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  • 平成25年10月

東日本大震災に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境汚染に対する除染について


3 検査の状況

(1) 除染に関する予算措置

前記のとおり、緊急実施基本方針及び放射性物質汚染対処特措法の枠組みにおける除染に関する事業に要する経費については、内閣府及び環境省等において予算措置されている。

内閣府においては、緊急実施基本方針の枠組みの中で、除染に早急に着手できるよう当面必要となる経費として、一般会計において23年度東日本大震災復旧・復興予備費から2179億余円を措置している。

環境省においては、放射性物質汚染対処特措法の成立を踏まえ、除染に関する事業に要する経費として、一般会計において23年度第3次補正予算で1996億余円を計上している。また、24年度以降は、復興庁が復興に関する行政各部の事業を統括・監理する一環として、東日本大震災からの復興事業に関する経費を東日本大震災復興特別会計に一括計上した上で予算成立後に環境省に移替えすることとしており、同特別会計において、24年度当初予算で3720億余円が、25年度当初予算で4977億余円がそれぞれ計上されている。

そして、内閣府及び環境省等が除染に関する事業に要する経費として予算措置した額は、表4のとおり、23年度から25年度までの3か年度で計1兆2874億余円となっている。

表4 平成23年度から25年度までに内閣府、環境省等が措置した除染に関する歳出予算額

(単位:千円)
予算科目 平成23年度 24年度 25年度
一般会計
 内閣府所管
  (項)防災政策費 217,908,256
   (目)放射線量低減基準策定調査等委託費 15,725,497
   (目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 202,182,759
一般会計
 環境省所管
 (項)東日本大震災復旧・復興大気・水・土壌環境等保全費 199,662,689
   (目)放射線量低減処理業務謝金 3,640
   (目)放射線量低減処理業務旅費 7,968
   (目)放射線量低減処理業務委員等旅費 4,900
   (目)放射線量低減処理業務庁費 94,922,757
   (目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 104,723,424
東日本大震災復興特別会計
 (項) 環境保全復興政策費 372,090,331 497,795,893
   (目)放射線量低減処理業務謝金 3,640 2,548
   (目)放射線量低減処理業務旅費 26,270 21,855
   (目)放射線量低減処理業務委員等旅費 4,900 3,430
   (目)放射線量低減処理業務庁費 265,870,261 289,500,017
   (目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 104,288,937 202,935,867
   (目)放射線量低減処理業務地方公共団体委託費 1,808,532 1,357,974
   (目)放射線量低減処理業務補償金 87,791 3,974,202
417,570,945 372,090,331 497,795,893
3か年度合計 1,287,457,169

環境省は、除染特別地域の除染に関する事業に要する経費を(目)放射線量低減処理業務庁費から支出している。また、汚染状況重点調査地域で除染の事業等を実施する市町村等に対しては(目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金から支出している。

なお、この科目から支出される放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(以下「低減対策緊急補助金」という。)の交付対象は放射線量低減対策特別緊急事業費補助金交付要綱(平成23年12月環水大総発第111222001号)等に定められていて、①除染実施計画策定に係る業務、②除染事業、③線量低減化地域活動支援事業、④除染に伴う子どもの生活環境再生事業、⑤専門家派遣事業及び⑥事後モニタリング事業とされている。そして、このうち②除染事業、③線量低減化地域活動支援事業及び④除染に伴う子どもの生活環境再生事業については、放射性物質汚染対処特措法等の要件等に合致し、かつ除染実施計画に位置付けられているものが対象とされている。

(2) 放射性物質汚染対処特措法等に基づく除染に関する予算の執行状況等

上記の内閣府及び環境省等が措置した除染に関する予算に対する23、24両年度の執行状況は表5のとおりであり、両年度の支出済歳出額(除染に関する事業の国の執行額)は計4692億余円となっている。そして、23年度の一般会計内閣府所管をみると、(目)放射線量低減基準策定調査等委託費は歳出予算現額の81.3%の127億余円が翌年度繰越額となっている。一方、(目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金は歳出予算現額の99.3%の2009億余円が支出済歳出額となっていて、この支出済歳出額の大半は、福島県が設置した福島県民健康管理基金への支出が占めている。

また、23年度の一般会計環境省所管をみると、(目)放射線量低減処理業務庁費は歳出予算現額の98.5%の935億余円が翌年度繰越額となっており、この額の86.8%の812億余円は24年度において不用額となっている。一方、(目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金は歳出予算現額の69.3%の726億余円が支出済歳出額となっている。

さらに、24年度の東日本大震災復興特別会計をみると、(目)放射線量低減処理業務庁費は歳出予算現額の70.3%の1603億余円が翌年度繰越額となっている。一方、(目)放射線量低減対策特別緊急事業費補助金は歳出予算現額の90.0%の939億余円が支出済歳出額となっている。

このような予算の執行状況から、環境省が実施する除染に関する事業は進んでいないと思料される。

表5 平成23、24両年度の内閣府及び環境省等における除染に関する予算の執行状況

(単位:千円)
年度 科目 前年度繰越額 歳出予算現額 支出済歳出額 翌年度繰越額 不用額
平成
23
一般会計
 (所管)内閣府
  (組織)内閣本府
   (項)防災政策費
(8.3%) (81.3%) (10.2%)
    (目) 放射線量低減基準策定調査等委託費 15,725,497 1,319,788 12,789,737 1,615,970
(99.3%) (0.2%) (0.3%)
    (目) 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 202,182,759 200,969,654 599,158 613,945
24 一般会計
 (所管)内閣府
  (組織)内閣本府
   (項)防災政策費
(繰越分)
(96.0%) (3.9%)
    (目) 放射線量低減基準策定調査等委託費 12,789,737 12,789,737 12,284,202 0 505,535
(88.0%) (11.9%)
    (目) 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 599,158 599,158 527,775 0 71,382
23 一般会計
 (所管)環境省
  (組織)環境本省
   (項) 東日本大震災復旧・復興大気・水・土壌環境等保全費
(100.0%)
    (目) 放射線量低減処理業務謝金 3,640 0 0 3,640
(47.8%) (52.1%)
    (目) 放射線量低減処理業務旅費 7,968 3,810 4,157 0
(17.5%) (82.4%)
    (目) 放射線量低減処理業務委員等旅費 4,900 862 0 4,073
(1.4%) (98.5%) (0.0%)
    (目) 放射線量低減処理業務庁費 94,922,757 1,341,810 93,552,946 28,000
(69.3%) (30.6%)
    (目) 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 104,723,424 72,602,098 32,121,325 0
24 一般会計
 (所管)環境省
  (組織)環境本省
(繰越分)
   (項) 東日本大震災復旧・復興大気・水・土壌環境等保全費
    (目) 放射線量低減処理業務謝金 0 0 0 0 0
(99.9%) (0.0%)
    (目) 放射線量低減処理業務旅費 4,157 4,157 4,157 0 0
    (目) 放射線量低減処理業務委員等旅費 0 0 0 0 0
(9.1%) (4.0%) (86.8%)
    (目) 放射線量低減処理業務庁費 93,552,946 93,552,946 8,558,219 3,781,365 81,213,361
(34.8%) (9.2%) (55.9%)
    (目) 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 32,121,325 32,121,325 11,179,211 2,978,387 17,963,726
24 東日本大震災復興特別会計
   (項) 環境保全復興政策費
(29.3%) (70.6%)
    (目) 放射線量低減処理業務謝金 3,640 1,068 0 2,571
(99.9%) (0.0%)
    (目) 放射線量低減処理業務旅費 26,270 26,259 0 10
(19.5%) (80.4%)
    (目) 放射線量低減処理業務委員等旅費 4,900 956 0 3,943
(28.8%) (70.3%) (0.8%)
    (目) 放射線量低減処理業務庁費 227,858,277 65,725,696 160,304,032 1,828,548
(90.0%) (9.8%) (0.0%)
    (目) 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 104,288,937 93,954,858 10,290,917 43,161
(39.6%) (60.2%) (0.1%)
    (目) 放射線量低減処理業務地方公共団体委託費 1,808,532 716,277 1,090,414 1,840
(42.9%) (57.0%)
    (目) 放射線量低減処理業務補償金 87,791 37,715 0 50,075
469,254,423
注(1)
括弧書きは、歳出予算現額に対するそれぞれの割合である。
注(2)
東日本大震災復興特別会計は、環境省に移替えされた額を計上している。
注(3)
平成24年度一般会計(所管)内閣府及び(所管)環境省は、23年度予算が翌年度に繰り越された分である。

(3) 環境省による除染特別地域における除染の実施状況

ア 福島事務所の体制整備の状況

環境省は、24年1月の放射性物質汚染対処特措法の全面施行に伴い、福島県等における除染を推進するための拠点として、福島市内に同省福島環境再生事務所(以下「福島事務所」という。)を39名の定員で発足させた。そして、地元とより緊密な連携を図るため、同年4月には210名体制に拡充するとともに、表6のとおり、5支所を福島県内に設置している。

表6 福島事務所の各支所と各支所の担当市町村

支所名 支所の所在地 支所が担当する除染特別地域の市町村
県北支所 福島市 川俣町、飯舘村
県中・県南支所 郡山市 田村市、富岡町、双葉町、葛尾村
浜通り北支所 南相馬市 南相馬市、浪江町
浜通り南支所 広野町 楢葉町、川内村
会津支所 会津若松市 大熊町

25年4月には、体制の更なる拡充を図るため職員の増員を行っており、同年5月1日現在の実員数は274名、このうち除染に係る業務を担当する人員は161名となっていて、これらの人員で、土地の関係人の把握や関係人の同意取得に関する業務、住民説明会の実施、契約関係業務(積算、監督、しゅん功検査等)等多種多様な業務を行っている(前記図4の「除染工程の一連の流れ」参照)。

そして、環境省は、福島事務所における業務の外注を進めるなど、除染の加速化に向けた取組を行っているものの、引き続き体制の強化を図っていく必要があるとしている。

なお、24年4月には、福島事務所に会計機関が設置され、それ以降は現地で執行する契約に関する事務を福島事務所が一元的に実施することとなった。

イ 避難指示区域の見直しの完了と特別地域内計画の策定状況

原災本部は、前記の「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」に基づき避難指示区域の見直しを順次行い、25年8月にはかつて警戒区域又は計画的避難区域に指定されていた11市町村全てについて見直しを終えた。そして、見直し後の新たな避難指示区域は表7のとおりとなっている。

表7 区域見直し後の新たな避難指示区域の状況

市町村名 区域見直し日 見直し後の新たな避難指示区域の区分
避難指示解除準備区域 居住制限区域 帰還困難区域
田村市 平成24年 4月 1日
川内村 4月 1日
南相馬市 4月16日
飯舘村 7月17日
楢葉町 8月10日
大熊町 12月10日
葛尾村 25年 3月22日
富岡町 3月25日
浪江町 4月 1日
双葉町 5月28日
川俣町 8月 8日

上記11市町村のうち、その全域が除染特別地域に指定されているのは楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村の7町村で、一部の地域が除染特別地域に指定されているのは田村市、南相馬市、川俣町及び川内村の4市町村となっている。

この11市町村のうち、24年度末時点で特別地域内計画が策定されているのは富岡町及び双葉町を除く9市町村(以下「計画策定市町村」という。)となっており、富岡町については25年6月26日に特別地域内計画が策定されたが、双葉町については同年8月末時点で策定されていない。

そして、計画策定市町村における特別地域内計画の策定日及び特別地域内計画において除染を実施することとされている区域(以下「除染対象区域」という。)の同年6月末時点の状況は表8のとおりとなっていて、南相馬市、飯舘村及び浪江町は他の市町村と比べて除染対象区域の面積が大きくなっている。

表8 特別地域内計画の策定日及び除染対象区域の状況

市町村名 特別地域内計画策定日 平成25年6月末時点における除染対象区域の面積

(ha)
市町村面積に占める除染対象区域の割合

(%)
田村市 平成24年 4月13日 460 1.0
南相馬市 4月18日 6,090 15.2
川俣町 8月10日 1,250 9.7
楢葉町 4月13日 2,040 19.7
川内村 4月13日 490 2.4
大熊町 12月28日 400 5.0
浪江町 11月21日 3,170 14.2
葛尾村 9月28日 1,660 19.7
飯舘村 5月24日 5,080 22.0
(注)
楢葉町については平成24年11月に、飯舘村については24年10月に、それぞれ特別地域内計画が一部改定されている。

除染ロードマップでは、住民の一日も早い帰還を目指すため、避難指示解除準備区域及び居住制限区域となる地域について優先的に除染を実施することとしている。そして、計画策定市町村の特別地域内計画においても、原則として、区域見直しにより避難指示解除準備区域又は居住制限区域となる地域が除染対象区域となっている。

ウ 除染対象区域における除染対象地目の状況

環境省は、除染特別地域における土地等の除染対象数量(面積等)を推算している。25年6月末現在における除染対象区域の地目別面積の推算値をみると表9のとおりとなっていて、全体では農地の占める割合が高くなっている。

表9 計画策定市町村の除染対象区域における除染対象地目別面積の推算値(平成25年6月末現在)

(単位:ha)
市町村名\地目 住宅地等 農地 森林 道路 法面・草地
・芝地
田村市 20 140 190 30 80 460
(4.3%) (30.4%) (41.3%) (6.5%) (17.3%) (100%)
南相馬市 830 3,050 1,150 300 760 6,090
(13.6%) (50.0%) (18.8%) (4.9%) (12.4%) (100%)
川俣町 50 840 190 80 90 1,250
(4.0%) (67.2%) (15.2%) (6.4%) (7.2%) (100%)
楢葉町 150 720 550 140 480 2,040
(7.3%) (35.2%) (26.9%) (6.8%) (23.5%) (100%)
川内村 40 130 200 40 80 490
(8.1%) (26.5%) (40.8%) (8.1%) (16.3%) (100%)
大熊町 30 150 160 30 30 400
(7.5%) (37.5%) (40.0%) (7.5%) (7.5%) (100%)
浪江町 600 1,760 390 210 210 3,170
(18.9%) (55.5%) (12.3%) (6.6%) (6.6%) (100%)
葛尾村 140 430 650 110 330 1,660
(8.4%) (25.9%) (39.1%) (6.6%) (19.8%) (100%)
飯舘村 520 1,860 1,210 360 1,130 5,080
(10.2%) (36.6%) (23.8%) (7.0%) (22.2%) (100%)
2,380 9,080 4,690 1,300 3,190 20,640
(11.5%) (43.9%) (22.7%) (6.2%) (15.4%) (100%)
注(1)
住宅地等には住宅のほか、公共施設、商業施設、公園等の敷地を含む。
注(2)
農地には果樹園を含む。
注(3)
森林については、森林周辺の生活環境における放射線量の低減を図ることを目的として除染を実施することとし、除染に当たっては林縁部から森林側に20m以内の範囲で実施することが効果的・効率的であるとして、当該範囲を対象として面積を推算している。

エ 先行除染の実施状況

(ア) 除染特別地域の先行除染

特別地域内計画に基づく除染(以下「本格除染」という。)を実施するに当たっては、本格除染の活動拠点となる施設等を先行的に除染(以下、このような除染を「先行除染」という。)する必要がある。そこで、環境省は、特別地域内計画の策定を待たずに、先行除染により発生する除去土壌等の仮置場等が確保された施設等から順次除染を実施している。そして、23年12月に、陸上自衛隊の協力を得て楢葉町、富岡町、浪江町及び飯舘村の各役場の除染を実施するとともに、それ以降は外部に委託するなどしていて、24年度末までの間に双葉町を除く10市町村において先行除染を実施している。24年度末までの間に発注した先行除染に関連する契約の状況を市町村別にみると表10のとおりとなっていて、福島事務所によると、24年度末時点で10市町村における先行除染はほぼ完了したとしている。

表10 先行除染に関連する契約の状況

市町村名 年度 契約件数
(件)
契約金額
(千円)
田村市 平成23 1 17,000
南相馬市 24 2 249,690
川俣町 23 1 77,700
24 2 177,450
楢葉町 23 15 212,159
24 3 1,366,400
富岡町 23 1 27,363
24 4 660,450
川内村 23 1 29,762
24 1 1,533
大熊町 23 1 44,520
24 1 769,545
浪江町 24 2 326,655
葛尾村 23 1 36,750
24 1 129,150
飯舘村 24 1 997,080
23年度計 21 445,254
24年度計 17 4,677,953
合計 38 5,123,207
注(1)
平成23年度は環境本省が、24年度は福島事務所が、それぞれ契約を発注している。
注(2)
契約の中には、翌年度に予算を繰り越して発注したものや、翌年度に繰り越すこととして当該年度中に発注したものがある。
注(3)
陸上自衛隊が平成23年度に楢葉町、富岡町、浪江町及び飯舘村の4町村で実施した先行除染に関して環境本省が締結した契約については、4町村ごとに区分できないことから、契約件数及び契約金額を楢葉町に一括して計上している。
(イ) 常磐自動車道の除染

福島県の復興の加速化を図る上で重要な役割を果たすこととなる常磐自動車道の早期開通を目指すため、環境省は、東日本高速道路株式会社が実施する常磐自動車道の復旧及び建設工事と並行して除染を実施することとし、同自動車道の広野インターチェンジ(以下、インターチェンジを「IC」という。)から南相馬ICまでの区間のうち、警戒区域内を通過する延長約41kmについて、路面上の平均空間線量率が3.8μSv/hを超える区間を対象に敷地全面の除染を実施することとしている。

除染の実施に当たっては、路面上の平均空間線量率が3.8μSv/h超9.5μSv/h以下となる区間のうち、東日本高速道路株式会社が復旧及び建設工事を実施する箇所については舗装等の施工により放射線量の低減が期待できることから、これら以外の箇所について、開通時の路面上における空間線量率がおおむね3.8μSv/h以下となることを目指すこととしている。また、同9.5μSv/h超となる区間については、開通時の路面上における空間線量率が最も高い箇所においてもおおむね9.5μSv/h以下となることを目指すこととしている。

そして、上記の方針により、福島事務所は、24年11月に除染工事を契約金額20億2125万円で発注し、25年1月に着手されており、同年9月時点で仮置場の安全対策を実施しているところである。

24年度末時点における同自動車道の除染の進捗状況をみると、表11のとおり、除染対象数量の大小はあるものの、既開通区間である広野ICから常磐富岡ICまでの区間の除染が、他の区間に比べて進んでいる状況となっている。

表11 常磐自動車道の除染の進捗状況(平成24年度末時点)

区間 開通・未
開通区間
の別
道路構造物の種別 路面上の空間
線量率(μSv/h)
除染対象数量

(A)
左のうち平成24
年度末時点にお
ける除染実施数量

  (B)
24年度末時点
における実施
率(%)

 (B)/(A)
広野IC ~ 常磐富岡
IC
開通 本線路面 3.8超9.5以下 45,900 20,000 43.5
法面 切土部 3.8超9.5以下 34,000 15,000 44.1
盛土部 3.8超9.5以下 42,100 20,000 47.5
将来用地 3.8超9.5以下 36,600 10,000 27.3
側溝 3.8超9.5以下 9,170 1,000 10.9
常磐富岡
IC
~ 浪江IC 未開通 本線部 舗装未施工部 3.8超9.5以下 9,443 0 0
9.5超 85,030 0 0
法面 切土部 3.8超9.5以下 44,720 23,000 51.4
9.5超 50,738 0 0
盛土部 3.8超9.5以下 147,5000 25,000 16.9
9.5超 55,200 25,000 45.2
将来用地 3.8超9.5以下 34,600 6,900 19.9
9.5超 14,236 3,800 26.6
側溝 3.8超9.5以下 12,200 0 0
9.5超 14,150 0 0
浪江IC ~ 南相馬
IC
未開通 本線路面 舗装未施工部 3.8超9.5以下 1,876 0 0
法面 切土部 3.8超9.5以下 42,210 5,000 11.8
盛土部 3.8超9.5以下 81,400 12,000 14.7
将来用地 3.8超9.5以下 35,200 0 0
側溝 3.8超9.5以下 11,150 0 0
(注)
将来用地とは、完成4車線化のために確保されている用地である。

オ 本格除染の実施状況

(ア) 関係人の同意状況

本格除染に着手するまでには、前記のとおり、土地所有者等の関係人の把握から始まり、除染の実施に対する関係人の同意取得手続に至るまでの一連の準備作業が必要となる。

そして、環境本省は除染特別地域における関係人の把握について、外部に委託して行うとともに、福島事務所(23年度は環境本省)は関係人から土地への立入りについて了解が得られた箇所から順次建物等の状況調査を外部に委託して行っている。また、前記のとおり、関係人の同意取得手続については、福島事務所の職員が行っているほか、本格除染の加速化を図るため外部にも委託して行っている。

除染対象区域における24年度末時点と25年7月末時点の除染の実施に対する関係人の同意取得状況を計画策定市町村別に示すと表12のとおりとなっていて、南相馬市、大熊町及び浪江町においては、同意が得られた関係人が24年度末時点では皆無となっていたが、25年7月末時点では徐々にではあるが同意取得が進んでいる状況となっている。

表12 計画策定市町村における除染の実施に対する同意取得状況

市町村名 平成24年度末時点の同意取得率(%) 25年7月末時点の同意取得率(%)
田村市 完了 完了
南相馬市 0 27.8
川俣町 81.5 94.4
楢葉町 84.0 92.8
川内村 99.6 完了
大熊町 0 63.3
浪江町 0 12.8
葛尾村 93.1 95.0
飯舘村 24.2 29.6
注(1)
田村市については平成24年度末時点で、川内村については25年7月末時点で、いずれも同意取得手続を完了させていることから、同意取得率を「完了」と記載している。
注(2)
南相馬市については、関係人の把握が完了している平成24年度に除染を実施する計画となっている区域における同意取得率を記載している。
(イ) 仮置場の確保状況

前記のとおり、本格除染に着手するには、除染の実施に対する関係人の同意取得と同様に、本格除染により発生する除去土壌等を一時的に保管することとなる仮置場を確保することが前提条件となっている。

仮置場の用地は福島事務所が確保することとなっており、福島事務所は、土地の利用実態等の詳細な状況を把握している市町村や行政区等に相談を行ったり、地図等から候補地となり得る場所を探し現地踏査を行ったりして候補地を選定している。そして、選定した候補地について、当該地域の住民説明会において了承を得るとともに、最終的には地権者と借地契約を締結するなどして仮置場の用地を確保している。

除染対象区域における24年度末時点と25年7月末時点の仮置場の確保状況を計画策定市町村別に示すと表13のとおりとなっている。

表13 計画策定市町村における仮置場の確保状況

市町村名 平成24年度末時点の確保割合 (%) 25年7月末時点の確保割合 (%)
田村市 100 100
南相馬市 0 18.0
川俣町 0 77.7
楢葉町 46.0 100
川内村 100 100
大熊町 0 46.9
浪江町 0 0
葛尾村 14.2 21.8
飯舘村 0 15.2
(注)
平成24年度末時点における確保割合は除去土壌等の発生推計量に対する確保された仮置場の容量の割合である。また、25年7月末時点における確保割合は除去土壌等の発生推計量に見合う仮置場の面積に対する確保された仮置場の面積の割合である。

24年度末時点では除去土壌等の発生推計量に見合うだけの仮置場が確保されているのは田村市及び川内村のみで、南相馬市、川俣町、大熊町及び浪江町においては確保された仮置場が皆無となっていたが、25年7月末時点では浪江町を除き徐々にではあるが仮置場の確保が進んでいる状況となっている。

(ウ) 本格除染の進捗状況及び発注状況

福島事務所は、計画策定市町村のうち、除去土壌等の発生推計量に見合うだけの仮置場が確保されていたり、その見込みが立っていたりする箇所から順次除染工事を発注して、本格除染に着手することとしている。そして、計画策定市町村のうち、24年度末時点で本格除染に着手しているのは、田村市、楢葉町、川内村及び飯舘村の4市町村となっている。

また、環境省は、地元住民の不安を解消するための取組の一環として、本格除染に着手した市町村ごとに、除染対象区域における代表的な地目である「住宅地」、「農地」、「森林」及び「道路」(以下、これらを合わせて「4地目」という。)の各地目について本格除染の進捗状況をホームページ上で公表している。そして、4地目については、除染の進捗状況に応じて、前記ウの除染対象区域における除染対象数量の推算値を見直しながら、4地目ごとの実施率(除染実施数量を除染対象数量で除した率)等を公表している。

そして、前記4市町村の除染対象区域における24年度末時点と25年7月末時点の本格除染の進捗状況をみると表14のとおりとなっていて、25年6月に本格除染が完了した田村市のほか、楢葉町及び川内村においても進んでいる一方で、飯舘村においてはほとんど進んでいない状況となっている。

表14 4市町村における本格除染の進捗状況

市町村名 地目
平成24年度末時
点の除染実施対
象数量

   (A)
うち除染
実施数量

(B)
実施率
(%)

(B)/(A)
平成25年7月末時
点の除染実施対象
数量

   (A')
うち除染
実施数量

(B')
実施率
(%)

(B')/(A')
田村市 住宅地 17.3 ha 17.1 ha 98.8 121 世帯 121 世帯 100
農地 144.1 ha 143.4 ha 99.5 143.1 ha 143.1 ha 100
森林 191.9 ha 163.5 ha 85.2 192.2 ha 192.2 ha 100
道路 29.1 ha 28.6 ha 98.2 29.5 ha 29.5 ha 100
楢葉町 住宅地 2,524 世帯 419 世帯 16.6 2,520 1,275 50.5
農地 844.2 ha 204.5 ha 24.2 724.2 ha 488.6 ha 67.4
森林 445.5 ha 163.1 ha 36.6 549.4 ha 358.9 ha 65.3
道路 205.2 ha 0 ha 0 140.2 ha 35.6 ha 25.3
川内村 住宅地 24.8 ha 24.8 ha 100 161 161 100
農地 129.1 ha 0 ha 0 129.1 ha 0.6 ha 0.4
森林 194.7 ha 62.6 ha 32.1 200.5 ha 137.7 ha 68.6
道路 34.6 ha 18.0 ha 52.0 38.0 ha 38.0 ha 100
飯舘村 住宅地 417.6 ha 1.5 ha 0.3 1,705 42 2.4
農地 1,774.9 ha 0 ha 0 1,862.3 ha 13.0 ha 0.6
森林 1,473.6 ha 1.7 ha 0.1 1,212.8 ha 23.2 ha 1.9
道路 462.7 ha 0 ha 0 357.9 ha 0.9 ha 0.2
注(1)
除染実施対象数量の(A)及び(A’)については、平成24年度末時点及び25年7月末時点の推算値の見直し後の数量を記載している。
注(2)
平成25年7月末時点の楢葉町、川内村及び飯舘村の住宅地については、住宅地の件数で実施率を管理しているため、単位を「件」としている。

また、24年度末時点では本格除染が着手されていないものの、川俣町及び葛尾村については25年3月に、大熊町については同年6月に、それぞれ除染工事が発注されている。

前記の4市町村を含むこれら7市町村について、24年度末時点と25年7月末時点における本格除染の進捗状況(発注ベース)を4地目別にみると表15のとおりとなっていて、田村市、楢葉町、川内村、大熊町及び葛尾村は発注率が100%となっている一方で、飯舘村は発注率が低い状況となっている。

表15 7市町村における本格除染の発注状況

市町村名 地目
平成24年度末時
点の除染実施対
象数量

   (A)
うち発注数量


(B)
発注率
(%)

(B)/(A)
平成25年7月末時点
の除染実施対象
数量

   (A')
うち発注数量


(B')
発注率
(%)

(B')/(A')
田村市 住宅地 121 世帯 121 世帯 100 121 世帯 121 世帯 100
農地 144.1 ha 144.1 ha 143.1 ha 143.1 ha
森林 191.9 ha 191.9 ha 192.2 ha 192.2 ha
道路 29.1 ha 29.1 ha 29.5 ha 29.5 ha
川俣町 住宅地 362 362 100 362 362 100
農地 849.9 ha 303.6 ha 35.7 836.8 ha 299.7 ha 35.8
森林 374.5 ha 188.6 ha 50.3 374.5 ha 188.6 ha 50.3
道路 96.5 ha 75.5 ha 78.2 96.5 ha 75.5 ha 78.2
楢葉町 住宅地 2,524 世帯 2,524 世帯 100 2,520 2,520 100
農地 844.2 ha 844.2 ha 724.2 ha 724.2 ha
森林 445.5 ha 445.5 ha 549.4 ha 549.4 ha
道路 205.2 ha 205.2 ha 140.2 ha 140.2 ha
川内村 住宅地 179 世帯 179 世帯 100 161 世帯 161 世帯 100
農地 129.1 ha 129.1 ha 129.1 ha 129.1 ha
森林 194.7 ha 194.7 ha 200.5 ha 200.5 ha
道路 34.6 ha 34.6 ha 38.0 ha 38.0 ha
大熊町 住宅地 - - - 148 148 100
農地 - - - 166.5 ha 166.5 ha
森林 - - - 166.9 ha 166.9 ha
道路 - - 30.7 ha 30.7 ha
葛尾村 住宅地 430 世帯 430 世帯 100 517 517 100
農地 425.9 ha 425.9 ha 425.6 ha 425.6 ha
森林 647.7 ha 647.7 ha 647.7 ha 647.7 ha
道路 112.6 ha 112.6 ha 112.6 ha 112.6 ha
飯舘村 住宅地 1,705 336 19.7 1,705 151 8.8
農地 1,774.9 ha 72.3 ha 4.0 1,862.3 ha 104.3 ha 5.6
森林 1,473.6 ha 39.0 ha 2.6 1,212.8 ha 63.4 ha 5.2
道路 462.7 ha 90.9 ha 19.6 357.9 ha 97.7 ha 27.2
注(1)
除染実施対象数量」及び「発注数量」については、推算値の見直しを行っているものは見直し後の数量で記載している。
注(2)
飯舘村並びに平成25年7月末時点の楢葉町及び川内村の住宅地については、住宅地の件数で発注率を管理しているため、単位を「件」としている。
注(3)
川俣町並びに平成25年7月末時点の大熊町及び葛尾村の住宅地については、住宅地における関係人の数で発注率を管理しているため、単位を「件」としている。
(エ) 本格除染の契約状況

前記のとおり、環境本省は、23年度に、本格除染に向けた準備作業となる除染対象数量、関係人の把握及び建物等の状況についての調査を外部に委託して行っている。また、24年度以降は、福島事務所が建物等の状況についての調査や関係人の同意取得に関する業務を外部に委託するなどして行っているほか、除染工事やこれに付随する業務を業者に発注するなどして行っている。24年度末までの間におけるこれらの本格除染に関連する業務の外部委託や除染工事等に係る契約の状況をみると表16のとおりとなっていて、楢葉町及び葛尾村については、前記のとおり24年度末時点で発注率が100%となっていることや、除染対象区域の面積が相対的に大きいことから、契約金額も多額となっている。

表16 本格除染に関連する契約の状況(平成24年度末現在)

契約官署 市町村名 年度 契約件数
(件)
契約金額
(千円)
環境本省 田村市等11市町村 平成23 10 9,219,076
福島事務所 田村市 24 10 3,343,489
南相馬市 1 4,878,720
川俣町 8 19,546,778
楢葉町 95 36,930,930
富岡町 3 3,031,392
川内村 7 8,426,079
大熊町 8 101,700
浪江町 1 2,273,250
葛尾村 4 52,573,174
飯舘村 17 9,932,954
154 141,038,470
合計 164 150,257,547
注(1)
環境本省が平成23年度に発注した契約の中には市町村ごとに区分できない契約があることから、契約件数及び契約金額を一括して記載している。
注(2)
環境本省が平成23年度に発注した契約は、24年度又は25年度に繰り越されている。
注(3)
福島事務所が平成24年度に発注した契約の中には、25年度に繰り越したものがある。
(オ) 除染特別地域内の11市町村における状況

前記のとおり、特別地域内計画の策定や仮置場の確保等は本格除染を実施する上で不可欠なものであるが、地元調整等の不確定要素を伴うため、市町村によって本格除染の進捗状況に差が生じている。

そこで、本格除染の進捗状況、特に除染ロードマップの工程表において除染の完了目標年度が25年度末までとされていたことに鑑み、同時点における本格除染の完了の見込み(特別地域内計画の達成の見込み)などについて、除染特別地域に指定されている11市町村ごとにみると次のとおりとなっている。

a 田村市

田村市については、特別地域内計画の策定や仮置場の確保等に関する地元との調整が順調に進んでいたことから、24年7月に除染対象区域の全域を対象とした除染工事(契約額33億3679万余円)が発注され、25年6月に本格除染が完了している。

なお、福島事務所は、本格除染が完了した市町村を対象に、除染前後の空間線量率に基づきその効果を検証することとしている。そこで、本格除染が完了した田村市の4地目における除染前後の空間線量率の平均値と平均空間線量率の低減状況をみると、表17のとおりとなっている。

表17 田村市における本格除染の効果

地目 平均空間線量率(μSv/h) 低減率
(%)
除染前 除染後
住宅地 0.63 0.40 36.5
農地 0.65 0.49 24.6
森林 0.76 0.60 21.0
道路 0.61 0.46 24.5
b 南相馬市

南相馬市については、前記表13のとおり、25年7月末現在の仮置場の確保割合が18.0%にとどまっている。このことについて福島事務所は、南相馬市は汚染状況重点調査地域にも指定されているため、同市が実施する除染特別地域以外の区域の除染との間で仮置場の設置に関する調整を行わなければならない上に、同地域と合わせた除染対象面積が広大であることなどから、地元との調整に不測の日数を要していることによるものであるとしている。

そして、福島事務所は、当初は24年度に実施する計画であった区域内の4行政区について、25年度に入って仮置場が確保されたことから、25年6月に除染工事(契約額241億2900万円)を発注し、関係人の同意取得手続と並行して除染工事を進めることとしているが、他の行政区については仮置場が確保されていないことなどから、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

c 川俣市

川俣町については、25年3月に、当初は24年度に実施する計画であった区域と、25年度に実施する区域内の全ての住宅地を対象とした除染工事(契約額186億2100万余円)が発注されている。そして、福島事務所は、25年度に入って仮置場が確保されたことや、前記表12のとおり、関係人の同意取得手続が順調に進んでいることから、これらの除染については25年度末までに完了する見込みであるとしている。

また、25年7月末までに、上記仮置場のほかに、25年度に実施する区域内の6行政区において仮置場が確保されたり、その見込みが立っていたりしているが、仮置場が確保されていない行政区もあることなどから、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

d 楢葉町

楢葉町については、24年7月に24年度に実施する区域の除染工事(契約額206億1113万余円)が、25年3月に25年度に実施する区域の除染工事(契約額146億7417万円)が、それぞれ発注されている。

そして、福島事務所は、25年7月末時点で仮置場が確保されていることや、前記表12のとおり、関係人の同意取得手続も順調に進んでいることから、25年度末までに除染対象区域全域の本格除染が完了する見込みであるとしている。

e 富岡町

富岡町については、区域見直しの協議に時間を要したことから、特別地域内計画の策定が25年6月となっている。

仮置場の設置に当たっては、除染対象区域を2地域に区分し、それぞれの地域ごとに仮置場を確保することとしており、このうちの1地域については仮置場が確保されたことから、25年8月に除染工事(契約額573億3000万円)が発注されている。

この地域について、福島事務所は、関係人の同意取得手続を外部に委託して進めるとともに、これと並行して除染工事を行うこととしているが、同意取得が進んでいないことから(25年7月末時点で0%)、25年度末までに当該地域の本格除染を完了させることは困難であるとしている。また、残りの1地域についても仮置場が一部しか確保されていないことなどから(2地域全体での確保割合は25年7月末時点で25.6%)、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

f 川内村

川内村については、24年7月及び25年3月に除染工事(契約額はそれぞれ43億3650万円、38億4300万円)が発注されている。そして、福島事務所は、仮置場が確保されていることや、前記表12のとおり、関係人の同意取得手続も完了していることから、25年度末までに除染対象区域全域の本格除染が完了する見込みであるとしている。

g 大熊町

大熊町については、25年度に入ってから仮置場が確保されたり、その見込みが立っていたりしていることから、福島事務所は、25年6月に発注した除染工事(契約額151億2000万円)と並行して関係人の同意取得手続を進めることにより、25年度末までに除染対象区域全域の本格除染が完了する見込みであるとしている。

h 双葉町

双葉町については、避難指示区域の見直しについての協議に時間を要したことから、25年8月末時点においても特別地域内計画が策定されておらず、計画の策定に向けて地元との調整を行っている状況にあることから、福島事務所は、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

i 浪江町

浪江町については、前記表13のとおり、25年7月末までに確保された仮置場が皆無となっており、このことについて福島事務所は、除染対象面積が広大であることなどから、調整に不測の日数を要したことによるものであるとしている。

そして、福島事務所は、1行政区においては25年7月末までに仮置場の確保の見込みが立ったことから関係人の同意取得手続を進めることとしているが、他の行政区については仮置場の確保に向けた調整が続いているため、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

j 葛尾村

葛尾村については、当初、除去土壌等を可能な限り集約することとして村内の3地区に仮置場を設置することで調整を行い、25年3月に除染対象区域全域を対象とした除染工事(契約額518億5693万余円)が発注された。その後、3地区のうち2地区において仮置場の候補地の選定が難航したため、福島事務所は方針を変更し、仮置場が確保されるまでの間は各行政区の仮置場で一時的に保管することとしている。

そして、仮置場が確保された村内の1地区の仮置場に除去土壌等を搬入することにより除染工事を進めているが、25年7月末時点で行政区ごとの仮置場が確保されていないことから、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている。

k 飯舘村

飯舘村については、24年8月に、除去土壌等は発生した現場で一時的に保管することとして、24年度に実施する区域のうちの4行政区を対象に除染工事(契約額77億1750万円)が発注されている。しかし、4行政区における仮置場の確保に時間を要したことなどから、除去土壌等の現場保管について関係人の同意が得られず、前記表14のとおり、24年度は除染工事が進んでいない状況となっている。

そして、25年度に入って上記4行政区のうちの2行政区において仮置場が確保されたことから、当該2行政区の本格除染を24年度に引き続き実施するとともに、これとは別に、当初は24年度に本格除染を実施する計画であった区域内の3行政区において新たに仮置場が確保されたことから、25年8月に除染工事(契約額216億3000万円)が発注されている。しかし、福島事務所は、24年度に実施する計画であった他の行政区や25年度に実施する計画となっている行政区については仮置場が確保されていないことなどから、25年度末までに除染対象区域全域にわたる本格除染を完了させることは困難な状況であるとしている


11市町村における本格除染の進捗状況は上記のとおりであり、25年度末までに7市町村において除染対象区域の本格除染が完了しない見込みとなっている。

環境省は、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域における除染の進捗状況全般にわたる点検を実施し、その結果等を25年9月に公表している。この中で、本格除染が完了しない見込みとなっている上記7市町村のうち双葉町を除く6市町村については各市町村と引き続き調整を行い年内を目途に特別地域内計画の変更を行うこととしている。また、双葉町については特別地域内計画の策定に向けて引き続き調整を行うこととしており、特別地域内計画の変更や策定に当たっては、個々の市町村の状況に応じ、復興の動きとも連携しながら除染の進め方を見直すこととしている。

カ 除染適正化プログラムの構築

25年1月、環境省が発注した除染において、川の縁に積もった枯れ葉を足で川に流していたなど作業が適正に行われていないとの報道がなされた。これを契機として、同省は、同月、事実関係確認のための調査や適正な除染の推進方策の検討を行う除染適正化推進本部を設置した。

そして、環境省は、事業者(除染工事の受注者)に対し、報道等で指摘された事案や他に不適正な事案があるか調査した結果について報告を求めるとともに、同省に直接寄せられた通報も踏まえ、計19件の事案(新聞報道等の掲載等を受けて事業者が環境省に報告したものが15件、環境省が通報等を受けたものが4件)について、事業者、通報者等からの聞き取り調査を実施した。そして、同省は、このうち2件の事案について、仕様書に記載された事項等に照らし適切ではないことから、事業者に対して改善の指示を行っている。また、同省の現地調査により不適正な事案が1件発見され、同省は、これについても事業者に改善の指示を行っている。

また、環境省は、本件事態を踏まえ、25年1月に除染適正化プログラムを作成し、①事業者の施工責任の徹底、②幅広い管理の仕組みの構築、③環境省の体制強化からなる再発防止策を講じた。こうした取組もあって、25年7月末現在、不適正な除染と判断した事例は見受けられていない。

上記の体制強化に関して、環境省は、「不適正除染110番」を設け、個人情報に配慮しつつ、広く一般から不適正な除染に関する通報等を受け付けており、このような通報等を、伝達ルールを明確化して一元的に管理することとしている。また、これらの通報等については、事実関係を確認し、結果を取りまとめて、同省内に設置された有識者から成る除染適正化推進委員会に報告するとともに、公表している。なお、通報の一部は、通報者の除染手法に対する理解が十分でないことにより生じていることなどから、環境省は、除染手法の説明を十分に行うなど、今後とも細かな対応をとることが必要であると思料される。

(4) 福島県の県及び市町村による除染の実施状況

福島県内で汚染状況重点調査地域に指定されている市町村は、24年度末時点で40市町村となっている。そして、これらの市町村に係る除染実施計画の策定状況は、別表2のとおりとなっており、40市町村のうち、三島町、柳津町、塙町及び矢祭町の4町については、25年8月末時点では具体的な除染実施計画が策定されていない。

ア 福島県民健康管理基金

福島県は、23年9月に福島県民健康管理基金条例(平成23年福島県条例第83号)を制定し、福島第一原発事故による災害及びその影響から県民の健康を守るために実施する県民の健康管理に資する事業に要する資金を積み立てる福島県民健康管理基金を設置している。同基金に関する基金管理権者とその事務の範囲は、表18のとおりである。

表18 福島県民健康管理基金の基金管理権者とその事務の範囲(平成25年6月末現在)

基金管理権者 事務の範囲
保健福祉部県民健康管理課長 健康管理・調査事業及び子供等に対する放射線影響の防止事業分の管理に関する一切の事務
生活環境部生活環境総務課長 放射性物質の除染の推進に係る事業及び環境放射線のモニタリングに係る事業分の管理に関する一切の事務
農林水産部農林総務課長 農業系汚染廃棄物の処理の推進に係る事業分の管理に関する一切の事務
保健福祉部児童家庭課長 母子の健康支援及び新生児聴覚検査に係る事業分の管理に関する一切の事務
保健福祉部地域医療課長 原子力災害健康管理施設整備交付金の放射線医学県民健康管理センターの整備に係る事業分の管理に関する一切の事務

表18のように、基金管理権者ごとに事務の範囲が定められており、同基金については、それぞれ基金管理権者ごとに区分して管理が行われている。同基金全体の概要は図5のとおりである。

図5 福島県民健康管理基金の概要(平成24年度末現在)

福島県民健康管理基金の概要(平成24年度末現在)
注(1)
担当課は、基金管理権者の所属課である。
注(2)
福島県民健康管理基金のうち、除染に関するものを四角で囲み、太字で示している。

福島県民健康管理基金のうち除染に充てるための資金として、生活環境部生活環境総務課において、内閣府が23年度東日本大震災復旧・復興予備費により交付した1922億余円並びに環境省が23年度第3次補正予算及び24年度当初予算により交付した1644億余円が管理されている(以下、同課が管理している資金を「除染対策基金」という。)。そして、24年度末までの除染対策基金の収入と支出を示すと表19のとおりである。

表19 福島県民健康管理基金のうち除染対策基金の収支状況

(単位:千円)


平成24年度
末までの
累計額
国庫金 利子収入 その他
内閣府交付分 環境省交付分
192,235,278 164,463,936 251,399 50 356,950,663


平成24年度
末までの
累計額
市町村実施除染事業 県実施除染事業
(内閣府交付分
から)
帰還支援事業
(内閣府交付分
から)
(内閣府交付分から) (環境省交付分から)
160,555,248 100,676,976 3,362,333 5,211,556 269,806,114
24年度末残額 87,144,549
(注)
帰還支援事業とは、避難者への広報誌の送付、食品等放射能検査機器の配備等の帰還を支援するための事業である。

イ 除染対策基金による除染の実施状況等

福島県は、除染対策事業交付金交付要綱(平成23年環保第1794号)等を定め、除染実施計画を策定している市町村に対し、除染対策基金を取り崩して除染対策事業交付金を交付することとしている。

同交付要綱等によると、除染対策事業交付金の交付対象は、放射性物質汚染対処特措法に基づき除染実施計画が策定されているとともに、除染により生ずる廃棄物等の仮置場の予定地が既に確保されているか、又は確保の見込みがある市町村とされている。また、同交付要綱等では、除染対象となる「戸建て住宅」、「公共施設」・「商業施設」・「工場」・「集合住宅」及び「市町村道・一般道」等ごとに交付対象経費及び基本額等が定められている。

このほか、福島県は、市町村が策定した除染実施計画に基づき、県が管理する施設の除染を実施する場合も、それに要する経費を同基金から取り崩して支出している。

そして、除染対策事業交付金の市町村への交付状況及び福島県が市町村の除染実施計画に基づき実施した除染に対する除染対策基金からの取崩し状況等を23、24両年度でみると表20及び別表3のとおりとなっている。

表20 平成23、24両年度における除染対策事業交付金の交付状況及び福島県の取崩し状況並びに繰越状況

(単位:千円)
区分 平成23年度
   (A)
24年度
   (B)
24年度のうち翌年
度繰越額  (C)
2か年度計
  (A)+(B)
繰越率
(C)/(B)×100
県の取崩し額 58,137 3,304,196 (1,811,289) 3,362,333 54.8%
(市町村数)
市町村への交付額
(25)
6,610,540
(36)
222,848,279
(32)
(126,277,085)
229,458,820 56.6%
6,668,677 226,152,476 (128,088,374) 232,821,153 56.6%
注(1)
2か年計(232,821,153千円)と表19の「市町村実施除染事業」と「県実施除染事業」の計(264,594,557千円)との差額は、概算払の戻入分を平成25年度に積み戻した14,166千円及び予算繰越額31,759,237千円である。また、表19の「帰還支援事業」は計上していない。
注(2)
繰越率は、平成24年度の交付額に対する翌年度繰越額の割合である。
注(3)
福島県の繰越額には、上記の他に予算繰越額31,759,237千円がある。

表20のとおり、福島県は、県が実施した除染に係る経費として、除染対策基金から23年度に5813万余円を、24年度に33億0419万余円を取り崩し、また、除染対策事業交付金を23年度に25市町村に対して66億1054万余円を、24年度に36市町村に対して2228億4827万余円をそれぞれ交付している。そして、24年度に除染対策事業交付金の交付を受けた36市町村のうち32市町村において1262億7708万余円が25年度に繰り越されているほか、福島県も18億1128万余円を繰り越している。なお、23年度から24年度への繰越しはない。

また、除染対策事業交付金の交付を受けて除染を実施している市町村以外の市町村も含め、福島県内の市町村が実施している除染について、25年6月末現在の市町村が除染を実施することとしている数量(以下「計画数量」という。)に対する発注数量及び除染実施数量(実績数量)を除染対象の区分ごとに示すと、別表4のとおりとなっている。

このうち、「公共施設」、「住宅」、「道路」及び「水田」における進捗状況についてみると、表21のとおりとなっている。

表21 福島県内の市町村における除染の進捗状況(平成25年6月末現在)

区分 除染を実
施した市
町村数
0%の
市町村数
20%未満の
市町村数
20%以上
50%未満の
市町村数
50%以上
80%未満の
市町村数
80%以上
100%未満の
市町村数
100%の
市町村数
 
 













公共施設 36 0 (0.0%) 2 (5.5%) 6 (16.6%) 14 (38.8%) 13 (36.1%) 1 (2.7%)
住宅 33 4 (12.1%) 3 (9.0%) 13 (39.3%) 5 (15.1%) 2 (6.0%) 6 (18.1%)
道路 24 5 (20.8%) 3 (12.5%) 4 (16.6%) 4 (16.6%) 2 (8.3%) 6 (25.0%)
水田 21 1 (4.7%) 0 (0.0%) 2 (9.5%) 2 (9.5%) 2 (9.5%) 14 (66.6%)















公共施設 36 2 (5.5%) 4 (11.1%) 11 (30.5%) 10 (27.7%) 9 (25.0%) 0 (0.0%)
住宅 33 7 (21.2%) 15 (45.4%) 7 (21.2%) 0 (0.0%) 2 (6.0%) 2 (6.0%)
道路 24 6 (25.0%) 8 (33.3%) 3 (12.5%) 3 (12.5%) 1 (4.1%) 3 (12.5%)
水田 21 2 (9.5%) 0 (0.0%) 2 (9.5%) 5 (23.8%) 3 (14.2%) 9 (42.8%)
注(1)
計画数量は、平成25年度末までの計画数量の累計である。
注(2)
市町村の除染実施計画に基づき、福島県が実施する除染については、当該市町村において計上している。
注(3)
対象施設を複数回にわたって除染した場合は、除染実施数量を重複計上せず、計画数量に対する発注数量及び除染実施数量の割合を計上している。
注(4)
道路は、市町村道のみで、県道は含まない。
注(5)
別表4のうち、除染対策事業交付金の交付を受けていない市町村は除く。

表21のとおり、計画数量に対する25年6月末時点の発注数量及び除染実施数量の割合は、市町村の間で開差が生じているものの、計画数量に対する発注数量の割合が50%以上となっている市町村数は、公共施設では36市町村中28市町村(77.7%)、住宅では33市町村中13市町村(39.3%)、道路では24市町村中12市町村(50.0%)、水田では21市町村中18市町村(85.7%)となっていて、一定程度の発注が進んでいるものと思料される。

ウ 除染対策事業交付金以外の財源による福島県及び市町村の対応

除染対策事業交付金のほか、除染実施計画に基づき除染を実施する市町村は、前記のとおり、除染実施計画の策定等に要する経費については環境省から低減対策緊急補助金の交付を受けることができることとなっている。

また、福島県は、市町村が子供の生活圏において放射線量低減対策を緊急的に実施するために、放射線量低減対策を講じていない学校及び児童福祉施設等の空間線量率が1μSv/h未満である校庭・園庭の土壌処理や、空間線量率が1μSv/h以上である都市公園の表土改善等を実施するために、福島県民健康管理基金のうち県民健康管理課が所掌する内閣府から交付された179億余円(図5参照)を取り崩して、市町村に交付している。このほか、除染に要した経費に対して、特別交付税や震災復興特別交付税が交付されている市町村が見受けられたり、文部科学省の補助金を活用して空間線量率が1μSv/h以上である公立の学校等の校地・園地の空間線量率を低減するために必要な土壌処理事業を実施したり、厚生労働省の補助金を活用して同様に空間線量率が高い児童福祉施設等の園庭等の土壌処理事業を実施したりしている市町村が見受けられた。

そして、これらについて福島県及び市町村が23、24両年度に受け入れた額は、別表5のとおりであり、福島県全体では、表22のとおりとなっている。


表22 県及び市町村が除染対策事業交付金以外に平成23、24両年度に放射線量低減対策等に要した経費とし て受け入れた金額

(単位:千円)
区分 低減対策緊急補助金 福島県民健康管理基金からの交付 特別交付税 震災復興特別交付税 文部科学省の補助金 厚生労働省の補助金
(地方公共団体) (10市町) (県及び49市町村) (県及び15市町村) (県及び31市町村) (県及び18市町村) (県及び13市町村)
平成23年度 26,571 4,030,154 56,938 187,551 2,446,539 60,195
24年度 41,763 955,830 0 293,840 258,833 5,767
合計 68,335 4,985,985 56,938 481,391 2,705,372 65,962
注(1)
地方公共団体は、平成23年度又は24年度に1か年度以上交付を受けている地方公共団体である。
注(2)
福島県民健康管理基金からの交付は、平成23年度第2次補正において内閣府が予算措置して福島県に交付し、同県が福島県民健康管理基金に造成した資金を原資として交付された金額である。
注(3)
特別交付税及び震災復興特別交付税の金額については、会計検査院が県から提出を受けた調書に基づき集計している。

(5) 茨城県等5県の地方公共団体による除染の実施状況

前記のとおり、福島県のほか、茨城県等5県においても、事故由来放射性物質による環境汚染が生じており、汚染状況重点調査地域に指定されている市町村がある。検査を実施した茨城県等5県において、汚染状況重点調査地域に指定された市町村は、前記表3のとおり、茨城県20市町村、栃木県8市町、群馬県10市町村、埼玉県2市及び千葉県9市の計49市町村となっている。

ア 低減対策緊急補助金の交付状況

汚染状況重点調査地域に指定された市町村で、放射性物質汚染対処特措法に基づき除染実施計画を策定し(別表6~別表10参照)、その除染実施計画に基づいて除染を実施した市町村は、環境省から低減対策緊急補助金の交付を受けている。また、茨城県等5県は、市町村が策定した除染実施計画に基づいて県が管理する施設の除染を実施した場合には、市町村と同様に、環境省から低減対策緊急補助金の交付を受けている。これらの県及び市町村が23、24両年度に低減対策緊急補助金の交付対象事業に要したとした実績額及びそれに対する補助金の額の確定額について県ごとにみると表23のとおりであり、茨城県等5県の補助金の額の確定額は、23年度計31億8659万余円、24年度計77億6334万余円、両年度計109億4994万余円と多額に上っている(別表11~別表15参照)。

表23 茨城県等5県の県及び市町村における低減対策緊急補助金の交付対象事業に要したとした実績額及び それに対する補助金の額の確定額の状況(平成23、24両年度)

(単位:千円)
県名
交付対象事業に要したとした実績額 補助金の額の
確定額
計画策定 除染事業 地域活動支援 生活環境再生 専門家派遣 事後モニタリング
茨城県 平成
23
133,909 555,242 47 0 0 0 689,199 689,001
24 93,646 1,803,339 813 8,012 0 3,265 1,909,076 1,890,414
227,556 2,358,581 860 8,012 0 3,265 2,598,276 2,579,416
栃木県 23 32,544 319,288 185 0 0 0 352,018 351,106
24 6,215 1,615,175 480 43,913 321 468 1,666,575 1,664,458
38,759 1,934,464 666 43,913 321 468 2,018,593 2,015,564
群馬県 23 35,958 3,374 963 0 0 0 40,297 40,295
24 17,884 486,762 0 37,463 226 0 542,336 540,640
53,843 490,136 963 37,463 226 0 582,633 580,935
埼玉県 23 1,174 178,028 705 0 0 0 179,907 179,907
24 0 65,095 0 514 0 803 66,412 65,578
1,174 243,123 705 514 0 803 246,320 245,486
千葉県 23 155,819 1,895,295 4,330 0 0 0 2,055,445 1,926,287
24 15,128 3,401,167 11,938 185,436 1 2,387 3,616,061 3,602,255
170,947 5,296,463 16,269 185,436 1 2,387 5,671,506 5,528,543
5県 計 23 359,406 2,951,230 6,232 0 0 0 3,316,868 3,186,599
24 132,874 7,371,540 13,232 275,340 549 6,925 7,800,462 7,763,346
492,280 10,322,770 19,464 275,340 549 6,925 11,117,331 10,949,946
(注)
実績報告書の提出を受けて、環境省で額の確定のための審査及び確認の過程で、補助対象事業費から除外されたものがあったり、寄付金等を事業費に充てているものがあったりして、実績報告書における事業費の額と補助金の額の確定額とが一致していない地方公共団体がある。

イ 除染実施計画に対する除染の進捗状況

茨城県等5県で汚染状況重点調査地域に指定されている49市町村のうち、除染実施計画を策定した市町村においては、この計画の中で、いずれも子供の生活環境に関する施設について優先的に除染を実施することとしている。そこで、子供に関する施設のうち、「保育所」、「幼稚園」、「小学校」、「中学校」及び「公園」について、除染実施計画に対する24年度末現在における除染実施状況を茨城県等5県ごとに集計すると、表24のとおりである。

表24 除染実施計画に定められている子供に関する施設の除染実施状況(平成24年度末現在)

県名 施設の区分 除染実施計画における除染対象施設数



(A)
除染を実施するための線量の計測等の結果、平均空間線量率が0.23μSv/h以上であった施設数 除染を実施するための線量の計測等の結果、平均空間線量率が0.23μSv/hを下回っていた施設数 除染を実施した施設数(実施したとみなす施設を含む(注(1)))


(F)=(B)+
(D)+(E)
実施率

(%)


(F)÷(A)
×100
除染を実施した施設数


  (B)
除染を実施していない施設数



  (C)
除染を実施した施設数


  (D)
除染を実施していない施設数



  (E)
茨城県 保育所 87 54 0 13 18 85 97.7
幼稚園 67 31 1 19 14 64 95.5
小学校 98 73 1 21 2 96 97.9
中学校 45 31 0 10 4 45 100
公園 1,027 276 107 168 204 648 63.0
栃木県 保育所 89 73 0 12 4 89 100
幼稚園 25 17 0 7 1 25 100
小学校 73 61 0 11 1 73 100
中学校 29 22 2 4 1 27 93.1
公園 149 43 29 3 5 51 34.2
群馬県 保育所 6 3 0 0 3 6 100
幼稚園 4 2 0 0 2 4 100
小学校 26 8 0 8 10 26 100
中学校 16 4 0 6 6 16 100
公園 38 7 11 4 10 21 55.2
埼玉県 保育所 20 8 0 12 0 20 100
幼稚園 13 12 0 0 1 13 100
小学校 25 16 0 9 0 25 100
中学校 11 5 0 6 0 11 100
公園 108 69 0 33 6 108 100
千葉県 保育所 178 73 0 57 48 178 100
幼稚園 102 71 0 15 16 102 100
小学校 148 80 0 65 3 148 100
中学校 73 34 0 37 0 71 97.2
公園 1,715 1,068 0 272 150 1,490 86.8
注(1)
除染実施計画上は除染対象施設であるが、除染の実施前に空間線量率を測定した結果、除染を実施する必要がないことが明らかなため、除染を実施しなかった場合も、除染実施施設数に計上している。
注(2)
市町村の除染実施計画に基づき、県が管理する施設を県が除染した場合等を含む。
注(3)
保育所等の閉所、建て替え等が計画されており、子供が立ち入らないと判断している場合や、除染と同様な工事が行われるとしている場合は、除染実施計画における除染対象施設数から除外している場合がある。

さらに、24年度末現在の子供に関する施設の区分ごとに除染の実施状況(別表16~別表20参照)を、実施率の分布でみると、表25のとおりとなっている。

表25 施設の区分ごとの実施率の分布(平成24年度末現在)

(単位:数、%)
地域の区分 除染実施計画において当該施設の除染を実施するとしている市町村

(A)
平成24年度末時点における実施率 実施率が100%となっている市町村の割合


(B)/(A)
0% 20%未満 20%以上
50%未満
50%以上
80%未満
80%以上
100%未満
100%


(B)
保育所 32 0 0 0 0 1 31 96.8
幼稚園 28 0 0 0 1 2 25 89.2
小学校 38 0 0 0 0 2 36 94.7
中学校 33 0 0 0 1 1 31 93.9
公園 40 0 2 8 6 4 20 50.0

このように、子供に関する施設のうち、「保育所」、「幼稚園」、「小学校」及び「中学校」の実施率は、ほとんどの市町村において100%となっていたが、「公園」は対象施設数が多いことから、20市町村で実施率が100%となっているものの、実施率が20%未満となっている市町村も見受けられた。

汚染状況重点調査地域の指定を受けた市町村における除染実施計画の計画期間(土壌等の除染等の措置の着手予定時期から完了予定時期までの期間)は市町村によって差があるものの、2~3年間とする市町村が多く、除染は計画に沿って実施されているものと思料される。

なお、各市町村の説明等によると、空間線量率は放射性物質の自然崩壊(注7)による減少もあるが、除染を実施した効果により、空間線量率が0.23μSv/h以上となる箇所はほとんど存在しなくなった。しかし、側溝等の局所的な箇所においては、空間線量率が0.23μSv/h以上となる場合もあることから、今後は、事後モニタリングによる放射線量の確認を継続していくこととなるものと思料される。

(注7)
自然崩壊  原子核が放射線を出して別の原子核に変わる現象。この現象を繰り返すことにより、最終的に安定した物質に変化すると放射線を放出しなくなる。

ウ 茨城県等5県管内の市町村における除染の実施状況

茨城県等5県の除染の実施状況についてみると、汚染状況重点調査地域の指定を受けていない市町村においても除染又は除染に類似する取組(以下、これらを合わせて「除染等」という。)を実施しており、その状況を示すと、表26のとおりとなっている(別表21参照)。

表26 平成23、24両年度における除染等の実施状況

(単位:市町村数、%)
県名 県内の市町村 汚染状況重点調査地域の指定を受けている市町村数 (B)のうち除染等を実施した市町村数 汚染状況重点調査地域の指定を受けていない市町村数 (D)のうち除染等を実施した市町村数 除染等を実施した市町村数 除染等の実施率
(A) (B) (C) (D)=(A)-(B) (E) (F)=(C)+(E) (F)/(A)
x100
茨城県 44 20 19 24 4 23 52.2
栃木県 26 8 7 18 0 7 26.9
群馬県 35 10 10 25 9 19 54.2
埼玉県 63 2 2 61 27 29 46.0
千葉県 54 9 9 45 13 22 40.7
合計 222 49 47 173 53 100 45.0
注(1)
市町村内で1か所でも施設の除染を実施している場合は計上している。
注(2)
市町村の除染実施計画に基づき、県が管理する施設の除染を県が実施した場合等については、当該市町村において計上している。
(注8)
除染に類似する取組  空間線量率が0.23μSv/hを下回っている場合は、低減対策緊急補助金の交付対象とされていないが、市町村によっては、空間線量率が0.23μSv/h以上の除染と同様に、表土の削り取り、枝打ち及び落葉除去等の空間線量率を低減させる事業を実施しており、このような事業を除染に類似する取組とした。

汚染状況重点調査地域に指定されていない市町村は、低減対策緊急補助金の交付対象とされていないことから、当該市町村の自主財源等により除染等を実施している。

そして、会計実地検査時の市町村等の説明によると、汚染状況重点調査地域の指定を受けていない市町村や、指定を受けていても空間線量率が0.23μSv/h未満の区域であって低減対策緊急補助金の交付対象とならない区域等において除染に類似する取組を実施した市町村の中には、当該除染に類似した取組に要した経費に対して震災復興特別交付税又は特別交付税の交付を受けているとしている。

そこで、県を通じて各県内の市町村における24年度末現在の除染等の実施状況を確認し、主な施設の区分ごとに除染等に要した経費の財源を集計したところ、表27のとおりとなっている(別表22~別表26参照)。

表27 主な財源別による除染等の実施状況(平成24年度末現在)

(単位:施設数、千円)
県名 除染等実
施施設
実施施
設数
財源別による除染等の実施状況
低減対策緊急補助金 震災復興特別交付税 特別交付税 地方公共団体等の自主財源等その他 金額計
施設数 金額 施設数 金額 施設数 金額 施設数 金額
茨城県 保育所 120 75 67,489 31 16,309 0 0 14 6,751 90,549
幼稚園 93 53 46,792 31 12,803 0 0 9 4,377 63,973
小学校 201 103 503,187 85 97,606 0 0 13 9,169 609,963
中学校 80 45 403,473 26 56,745 0 0 9 4,122 464,342
公園 541 371 656,211 149 43,575 0 0 21 51,510 751,297
民家 153 112 7,428 0 884 0 0 41 169 8,482
栃木県 保育所 98 47 48,126 0 221 22 20,648 29 34,074 103,069
幼稚園 28 9 9,434 2 1,339 8 10,138 9 36,676 57,587
小学校 94 57 331,343 3 8,756 29 144,524 5 34,668 519,293
中学校 34 22 168,035 0 6,783 11 59,933 1 12,108 246,861
公園 96 90 408,845 0 0 6 137 0 661 409,644
民家 470 448 71,992 1 2,205 19 17 2 2 74,216
群馬県 保育所 12 3 13,931 0 0 5 8,433 4 2,793 25,158
幼稚園 10 2 14,016 0 0 6 210 2 7,551 21,777
小学校 62 19 73,027 0 0 38 11,776 5 17,533 102,337
中学校 33 10 114,218 0 0 16 5,773 7 35,982 155,974
公園 24 11 55,256 0 0 11 1,060 2 918 57,236
民家 377 315 13,441 0 0 47 1,047 15 2,295 16,784
埼玉県 保育所 62 6 8,188 17 9,193 19 7,094 20 770 25,246
幼稚園 34 0 0 0 0 14 741 20 419 1,160
小学校 264 17 59,747 107 32,372 55 4,803 85 3,485 100,409
中学校 147 5 27,517 70 32,873 24 2,417 48 1,365 64,174
公園 282 58 92,277 116 58,664 52 14,198 56 16,943 182,083
民家 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0
千葉県 保育所 178 60 64,166 92 125,543 16 30,462 10 10,776 230,948
幼稚園 143 63 117,094 31 19,853 11 33,425 38 42,538 212,912
小学校 239 81 1,104,763 112 942,197 13 87,103 33 349,117 2,483,181
中学校 112 32 395,068 58 691,218 7 44,074 15 210,267 1,340,629
公園 1,637 1,068 2,682,995 431 646,901 4 23,245 134 189,060 3,542,202
民家 6,909 4,338 152,247 2,353 116,396 0 0 218 161,159 429,803
合計 保育所 470 191 201,901 140 151,266 62 66,638 77 55,165 474,971
幼稚園 308 127 187,337 64 33,995 39 44,515 78 91,561 357,411
小学校 860 277 2,072,069 307 1,080,932 135 248,208 141 413,973 3,815,184
中学校 406 114 1,108,313 154 787,621 58 112,199 80 263,846 2,271,981
公園 2,580 1,598 3,895,586 696 749,141 73 38,641 213 259,094 4,942,463
民家 7,910 5,213 245,110 2,354 119,486 67 1,064 276 163,626 529,287
注(1)
市町村以外の者が市町村の除染実施計画に基づき除染を実施した場合も当該市町村において集計している。
注(2)
職員が除染を実施していて費用が発生していない場合は、件数のみ計上しているが、施設の維持管理等の一環として除染等を行っている場合は、除染等と区別がつかないことなどから、件数も計上していない。
注(3)
複数の財源を用いている場合は、金額の大きい財源において件数を計上している。
注(4)
経費を除染等を実施した施設ごとに区分できない場合は、経費をまとめて計上している場合がある。
注(5)
金額については、平成25年5月15日現在で集計している。
注(6)
栃木県の「地方公共団体等の自主財源等その他」欄には、文部科学省や厚生労働省の補助金を活用して実施した公立学校及び保育所の土壌処理事業が含まれている。
注(7)
特別交付税及び震災復興特別交付税の金額については、会計検査院が県及び市町村から提出を受けた調書に基づき集計している。

このように、茨城県等5県では、汚染状況重点調査地域に指定された市町村以外の市町村も多数の施設について除染等を実施している。そして、茨城県等5県の市町村が実施した除染等に要した経費に係る財源は、必ずしも環境省の低減対策緊急補助金が大半を占めているわけではない。

(6) 東京電力に対する除染費用の求償等

前記のとおり、原賠法において、原子力損害の賠償責任は、原子炉の運転等に係る原子力事業者にあると規定されている。また、放射性物質汚染対処特措法第44条第1項において、事故由来放射性物質による環境汚染に対処するため放射性物質汚染対処特措法に基づいて講じられる措置は、原賠法の規定により、関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき原子力損害に係るものとして、事故由来放射性物質を放出した原子力事業者の負担の下に実施されるものとするとされている。したがって、放射性物質汚染対処特措法に基づいて講じられる除染等の措置等については、東京電力の負担の下に実施されるものとされ、さらに、東京電力は、この措置等に要した費用について請求又は求償があったときは、速やかに支払うよう努めなければならないとされている。

環境省の東京電力に対する除染に係る求償額は、表28のとおり、25年8月末現在で403億余円であり、これに対して東京電力から67億余円の支払を受けていて、336億余円が未払(未払率83.3%)となっている。

表28 東京電力への求償額及び東京電力からの支払額

(単位:千円)
区分 東京電力に対する求償額 東京電力からの支払額
第1回 第2回 第3回 第4回 第1回 第2回 第3回
求償又は支払年月 平成24年11月 25年 2月 25年 5月 25年 8月 24年12月
25年 8月
25年 3月
25年 6月
25年 6月
除染特別地域関連 3,834,492 6,420,377 6,154,651 4,128,366 1,726,527 3,240,278 247,380
除染実施区域関連 2,418,980 0 0 10,517,036 1,521,882 0 0
中間貯蔵施設関連 104,915 0 0 79,264 0 0 0
調査研究・技術開発関連 0 825,530 0 281,418 0 0 0
普及啓発関連 1,014,716 0 0 1,588,951 0 0 0
その他 249,046 59,331 68,312 2,645,139 0 0 0
7,622,151 7,305,240 6,222,963 19,240,177 3,248,410 3,240,278 247,380
求償額及び支払額の計 40,390,532 (A) 6,736,068 (B)
未払額 33,654,463 (A) - (B) = (C) (未払率 83.3% (C) / (A)) 

そして、環境省の説明によると、求償に対して未払が生じている理由は、東京電力が、①現時点で証憑(しようひよう)の確認が完了しておらず、その必要性や合理性について判断できない、又は、②現時点で放射性物質汚染対処特措法に基づく措置に該当すると判断できないとしていることによるとしている。同省は、更に精査の上、東京電力に対して求償を行っていくこととしている。

なお、文部科学省に設置された原子力損害賠償紛争審査会がまとめた「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」(24年3月)において、事故由来放射性物質に関し必要かつ合理的な範囲の除染等を行うことに伴って必然的に生じた追加的費用等は、放射性物質汚染対処特措法第44条第1項の対象となるか否かにかかわらず、賠償すべき損害と認められるなどとされている。

このほか、各地方公共団体における除染に要した費用のうち国の財政的支援を受けていない経費について、福島県及び茨城県等5県では、25年3月末時点で2県88市町村が東京電力に対して賠償請求を検討又は既に請求している状況である。