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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの[日本私立学校振興・共済事業団](418)-(423)


科目
(助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等
日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体
6学校法人
補助の対象
私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額の合計
7,818,116,000円(平成19年度〜23年度)
不当と認める事業団の補助金交付額
17,796,000円(平成19年度〜23年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1)を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

注(1)
私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(2) 補助金の額の算定資料

事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料を提出させている。

  • ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等(注2)の数、専任職員数及び学生数に関する資料
  • イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料
注(2)
専任教員等  専任の学長、校長、副学長、学部長、教授、准教授、講師、助教及び助手

(3) 補助金の額の算定方法

事業団は、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定。以下「配分基準」という。)等に定める方法により、補助金の額を次のとおり算定することとなっている。

  • ① 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、それぞれの経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数等に所定の補助単価を乗ずるなどして補助金の基準額を算定する。
  • ② 各私立大学等の教育研究条件の整備状況等によって補助金の額に差異を設けるため、次の割合等に基づいて個々の増減率を算定する。
    • a 収容定員に対する在籍学生数の割合
    • b 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合
    • c 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合

    そして、上記aの割合の算定に当たっては、申請年度の5月1日以降に退学又は除籍を決定した学生について、退学日又は除籍日が4月30日以前に遡及する場合であっても、在籍学生数に含めることとされている。

  • ③ ①で算定した経費区分ごとの基準額に②で算定した全体の増減率を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額とする。

(4) 特別補助

上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。

この特別補助の対象となる項目には「専門職大学院等支援」、「戦略的研究基盤形成支援事業」、「教育改善に活かせる評価の実施」等があり、これらについては、配分基準等に基づき算定資料を各学校法人から提出させて、次のようにその額を算定することとされている。

  • ア 「専門職大学院等支援」については、専門職大学院又は高度専門職業人の養成を目的として主として実務の経験を有する者に教育を行うため、通常は2年である修士課程の標準修業年限を1年以上2年未満に短縮している専攻等を設置する私立大学に対して、専攻等ごとの専任教員等の数に所定の単価を乗ずるなどして得られた額に、当該専攻等の教育研究活動状況を基に算出した調整率を乗じた額を増額する。
  • イ 「戦略的研究基盤形成支援事業」については、文部科学大臣の指定を受けた事業を実施する研究組織を有する私立大学に対して、当該事業における所要額を増額する。
  • ウ 「教育改善に活かせる評価の実施」については、自己点検、評価等を通じて教育改善を図る私立大学等に対して、当該大学等の学部等ごとの収容定員に所定の単価を乗じた額に、大学間の相互評価等の自主的に行った外部評価を基に実施している教育改善の取組等の件数を乗じた額を増額する。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、特別補助の額の算定が適切に行われているか、学生数の算定が適切に行われているかなどに着眼して、事業団が平成19年度から23年度までに補助金を交付している646学校法人のうち22学校法人において、補助金の交付申請に係る算定資料及び納品書、請求書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、事業団に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査したところ、6学校法人において、補助金の交付申請に当たり、事業団に提出した算定資料に、不適正な経理処理等に基づき特別補助の算定対象とならない経費を含めて記入したり、補助金の額の算定対象となる学生を含めずに記入したりなどしていたのに、事業団は、この誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金17,796,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 学校法人において、補助金の制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその記載内容が配分基準等に即したものとなっているかなどについて確認を十分に行っていなかったり、研究用物品の納品検査等が十分でなかったりなどしていたこと、研究者において、補助金の原資は税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと
  • イ 事業団において、学校法人に対する指導、調査及び補助金の不正使用の防止に係る周知徹底が十分でなかったこと
事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額
千円 千円
(418) 学校法人福島学院
(福島県福島市)
23 1,678,422 5,173

上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、福島学院大学において、平成23年度の専門職大学院等支援に係る特別補助の要件に該当する標準修業年限が1年以上2年未満の修士課程があると記入していたが、同大学は当該専攻の標準修業年限を2年と定めていて、補助の対象とならない専攻であった。

したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は1,673,249,000円となり、5,173,000円が過大に交付されていた。

(419) 学校法人千葉工業大学
(千葉県習志野市)
19
20
21
小計
1,016,001
991,949
969,108
2,977,058
1,343
1,355
38
2,736
(420) 学校法人昭和薬科大学
(東京都町田市
19
20
小計
359,648
358,122
717,770
1,000
200
1,200
(421) 学校法人武蔵野女子学院
(東京都西東京市)(注3)
19
20
小計
771,874
872,056
1,643,930
800
499
1,299
3 学校法人の計 5,338,758 5,235
(注3)
平成24年4月1日以降は学校法人武蔵野大学

上記の3学校法人は、事業団に提出した算定資料に、3大学における平成19年度から21年度までの戦略的研究基盤形成支援事業等の7研究プロジェクトに係る特別補助の算定対象となる経費について、研究者7名(注4)が業者に架空の取引等を指示して研究で使用する消耗品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより3学校法人に購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理するなどしていた。なお、実際に購入した物品の中には、研究とは関係のない白金貨幣が含まれていた。

したがって、これらを除外して算定すると、適正な補助金の額は計5,333,523,000円となり、5,235,000円が過大に交付されていた。

注(4)
研究者7名  学校法人千葉工業大学の研究者AからD及びGの5名、学校法人昭和薬科大学の研究者K並びに学校法人武蔵野女子学院の研究者Iの計7名。このうち、研究者AからD及びIについては本件以外にも不当事項を掲記しており、同一の研究者については同一のアルファベットで表示している(参照 前掲  後掲 )。
(422) 学校法人成城学園
(東京都世田谷区)
22 440,911 6,022

上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、成城大学における平成22年度の補助金の額の算定対象となる在籍学生数について、22年5月1日以降に退学又は除籍を決定した学生2名を含めていなかったため、在籍学生数を過少に計上していた。

したがって、これを含めて算定すると、収容定員に対する在籍学生数の割合による増減率が下がることとなるため、適正な補助金の額は434,889,000円となり、6,022,000円が過大に交付されていた。

(423) 学校法人武蔵野音楽学園
(東京都練馬区)
22 360,025 1,366

上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、武蔵野音楽大学において、平成22年度の教育改善に活かせる評価の実施に係る特別補助の要件に該当する外部評価を基にした取組があると記入していたが、この取組は外部評価に該当しない学内の学生に対する授業評価アンケート調査を基にした取組であった。

したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は358,659,000円となり、1,366,000円が過大に交付されていた。

(418)—(423)の計 7,818,116 17,796