消費税の簡易課税制度は、中小事業者の事務負担に配慮して、事務の簡素化を図るために設けられたものである。
消費税は、平成元年4月に導入されてから20年以上が経過しており、消費税に対する国民の信頼性等を向上させるために、簡易課税制度の適用対象となる基準期間における課税売上高の上限額の引下げによる適用範囲の見直しやみなし仕入率の事業区分の細分化によるみなし仕入率の水準の見直しが行われてきているが、17年度から22年度までの間における簡易課税制度適用者の割合は個人事業者が60%強、法人が30%弱とほぼ横ばいで推移している。また、みなし仕入率が課税仕入率を上回ってかい離している場合には、価格を通じて消費者が負担している消費税相当額のうち国庫に納付されない部分が事業者に残ることとなり、いわゆる益税が発生すると言われている。そして、このような益税の発生は、消費税に対する国民の信頼性を損ねることとなる。
本報告書は、消費税に関する国民の関心が高い中で、以上のような状況等を踏まえて、消費税の簡易課税制度について検査を実施して、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。
平成24年10月
会計検査院
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