事業団は、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定。以下「配分基準」という。)等に定める方法により、補助金の額を次のとおり算定することとなっている。
そして、上記aの割合の算定に当たっては、申請年度の5月1日以降に退学又は除籍を決定した学生について、退学日又は除籍日が4月30日以前に遡及する場合であっても、在籍学生数に含めることとされている。
上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。
この特別補助の対象となる項目には「専門職大学院等支援」、「戦略的研究基盤形成支援事業」、「教育改善に活かせる評価の実施」等があり、これらについては、配分基準等に基づき算定資料を各学校法人から提出させて、次のようにその額を算定することとされている。
本院は、合規性等の観点から、特別補助の額の算定が適切に行われているか、学生数の算定が適切に行われているかなどに着眼して、事業団が平成19年度から23年度までに補助金を交付している646学校法人のうち22学校法人において、補助金の交付申請に係る算定資料及び納品書、請求書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、事業団に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、6学校法人において、補助金の交付申請に当たり、事業団に提出した算定資料に、不適正な経理処理等に基づき特別補助の算定対象とならない経費を含めて記入したり、補助金の額の算定対象となる学生を含めずに記入したりなどしていたのに、事業団は、この誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金17,796,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
事業主体 (本部所在地) |
年度 | 補助金交付額 | 不当と認める補助金額 | |
千円 | 千円 | |||
(418) | 学校法人福島学院 (福島県福島市) |
23 | 1,678,422 | 5,173 |
上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、福島学院大学において、平成23年度の専門職大学院等支援に係る特別補助の要件に該当する標準修業年限が1年以上2年未満の修士課程があると記入していたが、同大学は当該専攻の標準修業年限を2年と定めていて、補助の対象とならない専攻であった。 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は1,673,249,000円となり、5,173,000円が過大に交付されていた。 | ||||
(419) | 学校法人千葉工業大学 (千葉県習志野市) |
19 20 21 小計 |
1,016,001 991,949 969,108 2,977,058 |
1,343 1,355 38 2,736 |
(420) | 学校法人昭和薬科大学 (東京都町田市 |
19 20 小計 |
359,648 358,122 717,770 |
1,000 200 1,200 |
(421) | 学校法人武蔵野女子学院 (東京都西東京市)(注3) |
19 20 小計 |
771,874 872,056 1,643,930 |
800 499 1,299 |
3 学校法人の計 | 5,338,758 | 5,235 | ||
上記の3学校法人は、事業団に提出した算定資料に、3大学における平成19年度から21年度までの戦略的研究基盤形成支援事業等の7研究プロジェクトに係る特別補助の算定対象となる経費について、研究者7名(注4)が業者に架空の取引等を指示して研究で使用する消耗品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより3学校法人に購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理するなどしていた。なお、実際に購入した物品の中には、研究とは関係のない白金貨幣が含まれていた。 したがって、これらを除外して算定すると、適正な補助金の額は計5,333,523,000円となり、5,235,000円が過大に交付されていた。 | ||||
(422) | 学校法人成城学園 (東京都世田谷区) |
22 | 440,911 | 6,022 |
上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、成城大学における平成22年度の補助金の額の算定対象となる在籍学生数について、22年5月1日以降に退学又は除籍を決定した学生2名を含めていなかったため、在籍学生数を過少に計上していた。 したがって、これを含めて算定すると、収容定員に対する在籍学生数の割合による増減率が下がることとなるため、適正な補助金の額は434,889,000円となり、6,022,000円が過大に交付されていた。 | ||||
(423) | 学校法人武蔵野音楽学園 (東京都練馬区) |
22 | 360,025 | 1,366 |
上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、武蔵野音楽大学において、平成22年度の教育改善に活かせる評価の実施に係る特別補助の要件に該当する外部評価を基にした取組があると記入していたが、この取組は外部評価に該当しない学内の学生に対する授業評価アンケート調査を基にした取組であった。 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は358,659,000円となり、1,366,000円が過大に交付されていた。 | ||||
(418)—(423)の計 | 7,818,116 | 17,796 |