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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第10 厚生労働省|不当事項|補助金|補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

(11) 厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省、国立医薬品食品衛生研究所、国立がんセンター](298)-(307)


10件 不当と認める国庫補助金 64,365,516円

厚生労働科学研究費補助金は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保するため、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行う研究者等に対して、厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号)、厚生労働科学研究費補助金取扱細則(平成10年厚科第256号厚生科学課長決定)等(以下、これらを合わせて「取扱規程等」という。)に基づき、厚生労働大臣が認めた額と補助対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額を国が補助するものである。

取扱規程等によると、研究事業に係る補助対象経費は、研究で使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の直接研究に必要な経費、研究事業の一部を他の機関に委託して行うための経費(以下、これらを合わせて「直接研究費等」という。)等となっている。また、直接研究費等に係る事務は、補助金の経理の透明化を図るなどのため、研究者の所属機関の長に必ず委任されることとなっている。そして、委任を受けた所属機関の長は、直接研究費等に係る事務を適正に執行することとなっている。

本院は、21研究機関に所属する122名の研究者が実施している242研究事業について会計実地検査を行った。その結果、4研究機関に所属する10名の研究者が実施している51研究事業において、研究者が業者に架空の取引を指示するなどして研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより各研究者の所属機関に購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理するなどの不適正な経理処理を行っていたため、国庫補助金計64,365,516円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、研究者において、補助金の原資は税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、研究者の所属機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、厚生労働省において、研究者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止についての周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

国立がんセンター(平成22年4月1日以降は独立行政法人国立がん研究センター)に所属する研究者cは、19、20両年度に、補助金の交付を受け、その全額を研究用物品の購入等に使用したとして、補助事業終了後に事業実績報告書を提出していた。そして、研究用物品を53,667,080円で購入したとして納品書、請求書等を同センターに提出していて、同センターは当該購入代金を業者に支払っていた。しかし、研究者cが実際に研究用物品を購入した額は28,480,176円にすぎず、差額の25,186,904円については、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させたものであった。そして、研究者cは、これを業者に預けて別途に経理しており、このうち5,781,132円を私的な家電製品等の購入に流用していた。

この結果、国庫補助金が24,805,000円過大に交付されていた。

以上を部局等別、所属機関別・研究者(注1)別に示すと次のとおりである。

部局等 年所属機関名度 国庫補助金の
交付先(研究者)
年度 事業数 国庫補助金交付額
(注2)
不当と認める国庫補助金交付額 摘要
千円 千円
(298) 国立医薬品食品衛生研究所 国立医薬品食品衛生研究所 a 19〜21 5 221,990 3,409 不適正な経理処理
(299) 厚生労働本省 b 19、20 4 167,099 2,143
(300) 厚生労働本省、国立がんセンター 国立がんセンター c 19、20 11 2,762,350 24,805
(301) 国立がんセンター d 19、20 5 374,013 5,542
(302) e 19、20 6 169,820 4,654
(303) 厚生労働本省、国立がんセンター f 19、20、23 4 252,988 3,196
(304) 国立がんセンター g 19、20 2 48,298 1,669
(305) h 20、21 3 116,619 1,321
(306) 厚生労働本省 学校法人武蔵野女子学院武蔵野大学(注3) H 16〜19、22 8 498,265 12,328
(307) 学校法人立教学院立教大学 J 18、19 3 52,172 5,296
(298)—(307)の計 51 4,553,771 64,365
(注1)
研究者  国立がんセンターに所属する研究者cからe、g及びh並びに学校法人武蔵野女子学院武蔵野大学に所属する研究者Hについては本件以外にも不当事項を掲記しており、同一の研究者については同一のアルファベットで表示している(参照 前掲  後掲 )。
(注2)
国庫補助金交付額  研究者dと研究者eの研究事業が一部重複しており、計には重複額を除いた純計を計上している。
(注3)
平成24年4月1日以降は学校法人武蔵野大学