成18年12月1日「地上デジタル推進全国会議」決定)において、地上デジタルテレビ放送受信機器(注5) の普及の目標を23年4月で5000万世帯、23年7月で1億台と設定していた。
 そして、3省は、22年4月に、国家戦略担当・内閣府特命担当大臣の下に設置された副大臣・政務官級で構成する「経済対策検討チーム」の会議において、エコポイント事業に関して、対象商品の売上げの増加を把握することを目的として「対象商品の販売状況」を、事業の効果を客観的に把握することを目的として「二酸化炭素排出削減効果」をそれぞれ評価指標として示している。この中で、環境省は、21年度中のエコポイント事業による二酸化炭素排出削減効果は年間約69万tとしていた。
 そして、3省は、エコポイント事業の申請受付終了後の23年6月に、「家電エコポイント制度の政策効果等について」(以下「政策効果」という。)を公表し、〔1〕 地球温暖化対策の推進として、統一省エネラベル4つ星相当以上の省エネ家電製品の全出荷台数に占める割合の増加、エコポイント事業による省エネ家電製品の普及に伴う二酸化炭素削減効果を年間273万t、〔2〕 経済活性化として、家電3品目について約2.6兆円の販売押し上げ、約5兆円の経済効果の呼び水、延べ年約32万人の雇用の維持・創出、〔3〕 地デジ対応テレビの普及として、地デジ対応テレビの国内出荷台数の累計が制度開始当初に比べて約2.2倍(21年5月の3237万台から23年3月の7228万台)になり、地上デジタルテレビ放送受信機器の全体の出荷台数も制度開始当初に比べて約2.1倍(21年5月の5222万台から23年3月の1億1131万台)になったとしている。

 地上デジタルテレビ放送受信機器  地上アナログ放送の視聴環境を維持する観点から、「家庭内で地上デジタルテレビ放送をアナログ放送以上の画質や同等の機能で視聴するために用いられる機器」として、〔1〕 地上デジタルテレビ放送受信機能を持つテレビ受信機器、〔2〕 アナログテレビ受信機器に接続する地上デジタルチューナー、〔3〕 アナログテレビ受信機器等に接続する地上デジタルテレビ放送受信機能を持つ録画機、〔4〕 ケーブルテレビ経由で地上デジタル放送を視聴できるセットトップボックス、〔5〕 地上デジタルテレビ放送受信機能を持つパソコンなどをいう。

ア 地球温暖化対策の推進

(ア) 二酸化炭素削減効果

 3省は、エコポイント事業開始当初、二酸化炭素排出量の削減量を年間約400万tとしていたが、この400万tの算出方法は公表されていなかった。
 会計検査院は、この算出方法について環境省に説明を求めたところ、算出するに当たっての前提条件として、地デジ対応テレビのリサイクル率を100%、買換え前の家電3品目の消費電力量を民間調査機関に委託した家電3品目の使用期間に関する調査結果に基づいて7年製の製品の消費電力量とするなどしたとのことであった。そして、エコポイント事業により家電1台当たりの消費電力の削減率は50%〜60%に達するなどとして、表6 のとおり、エアコンで131万t、冷蔵庫で130万t、地デジ対応テレビで104万t、計365万tの二酸化炭素排出量が削減できると算出し、これを100万t単位になるように四捨五入して400万tとしたとのことであった。
 また、環境省によれば、それぞれの数値の具体的な根拠については、根拠となる資料を散逸したため明らかにできないとのことである。

表6  二酸化炭素排出量の削減量の算出(当初)
家電3品目 対象台数 リサイクル率(買換え率) 買換え台数 買換え前消費電力量 買換え後消費電力量 消費電力削減量 削減効果
  (千台) (%) (台) (kWh/年) (kWh/年) (kWh/年) (t-CO2 /年)
エアコン 5,740 45.7 2,623,180 1,500 600 900 1,310,278
冷蔵庫 4,820 85.1 4,101,820 950 380 570 1,297,611
地デジ対応テレビ 15,000 100.0 15,000,000 250 125 125 1,040,625
合計 25,560 21,725,000 3,648,514
≒400万t
注(1)  対象台数は、業界団体からのヒアリングによる。
注(2)  買換え前消費電力量は、エアコンは平成7年製の2.8kWの製品、冷蔵庫は7年製の401〜450Lの製品、地デジ対応テレビは7年製の32型の製品を想定した。
注(3)  排出係数(t-CO2 /kWh)は、0.000555である。

 環境省は、22年4月に21年度中のエコポイント事業における「二酸化炭素排出削減効果は、約69万t」と算出して公表したが、この69万tについても、前記の400万tと同様に算出方法は公表されていなかった。会計検査院に対する同省の説明によると、同省は、表7 のとおり、これを算出するに当たり、新規購入率を業界団体に対するヒアリングにより把握した率を用いるなどしたとのことであった。

表7  平成21年度の二酸化炭素排出削減効果
<買換え>
家電3品目 対象台数

リサイクル率(買換え率)

買換え台数 買換え前消費電力量 買換え後消費電力量 消費電力削減量 削減効果(A)
  (千台) (%) (台) (kWh/年) (kWh/年) (kWh/年) (t-CO2 /年)
エアコン 1,884 46.6 877,944 1,491 1,145 346 168,592
冷蔵庫 2,976 75.6 2,249,856 647 346 301 375,850
地デジ対応テレビ 13,130 71.3 9,361,690 140 123 17 88,328
合計 17,990 12,489,490 632,769

<新規購入>
家電3品目 対象台数 新規購入率 新規購入台数 平均的製品消費電力量 対象製品消費電力量 消費電力削減量

削減効果(B)

  (千台) (%) (台) (kWh/年) (kWh/年) (kWh/年) (t-CO2 /年)
エアコン 1,884 53.4 1,006,056 1,200 1,145 55 30,710
冷蔵庫 2,976 24.4 726,144 380 346 34 13,702
地デジ対応テレビ 13,130 28.7 3,768,310 129 123 6 12,548
合計 17,990 5,500,510 56,961
注(1)  対象台数は、民間調査機関からのヒアリングによる。
注(2)  新規購入率は、家電リサイクル関係の業界団体からのヒアリングによる。
注(3)  買換え前消費電力量は、エアコン及び地デジ対応テレビについては平成9年製の製品のサイズ区分ごとの加重平均、冷蔵庫については10年製の製品のサイズ区分ごとの加重平均である。
注(4)  買換え後消費電力量は、省エネ性能カタログ(平成21年冬版)による対象製品の消費電力量をサイズ区分ごとの出荷台数比率で加重平均したものである。
注(5)  平均的製品消費電力量は、省エネ性能カタログ(平成21年冬版)による全製品の消費電力量をサイズ区分ごとの出荷台数比率で加重平均したものである。
注(6)  排出係数(t-CO2 /kWh)は、0.000555である。

<合計>
家電3品目

 削減効果(A)+(B)

エアコン (t-CO2 /年)
199,301
冷蔵庫 389,552
地デジ対応テレビ 100,876
合計 689,729
≒69万t

 そして、エコポイント事業の申請受付終了後、3省は、23年6月の政策効果において、地球温暖化対策の推進として、統一省エネラベル4つ星相当以上の省エネ家電製品の全出荷台数に占める割合が増加し、エコポイント事業による省エネ家電製品の普及に伴う二酸化炭素削減効果を年間273万tと算出した。
 しかし、この273万tについても、前記の400万t及び69万tと同様に算出方法は公表されていなかった。会計検査院に対する環境省の説明によると、同省は、表8 のとおり、これを算出するに当たり、エコポイント対象製品の台数を製品の出荷台数とするなどした上で、二酸化炭素排出量の削減効果の算出方法については、以下のとおりとしたと説明している。

〔1〕 買換え分については、出荷台数にリサイクル券が添付されていた割合を乗じて買換えによる数量を算出し、エコポイント事業により、継続して使用されるはずの従来型機器が全てエコポイント対象製品に買換えられたと仮定した上で、従来型機器の平均的な使用年数から消費電力量を算出することとして、エコポイント対象製品と従来型機器との消費電力量の差分を削減効果として算出した。

〔2〕 新規購入分については、出荷台数から上記〔1〕 の買換えによる数量を減じて新規購入による数量を算出し、エコポイント事業により、標準的な機器が購入されるはずだった代わりにエコポイント対象製品が購入されたと仮定した上で、エコポイント対象製品と当該標準機器との消費電力量の差分を削減効果として算出した。

 そして、環境省は、これらにより算出した結果を足し合わせて削減効果としていた。

表8  政策効果における二酸化炭素削減効果の算出方法

<平成21年度(21年5月〜22年3月)-買換え>

家電3品目 対象台数 リサイクル率(買換え率) 買換え台数 買換え前消費電力量 買換え後消費電力量 消費電力削減量 削減効果(A)

エアコン
(千台)
2,668
(%)
47.6
(台)
1,269,968
(kWh/年)
1,396
(kWh/年)
1,138
(kWh/年)
258
(t-CO2 /年)
183,813
冷蔵庫 2,838 70.6 2,003,628 822 343 479 538,413
地デジ対応テレビ 14,347 65.5 9,397,285 151 122 29 152,884
合計 19,853 12,670,881 875,110
注(1)  対象台数は、対象製品出荷台数の実績である(以下同じ。)。
注(2)  買換え率は、エコポイント事業のリサイクル率(平成23年4月末時点)の実績である。
注(3)  買換え前消費電力量は、「平成21年度使用済家電4品目の経過年数等調査」により、エアコン及び冷蔵庫は平成7年度(14年前)の製品、地デジ対応テレビは10年度(11年前)の製品をそれぞれ想定するなどした上で、その消費電力量をサイズ区分ごとの出荷台数比率で加重平均したものである。
注(4)  買換え後消費電力量は、省エネ性能カタログ(平成21年冬版)による対象製品の消費電力量をサイズ区分ごとの出荷台数比率で加重平均したものである。
注(5)  排出係数(t-CO2 /kWh)は、0.000561である(以下同じ。)。

<21年度(21年5月〜22年3月)-新規購入>
家電3品目 対象台数 新規購入率 新規購入台数 平均的製品消費電力量 対象製品消費電力量 消費電力削減量 削減効果(B)

エアコン
(千台)
2,668
(%)
52.4
(台)
1,398,032
(kWh/年)
1,193
(kWh/年)
1,138
(kWh/年)
55
(t-CO2 /年)
43,136
冷蔵庫 2,838 29.4 834,372 377 343 34 15,915
地デジ対応テレビ 14,347 34.5 4,949,715 127 122 5 13,884
合計 19,853 7,182,119 72,935
(注)
 平均的製品消費電力量は、省エネ性能カタログ(平成21年冬版)による全製品の消費電力量をサイズ区分ごとの出荷台数比率で加重平均したものである。


<22年度(22年4月〜22年12月)-買換え>
家電3品目 対象台数 リサイクル率(買換え率) 買換え台数 買換え前消費電力量 買換え後消費電力量 消費電力削減量 削減効果(C)

エアコン
(千台)
6,507
(%)
44.8
(台)
2,915,136
(kWh/年)
1,373
(kWh/年)
1,045
(kWh/年)
328
(t-CO2 /年)
536,408
冷蔵庫 3,529 73.1 2,579,699 783 318 465 672,953
地デジ対応テレビ 20,185 68.3 13,786,355 143 96 47 363,505
合計 30,221 19,281,190 1,572,866
(注)
 考え方は、平成21年度と同様である。


<22年度(22年4月〜22年12月)-新規購入>

家電3品目 対象台数 新規購入率 新規購入台数 平均的製品消費電力量 対象製品消費電力量 消費電力削減量 削減効果(D)

エアコン
(千台)
6,507
(%)
55.2
(台)
3,591,864
(kWh/年)
1,048
(kWh/年)
1,045
(kWh/年)
3
(t-CO2 /年)
6,045
冷蔵庫 3,529 26.9 949,301 321 318 3 1,598
地デジ対応テレビ 20,185 31.7 6,398,645 98 96 2 7,179
合計 30,221 10,939,810 14,822
(注)
 考え方は、平成21年度と同様である。


<22年度(23年1月〜23年3月-買換え>
家電3品目 対象台数 リサイクル率(買換え率) 買換え台数 買換え前消費電力量 買換え後消費電力量 消費電力削減量 削減効果(E)

エアコン
(千台)
233
(%)
45.6
(台)
106,248
(kWh/年)
1,373
(kWh/年)
973
(kWh/年)
400
(t-CO2 /年)
23,842
冷蔵庫 272 72.0 195,840 783 270 513 56,361
地デジ対応テレビ 5,054 67.1 3,391,234 143 83 60 114,149
合計 5,559 3,693,322 194,352
(注)
 考え方は、平成21年度と同様である。


<二酸化炭素削減効果の合計(21年5月〜23年3月)>
(単位:t-CO2 /年)

家電3品目 買換え 新規購入 合計 備考
削減効果(A) 削減効果(C) 削減効果(E) 削減効果(B) 削減効果(D)
エアコン 183,813 536,408 23,842 744,063 43,136 6,045 49,181 793,244 (79万t)
冷蔵庫 538,413 672,953 56,361 1,267,727 15,915 1,598 17,512 1,285,240 (129万t)

地デジ対応テレビ

152,884 363,505 114,149 630,538 13,884 7,179 21,063 651,601 (65万t)
合計 875,110 1,572,866 194,352 2,642,329 72,935 14,822 87,757 2,730,086 (273万t)
(注)
 小数点以下を表示していないため、合計は合致しない。

 上記のように、環境省は、エコポイント事業を実施した21年5月から23年3月までの間に、エコポイント対象製品が普及したことにより、1年当たりで273万tの二酸化炭素削減効果があったとしており、この考え方等を図に表すと、図3 及び図4 のとおりとなる。

図3 環境省の二酸化炭素削減効果の考え方(エアコンの例)

図3環境省の二酸化炭素削減効果の考え方(エアコンの例)

図4  環境省による二酸化炭素削減効果のイメージ

図4環境省による二酸化炭素削減効果のイメージ

  環境省は、この二酸化炭素削減効果の考え方については、二酸化炭素排出量の削減効果を測る際に世界標準として用いられているGHGプロトコル(注6) の中で用いられている削減効果の考え方と整合しているとしている。

 GHGプロトコル  温室効果ガス(GHG)の算定と報告の世界的な基準の一つで、米国の世界資源研究所と世界環境経済人協議会が発行の主体となっている。

 GHGプロトコルの中で用いられている削減効果の考え方とは、「ベースライン&クレジット」方式というもので、この方式においては、プロジェクトがなかった場合に起きていたであろう状況を最もよく表す仮説的な基準となる排出量をベースラインの排出量とし、プロジェクトを行うことによってこのベースラインからどれだけ削減できたかをもって、プロジェクトによる削減効果とするとされている。
 そして、環境省は、会計検査院に対して、ベースラインの排出量は、新規購入の場合は、当該事業が行われなければ使用されたと考えられる標準的な機器を設定し、買換えの場合は、当該事業が行われなければ従来型機器が引き続き使用されていたと考えられる場合には当該従来型機器を設定し、そうでないと考えられる場合には標準的な機器を設定して算出することになると説明している。
 これを踏まえ、環境省は、買換えの場合において、従来型機器として、エアコン及び冷蔵庫は14年前の製品、地デジ対応テレビは11年前の製品をそれぞれ設定して、エコポイント事業が行われなければこれらの機器が引き続き使用されていたとしてベースラインの排出量を算出していた。
 しかし、GHGプロトコルの考え方によれば、買換えの場合にベースラインとする排出量を算出する際に、現在使用している製品がそのまま使用されたと考えることが常に認められているわけではなく、その場合には、プロジェクトがなければ現在使用している製品が引き続き使い続けられたであろうことを説明できなければならないことになっている。すなわち、同省は、従来型機器として設定した買換え前の家電3品目が、エコポイント事業が行われなければ引き続き使用されたことを説明しなければならないこととなる。
 そして、同省は、「平成21年度使用済家電4品目の経過年数等調査」(経済産業省委託調査)により明らかになった各機器の平均的な使用年数分を遡った年度に製造された家電3品目を前記の従来型機器として設定していた。しかし、このような機器は、二酸化炭素削減効果の算出段階において既に平均的な使用年数が経過していて、エコポイント事業が行われなくとも買換えが想定されるものであり、当該事業が行われなければ引き続き使い続けられたとの説明はできないと思料される。
 そこで、会計検査院は、エコポイント事業に係る二酸化炭素削減効果を求めるに当たっては、買換え分と新規購入分とを同じ考え方に基づいて算出することが妥当と考えられるため、それぞれに係る数値が明らかでないことなどを踏まえて、次の仮定条件の下で二酸化炭素削減効果を試算することとした。

 〔1〕 試算の対象とするエコポイント対象製品の台数は、対象製品出荷台数の実績から計算された台数ではなく、エコポイント事業で実際に申請された台数とする。

 〔2〕  ベースラインの排出量は、エコポイント事業により平均的な使用年数より少ない年数で早めに性能の良い家電に買い換える場合の可能性を考慮して設定する必要がある。しかし、エコポイント事業がどの程度買換えの促進になったのかが不明であり、そのためのデータも存在しないことなどを踏まえて、環境省が新規購入分のベースラインとして用いていた、エコポイント事業が行われた時期に販売されていた家電3品目の1つ星から5つ星までのものの平均的消費電力量から算出した二酸化炭素排出量をベースラインとする。
 なお、国内クレジット制度を運営するために設置された委員会によると、21年度におけるテレビの更新分のサイズ区分ごとの出荷台数による消費電力量の加重平均値は、128.3kWh/年であるとされているが、今回の試算においては、環境省が23年6月に政策効果を算出した際に用いた係数(127kWh/年)を使用する。

 〔3〕  購入の態様については、リサイクル券が添付されていた申請を「買換え」とし、それ以外を「新規購入」とする。この考え方を図にすると、図5 のとおりとなる。

図5  「ベースライン&クレジット」方式による会計検査院の二酸化炭素削減効果の考え方

図5「ベースライン&クレジット」方式による会計検査院の二酸化炭素削減効果の考え方

 この考え方に基づいて、会計検査院が二酸化炭素削減効果を試算すると、表9 及び図6 のとおり、買換え分は13万t、新規購入分は7万tとなるため、これらを合わせた計21万tがエコポイント事業による二酸化炭素削減効果であった。
 このように、環境省は、エコポイント事業を実施したことにより273万tの二酸化炭素削減効果があったとしていたが、会計検査院の試算によると、その削減効果は、環境省が算出していた二酸化炭素削減効果の8%程度の21万tにとどまっていたと思料される。

表9  会計検査院の試算による二酸化炭素削減効果
家電3品目 申請台数(台)

ベースラインに対する消費電力量削減量(kWh/年)

削減効果(t-CO2 /年) 
平成21年度
(5月〜3月)
買換え
エアコン 955,678 55 29,487
冷蔵庫 1,615,283 34 30,810
地デジ対応テレビ 8,275,735 5 23,213
10,846,696
83,510
21年度
(5月〜3月)
新規購入
エアコン 1,169,598 55 36,088
冷蔵庫 652,107 34 12,438
地デジ対応テレビ 4,281,278 5 12,009
6,102,983
60,535
22年度

(4月〜12月)
買換え

エアコン 2,330,810 3 3,923
冷蔵庫 2,008,575 3 3,380
地デジ対応テレビ 11,643,251 2 13,064
15,982,636
20,367
22年度

(4月〜12月)
新規購入

エアコン 2,852,541 3 4,801
冷蔵庫 810,884 3 1,365
地デジ対応テレビ 6,023,392 2 6,758
9,686,817
12,924
22年度

(1月〜3月)
買換え

エアコン 70,953 75 2,985
冷蔵庫 171,328 51 4,902
地デジ対応テレビ 2,978,721 15 25,066
3,221,002
32,953
買換え分計 30,050,334
136,830
新規購入分計 15,789,800
73,459
合計 45,840,134
210,289
注(1)  申請台数は、エコポイントの申請台数を環境省が用いていた平成21、22両年度の出荷台数の割合で算出した。
注(2)  ベースラインに対する消費電力量削減量は、平成21年度及び22年度(4月〜12月)について
は、環境省の算出(表8 )の新規購入分の「消費電力削減量」を用いた。また、22年度(1月〜3月については、環境省の算出(表8 )の22年度(22年4月〜22年12月)の新規購入分の「平均的製品消費電力量」と22年度(23年1月〜23年3月)の買換え分の「買換え後消費電力量」の差を用いた。
注(3)  排出係数(t-CO2 /kWh)は、環境省の算出と同じ0.000561を用いた。

図6  「ベースライン&クレジット」方式による会計検査院の二酸化炭素削減効果の試算

図6「ベースライン&クレジット」方式による会計検査院の二酸化炭素削減効果の試算

(イ) エコポイント事業の実施に伴う二酸化炭素排出量の増減

 環境省は、24年4月に公表した「2010年度(平成22年度)温室効果ガス排出量について」等において、家庭部門における電力消費量については、20、21両年度は減少していたが、22年度は増加に転じて対前年度比6.7%増となっており、22年度の二酸化炭素排出量については、1990年度(平成2年度)に比べて34.8%増加したとしている。そして、特に近年の二酸化炭素排出量の増加が著しい家庭部門の排出削減が必要不可欠であるとしている。
 3省は、前記のとおり、エコポイント事業の効果として二酸化炭素削減効果を公表していた。このうち、新規購入分に係る算出については標準的な家電3品目の消費電力量とエコポイント対象製品の消費電力量との差が削減効果であるとしていた。
 しかし、3省は、エコポイント事業を実施したことに伴う二酸化炭素排出量の増減の実績については算出していない。
 そこで、会計検査院において、主に家庭部門の機器を対象とするエコポイント事業の実施に関し、その前後における二酸化炭素排出量を比較して増減の実績を試算することにした。試算に当たっては、増減理由が全てエコポイント事業の実施に伴うものと特定できないものの、可能な限り客観的な数値を取り入れることとした。すなわち、エコポイント対象製品の買換え及び新規購入は、エコポイント事業が実施されなくても行われたと考えられること、エコポイント事業が実施されなければ実際より消費電力量が低い小型のエコポイント対象製品を購入したとも考えられることなど不確実な事項が想定されるが、それらの数値等が明らかでないことなどを踏まえて、次の仮定条件の下で試算することにした。
 〔1〕 二酸化炭素排出量の算定式は、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)に基づく温室効果ガスの排出量の算出方法のうち、一般電気事業者等から供給された電気の使用の場合の算定式のCO2 排出量(t-CO2 )=電気使用量(kWh)×単位使用量当たりの排出量(排出係数(t-CO2 /kWh))を使用する。
 〔2〕 試算の対象とするエコポイント対象製品の台数は、エコポイント事業で実際に申請された台数とする。
 〔3〕 消費電力量は、個々の使用形態によって異なるものの、エコポイント対象製品の型式ごとに日本工業規格(JIS)の基準で定められた各製造メーカーが公表している値を用いる。
 〔4〕 買換えの場合にリサイクルした製品の消費電力量は、実際の消費電力量が不明であることから、内閣府が実施した消費動向調査の家電3品目の平均使用年数によりリサイクルした製品の製造年を推定し、その製造年の当該製品の消費電力量の平均とする。
 〔5〕 購入の態様は、リサイクル券が添付されていた申請を「買換え」とし、それ以外を「新規購入」とする。
 〔6〕 排出量の増減を試算するに当たっては、買換えにより従前の二酸化炭素排出量を減ずることができた場合は二酸化炭素排出量が減少したとし、新規購入した場合は家電3品目の保有台数が増加することから二酸化炭素排出量が純増したとする。

 上記算出方法をまとめると、表10 のとおりである。なお、後年にエコポイントの対象として購入した製品や従前より使用していた製品を廃棄する場合は、この算出方法により求められた二酸化炭素排出量の増減の値が変動することになるが、ここで算出した値は、最大値を示している。

表10  会計検査院の二酸化炭素排出量の増減実績の算出方法
項目 仮定条件
〔1〕 算定式 CO2 排出量(t-CO2 /年) = 電気使用量(kWh/年)
×単位使用量当たりの排出量(t-CO2 /kWh)
〔2〕 対象台数 エコポイント申請台数
〔3〕 消費電力量 型式ごとの個別消費電力量
〔4〕 比較する買換え前消費電力 内閣府の消費動向調査
  買換え前の製品
    エアコン 平成9、10年度の製品を想定
    冷蔵庫 10、11年度の製品を想定
    テレビ 11、12年度の製品を想定
〔5〕 購入の態様 リサイクル券の有無を型式ごとに個別判定
〔6〕 リサイクル券がない申請の二酸化炭素削減効果 消費電力の純増であり、二酸化炭素排出量の増として算出

会計検査院が試算したエコポイント事業に係る二酸化炭素排出量の増減の考え方を示すと、図7 のとおりとなる。

図7 会計検査院の二酸化炭素排出量の増減の考え方(エアコンの例)

図7会計検査院の二酸化炭素排出量の増減の考え方(エアコンの例)

 前記の算出方法によって、会計検査院がエコポイント事業に係る二酸化炭素排出量の増減実績を試算すると、表11 及び図8 のとおりとなる。

表11  会計検査院の試算による二酸化炭素排出量の増減実績
家電3品目 申請台数 買換え台数 買換え前消費電力量 対象製品消費電力量 増減
新規購入台数

-

エアコン (台)
7,379,580
(台)
3,357,441
(kWh/年)
1,180
(kWh/年)
612〜3,162
(t-CO2 /年) 
△226,484
4,022,139 - 2,434,909
冷蔵庫 5,258,177 3,795,186 582〜1,012 160〜510 △998,246
1,462,991 - 289,872
地デジ対応テレビ 33,202,377 22,897,707 128

33〜498

△338,486
10,304,670 - 572,779
買換え分計 30,050,334 △1,563,216
新規購入分計 15,789,800 3,297,560
合計 45,840,134 1,734,344
≒173万t増加

図8  会計検査院の二酸化炭素排出量の増減のイメージ

図8会計検査院の二酸化炭素排出量の増減のイメージ

 上記のとおり、買換え分については、買換え前の製品より消費電力量が下がることから、冷蔵庫で99万t二酸化炭素排出量が減少することとなるなど、一定の二酸化炭素排出量の減少が認められたものの、新規購入については、二酸化炭素排出量が純増になり、例えば、エアコンでは243万tの二酸化炭素排出量が増加していたことになる。その結果、申請されたエコポイント対象製品の合計では最大で173万tの二酸化炭素排出量が増加していたことになる。

イ 経済活性化

 3省は、前記のとおり、政策効果において、経済効果として約2.6兆円の販売押し上げがあり、約5兆円の経済波及効果の呼び水となったとするとともに、この経済効果により延べ年約32万人の雇用を維持・創出したとしている。そして、経済産業省は、23年6月の産業活動分析で「家電エコポイント制度が生産、消費に与えた影響について」において、その詳細な算出過程を公表している。その一部を示すと、表12 及び表13 のとおりである。

表12  エコポイント事業による国内出荷額等の増加分

(単位:百万円)

区分 エアコン 冷蔵庫 地デジ対応テレビ
国内出荷額の増加分(国産品) 86,630 80,698 619,336 786,664
国内出荷額の増加分(輸入品) 19,616 16,251 381,048 416,914
国内販売の商業マージン・貨物運賃 100,247 111,005 1,135,956 1,347,208
206,493 207,954 2,136,340 2,550,786

表13  エコポイント事業による生産誘発額及び雇用者数
区分 エコポイント使用による生産波及 財の消費の増加による生産波及

合計

エアコン 冷蔵庫 地デジ対応テレビ
生産誘発額(百万円) 1,041,277 356,527 349,722 3,270,482 3,976,731 5,018,008
雇用者数(人) 65,756 20,936 23,975 209,716 254,627 320,383

 一方、エコポイント事業の効果を把握するために、同省から家電3品目の業界団体の自主統計の提出を受け、18年4月から24年4月までの家電3品目の国内出荷台数について集計してその推移をみたところ、図9 のとおり、エアコン及び冷蔵庫については、エコポイント事業の実施期間中とその前後を比べても大きな差が表れていなかった。一方、地デジ対応テレビについては、リサイクル券添付の有無がエコポイント付与の条件とされていなかった時期の後半の22年10月から12月期がピークになり、その後、大きく落ち込んでいた。

図9  家電3品目の出荷台数の推移

図9家電3品目の出荷台数の推移

注(1)  Iは1月〜3月、IIは4月〜6月、IIIは7月〜9月、IVは10月〜12月である。
注(2)  平成18年4月から6月までの出荷台数を「100」として出荷台数の推移をグラフ化した。

 このような状況を、3省は、経済の「底割れ」という短期的な危機の中で、エコポイント事業の実施によって、それが落ち込まずに横ばいを維持できたと説明している。また、エコポイント事業が終了して1年が経過した現在においても、出荷台数が落ち込まずに横ばいを維持していることについては、東日本大震災後の電力需給逼迫の影響による省エネ機器への需要の高まりによるものと説明している。
 なお、一般社団法人日本電機工業会は、毎年、需要予測を行っているが、エコポイント事業の実施前であった21年度の冷蔵庫の出荷台数の予測については405万台としていたが、21年度の出荷実績は407万台とほぼ予測どおりであった。一方、エコポイント事業を実施していた22年度の冷蔵庫の出荷台数の予測については403万台としていたが、22年度の出荷実績は444万台と、約1割程度の伸びとなっていた。
 また、22年の夏の日本の平均気温は、気象庁によると過去113年間で最も高くなるなど、全国的に記録的な高温になったとされている。経済活性化に対する効果のうちエアコンの需要は、この猛暑の影響も考慮に入れた上で検討をしなければならないと思料されるが、この猛暑の影響による需要の増加を考慮したとしても、エコポイント事業は経済を落ち込ませないことに一定程度寄与していたと思料される。

ウ 地デジ対応テレビの普及

 3省は、政策効果において、地上デジタル放送化対策として実施した地デジ対応テレビの普及事業の効果として、地デジ対応テレビの国内出荷台数の累計が事業開始当初に比べて約2.2倍に増加し、地上デジタルテレビ放送受信機器全体の出荷台数も事業開始当初に比べ約2.1倍に増加し、23年3月の普及目標9200万台に対して実績は1億1131万台とこれを上回ったとしている。
 しかし、21年4月の「経済危機対策」の決定前に、総務省情報通信審議会に社団法人電子情報技術産業協会から、地上デジタル放送化の移行に伴うテレビ等の需要動向が提示されており、それによれば、23年末には地上デジタルテレビ放送受信機器全体で9853万台になるとされているなど、既に地上デジタルテレビ放送受信機器全体の需要の伸びが見込まれていた。そして、同審議会に提示された需要動向と実績を対比すると、表14 のとおりとなる。需要動向が暦年で示されているため、政策効果とは単純に比較できないものの、エコポイント事業が行われた21年から23年まででは、地デジ対応テレビの出荷台数の累計は、上記の需要動向において約1.5倍になるとされていたが、実績は約2.0倍になっていた。また、地上デジタルテレビ放送受信機器合計でみても、需要動向において約1.5倍になるとされていたが、実績は約2.0倍になっていた。

表14  地上デジタルテレビ放送受信機器の需要動向(21年3月)と出荷実績

(単位:千台、%)

区分
平成
19年
20年 21年 22年 23年 21年と23年の比較
地上デジタルテレビ放送受信機器合計 需要動向 単年 12,914 15,221 16,695 17,686 18,207
累計 30,729 45,951 62,646 80,332 98,538 157.2
出荷実績 単年 12,914 15,221 20,845 36,267 33,623
累計 30,729 45,951 66,796 103,063 136,686 204.6
  地デジ対応テレビ 需要動向 単年 8,079 9,552 10,434 11,050 11,572
累計 18,773 28,325 38,759 49,809 61,381 158.3
出荷実績 単年 8,079 9,552 13,578 25,187 19,828
累計 18,773 28,325 41,903 67,090 86,918 207.4
注(1)  「地上デジタルテレビ放送用受信機器の需要動向」は、平成21年4月に総務省情報通信審議会に提出された社団法人電子情報技術産業協会の資料である。
注(2)  平成19年、20両年は実績値である。

 このように、地上デジタルテレビ放送受信機器全体の需要は、地上デジタル放送化への対応による要因も大きいと考えられるが、出荷台数の実績が需要動向を上回っていることからも、エコポイント事業の実施は、地デジ対応テレビの普及促進を前倒しさせていたと思料される。