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  • 平成24年10月

地震・火山に係る観測等の実施状況について


3 検査の状況

(1) 観測、調査研究等に係る予算

ア 予算要求の過程

 地震本部は、地震防災対策特別措置法に基づき、関係機関の地震に関する調査研究予算等の事務の調整を行うこととされていることから、毎年、関係機関から事業に関するヒアリングを行った上で翌年度の概算要求に向けた方針を示しており、関係機関は当該方針に沿って予算要求を行っている。
 一方、火山の観測、調査研究等に係る予算要求については、関係機関の事務の調整を行うための組織が設置されていないことから、各関係機関が個々に行っている。
 なお、各国立大学法人の地震及び火山に関する研究予算については、予知協議会が各研究の内容等を踏まえた調整を行った上で、これにより国立大学法人東京大学が一括して国に予算要求を行い、確定後の予算額が同法人に配分された後、同法人から他の国立大学法人に再配分される仕組みになっている。

イ 関係機関の予算規模

 地震及び津波の観測、調査研究等に係る予算については、地震本部が毎年度、関係機関別に予算額を公表している。しかし、独立行政法人の観測、調査研究等に係る予算額については、運営費交付金を主な財源としているなどのため、一部の法人を除き、運営費交付金の内数と示されており、具体的な金額は公表されていない。
 そして、地震本部が公表した予算額を基に、会計検査院が集計した関係機関ごとの地震及び津波の観測、調査研究等に係る21年度から23年度までの間の予算額の推移をみると、表1 のとおり、地震本部の運営を担うとともに、観測、調査研究等を推進する立場として委託事業の発注者となっている文部科学本省(研究開発局)や、主たる業務又は業務の一つとして観測を行っている国土交通省の各機関の23年度の予算額は、23年3月の東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、対前年度比で約3倍から約5倍と、大幅に増加している。

表1  地震及び津波の観測、調査研究等に係る予算額の推移

(単位:百万円)

所管 担当機関名 平成21年度 22年度 23年度
当初予算 補正予算 年度計 当初予算 第1次補正予算 第3次補正予算 年度計
総務省 消防庁 2 - 2 0 15 - - 15
文部科学省 文部科学本省(研究開発局) 4,640 - 4,640 4,509 4,269 - 8,906 13,175
国立大学法人 内数 - 内数 内数 390 - - 390
防災科研 内数 40 40 3,308 5,325 980 764 7,069
海洋研 内数 - 内数 内数 内数 - - 内数
4,640 40 4,680 7,817 9,984 980 9,670 20,634
経済産業省 産総研 内数 - 内数 内数 内数 - 3,094 3,094
国土交通省 国土地理院 2,036 1,284 3,320 1,568 1,491 2,953 3,417 7,861
気象庁 2,299 545 2,844 2,201 1,938 6,596 2,686 11,220
海上保安庁 105 - 105 113 105 - 360 465
4,441 1,829 6,270 3,882 3,534 9,549 6,462 19,545
合計 9,083 1,869 10,952 11,699 13,533 10,529 19,226 43,288
注(1)  「内数」とあるのは運営費交付金の内数のことであり、計及び合計の金額には含まれていない。また、個々の予算額は四捨五入されたものであるため、その計は必ずしも一致しない。
注(2)  気象庁の平成22年度の予算額には、当初予算のほか、経済危機対応・地域活性化予備費(354百万円)を含む。
注(3)  国立大学法人の予算は、科学技術・学術審議会の地震及び火山噴火予知のための観測研究計画に基づく研究に係るものであり、平成23年度の予算額は火山噴火予知に関する研究予算も含む。

 また、地震本部が公表している予算額とは別に、消防庁は、21年度に、前記の震度情報ネットワークに係る観測機器の更新等のために120億円、J-ALERTの整備のために112億円を予算計上している。
 なお、国土交通省は、地震発生時の初動体制の決定に資するために、主に7年度から9年度にかけて、地震の観測のための施設整備を行っていたが、地震本部は、当該施設整備に係る予算については、河川事業費、道路事業費等の内数であるとして、地震本部が公表している予算の合計額には含めていない。
 一方、火山の観測、調査研究等に係る予算については、一元的に公表されているものはない。そこで、会計検査院において火山の常時観測(後掲の(3)イ 参照)を行っている機関のうち気象庁及び防災科研の21年度から23年度までの間の予算額の推移をみたところ、表2 のとおり、同庁においては21、23両年度に、防災科研においては21年度に、火山の観測体制の強化を図るために、それぞれ当初予算の額を上回る額の補正予算が措置されている。

表2  火山の観測、調査研究等に係る予算額の推移

(単位:百万円)

所管 担当機関名 平成21年度 22年度 23年度
当初予算 補正予算等 年度計 当初予算 第3次補正予算 年度計
文部科学省 防災科研 355 560 915 227 147 - 147
国土交通省 気象庁 704 3,750 4,455 1,173 575 1,311 1,887
1,060 4,310 5,370 1,401 722 1,311 2,034
注(1)  気象庁の平成21年度の当初予算及び補正予算等の額は、複数の事項に係る予算額の内数とされているものを除いた額である。
注(2)  気象庁の平成22年度の予算額には、当初予算のほか、経済危機対応・地域活性化予備費(285百万円)を含む。

(2) 観測の実施から情報の発表に至るまでの流れ

 気象庁その他関係機関による観測結果は、同庁が気象業務法に基づいて発表する予報、警報等の根拠となるものである。そして、同庁が予報、警報等を行った場合、その情報は地方公共団体や報道機関等を通じて、国民に発表されることになるが、観測の実施から情報の発表に至るまでの流れについて概略を示すと図1 のとおりである。

図1  観測の実施から情報の発表に至るまでの流れ

図1観測の実施から情報の発表に至るまでの流れ

 上記のほか、気象庁は、大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)に基づく地震防災対策強化地域について異常現象を観測した場合、当該地域で発生するおそれのある地震に関連する情報を発表し、関係機関は、情報の段階に応じた行動をとることとされている。24年4月現在、東海地震を対象に地震防災対策強化地域(1都7県の157市町村)の指定が行われており、同庁は、「東海地震に関連する情報」として発表することとされている。

(3) 観測機器の整備状況

ア 観測機器の設置目的等

 観測の実施機関は、それぞれの権能等に応じて、地震が発生させた地震波を観測する地震計(注8) (高感度地震計、広帯域地震計及び強震計(震度計))をはじめ、地殻の変動、地震等に伴う津波、火山活動その他の関連する自然現象を観測するための様々な観測機器を設置・保有している。機関別に主な観測機器、それらの設置目的等を示すと、表3 のとおりである。

 地震計  地震が発生させた地震波を計測する機器で、微弱な揺れまで検知することが可能な「高感度地震計」、速い揺れからゆっくりとした揺れまでの広い周波数範囲にわたる地震波を記録することが可能な「広帯域地震計」、非常に強い揺れであっても確実に地震波を記録することが可能な「強震計」に大別される。
 また、計測した地震波から震度を算出する機能を併せもっている強震計を「震度計」という場合がある。以下の本文中では、気象庁及び防災科研の地震計のうち、震度演算機能を併せもっている強震計については、「震度計」ではなく「強震計」と表記し、地方公共団体の震度情報ネットワークの地震計についてのみ「震度計」と表記している。


表3  機関別の観測機器の設置目的等
機関名 主な業務・目的(地震、津波及び火山の観測に係る部分) 設置・保有している主な観測機器 観測機器の主な設置目的
国土交通省 ・国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全
・社会資本の整合的な整備
強震計、GPS波浪計注(1) 、カメラ ・河川、道路施設等に係る点検の要否の判断
・波浪及び潮位の観測
・土砂災害発生状況の把握及び工事の安全管理
・各種施設の耐震設計等に関する研究
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
国土地理院 ・土地の測量、地図の調製等 GPS ・測量の基準の確定・地殻変動の連続観測
・標高決定のための潮位観測
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
・地震予知に関する情報の提供
気象庁 ・観測網の確立及び維持
・観測、予報及び警報
高感度地震計、強震計、検潮儀、津波計、傾斜計、空振計、カメラ ・地象、水象等の常時観測並びに予報、警報等
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・他機関への情報提供
海上保安庁 ・海上の安全の確保

GPS、海底基準局注(2) 、験潮儀

・水路の測量及び海象の観測並びに水路通報及び航行警報
・海底地殻変動の観測
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
独立行政法人 防災科研 ・防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等 高感度地震計、強震計、広帯域地震計、ひずみ計、GPS、傾斜計 ・地震及び火山噴火の発生メカニズム解明に関する研究
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
・防災科学技術に関する内外の情報等の収集、整理、保管、提供
海洋研 ・海洋に関する基盤的研究開発、海洋に関する学術研究に関する協力等 高感度地震計、広帯域地震計、津波計 ・海域の地震、火山活動を引き起こす地球内部の動的挙動の現象と過程に関する研究
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
産総研 ・地質の調査 高感度地震計、地下水観測井 ・活断層、地震発生や火山噴火のメカニズム及び地下水位の変動等に関する調査、研究
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
国立大学法人注(3) ・高等教育及び学術研究 高感度地震計、広帯域地震計、強震計、GPS、ひずみ計、傾斜計、空振計、カメラ、全磁力計 ・「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」に基づく基礎的な学術研究
・地震本部の地震評価に資するための情報提供
・気象庁の予報、警報等に資するための情報提供
地方公共団体(都道府県・市町村) ・住民の生命、身体及び財産の災害からの保護 震度計 ・地震発生時の初動体制の確立
・気象庁の予報、警報に資するための情報提供
・他機関への情報提供
注(1)  GPS波浪計は、GPS(汎地球測位システム)衛星を用いて、沖に浮かべた機器本体の上下変動を計測し、波浪や潮位を即時に観測する機器で、国土交通省港湾局が整備を進めている。
注(2)  海底基準局は、船上局(測量船)から発射された音波を受信・返信し、船上局との距離を測定する機能をもつ機器で、GPS衛星等を用いた他の観測手法との組合せで、海底の地殻変動の観測に使用されている。
注(3)  検査の対象とした12国立大学法人のうち、国立大学法人秋田大学は自ら観測機器を保有していないが、科学技術・学術審議会の観測研究計画に基づく研究課題の実施主体として、他機関から観測機器を借用するなどして、研究観測を行っている。なお、「保有・設置している主な観測機器」欄の観測機器は、残りの11国立大学法人からの回答内容を基に記載したもので、全法人が各観測機器を一律に保有しているわけではない。
注(4)  「観測機器の主な設置目的」欄に記載の目的に、全ての観測機器が該当するわけではない。

イ 国、独立行政法人及び国立大学法人における整備状況

 地震、津波及び火山の観測の形態は、長期間にわたって観測点を固定して実施する常時観測と、大規模な地震や火山噴火の発生後に当該地域で緊急的に実施したり特定の調査研究のため期間を限定して実施したりする臨時観測に大別できる。
 国、独立行政法人及び国立大学法人における常時観測用及び臨時観測用の観測機器の保有等の状況は、次のとおりである。

(ア) 常時観測用の観測機器の保有状況

 各機関における常時観測用の観測機器の保有状況をみると、表4 のとおりである。

表4  常時観測用の観測機器の保有状況(平成24年3月31日現在)

(単位:台)

観測対象 機関名
観測機器の種類
独立行政法人 国立大学法人
気象庁 国土地理院 国土交通省 海上保安庁 防災科研 産総研 海洋研   該当法人数
地震等 高感度地震計 206 2 0 0 787 55 25 346 9 1,421
広帯域地震計 21 0 0 0 73 1 20 56 7 171
強震計 631 0 1,188 0 2,427 2 0 93 4 4,341
GPS等 0 1,359 0 55 0 10 0 125 5 1,549
ひずみ計等 42 3 0 0 47 29 0 215 5 336
地下水観測井等 0 18 0 0 0 88 0 93 6 199
検潮儀・験潮儀 47 27 0 20 0 0 0 1 1 95
津波計等 115 0 15 0 3 0 24 2 1 159
1,062 1,409 1,203 75 3,337 185 69 931 9 8,271
火山 地震計 155 0 12 0 50 0 0 256 6 473
GPS 119 12 0 0 20 2 0 65 4 218
傾斜計 66 0 1 0 23 0 0 62 6 152
空振計 87 0 6 0 0 0 0 36 5 129
カメラ 62 0 49 0 0 0 0 11 4 122
全磁力計等 25 1 0 0 0 3 0 80 6 109
514 13 68 0 93 5 0 510 6 1,203
合計 1,576 1,422 1,271 75 3,430 190 69 1,441 10 9,474
注(1)  国の機関名の並びは左から、気象業務法に基づき業務として観測を行っている気象庁を最初とし、以下、保有機器数の多い順としている。独立行政法人の機関名の並びは左から、保有機器数の多い順としている。また、以下の表については、国、独立行政法人とも、機器数、金額等の多寡にかかわらず、本表と同じ機関名の並びとする。
注(2)  地震等と火山の両方を観測対象としている機器については「地震等」の機器数に含めている。
注(3)  GPS等には、GPS、海底基準局、VLBI(超長基線電波干渉法を用いた観測機器)及びSLR(人工衛星レーザー測距のための機器)を含む(以下の表も同じ。)。
注(4)  ひずみ計等には、体積ひずみ計、3成分ひずみ計、多成分ひずみ計、傾斜計及び伸縮計を含む(以下の表も同じ。)。
注(5)  地下水観測井等には、地下水観測井、地磁気観測機器等を含む(以下の表も同じ。)。
注(6)  津波計等には、津波計、巨大津波計、海底津波計、遠地津波計及びGPS波浪計を含む(以下の表も同じ。)。
注(7)  全磁力計等には、全磁力計、体積ひずみ計、3成分ひずみ計、伸縮計、光波距離計、降灰量計、地下水観測井、自然電位観測機器等を含む(以下の表も同じ。)。
注(8)  国土交通省の機器数には、内閣府沖縄総合事務局分も含めている。

 地震の常時観測については、地震本部が地震防災対策特別措置法に基づき、9年8月に「地震に関する基盤的調査観測計画」を策定していて、同計画等に基づき、関係機関が観測機器の全国的な整備を進めてきている。
 各機関における観測機器の整備状況は次のとおりである。
 気象庁は、震源及び地震規模の決定等に必要な地震波形データを取得する高感度地震計をおおむね60km間隔となるように、また、震度を測定するための震度データを取得する強震計をおおむね20km間隔となるように、それぞれ全国に設置している。なお、同庁の強震計の一部(631台中215台)は、同庁による予報及び警報の一種である緊急地震速報の発表に必要な地震波形データを取得することも可能となっている。
 国土地理院は、地殻変動を観測するためのGPSを、また、防災科研は、地盤の強震動を全国的に観測するための強震計や内陸で発生する浅い地震の震源の位置を決定するための高感度地震計を、それぞれおおむね20km間隔となるように全国に設置している。
 国土交通省は、地方整備局等の河川国道事務所、河川事務所、国道事務所、開発建設部等(以下「事務所等」という。)における地震発生時の初動体制の決定に資することを目的として、強震計750台(表4 の1,188台の内数)を設置し、これらをマイクロ回線等で接続してネットワーク(以下「地震計ネットワーク」という。)を整備している。また、国土技術政策総合研究所における研究目的のため強震計225台(表4 の1,188台の内数)を設置している。
 国立大学法人は、それぞれの所在地域を中心に高感度地震計等を設置している。
 このほか、気象庁、国土地理院等が、地震等に伴う津波を観測するために、検潮所(設置する機関により験潮場又は験潮所ともいう。)に検潮儀(同様に験潮儀ともいう。)を設置したり、岸壁等に津波計を設置したりしている。
 一方、火山の常時観測については、火山噴火予知連絡会が21年2月に行った報告において、全国の110活火山のうち、災害の軽減のために監視を強化すべきものとして47の火山(以下「47火山」という。)を選定するとともに、火山観測体制の充実についての基本的な考え方等を示している。上記の47火山は、〔1〕 近年、噴火活動を繰り返している23火山、〔2〕 過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている18火山、〔3〕 現在異常はみられないが過去の噴火履歴等からみて噴火の可能性が考えられる4火山及び〔4〕 予測困難な突発的な小噴火の発生時に火口付近で被害が生じる可能性が考えられる2火山の4区分に分類されており、必要に応じた監視・観測体制の強化を進めるとされている。
 各機関における観測機器の整備状況は、次のとおりである。
 気象庁は、監視を強化すべき47火山全てに、地震計、傾斜計、遠望カメラ等を設置して、火山活動を常時観測している。国土地理院は、全国に整備しているGPS観測網を火山活動の観測等にも利用している。国土交通省は、主に土砂災害発生状況の把握及び工事の安全管理のためにカメラ等を設置している。防災科研、産総研及び国立大学法人は、主に研究目的のため、それぞれ各種の観測機器を設置している。
 そして、47火山に係る機関別の観測機器数は、表5 のとおりであり、常時観測を行っている火山の間においても、既往の火山活動や火山周辺の状況等を反映して、観測を実施している機関数や観測機器の種類、設置機器数に差が生じている。

表5  47火山に係る機関別の観測機器数(平成24年3月31日現在)

(単位:台)

火山名 選定理由区分 機関名
所在都道府県名
独立行政法人 国立大学法人
気象庁 国土地理院 国土交通省 防災科研 産総研   大学名
大雪山 〔2〕 北海道
3
4
0
0
0
0
- 7
十勝岳 〔1〕 北海道
16
4
5
0
0
7
北海道 32
アトサヌプリ 〔2〕 北海道
6
4
0
0
0
0
- 10
雌阿寒岳 〔1〕 北海道
17
7
0
0
0
9
北海道 33
樽前山 〔1〕 北海道
16
5
8
0
0
24
北海道 53
倶多楽 〔4〕 北海道
5
3
0
0
0
3
北海道 11
恵山 〔2〕 北海道
6
3
0
0
0
0
- 9
北海道駒ヶ岳 〔1〕 北海道
18
5
0
0
0
40
北海道 63
有珠山 〔1〕 北海道
14
4
0
4
2
42
北海道 66
岩木山 〔3〕 青森県
5
4
0
0
0
3
弘前 12
岩手山 〔2〕 岩手県
11
4
11
4
0
11
東北 41
秋田焼山 〔1〕 秋田県
4
3
1
0
0
2
東北 10
秋田駒ヶ岳 〔1〕 秋田県、岩手県
5
3
7
0
0
7
東北 22
鳥海山 〔3〕 秋田県、山形県
5
4
0
0
0
1
東北 10
栗駒山 〔2〕 秋田県、岩手県、宮城県
6
5
0
0
0
0
- 11
蔵王山 〔2〕 宮城県、山形県
5
5
0
0
0
3
東北 13
吾妻山 〔1〕 山形県、福島県
17
6
3
0
0
4
東北 30
安達太良山 〔2〕 福島県
9
4
0
0
0
1
東北 14
磐梯山 〔2〕 福島県
14
3
0
0
0
1
東北 18
那須岳 〔1〕 福島県、栃木県
10
3
0
6
0
0
- 19
草津白根山 〔1〕 群馬県
16
5
2
4
0
19
東京工業 46
日光白根山 〔2〕 群馬県、栃木県
5
3
0
0
0
0
- 8
伊豆大島 〔1〕 東京都
21
8
0
10
1
65
東京 105
新島 〔2〕 東京都
6
4
0
0
0
0
- 10
三宅島 〔1〕 東京都
26
4
0
14
0
0
- 44
八丈島 〔2〕 東京都
6
3
0
0
0
0
- 9
青ヶ島 〔4〕 東京都
5
3
0
0
0
0
- 8
神津島 〔2〕 東京都
8
4
0
0
0
0
- 12
硫黄島 〔1〕 東京都
3
4
0
7
0
0
- 14
箱根山 〔2〕 神奈川県
7
5
0
0
0
0
- 12
伊豆東部火山群 〔2〕 静岡県
18
8
0
0
6
0
- 32
富士山 〔3〕 静岡県、山梨県
11
13
0
20
0
16
東京 60
新潟焼山 〔1〕 新潟県
5
3
0
0
0
0
- 8
浅間山 〔1〕 群馬県、長野県
30
5
5
8
0
44
東京 92
白山 〔2〕 石川県、岐阜県
4
3
1
0
0
0
- 8
乗鞍岳 〔2〕 長野県、岐阜県
5
4
0
0
0
2
名古屋 11
焼岳 〔1〕 長野県、岐阜県
5
3
12
0
0
0
- 20
御嶽山 〔1〕 長野県、岐阜県
9
4
0
0
0
3
名古屋 16
鶴見岳・伽藍岳 〔2〕 大分県
4
4
0
0
0
6
京都 14
九重山 〔2〕 大分県
8
4
0
0
0
4
京都 16
阿蘇山 〔1〕 熊本県
19
4
0
8
0
54
京都 85
雲仙岳 〔3〕 長崎県
13
4
0
0
0
22
九州 39
霧島山 〔1〕 宮崎県、鹿児島県
44
6
0
8
0
27
東京、九州 85
桜島 〔1〕 鹿児島県
24
7
13
0
0
99
京都 143
薩摩硫黄島 〔1〕 鹿児島県
5
5
0
0
0
3
京都 13
口永良部島 〔1〕 鹿児島県
13
5
0
0
2
16
京都 36
諏訪之瀬島 〔1〕 鹿児島県
6
5
0
0
0
10
京都 21
注(1)  選定理由区分」欄の〔1〕 〜〔4〕 の内容は次のとおりである。
〔1〕 近年、噴火活動を繰り返している火山
〔2〕 過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山
〔3〕 現在異常はみられないが過去の噴火履歴等からみて噴火の可能性が考えられる火山
〔4〕 予測困難な突発的な小噴火の発生時に火口付近で被害が生じる可能性が考えられる火山
注(2)  表には地震観測と火山観測の双方に使用している機器も含めている。
注(3)  47火山以外に、国立大学法人京都大学が開聞岳に4台及び中之島に2台、計6台を設置している。
注(4)  火山ごとに機器数を計上しているため、複数の火山の観測に使用している機器は重複して計上している。

(イ) 臨時観測用の観測機器の保有状況

 各機関における臨時観測用の観測機器の保有状況をみると、表6 のとおりであり、海洋研及び国立大学法人の臨時観測用の機器数(海洋研474台、国立大学法人4,032台)は、常時観測用の機器数(同69台、同1,441台)を大きく上回っており、また、防災科研の臨時観測用の機器数は、3独立行政法人(防災科研、産総研及び海洋研)の中では最も多くなっている。これは、防災科研、海洋研及び国立大学法人が、文部科学省から地震調査研究に係る事業(ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究プロジェクト、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトなど)を受託したことなどにより必要な観測機器を保有していることによる。このほか、国立大学法人については、受託事業等により保有している観測機器以外の観測機器の数が3,085台に上っているが、これは、地震が発生した後や火山活動が活発化した後に、観測機器を可能な限り早く設置して観測データを収集し、学術研究として地震発生・火山活動の構造を解明するため、機動的に設置できる観測機器を保有していることによる。

表6  臨時観測用の観測機器の保有状況(平成24年3月31日現在)

(単位:台)

観測対象 独立行政法人 国立大学法人
気象庁 国土地理院 国土交通省 海上保安庁 防災科研 産総研 海洋研   該当法人数
地震等
80 18 48 0 725
(399)
65 474
(319)
3,627
(899)
11
(8)
5,037
(1,617)
火山
110 0 0 2 0 52
(10)
0 405
(48)
5
(2)
569
(58)
190 18 48 2 725
(399)
117
(10)
474
(319)
4,032
(947)
11
(8)
5,606
(1,675)
注(1)  ( )内は、受託事業等により保有している観測機器の数で、臨時観測用の観測機器の数の内数である。
注(2)  臨時観測用の観測機器には、常時観測用の観測機器の代替用機器等を含めている。

(ウ) 観測機器の台帳上の取得価格及び維持管理費

 各関係機関が24年3月31日現在保有している観測機器の管理台帳等に登載している取得価格(以下「台帳上の取得価格」という。)及び23年度における維持管理費をみると、表7 のとおり、それぞれ計564億4849万余円(地震等の観測に係る分519億4107万余円、火山の観測に係る分45億0741万余円)、計28億1708万余円(同26億5555万余円、同1億6153万余円)となっている。

表7  観測機器の台帳上の取得価格及び維持管理費
  (単位:千円)
観測対象 機関名
項目
独立行政法人 国立大学法人
気象庁 国土地理院 国土交通省 海上保安庁 防災科研 産総研 海洋研   該当法人数
地震等 台帳上の取得価格(平成24年3月31日現在) 12,589,512 6,698,262 5,579,920 969,323 10,063,396 5,066,447 5,366,432 5,607,780 11 51,941,076
  常時観測用観測機器 12,370,175 6,439,130 5,562,681 969,323 9,462,227 5,055,183 5,348,739 803,383 9 46,010,844
  臨時観測用観測機器 219,337 259,132 17,239 - 601,169 11,263 17,693 4,804,396 11 5,930,231
維持管理費(23年度) 744,520 567,422 273,561 19,155 789,825 55,733 57,046 148,284 9 2,655,550
  保守点検及び修理費用 61,575 289,184 273,410 11,002 162,545 47,658 - 35,377 8 880,753
  回線使用料 672,693 277,502 17 8,153 612,048 6,981 45,426 104,723 9 1,727,547
 

土地の賃借料

10,251 735 133 - 15,231 1,093 11,620 8,183 9 47,250
火山 台帳上の取得価格(24年3月31日現在) 2,545,166 145,673 258,699 14,700 273,905 34,204 - 1,235,068 7 4,507,418
  常時観測用観測機器 2,338,583 145,673 258,699 - 273,905 874 - 712,858 6 3,730,594
  臨時観測用観測機器 206,583 - - 14,700 - 33,330 - 522,209 5 776,824
維持管理費(23年度) 100,728 4,773 631 - 22,745 - - 32,659 6 161,539
  保守点検及び修理費用 14,718 4,769 430 - 6,853 - - 4,793 5 31,565
  回線使用料 84,543 - - - 15,536 - - 24,679 6 124,759
  土地の賃借料 1,466 4 201 - 355 - - 3,185 6 5,213
台帳上の取得価格(24年3月31日現在) 15,134,679 6,843,936 5,838,619 984,023 10,337,302 5,100,652 5,366,432 6,842,849 11 56,448,495
  常時観測用観測機器 14,708,758 6,584,803 5,821,380 969,323 9,736,133 5,056,058 5,348,739 1,516,242 10 49,741,439
  臨時観測用観測機器 425,921 259,132 17,239 14,700 601,169 44,593 17,693 5,326,606 11 6,707,055
維持管理費(23年度) 845,249 572,196 274,193 19,155 812,570 55,733 57,046 180,944 10 2,817,089
  保守点検及び修理費用 76,294 293,954 273,840 11,002 169,398 47,658 - 40,171 9 912,319
  回線使用料 757,236 277,502 17 8,153 627,585 6,981 45,426 129,403 10 1,852,306
  土地の賃借料 11,717 739 335 - 15,587 1,093 11,620 11,369 10 52,463
注(1)  金額は千円未満を切り捨てているため、各項目の金額を合計しても計欄の金額と一致しない。
注(2)  平成24年3月31日時点で、地震、津波及び火山の観測機器の個々の台帳上の取得価格及び維持管理費として判明しているもののみを集計している。「地震等」と「火山」の両方を観測対象としている機器については、主たる観測対象の区分に含めて集計している。
注(3)  台帳上の取得価格には、観測機器の計測部及びこれに附帯する処理部に係る分が含まれていたり、観測機器が設置されている施設、回線、電線の引込線等が含まれていたり、また、異なる種類の観測機器を一括して計上したりしているなど、各機関によって観測機器の台帳上の取得価格の計上方法が異なっている。
注(4)  国土交通省の金額には、内閣府沖縄総合事務局分も含めている。

 各機関が保有する地震等の観測機器に係る台帳上の取得価格について観測形態別にみると、国及び独立行政法人の各機関については、常時観測が主たる観測形態となっていることから、常時観測用の機器数が多く、その価格も臨時観測用の機器の価格を大きく上回っている。一方、国立大学法人は、研究目的のために、地震発生直後に機動的に観測を行うことが多いことから、臨時観測用の機器数が多く、その価格も常時観測用の機器の価格を大きく上回っている。
 同じく各機関別にみると、気象庁及び防災科研の台帳上の取得価格が100億円を上回る額になっている(同庁観測機器計1,142台(常時観測用1,062台、臨時観測用80台)、防災科研同4,062台(同3,337台、同725台))。この中でも気象庁の台帳上の取得価格が高額になっているのは、同庁の観測機器については停電時の対策等に係る附属設備等の整備が同時に行われていることを反映したものと思料される。また、産総研及び海洋研において、機器数がそれぞれ計250台(常時観測用185台、臨時観測用65台)、計543台(同69台、同474台)と比較的少数であるにもかかわらず台帳上の取得価格が50億円超となっているのは、整備に多額の費用を要する地下水観測井や海底ケーブル式の地震・津波観測監視システム(DONET)を保有していることによる。
 一方、火山の観測機器の台帳上の取得価格について観測形態別にみると、国及び独立行政法人ともに地震等の観測機器と同じ傾向がみられるが、国立大学法人においては、監視を強化すべきとされた47火山のうち30火山で常時観測を行っているため、常時観測用の機器数が多く、その価格も臨時観測用の機器の価格を上回っている。
 同じく各機関別にみると、47火山全ての常時観測を行っている気象庁の台帳上の取得価格(23億3858万余円)が全体の半分以上を占めていて、常時観測用の機器数がほぼ同じである国立大学法人の台帳上の取得価格(計7億1285万余円)を大きく上回っている(常時観測用の機器数は、同庁514台に対して、国立大学法人計510台)。これは、21年の監視を強化すべき47火山の選定を受けて、最新の観測機器の整備が進められたことによるものである。一方、国立大学法人については、法人化に伴う財政事情の変化により観測機器の維持管理等が困難になりつつあるとされ、前記の火山噴火予知連絡会が21年2月に行った報告において、〔1〕 国立大学法人は研究的価値の大きい火山を重点的な研究対象とし、それらの火山に観測機器等を集中するなどして観測研究体制を強化すること及び〔2〕 防災科研等は国立大学法人の観測研究の支援も視野に入れた観測体制を整備することが必要であるとしている。
 維持管理費についてみると、地震等の観測及び火山の観測のいずれも、観測データを専用回線等を利用して収集していることから、維持管理費の中で回線使用料の占める割合が最も高くなっている。

ウ 地方公共団体における整備状況

 消防庁は、前記のとおり、震度情報ネットワークの整備を促進しており、24年3月現在、全ての市町村に震度計が設置されていて、9年から一部の都道府県が、震度計で得られた震度データの気象庁への提供を開始している。そして、気象庁は、都道府県から提供を受けた震度データを当該地域の地震情報として発表しており、15年までに全ての都道府県の震度データが同庁に提供され、地震情報として発表されるようになっている。16年からは、防災科研が保有している強震計で得られた震度データについても、気象庁が提供を受けて、当該強震計が存する地域の地震情報として発表している。
 また、消防庁は、7、8両年度に都道府県等が整備した震度情報ネットワークの各機器等が老朽化したことなどから、全額国費で震度情報ネットワークを更新するために、21年度に、防災情報通信設備整備事業交付金として計84億5905万余円を交付している。そして、45道府県は、18年度から22年度までの間に、この交付金や他の補助金等(注9) により、震度情報ネットワークを更新しており、これら交付金等の交付額は計98億3183万余円となっている。なお、残りの2都県は、単独費で震度情報ネットワークの更新を行っている。
 消防庁は、同交付金の交付要綱等において、震度計の設置に対しては1台当たり550万円を交付限度額として交付金を交付することとしている。また、「平成の大合併」前の市町村ごとに少なくとも1か所は整備すること、気象庁又は防災科研が設置した強震計が近接している場合には、地方公共団体は自らが設置した震度計を撤去し、その代わりに同庁又は防災科研が設置した強震計の震度データを活用してもよいこととしている。そして、都道府県において震度計を設置せずに気象庁又は防災科研が設置した強震計の震度データを活用する場合であっても、当該強震計から回線を分岐して震度データを市町村に送信する装置(以下「分岐装置」という。)を設置して震度データを直接市町村が入手できるようにしているものは、分岐装置(1台当たりの交付限度額300万円)も交付金の対象としている。地方公共団体は、当該分岐装置を使用することで、独自に震度計を設置した場合と同様に、即時に震度情報を入手して、地震発生時の初動体制確立の迅速化を図ることができる。
 47都道府県の震度情報ネットワークを構成する震度計等(24年3月31日現在における震度計等は計3,297台)の設置状況について調書を徴して検査したところ、表8 のとおり、震度情報ネットワークを構成する都道府県等が整備した震度計2,937台のうち、同交付金等により更新等を行った機器数は2,453台であった。このうち、気象庁又は防災科研が設置した強震計との距離が1km未満と近接して設置されている震度計は233台(同庁の強震計と近接している震度計40台、防災科研の強震計と近接している震度計186台、双方に近接している震度計7台)あり、上記2,453台に対する割合は9.4%となっている。そして、上記233台の中には、距離が100m未満の震度計も59台含まれている。

 他の補助金等  消防庁の消防防災施設整備費補助金、総務省の地域活性化・生活対策臨時交付金、文部科学省の放射線監視等交付金


表8  47都道府県における震度計等の設置状況(平成24年3月31日現在)
  (単位:台)
都道府県名  
震度情報ネットワークを構成する震度計等    
都道府県等が整備した震度計   気象庁又は防災科研の強震計のうち、分岐利用しているもの 交付金等を利用して更新等された分岐装置注(3)
都道府県等が交付金等を利用して更新等した震度計注(1)    
気象庁の強震計との距離が1km未満の位置に設置されている震度計注(2) 気象庁の強震計との距離が100m未満の位置に設置されている震度計 防災科研の強震計との距離が1km未満の位置に設置されている震度計注(2) 防災科研の強震計との距離が100m未満の位置に設置されている震度計
北海道 80 80 80 0 0 1 0 0 0
青森県 67 56 56 0 0 12 1 11 11
岩手県 58 39 39 0 0 2 0 19 19
宮城県 76 54 54 0 0 0 0 22 22
秋田県 66 62 0 0 0 0 0 4 0
山形県 44 40 40 5 1 3 0 4 4
福島県 91 84 84 3 0 8 1 7 7
茨城県 84 79 79 0 0 8 2 5 5
栃木県 49 47 47 2 0 3 0 2 2
群馬県 70 59 30 0 0 0 0 11 0
埼玉県 98 94 94 1 0 6 2 4 4
千葉県 86 80 67 3 0 6 0 6 6
東京都 111 106 0 0 0 0 0 5 0
神奈川県 89 76 23 0 0 0 0 13 13
新潟県 106 98 98 2 0 15 3 8 8
富山県 35 28 28 0 0 3 3 7 7
石川県 41 27 23 0 0 0 0 14 2
福井県 35 31 31 0 0 7 1 4 4
山梨県 64 61 61 3 1 3 0 3 3
長野県 118 101 101 4 0 5 1 17 17
岐阜県 100 92 92 0 0 12 4 8 8
静岡県 70 70 26 0 0 1 1 0 0
愛知県 106 100 84 1 0 11 7 6 5
三重県 69 68 17 0 0 3 1 1 1
滋賀県 51 48 48 0 0 5 1 3 3
京都府 68 65 42 0 0 7 4 3 3
大阪府 74 73 73 3 0 2 1 1 1
兵庫県 106 75 69 1 0 0 0 31 31
奈良県 47 46 46 0 0 3 2 1 1
和歌山県 46 37 37 0 0 4 2 9 9
鳥取県 39 34 34 1 0 6 1 5 5
島根県 59 53 53 1 0 12 5 6 6
岡山県 85 83 7 0 0 0 0 2 0
広島県 86 77 77 0 0 2 0 9 9
山口県 58 54 54 1 0 10 6 4 4
徳島県 50 37 37 0 0 0 0 13 13
香川県 43 40 40 1 0 4 1 3 3
愛媛県 70 53 53 0 0 0 0 17 17
高知県 55 46 46 0 0 4 0 9 9
福岡県 109 109 109 3 1 8 3 0 0
佐賀県 49 41 41 0 0 0 0 8 8
長崎県 80 57 57 1 0 0 0 23 23
熊本県 78 74 73 1 0 4 1 4 4
大分県 58 49 49 1 0 5 0 9 9
宮崎県 47 37 37 2 0 7 1 10 10
鹿児島県 73 73 73 2 1 0 0 0 0
沖縄県 53 44 44 5 0 1 0 9 9
3,297 2,937 2,453 47 4 193 55 360 325
注(1)  消防庁の防災情報通信設備整備事業交付金又は消防防災施設整備補助金(平成18年度以降)のほか、総務省の地域活性化・生活対策臨時交付金又は文部科学省の放射線監視等交付金により、更新又は新設した震度計の数を示している。
注(2)  気象庁及び防災科研の強震計の双方に1km未満の位置にある震度計が計7台(福島、千葉、新潟、山梨、長野、愛知、山口各県に各1台)あり、計欄の47台及び193台には、それぞれ上記の7台が含まれている。
注(3)  消防庁の防災情報通信設備整備事業交付金又は消防防災施設整備補助金(平成18年度以降)のほか、総務省の地域活性化・生活対策臨時交付金により更新又は新設した、気象庁又は防災科研の強震計を分岐利用するための分岐装置の数を示している。

 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 京都府は、平成22年度に防災情報通信設備整備事業交付金により、府内に設置した震度計42台及び処理装置の更新等を事業費2億0168万余円(交付金同額)で実施している。これら震度計の設置状況等を検査したところ、同府が設置した震度計42台のうち7台(交付金相当額1630万余円)については、防災科研が設置した強震計との距離が1km未満の地点に設置されており、近接していた。そして、このうち2台(交付金相当額480万余円)については、役所等の同一敷地内に同府の震度計と防災科研の強震計が隣接して設置されていた。
 同交付金の交付要綱によると、気象庁又は防災科研が設置した強震計が近接している場合には、当該強震計の震度情報を活用してもよいこととされていることから、同府は、震度情報ネットワークの更新に当たり、防災科研が設置した強震計の震度情報の活用の可否について十分検討する必要があったと認められる。

 また、分岐装置の設置状況をみると、表8 のとおり、43都府県が分岐装置を設置して気象庁又は防災科研が設置した計360台の強震計の震度データを活用している。これらの強震計360台のうち、同交付金等により更新等を行った分岐装置を介している強震計は325台である。
 一方、近年、気象庁からの地震情報の提供が短時間で行われるようになったことなどから、同庁の発表する地震情報を初動体制の確立の基準にするなどしていて、分岐装置を介して同庁及び防災科研の震度データを市町村等が直接入手することを取りやめている事例も見受けられた。

<参考事例1>

 北海道は、平成22年度に実施した震度情報ネットワークの更新に当たり、気象庁及び北海道のシステム等のデータ転送の高速化が図られたことなどにより、同庁からの地震情報の提供が短時間で行われるようになったこと、分岐装置に係る維持管理費が多額に上っていることについて十分に検討を行い、消防庁と協議を行った上で、従前143か所で実施していた分岐装置を介した震度データの入手を取りやめている。協議の際、消防庁は、分岐装置を介した震度データの入手を取りやめる条件として、該当する市町村の同意があること及び地震発生時において防災関係職員等の初動要員に対する一斉参集手段が確保されていることを北海道に提示した。そして、提示を受けた北海道は、上記143か所の全てにおいて上記2条件を満たしていると判断し、分岐装置を介して気象庁及び防災科研の震度データを市町村等が直接入手することを取りやめることにしたものである。

 以上のことから、今後、地方公共団体において観測機器等の新設及び更新を行うに当たっては、気象庁又は防災科研の同種の観測機器の設置状況やシステム等の更新状況を把握するとともに、十分な連携を図るなどして、観測機器等の新設及び更新の必要性について十分に検討し、もって、効率的な予算執行に努める必要があると認められる。

エ 関係機関が整備した観測機器で得られた観測データの気象庁における活用状況

 気象庁以外の関係機関の観測機器で得られた観測データのうち、気象庁の地震、津波及び火山噴火に係る予報、警報等の発表等に必要な観測データについては、同庁に提供されている。そして、同庁に提供された観測データは、同庁の観測データと合わせて解析処理された後、予報、警報等の発表等に活用されている。
 観測対象別、観測機器の種類別に、気象庁への観測データの提供状況及び同庁における当該観測データの主な活用対象をみると、表9 のとおりとなっている。
 地震等の観測機器についてみると、防災科研及び国立大学法人の高感度地震計、防災科研及び地方公共団体の強震計等、国土地理院のGPS等の機器数が多くなっている。このうち、防災科研は、前記のとおり、おおむね等間隔になるように高感度地震計や強震計を全国に整備しており、気象庁の情報提供の目的にも活用される機器数が多くなっている。

表9  気象庁への観測データの提供状況及び同庁における観測データの活用対象(平成24年3月31日現在)

(単位:台)

観測対象 観測機器の種類 気象庁に観測データの提供を行っている観測機器の数 内訳(機関名) 気象庁における観測データの主な活用対象 常時観測用の観測機器の数(参考)
独立行政法人 国立大学法人 地方公共団体 緊急地震速報 震源に関する情報(震源・地震規模) 震度情報 津波警報、津波注意報、観測情報 噴火警報、噴火予報

東海地震に関連する情報

国土地理院 国土交通省 海上保安庁 防災科研 産総研 海洋研   該当法人数
地震等 高感度地震計
1,122
2
0
0
786
25
25
247
9
37
 
 
 
 
1,252
広帯域地震計
93
0
0
0
73
0
20
0
0
0
 
       
150
強震計等
3,993
0
0
0
1,056
0
0
0
0
2,937
 
 
 
 
 
6,647
GPS等
1,224
1,224
0
0
0
0
0
0
0
0
 
 
 
 
 
1,549
ひずみ計等
72
3
0
0
47
20
0
0
0
2
 
 
 
 
 
296
地下水観測井等
58
0
0
0
0
58
0
0
0
0
 
 
 
 
 
199
検潮儀・験潮儀
52
27
0
20
0
0
0
0
0
5
 
 
 
 
 
53
津波計等
44
0
15
0
3
0
24
2
1
0
 
 
 
 
 
44
6,658
1,256
15
20
1,965
103
69
249
9
2,981
10,190
火山 地震計
165
0
12
0
49
0
0
104
8
0
 
 
 
 
 
318
GPS
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
 
 
 
 
 
99
傾斜計
41
0
1
0
23
0
0
17
4
0
 
 
 
 
 
86
空振計
9
0
6
0
0
0
0
3
1
0
 
 
 
 
 
42
カメラ
52
0
49
0
0
0
0
3
2
0
 
 
 
 
 
60
全磁力計等
4
0
0
0
0
0
0
4
1
0
 
 
 
 
 
84
272
0
68
0
72
1
0
131
8
0
689
合計
6,930
1,256
83
20
2,037
104
69
380
10
2,981
10,879
(注)
 気象庁における「緊急地震速報」の発表に活用されている観測機器は、気象庁の観測機器以外では、防災科研の高感度地震計のみである。

 また、気象庁における観測データの活用の概要は、次のとおりである。
 すなわち、気象庁の緊急地震速報の発表は、同庁の強震計(常時観測用631台のうち215台)の観測データのほか、上記防災科研の高感度地震計(786台)の観測データを活用して行われている。気象庁が行う緊急地震速報のための震源及び地震規模の推定には、同庁及び防災科研それぞれの観測機器によって異なる手法が用いられているが、同庁は、自らが設置した観測機器及び防災科研が設置した観測機器を活用し、それぞれの推定手法の特徴を生かすことで、震源及び地震規模の推定の精度が高まるとしている。
 気象庁の震源に関する情報(震源及び地震規模)の発表は、防災科研の高感度地震計の観測データや、国立大学法人の高感度地震計の観測データも活用して行われている。防災科研及び国立大学法人が観測データの提供を行っている高感度地震計の合計機器数(防災科研786台、国立大学法人計247台、合計1,033台)は、気象庁が自ら設置し震源及び地震規模の決定に活用している高感度地震計の機器数(常時観測用206台のうち201台)の約5倍となっており、同庁が行う震源に関する情報の発表等に際して、防災科研及び国立大学法人の高感度地震計が果たす役割は大きなものとなっている。
 気象庁の震度情報の発表は、防災科研の強震計(1,056台のうち震度演算機能が付与されている996台)の観測データや、地方公共団体の震度計の観測データも活用して行われている。防災科研及び地方公共団体が観測データの提供を行っている強震計等の合計機器数(防災科研996台、地方公共団体計2,937台、合計3,933台)は、気象庁が自ら設置し震度情報の発表に活用している強震計の機器数(常時観測用631台のうち622台)の6倍以上となっており、同庁が行う震度情報の発表等に際して、防災科研及び地方公共団体の強震計等が果たす役割は大きなものとなっている。
 一方、火山の観測機器についてみると、いずれの観測データも気象庁の噴火予報、警報等の発表に活用されている。このうち、地震計、傾斜計及びカメラについてみると、気象庁以外の関係機関が観測データの提供を行っている観測機器の合計機器数(地震計165台、傾斜計41台、カメラ52台)は、同庁が自ら設置し噴火予報、警報等の発表に活用している観測機器の機器数(同155台、同66台、同62台)とほぼ同じになっており、同庁が行う噴火警報及び噴火予報の発表等に際して、他機関の観測機器も重要な役割を果たしている。

オ 国土交通省の地震計ネットワークの整備状況

 国土交通省は、7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機として、前記のとおり、事務所等における地震発生時の初動体制の決定に資することを目的として、主に7年度から9年度にかけて、事務所等及び事務所等が管轄する出張所並びにこれらの事務所等が管理する堤防、道路、ダム等に強震計750台(24年3月31日現在の台帳上の取得価格11億8036万余円)を設置し、地震計ネットワークを整備している。
 事務所等は、地震発生時、強震計が観測した観測データのうち計測震度及び気象庁から送信される震度情報を基に、あらかじめ事務所等で定めた基準に従って、管内の河川・道路施設等の点検を実施している。
 事務所等における地震計ネットワークの24年3月31日現在の活用状況をみると、表10 のとおり、52事務所等においては、強震計又は事務所等の表示装置の故障等により、一部の観測データ(計147台分、台帳上の取得価格1億4770万余円)を取得することができなくなっており、地震計ネットワークの一部が初動体制の決定のために活用されていない状況となっている。

表10  地震計ネットワークの活用状況(平成24年3月31日現在)
整備局等名    
事務所等数 1台以上の地震計の観測データを取得できない事務所等数 局管内の地震計(台) 事務所等において、観測データを取得することができない地震計(台)
北海道開発局
10
4
185
7
東北地方整備局
26
6
99
10
関東地方整備局
27
5
105
8
北陸地方整備局
17
4
53
12
中部地方整備局
25
5
87
14
近畿地方整備局
20
16
93
72
中国地方整備局
16
6
54
7
四国地方整備局
13
1
24
4
九州地方整備局
21
5
42
13
沖縄総合事務局
1
0
8
0
176
52
750
147

 また、国土交通省は、8年12月に、気象庁との間で「洪水予報業務の高度化等のための河川及び気象等に関する情報のリアルタイム交換についての協定」を締結している。この協定は、両機関がそれぞれ収集している河川、気象、地震等に関する情報を即時に交換することとするものである。しかし、国土交通省の強震計は事務所等における初動体制の決定に資する必要な機能は確保しているものの、計測震度を気象庁へ送信するために必要な同庁の検定を受けていなかったため、協定締結時に、同庁への計測震度の送信については調整中とされていて、実際には送信は行われていなかった。その後、気象庁は、市町村単位の震度情報を都道府県から取得できるようになり、国土交通省からの情報提供を必要としなくなったことから、地震計ネットワークの計測震度は同庁に送信されないまま現在に至っている。
 地震計ネットワークの整備が開始された7年度当時は、気象庁が発表する震度観測点の数が十分でなかったことから、地震計ネットワークは事務所等における初動体制の決定のために有用であったと思料される。一方、24年3月31日現在、気象庁は、全国4,309の震度観測点をネットワーク化しており、地震発生時、各事務所等が同庁から送信される震度情報を利用することにより、初動体制の決定を行うことができる地域が広がっていると認められる。現に、強震計又は事務所等の表示装置の故障等により、一部の観測データを取得できない前記52事務所等においては、同庁から送信される震度情報を利用することで、特段の問題もなく地震発生時の初動体制を決定している。なお、このような状況の中で、国土交通省は、地震計ネットワークの運営維持のための機器更新の要否について19年度に検討を始めていたものの、23年度に至っても結論を得ていなかったところ、会計検査院の24年次の検査を受けたこともあり、24年8月に、地震計ネットワークの今後の運用方針を策定した。この運用方針においては、気象庁から送信される震度情報を利用することで事務所等における初動体制の決定がほぼ可能になったことから、強震計の更新等については、同庁が発表する震度観測点と河川・道路施設等の設置場所が離れていて震度観測の精度を向上させる必要がある場合等に限定した上で、これに該当しない強震計については廃止することとしている。
 以上のことから、今後、国土交通省において、上記の運用方針に沿って強震計の絞り込みに向けた具体的な計画を策定し、地震計ネットワークの見直しを着実に進める必要があると認められる。

(4) 観測機器等に係る支障対策

ア 平成23年に発生した自然災害による観測機器の被災状況

 23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波が、東日本の広範囲にわたり甚大な被害を及ぼす一方、同年1月26日以降に発生した霧島山(新燃岳)での噴火による多量の火山灰や空振が鹿児島、宮崎両県の周辺地域に被害を及ぼしている。そこで、各機関が設置した観測機器に観測データが確実に保存されているか、観測機器で得られた観測データが、災害時においても確実に気象庁に送信され、同庁が発表する予報、警報等に活用されているかについて検査を実施した。
 同年1月以降に発生した地震、津波、火山噴火等による観測機器の被災状況及び24年3月31日現在の復旧状況をみると、表11 のとおり、故障又は亡失した機器数は計129台(地震等の観測機器110台、火山の観測機器19台)となっていた。観測機器の故障又は亡失の原因は、東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波の影響によるものが計97台あり、75%を占めている。また、24年3月31日までに復旧等した機器数は31台となっており、被災により故障又は亡失した機器数の24%にとどまっている。

表11  平成23年1月以降の観測機器の被災等の状況
(単位:台、千円)
機関名 観測対象 観測機器の種類 故障又は亡失した機器数 故障又は亡失の原因 修理により復旧又は更新した機器数(平成24年3月31日現在)

亡失した観測機器の台帳上の取得価格

東北地方太平洋沖地震 津波 火山噴火 台風等 落雷 劣化
気象庁 地震等 強震計 4 1 3 0 0 0 0 4 -
検潮儀・験潮儀 6 0 4 0 0 1 1 3 -
津波計等 13 0 6 0 1 2 4 9 886
火山 地震計 2 0 0 2 0 0 0 0 -
GPS 3 0 0 3 0 0 0 0 -
傾斜計 1 0 0 1 0 0 0 0 -
カメラ 1 0 0 1 0 0 0 0 14,621
小計 30 1 13 7 1 3 5 16 15,507
国土地理院 地震等 GPS等 7 0 6 0 1 0 0 4 4,233
地下水観測井等 1 1 0 0 0 0 0 0 -
検潮儀・験潮儀 1 0 1 0 0 0 0 0 2,174
小計 9 1 7 0 1 0 0 4 6,408
国土交通省 地震等 強震計 20 0 20 0 0 0 0 4 9,975
小計 20 0 20 0 0 0 0 4 9,975
海上保安庁 地震等 GPS等 3 3 0 0 0 0 0 0 -
検潮儀・験潮儀 1 0 1 0 0 0 0 0 -
小計 4 3 1 0 0 0 0 0 -
独立行政法人 防災科研 地震等 高感度地震計 9 9 0 0 0 0 0 0 131,661
強震計 42 7 35 0 0 0 0 0
小計 51 16 35 0 0 0 0 0 131,661
国立大学法人 地震等 ひずみ計等 2 0 0 0 0 2 0 0 -
地下水観測井等 1 0 0 0 0 1 0 0 -
火山 地震計 7 0 0 1 4 2 0 6 -
空振計 1 0 0 1 0 0 0 0 -
カメラ 1 0 0 0 0 1 0 1 -
  全磁力計等 3 0 0 3 0 0 0 0 -
小計 15 0 0 5 4 6 0 7 -
地震等 計 110 21 76 0 2 6 5 24 148,931
火山 計 19 0 0 12 4 3 0 7 14,621
合計 129 21 76 12 6 9 5 31 163,552
注(1)  東北地方太平洋沖地震は、平成23年3月11日以降に発生した本震及び余震を含む。
注(2)  国立大学法人の「地震等」の観測機器について該当があるのは、国立大学法人東京大学で、「火山」の観測機器について該当があるのは、東京、東京工業、京都の3国立大学法人である。

イ 観測網に係る支障等の発生及び対策の状況

(ア) 支障等の発生状況

 気象庁が発表する予報、警報等の情報は、前記のとおり、同庁の観測データのほか、同庁以外の関係機関から提供を受けた観測データを根拠に発表されている。そこで、気象庁及び同庁に観測データを提供している関係機関のうち国立大学法人を除く関係機関(以下「データ提供機関」という。)が整備した観測機器及び観測機器で得られた観測データを処理するサーバ等(以下「サーバ」という。)で構成される観測網における、東北地方太平洋沖地震が発生した23年3月11日からの1か月間の観測データの保存等の状況について検査を実施した。
 その結果、停電や通信障害により、観測機器から気象庁への観測データの提供が即時に行われていない状態(以下「支障」という。)及び観測データが保存されていない状態(以下「欠測」という。)が発生していて、上記アの故障又は亡失した観測機器を除いた支障及び欠測の状況は、表12 のとおりとなっていた。
 このうち、防災科研及び産総研においては、サーバが設置されている茨城県つくば市で長時間の停電が発生したことにより、サーバが停止し、観測機器(防災科研996台、産総研103台、計1,099台)のデータが気象庁に提供されていなかった。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例2>

 防災科研は、強震計で得られた観測データを茨城県つくば市に所在する本部施設に設置したサーバに一度集約した後、気象庁に即時に転送し、同庁は、この観測データを震度情報として発表している。
 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際には、つくば市で最大震度6弱の揺れが発生したことにより、同市で長時間の停電が発生し、防災科研では長時間の停電に耐え得る対策を施していなかったため、停電の影響等を受けるなどして、同日15時頃から12日12時頃までの間、本部施設に設置されているサーバが停止した。
 これにより、全国996か所の強震計で得られた観測データが気象庁に提供できなくなり、996か所のうち、同庁が震度情報の発表の対象としていた775か所の強震計が存する地域の震度情報が、前記の時間帯において発表できない状態となっていた。

 また、防災科研、気象庁及び国土地理院の観測機器、それぞれ175台、85台、57台において、停電により観測機器等の機能が停止したり、通信障害によりサーバへ観測データの送信ができなかったりしたため、欠測が生じている。

表12  観測網に係る支障及び欠測の発生状況
機関名
観測機器の種類
支障の事象
 
支障時間(時間)
左のうち欠測時間(時間)
支障が生じた機器数(台) サーバ障害によるもの 延べ時間 1台当たり サーバ障害による延べ時間 欠測が生じた機器数(台) 延べ時間
平均支障時間 最長支障時間 最短支障時間
気象庁 高感度地震計 通信障害 8 - 1,904.7 238.0 506.9 13.2 - 8 1,904.7
停電 22 - 847.3 38.5 238.7 1.9 - 22 847.3
26 - 2,752.0 105.8 506.9 1.9 - 26 2,752.0
広帯域地震計 通信障害 1 - 162.8 162.8 162.8 162.8 - 1 162.8
停電 1 - 39.5 39.5 39.5 39.5 - 1 39.5
2 - 202.3 101.1 162.8 39.5 - 2 202.3
強震計 通信障害 22 - 2,889.0 131.3 506.9 5.4 - 22 2,889.0
停電 31 - 1,846.1 59.5 572.1 1.9 - 31 1,846.1
49 - 4,735.1 96.6 572.1 1.9 - 49 4,735.1
ひずみ計等 停電 4 - 34.8 8.7 19.9 3.0 - 4 34.8
検潮儀・験潮儀 通信障害 1 - 52.6 52.6 52.6 52.6 - 1 52.6
津波計等 通信障害 1 - 61.1 61.1 61.1 61.1 - 1 61.1
停電 3 - 77.5 25.8 71.7 2.9 - 3 77.5
3 - 138.7 46.2 71.7 2.9 - 3 138.7
データ提供機関 国土地理院注(2) GPS等 停電 57 - 7,662.0 134.4 738.0 3.0 - 57 7,662.0
国土交通省 津波計等 通信障害 6 - 4,155.7 692.6 698.8 689.2 - 6 4,155.7
海上保安庁 検潮儀・験潮儀 停電 1 - 23.0 23.0 23.0 23.0 - 1 23.0
独立行政法人 防災科研注(3) 高感度地震計 通信障害又は停電 163 - 5,381.4 33.0 734.4 0.0 - 163 5,381.4
広帯域地震計 通信障害又は停電 12 - 226.8 18.9 101.7 0.0 - 12 226.8
強震計 停電 996 996 21,281.2 21.3 21.3 21.3 21,281.2 -注(3) -注(3)
産総研 高感度地震計 停電 25 25 2,333.3 93.3 93.3 93.3 2,333.3 - -
ひずみ計等 停電 20 20 1,866.6 93.3 93.3 93.3 1,866.6 - -
地下水観測井等 停電 58 58 5,414.3 93.3 94.3 93.3 5,413.3 1 0.9
地方公共団体 地方公共団体 震度計 通信障害又は停電 2 - 1,186.9 593.4 753.2 433.7 - 2 1,186.9
注(1)  気象庁の観測機器については、1台で異なる支障の事象が生じた場合、事象ごとに機器数を計上しているため、各事象の機器数を合計しても計欄の機器数と一致しない。
注(2)  国土地理院は欠測の記録を3時間以上発生したもののみ記録していたため、1台当たり最短支障時間は3時間となる。
注(3)  防災科研の高感度地震計及び広帯域地震計については、支障時間の記録が保存されていないため支障時間(延べ時間)欄には欠測時間を記載した。また、防災科研の強震計については、本部施設の停電時間を支障時間(延べ時間)とし、記録のない欠測時間等は「-」とした。

 各種観測データは、気象庁が発表する地震に関する予報、警報等の基礎となる情報であることから、観測データが停電等の影響を受けることなく確実に同庁に提供されることが肝要である。また、地震被害の軽減や地震現象発生の予測及び解明のための調査研究等に活用されている情報であることから、災害発生時においても欠測が生じない体制を構築する必要があると認められる。

(イ) サーバ及び観測機器の停電対策の状況

 前記(ア)のとおり、東北地方太平洋沖地震発生後、複数のデータ提供機関において停電を原因とする支障や欠測が生じていた。一方で、以前から長時間の停電に耐え得るよう、発動発電機用の燃料を備蓄するなどの対策を講じていた結果、サーバ障害を防いだ例も見受けられた。そこで、サーバや観測機器が停電時においても通常時と同様に気象庁に観測データを提供できる時間(以下「稼働可能時間」という。)について、23年3月31日及び24年3月31日現在の状況をみると、表13 のとおりとなっていた。

表13  サーバ及び観測機器の稼働可能時間
機関名 観測機器の種類 平成23年3月31日現在の状況 24年3月31日現在の状況
バックアップセンターの有無注(1) 稼働可能時間(時間) バックアップセンターの有無注(1) 稼働可能時間(時間)
サーバ 観測機器 サーバ 観測機器
  台数   台数
気象庁 高感度地震計 72 2.5 6 72 24 3
5 86 48 1
24 99 72 202
48 1
72 14
広帯域地震計 72 5 9 72 72 20
24 11
強震計 72 1 40 72 1 13
2.5 6 24 3
5 86 72 610
24 494
ひずみ計等 72 1 37 72 1 37
73 3 73 3
検潮儀・験潮儀 72 48 47 72 48 22
    72 25
津波計等 72 48 108 72 48 52
72 7 72 63
データ提供機関

国土地理院

GPS等 72 24 351     24 291
27 372 72 27 336
72 526     72 651
ひずみ計等 72 8 3 72 8 3
検潮儀・験潮儀 72 24 27 72 24 27
国土交通省 津波計等 24 -注(2) 15 24 -注(2) 15
海上保安庁 検潮儀・験潮儀 0.16 7.5 20 0.16 7.5 20
GPS等 24 0.08 22 24 0.08 22
24 5 24 5
独立行政法人 防災科研 高感度地震計 10 1 786 72 1 786
広帯域地震計 10 1 73 72 1 73
強震計 0.16 1 6 注(3) 72 1 1,394
24 1,033 24 1,033
10 1 1,388
産総研 高感度地震計 2.5 0.25 49 2.5 0.25 49
24 6 24 6
地下水観測井等 2.5 0.5 25 2.5 0.5 25
2 55 2 55
ひずみ計等 2.5 0.25 1 2.5 0.25 1
1 18 1 18
12 7 12 7

海洋研

高感度地震計 2 2 5 2 2 5
津波計等 2 5 2 5
注(1)
 本表におけるバックアップセンターとは、停電や通信障害により本部等に設置されているサーバに障害が生じた場合、即時に切り替えて運用ができる代替サーバ等を設置している施設のことである。
注(2)
 太陽光発電による給電及び蓄電を示している。
注(3)
 防災科研は、強震計について、平成24年3月に本部機能の一部を有した代替サーバを兵庫県三木市に設置したため、本部施設のサーバ機能が停止した場合でも、代替サーバが機能することで、震度3以上の観測データを気象庁に提供することができるようになった。

 また、23年3月31日現在のサーバ及び観測機器の稼働可能時間は、機関や観測機器の種類によって区々となっている状況が見受けられた。24年3月31日現在のサーバ及び観測機器の稼働可能時間をみると、気象庁、国土地理院及び防災科研は、23年3月に比べてサーバ又は観測機器の稼働可能時間を延長したり予備のサーバを別の地域に設置したりするなどして停電時の対策強化を図っているものの、依然として機関や観測機器の種類によって稼働可能時間が区々となっていた。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例3>

 気象庁は緊急地震速報の基礎データとなる震源及び地震規模の推定に当たっては、同庁が整備した強震計で得られたデータと、防災科研が整備した高感度地震計で得られたデータの双方を用いて解析している。気象庁及び防災科研のサーバ及び観測機器の稼働可能時間について検査したところ、サーバについては、双方とも72時間対応となっていたが、観測機器については、同庁の強震計のほとんどが72時間対応であるのに対して、防災科研の高感度地震計は1時間対応となっていることから、停電時において観測データの提供に差異が生じてくるおそれがある。このような状況となっているのは、気象庁及び防災科研の担当者間では観測機器の設置や観測データの流通については調整がなされているものの、国として、観測機器から得られる観測データを活用する同庁の予報、警報等の重要性に応じるなどした稼働可能時間に対する指針等を整備していないことによるものである。

 気象庁は、気象業務法に基づき、地震に関する観測網を確立し維持することとされていて、自らの観測網で得られる観測データのみで同法に基づく予報、警報等を行うことに問題はないとしている。そして、同庁は、データ提供機関から多くの観測データの提供を受けているものの、データ提供機関の観測機器等については調査研究等の目的で整備されていることから、支障対策に関する仕様は各観測機器の目的を果たすために必要な条件から決まるものとして、特に指針等を示していない。
 また、地震に関する観測等の推進について総合的かつ基本的な施策を立案する唯一の機関である地震本部においても、関係機関が観測データを気象庁へ提供する際の停電等の支障対策は、同本部が所掌する地震調査研究ではなく防災対策であるとして、当該支障対策に係る指針等を示していない。
 しかし、気象庁がデータ提供機関の震度計、津波計等で得られた観測データの提供を受けられない場合、同庁はきめ細かな観測結果の発表ができない状態になることになる。そして、各地域における観測結果は、国及び地方公共団体の初動体制の確立や、的確な被害状況の把握等に影響を与える重要な情報であることから、この情報が一部でも発表できない状況になることは望ましくない事態である。
 このように、観測網の支障対策が各機関によって区々となっているのは、国として、各機関が整備した観測網について、気象庁が発表する予報、警報等の基礎データの取得源として活用するなどの防災対策の見地からの総合的な調整を行う機関がないことによるものである。
 したがって、国は、気象庁が発表する予報、警報等が国等の初動体制の確立や的確な被害状況の把握に大きな影響を与える状況を踏まえて、防災対策の見地から、災害発生時等においても、各データ提供機関の観測データが確実に同庁に提供されるよう、重要性に応じるなどした総合的な支障対策を検討する必要があると認められる。

(5) 観測データの流通及び活用

ア 関係機関における観測データの流通の状況

 地震の観測データの流通については、16年3月31日付けで9国立大学法人(北海道、弘前、東北、東京、名古屋、京都、高知、九州、鹿児島の各国立大学法人)、防災科研、産総研、気象庁等の計17機関が相互に締結した「地震に関する観測データの流通、保存及び公開についての協定」(以下「16年協定」という。また、16年協定や以下に記載する協定には、各協定の実施に関して必要な細目的事項についての協定を含む。)、23年3月1日付けで海洋研、防災科研及び気象庁が三者間で締結した「地震・津波観測監視システムに係る観測データ等の相互交換に関する協定書」等に基づき、各機関の常時観測点の観測データが即時に交換されている。
 一方、火山の観測データの流通の状況は、次のとおりである。
 すなわち、図2-1 のとおり、気象庁及び防災科研が23年2月1日付けで締結した「火山観測データの交換に関する協定」に基づき、両機関が常時観測している火山の観測データについては両機関の間において即時に交換されている。一方、両機関以外の関係機関に対する観測データの提供は、上記の協定に基づき防災科研が申請を受け付けて許可した上で即時に行うことができることとなっている。
 また、火山の常時観測を行っている8国立大学法人(北海道、弘前、東北、東京、東京工業、名古屋、京都、九州の各国立大学法人)の観測データについては、気象庁との二者間の協定に基づき、各国立大学法人が観測対象としている全て又は一部の火山の観測データが同庁に即時に提供されるなどしていた。そして、5国立大学法人(北海道、東北、東京、名古屋、九州の各国立大学法人)の観測データは、図2-2 のとおり、23年9月から24年3月にかけて気象庁、防災科研及び各国立大学法人の三者間で締結された協定により、同庁のほか防災科研にも即時に提供されるようになっている。

図2  火山の観測データの流通概念図

図2-1 23年2月1日付け二者協定   図2-2 23年9月以降順次締結の三者協定

地震・火山に係る観測等の実施状況についての図1

気象庁と防災科研との二者協定により、観測データの即時交換が可能

両機関以外の関係機関に対しては、防災科研が申請を受け付けて許可した上で、気象庁及び防災科研の観測データを即時提供可能

  各国立大学法人と気象庁、防災科研との三者協定により、三者間では観測データの即時交換が可能

 以上のように、地震及び火山の観測データについては、いずれも即時流通の仕組みが構築されているが、火山の常時観測を行っている上記8国立大学法人の観測データについては、各国立大学法人の全ての観測データの即時交換までは行われていなかった。これは、各火山の地域性、通信回線の問題等によるものであり、共通の研究課題等の実施に当たり、該当する法人間で必要に応じて即時交換が行われている状況である。

イ 国立大学法人等における観測データの活用状況

 自ら観測機器を設置して観測を行っている独立行政法人及び国立大学法人は、自らの観測データや、前記の協定等に基づき他の関係機関から提供を受けた観測データを活用するなどして、科学技術・学術審議会の観測研究計画に基づく研究課題や文部科学省等から委託された地震、津波及び火山の調査研究に取り組んでいる。
 地震の観測データについては、16年協定において、他の関係機関から提供された観測データを含む資料やこれらの観測データを用いた観測研究の成果を公表する際には、提供された観測データを用いるなどした旨を当該公表資料等に明記するなどの取扱いが定められている。16年協定の締結機関のうち、前記の9国立大学法人及び防災科研における21年度から23年度までの間の、上記取扱いに沿った観測研究成果の公表状況をみると、表14 のとおり、いずれの機関においても、各機関に所属する研究者が学術論文や地震調査委員会等の会議の資料を作成する際等に、提供された地震の観測データを活用し、当該成果物を公表した実績がある。防災科研については、東北地方太平洋沖地震発生後に、当該地震の観測データの解析を順次実施し、その結果を地震調査委員会等に逐次報告したことなどにより、23年度の資料提出等の件数が前年度から大幅に増加している。

表14  提供された地震の観測データを含む観測研究成果の公表状況
(単位:件)
年度 機関名 学術論文 地震調査委員会へ提出する資料 地震予知連絡会へ提出する資料 定例の判定会へ提出する資料 その他観測研究成果
平成21 国立大学法人 83 18 39 12 130 282
防災科研 14 34 32 23 108 211
22 国立大学法人 71 15 33 12 172 303
防災科研 9 42 13 41 71 176
23 国立大学法人 67 17 50 12 147 293
防災科研 8 70 29 46 94 247
注(1)  「地震調査委員会」は、地震本部に設置された組織で、地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係機関の調査結果等を収集、整理、分析し、これに基づき総合的な評価を行っている。
注(2)  「地震予知連絡会」は、地震予知に関する観測、調査研究等で得られた結果の情報交換やそれらに基づく学術的検討を行うための組織である。昭和44年4月に設置され、国土地理院が同連絡会の庶務を処理している。
注(3)  「定例の判定会」は、地震防災対策強化地域判定会(大規模地震対策特別措置法に基づき指定された「地震防災対策強化地域」の観測データに異常が現れた場合に、それが大規模な地震に結び付く前兆現象であるか緊急に判断するために開催される。)の委員が出席して、毎月1回開催される会合である。

  ウ 地方公共団体の観測機器で得られた地震波形データの活用状況

 消防庁及び気象庁は、地震対策の推進のため、14年9月に、地方公共団体が設置している震度計で得られる地震波形データを収集し、調査研究を行う者に当該データを提供することとして、各都道府県に対して協力を依頼する文書を発している。地震波形データの収集の対象となるのは、おおむね最大震度5強以上を観測した地震であり、当該地震においておおむね震度5弱以上を記録した観測点の地震波形データを気象庁が収集することとしている。
 また、消防庁は、震度情報ネットワークにおける機器の老朽化や震度情報の伝達の遅れなどの問題が指摘されたことから、16年9月から「次世代震度情報ネットワークのあり方検討会」を開催し、18年3月に最終報告書をとりまとめている。この最終報告書によると、地震波形データは、地震災害の軽減を図っていく上で貴重な観測データであり、国立大学法人、研究機関等でも利活用され、その成果が地域に還元されることが地域の防災力向上に大きく貢献することになることから、保存・蓄積される仕組みが必要であるとしている。そこで、消防庁は、震度情報ネットワークの更新に当たって、震度計の仕様に地震波形データを記録するための収録容量を明示したり、地震波形データのデータ形式を統一したりすることとした。
 上記最終報告書では、地震波形データを有効に活用するための方策として、地震波形データを流通させる仕組みの構築が望ましいとしており、流通させる仕組みの構築に当たっては、地震波形データの利用主体となり得る国や大学等の研究機関が中心となり、地方公共団体と連携して取り組むことが望ましいとしている。
 そこで、都道府県の震度計で得られた地震波形データの他機関への提供状況についてみると、表15 のとおり、気象庁、防災科研及び国立大学法人に対する地震波形データの提供の実績があったのは、震度5弱以上の地震を観測した東北地方及び関東地方の都県を中心とした26都道府県であった。一方、21府県では、近年震度5弱以上の地震が発生していないことなどから提供の実績がなかった。上記26都道府県のうち21都県については、前記消防庁等からの依頼に基づき、おおむね震度5弱以上を記録した観測点の地震波形データを気象庁に提供したものであり、また、研究機関である防災科研及び国立大学法人のいずれか又は双方に地震波形データを提供した実績があったのは22都道府県であった。

表15  47都道府県の地震波形データの提供実績
都道府県名 提供の有無(提供実績のあるものに○)(平成21年度〜23年度)
  気象庁 防災科研 国立大学法人
北海道    
青森県
岩手県  
宮城県  
秋田県  
山形県  
福島県  
茨城県  
栃木県  
群馬県  
埼玉県  
千葉県  
東京都  
神奈川県  
新潟県    
富山県        
石川県        
福井県        
山梨県  
長野県  
岐阜県        
静岡県
愛知県    
三重県    
滋賀県  
京都府        
大阪府    
兵庫県        
奈良県        
和歌山県    
鳥取県        
島根県        
岡山県        
広島県    
山口県        
徳島県        
香川県        
愛媛県        
高知県        
福岡県        
佐賀県        
長崎県        
熊本県    
大分県        
宮崎県        
鹿児島県        
沖縄県    
計(箇所数) 26 21 6 18

エ 観測、調査研究等の成果の活用状況

(ア) 防災計画等の見直しへの活用

 地震、津波及び火山の観測、調査研究等の成果は、国及び地方公共団体の防災計画等の見直しにも活用されている。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例2>

 文部科学省は、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトにおいて、平成19年度から23年度までの間に、国立大学法人東京大学に委託して、首都圏一帯に地震計(同法人の購入分286台(台帳上の取得価格計9億4986万余円))等を設置して、観測等を実施した。同プロジェクトによる観測の解析結果を受けて、東京都は、24年4月18日に「首都直下地震等による東京の被害想定」(18年5月の被害想定の全面的な見直し)を公表し、今後、被害想定の結果を踏まえた地域防災計画の見直しを行うこととしている。

(イ) ハザードマップの作成への活用

 地震、津波、火山噴火等に備えて、各地方公共団体や複数の地方公共団体等が構成員となって発足した協議会等により、地震、津波、火山噴火等に係る危険予測区域図(以下「ハザードマップ」という。)が作成されている。会計検査院が全国の1,742市町村から提出を受けた調書を集計したところ、表16から表18までのとおり(都道府県別の集計結果については、巻末別表2から別表4までを参照(3か所参照 ))、24年4月1日現在で、地震、津波及び火山噴火に係るハザードマップを作成済(複数の市町村が共同で作成した場合を含む。)としている市町村は、それぞれ760市町村、388市町村、86市町村であり、今後作成予定としている市町村は、それぞれ105市町村、143市町村、21市町村となっている。防災・減災の対策に資するハザードマップの作成に当たっては、今後とも、国、独立行政法人、国立大学法人等関係機関の観測、調査研究を通じて蓄積され又は新たに判明した知見や観測データの解析結果が有効に活用されることが望まれる。

表16  地震防災ハザードマップの作成状況等
市町村数 作成済市町村数 未作成市町村数
A=B+C B B/A C C/A うち予定あり
1,742 760 43.6% 982 56.3% 105
注(1)  平成24年4月1日現在の地震防災ハザードマップの作成状況について、市町村から徴した調書を集計したものである。
注(2)  8種類(総合被害、震度被害、地盤被害、液状化、建物被害、火災被害、避難被害、その他)の地震防災ハザードマップのうち、1種類でも作成していれば、「作成済」としている。
注(3)  地震防災ハザードマップを未作成の市町村のうち、「うち予定あり」は作成を予定・検討している市町村の数である。地震防災ハザードマップを作成済みの市町村が、他の種類の地震防災ハザードマップの作成を予定・検討しているものは含んでいない。

表17 津波ハザードマップの作成状況等
市町村数 作成対象市町村数 作成済市町村数 未作成市町村数
A=B+C B B/A うち見直し済み うち見直し予定 C C/A うち予定あり
1,742 664 388 58.4% 57 284 276 41.5% 143

注(1)  平成24年4月1日現在の津波ハザードマップの作成状況について、市町村から徴した調書を集計したものである。
注(2)  「作成対象市町村数」は、沿岸部に所在している市町村の数であるが、沿岸部に所在していないが津波ハザードマップを作成済又は作成予定の市町村の数も加えている。
注(3)  津波ハザードマップを作成済みの市町村のうち、「うち見直し済み」は、東北地方太平洋沖地震以降に見直しを行った市町村の数、「うち見直し予定」は同じく見直しを予定・検討している市町村の数である。
注(4)  津波ハザードマップを未作成の市町村のうち、「うち予定あり」は作成を予定・検討している市町村の数である。

表18 火山ハザードマップの作成状況等
市町村数 周辺市町村数 周辺市町村のうち作成済市町村数 周辺市町村のうち作成予定のある市町村数
A B B/A
1,742 165 86 52.1% 21
注(1)  平成24年4月1日現在の火山ハザードマップの作成状況について、市町村から徴した調書を集計したものである。
注(2)  「周辺市町村数」は、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会が選定している47火山から硫黄島を除いた46火山の周辺に所在している市町村の数であり、火山ハザードマップは既往の火山活動や火山周辺の状況等に応じて作成することとなるため、全ての周辺市町村において作成が必要になるとは限らない。

(6) 地方公共団体が実施している緊急情報の伝達

 住民に対して、緊急地震速報、津波警報等を伝達する手段としては、テレビ・ラジオによる放送、携帯電話会社の緊急速報メール等による伝達のほか、地方公共団体が実施しているJ-ALERTによる伝達がある。前記のとおり、J-ALERTの整備には、近年、多額の国費が投入されていることから、J-ALERTの整備、運用状況等に着目し、全1,742市町村から調書を徴して検査した。

ア J-ALERTの概要

 J-ALERTは、前記のとおり、消防庁が整備・運用しているシステムであり、図3 のとおり、緊急地震速報、津波警報、弾道ミサイル情報等の対処に時間的余裕がない事態に関する緊急情報(以下、単に「緊急情報」という。)を、人工衛星等を用いて国(内閣官房、気象庁から消防庁を経由)から、都道府県、市町村等に送信し、市町村が整備している同報系防災行政無線(以下「同報無線」という。)等の情報伝達用の機器を自動起動して、サイレン吹鳴や音声放送等を行うことにより、人手を介さずに瞬時に国から住民に伝達するものである。

図3  J-ALERTの概念図

図3J-ALERTの概念図

イ J-ALERTの整備状況

 J-ALERTの19年2月の運用開始後、国は、その整備を推進するため、J-ALERTの整備に係る事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の50%を交付税算入する地方財政措置を取るなどの取組を実施してきたが、21年度末におけるJ-ALERTの整備状況をみると、都道府県については46都道府県に整備されたものの、市町村については全市町村の約2割に当たる350市町村が整備したにとどまっている状況であった。
 このような状況の中で、消防庁は、21年度第1次補正予算により、状況に応じた内容の音声放送の実現や地上回線接続による受信機等の管理強化を図るなどJ-ALERTの高度化を図るとともに、全国の都道府県及び市町村においてJ-ALERTの整備を国費により一斉に行うこととして、防災情報通信設備整備事業交付金を都道府県に交付(市町村分は都道府県を介した間接交付)することとした。同交付金は、47都道府県及び1,729市町村(交付金交付後の市町村合併により、24年4月1日現在では1,720市町村)が交付を受けており、交付額は計92億1770万余円(都道府県の執行分1億5550万余円、市町村の執行分90億6219万余円)となっている。その結果、24年4月1日現在において、J-ALERTは、全都道府県に整備されるとともに、図4 のとおり、市町村については1,728市町村(注10) の99.4%に当たる1,719市町村に整備され、運用が開始されている。なお、同交付金は、前記のとおり、21年度第1次補正予算により措置されたが、その全額が22年度に予算を繰り越して執行されており、実際に同交付金によるJ-ALERTの整備事業が完了し、運用が開始された時期は、23年2月から同年4月までの間に集中していた。

 1,728市町村  1,742市町村のうち、東北地方太平洋沖地震の影響で、平成24年4月1日現在、J-ALERTが整備されていなかったり運用されていなかったりしている岩手、宮城、福島各県の14市町村は集計から除外している。

また、J-ALERTを整備していない9市町村は、その理由について、同報無線等の情報伝達用の機器の整備、改修に合わせて、J-ALERTの整備を実施する予定であるなどとしている。

図4  市町村のJ-ALERTの整備状況

図4市町村のJ-ALERTの整備状況

(注)
 市町村数は、平成24年4月1日現在の市町村数による。

ウ J-ALERTの運用状況

 J-ALERTは、受信アンテナ、受信機、自動起動機等で構成されている。このうち自動起動機は、人工衛星等から受信した緊急情報を人手を介さずに瞬時に住民に伝達するため、同報無線等の情報伝達用の機器を自動起動するために必要となる装置である。
 前記1,719市町村の自動起動機の設置状況をみると、図5 のとおり、1,241市町村(全体(1,728市町村)の71.8%)が設置するにとどまっている。なお、この1,241市町村には、情報伝達用の機器との関係で自動起動機を必要とせずに自動起動が可能なことから、自動起動機を設置せずに自動起動による情報伝達を行っている12市町村が含まれている。
 一方、J-ALERTの自動起動機を設置していない478市町村(全体(1,728市町村)の27.6%)は、その理由として、情報伝達用の機器がないこと、整備している情報伝達用の機器が古いため自動起動に対応できないことなどを挙げている。この478市町村のうち184市町村は、情報伝達用の機器の整備、改修に合わせて、今後、自動起動機を設置する予定としているが、294市町村は、多額の費用を要することなどから情報伝達用の機器の整備、改修の予定はなく、自動起動に対応する予定もないとしている。
 また、24年4月1日現在において、J-ALERTの自動起動機を設置した1,241市町村のうち、自動起動機を運用して屋外放送又は戸別受信機による住民への伝達を行うことができるようになっているのは1,150市町村であり、91市町村(全体(1,728市町村)の5.2%)は自動起動機を設置したものの運用には至っていない。自動起動機を運用していない91市町村は、その理由として、緊急情報を自動起動により伝達することに関して住民に周知し理解を得る必要があること、東北地方太平洋沖地震発生以降の活発な地震活動に伴い、緊急地震速報が適切に発表されない事態があったため、自動起動することを見合わせていること、情報伝達用の機器が整備・改修中であることなどを挙げている。
 以上のように、多額の費用を要するため情報伝達用の機器を整備していないことなどから、自動起動機を設置していなかったり、自動起動機を設置したものの運用していなかったりしていて、緊急情報を人手を介さずに瞬時に住民に伝達するというJ-ALERTの整備目的が達成されていない市町村が約3割を占める状況となっている。今後は、住民への周知・広報の実施、情報伝達用の機器の整備、改修の完了等に合わせて、自動起動機の運用を予定している市町村もあり、自動起動による緊急情報の伝達が可能となった市町村については、自動起動機の運用を開始することが望まれる。

図5  市町村のJ-ALERT自動起動機の設置、運用状況(平成24年4月1日現在)

図5市町村のJ-ALERT自動起動機の設置、運用状況(平成24年4月1日現在)

 緊急情報を伝達する同報無線等の情報伝達用の機器については、市町村合併により旧市町村単位で情報伝達用の機器の整備状況が異なっていたり、屋外放送用のスピーカーを沿岸部や土砂災害が想定される地域のみに設置したりなどしていて、市町村全域を対象としていない場合がある。
 そこで、J-ALERTの自動起動機を運用している1,150市町村において、情報伝達用の機器が、市町村全域のうち、どの程度の地域を対象としているかについてみたところ、表19 のとおり、市町村の全域を対象としている市町村が998市町村(全体(1,728市町村)の57.7%)、一部地域のみを対象としていて全域を対象としていない市町村が152市町村(同8.7%)となっていた。

表19  市町村のJ-ALERTの整備・運用状況(平成24年4月1日現在)
整備・運用状況 市町村数 人口(単位:千人)
J-ALERT整備済 1,719 (99.4%) 125,602 (98.5%)
  自動起動機設置済 1,241 (71.8%) 88,525 (69.4%)
  全域で運用 998 (57.7%) 60,431 (47.3%)
一部地域で運用 152 (8.7%) 20,617 (16.1%)
未運用 91 (5.2%) 7,477 (5.8%)
自動起動機未設置 478 (27.6%) 37,076 (29.0%)
J-ALERT未整備 9 (0.5%) 1,894 (1.4%)
1,728 (100.0%) 127,496 (100.0%)
注(1)  「人口」は、平成22年国勢調査による。
注(2)  「自動起動機設置済」の1,241市町村には、自動起動機を設置せずに自動起動による情報伝達を行っている12市町村が含まれている。

エ J-ALERTによる緊急情報の住民への伝達手段

 J-ALERTの自動起動機を運用している1,150市町村の住民への緊急情報の伝達手段についてみると、図6 のとおり、同報無線、MCA無線、有線(ケーブルテレビ、IP網等)等の通信設備を利用して屋外に設置したスピーカーにより情報伝達を行う屋外放送を1,095市町村が実施しており、主要な手段となっている。また、全世帯や屋外放送の難聴地域の世帯等に設置した戸別受信機による情報伝達を920市町村が実施している。このほか、登録者に対するメール配信や携帯電話会社の緊急速報メールによる伝達を実施している市町村も見受けられた。

図6  市町村の緊急情報の主な伝達手段

図6市町村の緊急情報の主な伝達手段

 一つの市町村が複数の伝達手段を用いている場合があるため、伝達手段の合計と市町村数は一致しない。

 消防庁の試算によると、屋外放送の中で、主要な手段となっている同報無線の市町村への整備には、人口の規模や面積にもよるが、一般的に2億円から3億円程度の費用を要するとされている。国は、これに対する財政支援策として、同報無線の整備に係る事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の50%を交付税算入する地方財政措置を取っているが、多額の費用が必要なことを理由に整備していない市町村も見受けられた。なお、同庁は、23年度第3次補正予算により、消防防災通信基盤整備費補助金として、同報無線の整備に係る事業費の3分の1を補助している。

オ 東北地方太平洋沖地震発生時の状況

 23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際のJ-ALERTによる緊急情報の伝達状況をみたところ、次のとおりであった。
 緊急地震速報は、14都県の514市町村に発表されており、このうち、J-ALERTによる緊急地震速報の受信に伴い同報無線等を自動起動して住民へ緊急地震速報を伝達したと回答したのは46市町村であった。
 また、津波警報(大津波、津波)は、25都道県に発表され、この25都道県の沿岸部に所在する市町村は437市町村であったが、このうち、J-ALERTによる津波警報の受信に伴い同報無線等を自動起動して住民へ津波警報を伝達したと回答したのは89市町村であった。
 これは、前記のとおり、防災情報通信設備整備事業交付金によるJ-ALERTの整備事業が22年度に予算を繰り越して執行されたことなどから、23年3月11日の時点で、緊急地震速報又は津波警報の対象となっていた延べ836市町村のうち、J-ALERTを整備中又は改修中で、運用していなかった市町村が約6割の495市町村あったことや、J-ALERTを運用していても自動起動機が未設置又は未運用の市町村もあったことによる。

カ J-ALERTの訓練の実施状況

 内閣府、消防庁及び気象庁は、緊急地震速報の訓練情報をJ-ALERTにより送信する訓練を実施しており、J-ALERTの全国一斉整備がおおむね完了した23年度は、23年6月28日と12月1日の2回実施している。
 このうち、同年12月1日に実施された訓練に参加した944市町村の訓練内容をみると、自動起動により同報無線等による放送を実施した市町村が75市町村、自動起動により庁舎内放送を実施した市町村が60市町村、J-ALERT受信機の動作確認を実施した市町村が912市町村となっており、参加した市町村数は多かったものの、自動起動により同報無線等による放送を実施した市町村数は少なかった。
 J-ALERT受信機の動作確認のみを実施したり、訓練に参加しなかったりした市町村は、その理由として、訓練のための放送を行うことを住民に周知し理解を得る必要があること、J-ALERTの受信機、自動起動機、同報無線等の動作確認は訓練以外の時に個別に行っていることなどを挙げている。
 なお、同年6月28日に実施された訓練においては、J-ALERTを通じて気象庁が配信した訓練用の電文の一部に誤りがあり、その結果、J-ALERT受信機において電文を正常に解析できなかったことから、同報無線等を自動起動する訓練を実施することができなかった。
 また、消防庁が、24年4月5日に沖縄県において、人工衛星と称するミサイル発射に備えて、J-ALERTにより同報無線を自動起動させる放送試験を実施したところ、同報無線の自動起動が可能な26市町村のうち7市町村において、放送が実施されない事態が発生した。同庁は、この結果を踏まえて、住民への情報伝達の体制について万全を期すため、同年9月12日、J-ALERTを整備した全ての地方公共団体を対象に、全国一斉の緊急情報の伝達試験を実施した。そして、同庁は、同月19日に、訓練の実施結果の速報として、訓練に参加した1,725市町村のうち284市町村において、予定どおりの放送等が実施されないなどの不具合が発生したことを公表している。
 J-ALERTは、緊急情報を国から住民まで人手を介さずに瞬時に伝達することを目的に整備したものであり、その目的を達成する見地からは、国から発信される緊急情報を市町村が受信した場合には、住民に情報が確実に伝達されるような体制になっていることが求められる。このことから、国において訓練機会の拡大を図ること、より多くの市町村において緊急情報を受信することから同報無線等を自動起動して放送することまでの一連の訓練を実施することが望まれる。

キ J-ALERTの周知・広報の実施状況

 J-ALERTを整備した1,719市町村において、その導入に当たり、市町村が実施した周知・広報の状況についてみたところ、表20 のとおり、24年4月1日現在、J-ALERTの自動起動機を運用している1,150市町村のうち、広報誌やホームページへの掲載等により、J-ALERTの運用状況の住民への周知・広報を実施していたのは、約8割の894市町村であった。また、J-ALERTの自動起動機を運用していない91市町村及び自動起動機を設置していない478市町村のうち、住民への周知・広報を実施していたのは、それぞれ約3割の31市町村、約1割の54市町村であり、いずれも低調な状況となっていた。しかし、J-ALERTによる緊急情報がどのように伝達されるようになっているかなどについては、住民にとって重要な情報であり、J-ALERTの運用状況についての周知・広報を実施していない市町村においては、その実施に努めることが望まれる。

表20  J-ALERTの周知・広報の実施状況
自動起動機の状況
運用中 未運用 未設置
実施した市町村数 894 31 54 979
未実施の市町村数 256 60 424 740
1,150 91 478 1,719
(注)
 「自動起動機の状況」は、平成24年4月1日現在の状況である。