独立行政法人は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として設立される法人である。
そして、平成13年4月に、中央省庁等改革の一環として、国が直接行っていた事務及び事業を実施させるために57独立行政法人が設立され、その後、15年10月に、特殊法人等改革に伴って特殊法人等から移行するなどして31独立行政法人が設立されるなどの経緯を経て、26年4月1日現在における独立行政法人の総数は98となっている。
独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)において定められており、各独立行政法人の目的及び業務の範囲については、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律等(以下「個別法」という。)において定められている。
「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。以下「会計基準」という。)によれば、独立行政法人の会計は、国民その他の利害関係者の独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにするため、取引及び事象の金額的側面及び質的側面の両面からの重要性を勘案して、適切な記録、計算及び表示を行わなければならず、質的側面の考慮においては、独立行政法人の会計の見地からの判断に加え、独立行政法人の公共的性格に基づく判断も加味して行わなければならないとされている。
独立行政法人の事業年度(以下「年度」という。)は、通則法第36条第1項の規定に基づき、毎年4月1日から翌年3月31日までとなっており、独立行政法人は、通則法第38条の規定に基づき、毎年度、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他主務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下、これらを合わせて「財務諸表」という。)を作成し、当該年度の終了後3か月以内に主務大臣に提出し、その承認を受け、遅滞なく、官報に公告し、かつ、一般の閲覧に供しなければならないこととなっている。そして、上記の「主務省令で定める書類」については、独立行政法人ごとに、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結剰余金計算書、連結附属明細書(以下、これらを合わせて「連結財務諸表」、財務諸表のうちこれら以外の書類を「個別財務諸表」という。)等の書類が、主務省令において定められるなどしている。
独立行政法人の会計は、通則法第37条及び主務省令によれば、原則として企業会計原則によることとされ、会計基準を適用することとなっている。
会計基準は、独立行政法人が、財務報告として財務諸表を作成するに当たって準拠すべき基準として策定されたものであり、会計基準の実務上の留意点として、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A」(平成12年8月総務省行政管理局、財務省主計局及び日本公認会計士協会策定。以下「Q&A」という。また、以下、会計基準とQ&Aを合わせて「会計基準等」という。)が策定されている。
独立行政法人の監事は、通則法第19条第4項において、独立行政法人の業務を監査すると規定されており、また、通則法第38条第2項の規定に基づき、独立行政法人が財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに当該年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見を付さなければならないこととなっている。
また、会計監査人による監査については、通則法第39条の規定に基づき、独立行政法人は、その資本の額その他の経営の規模が政令で定める基準に達しない独立行政法人を除き、財務諸表、事業報告書(会計に関する部分に限る。)及び決算報告書について、監事の監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならないこととなっている。
独立行政法人は、業務の一環として、出資金や運営費交付金を主な財源として、個別法に基づき他の法人に出資したり、他の法人と契約を締結して業務の委託や物品等の調達を行ったりして、他の法人に対して資金を支出する場合がある。
特定関連会社、関連会社及び関連公益法人等(以下、これらを合わせて「関連法人」という。)の定義及び範囲は、会計基準によれば、おおむね表1のとおりとされている。
表1 関連法人の種別ごとの定義及び範囲
関連法人 | 種別 | 定義 | 範囲 |
特定関連会社 | 独立行政法人が政策目的のため法令等で定められた業務として出資する会社 (会計基準第107第2項) |
(会計基準第107第2項及び第3項) |
|
関連会社 | 独立行政法人及び特定関連会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、特定関連会社以外の会社の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該会社 (会計基準第118第2項) |
(会計基準第118第3項) |
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関連公益法人等 | 独立行政法人が出えん、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、財務及び事業運営の方針決定に対して重要な影響を与えることができるか又は独立行政法人との取引を通じて公的な資金が供給されており、独立行政法人の財務情報として、重要な関係を有する公益法人等 (会計基準第129第1項) |
(注) 公益法人等には、公益法人のほか、社会福祉法人、特定非営利活動法人、技術研究組合等が含まれる。
(会計基準第129第2項及び第4項並びに会計基準注解91) |
会計基準第107等によれば、連結財務諸表においては、原則として関連法人のうち特定関連会社を連結の範囲に含めることとされている。ただし、特定関連会社であっても、その資産、収益等を考慮して、連結の範囲から除いても独立行政法人等の財政状態、運営状況及び公的資金の使用状況等に関する利害関係者の合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいものは、連結の範囲に含めないことができることとなっている。
そして、独立行政法人は、連結財務諸表を作成する場合、会計基準第130に基づき、関連法人の概要、財務状況、独立行政法人との取引の状況等の事項(以下「関連法人情報」という。)を連結財務諸表において開示しなければならないこととなっている。
また、連結財務諸表を作成しない場合、関連法人のうち関連公益法人等については、Q&A107―2に基づき、関連法人情報を個別財務諸表において開示することが求められているが、特定関連会社及び関連会社(以下、両者を合わせて「特定関連会社等」という。)については会計基準等において明文の規定が設けられていない。
独立行政法人が、特定関連会社等に対して行った出資の契機は二つに大別され、一つは独立行政法人の前身である特殊法人等が出資を行い、当該独立行政法人がその出資に係る権利等を承継したものであり、もう一つは独立行政法人が新たな出資を行ったものである。
政府は、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月閣議決定)に基づき、各特殊法人等の廃止又は民営化を図るとともに、廃止も民営化もできない事業のうち、国の関与の必要性が高く、採算性が低く、業務実施における裁量の余地が認められる事業を行う法人について、事業の徹底した見直しを行った上で、原則として独立行政法人に移行させることとした。このため、特殊法人等が実施していた出資に係る権利等は、新たに設立された独立行政法人に承継されるなどしている。
独立行政法人の中には、業務の一環として、その関連法人と契約を締結して業務の委託や物品等の調達を行っているものがある。
そして、「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」(平成21年11月閣議決定。以下「契約状況の点検・見直し」という。)に基づき、各独立行政法人は、監事及び外部有識者で構成される契約監視委員会を設置することとなっている。契約監視委員会は、各独立行政法人が20年度に締結した契約について、随意契約のうち競争性のない態様で行われている契約が継続している場合には、随意契約とした理由が妥当であるかなどについて、また、一般競争入札等の競争性があるとされている契約方式によっている場合であっても、1者応札や1者応募となっていて真に競争性が確保されているといえるかなどについて、契約状況の点検及び見直しを行うこととなっており、各独立行政法人は随意契約等見直し計画を策定することとなっている。また、21年度以降に締結した契約についても、契約監視委員会によって点検及び見直しが行われ、改善状況は主務大臣及び各独立行政法人によって毎年度公表されている。
さらに、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定。以下「基本的方針」という。)において、各独立行政法人は、一般競争入札等を原則としつつも、事務・事業の特性を踏まえ、随意契約によることができる事由を明確化し、公正性・透明性を確保しつつ合理的な調達を実施することとなっている。
ほとんどの独立行政法人は、国がその資本金の全額を出資している。また、独立行政法人は、国の一般会計や特別会計からの出資金を主な財源として、関連法人に対して多額の出資を行ったり、国から独立行政法人に対して毎年度交付されている運営費交付金を主な財源として、物品、役務等の調達を行って、その対価を支払ったりなどしている。そして、独立行政法人は、通則法、会計基準等に基づくなどして、財務状況等の各種の情報を広く国民に開示している。
本院は、これらの状況を踏まえて、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、独立行政法人から特定関連会社等への出資は独立行政法人の業務の目的に沿った適切なものとなっているか、独立行政法人が関連法人と締結している契約は競争性及び透明性が確保された適切なものとなっているか、関連法人に係る情報開示は財務状況の透明性が確保されるよう適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。
前記の98独立行政法人を対象とし、財務諸表等を分析するとともに、24年度末において関連法人を有する26独立行政法人のうち25独立行政法人及び独立行政法人から出資が行われていたり、独立行政法人との契約が多額となっていたりなどしている13関連法人において会計実地検査を行った。
20年度から24年度までの各年度末において、各独立行政法人が関連法人に該当すると判断した法人の数及びそれらの関連法人を有する独立行政法人の数は表2のとおりとなっている。
表2 関連法人に該当すると判断した法人の数及びそれらの関連法人を有する独立行政法人の数
関連法人の種別 | 平成20年度末 | 21年度末 | 22年度末 | 23年度末 | 24年度末 | |
---|---|---|---|---|---|---|
特定関連会社 | 45 | 41 | 38 | 38 | 35 | |
特定関連会社を有する独立行政法人 | 8 | 7 | 7 | 7 | 7 | |
関連会社 | 172 | 172 | 175 | 179 | 177 | |
関連会社を有する独立行政法人 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | |
関連公益法人等 注(1) | 144 | 147 | 131 | 73 | 80 | |
関連公益法人等を有する独立行政法人 | 30 | 29 | 26 | 22 | 22 | |
計 | 関連法人 注(1) | 361 | 360 | 344 | 290 | 292 |
関連法人を有する独立行政法人 注(2) | 33 | 31 | 29 | 24 | 26 |
24年度末において、特定関連会社等に対する出資残高を有している独立行政法人は、9独立行政法人であり、192特定関連会社等に対して計4909億余円を出資している。
独立行政法人が行う出資は、国の一般会計及び特別会計からの出資金を主な財源として行われている。そのため、資金の有効活用を図るなどの観点から、独立行政法人が出資した資金を用いて実施される特定関連会社等の事業(以下「出資対象事業」という。)の実施状況について、独立行政法人は、出資対象事業を取り巻く社会経済情勢等の変化を考慮の上、適宜フォローアップを行って、必要に応じて適切な措置を執ることが重要となる。
そこで、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等について、出資対象事業の実施状況等をみたところ、2独立行政法人において、特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置を執る必要があると認められる事態(前掲本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 リンク3章2節第33本(2)参照)や、出資対象事業が終了した後、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されている事態が見受けられた。
9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等について、24年度末における利益剰余金、繰越欠損金等の状況を確認したところ、利益剰余金を計上しているのは73特定関連会社等、繰越欠損金を計上しているのは119特定関連会社等であり、119特定関連会社等のうち10法人が債務超過となっていた。
また、特定関連会社等の中には、子会社を支配するなどの目的で株式を保有したり、余裕金の運用の一環として、投資等の目的で、株式、社債、外貨建てなどの外国債券(以下「外債」という。)、仕組債又は国債等の公債を保有したりしているものがある。これらの有価証券は、金融市場や為替市場の状況によってその価値が変動するものであり、価値の下落により独立行政法人からの出資金が毀損され、独立行政法人の財務状況にも影響を及ぼす結果となる可能性がある。
そこで、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等が24年度末に保有している有価証券の状況についてみたところ、特定関連会社等が保有している有価証券の中には、投資先が債務不履行に陥ったために、時価が取得価額を大幅に下回っている社債や、時価が評価できない外債も見受けられた。
9独立行政法人の192特定関連会社等のうち、6独立行政法人の18特定関連会社等が配当を行った実績があり、6独立行政法人が受け取った配当金の累計額は、計1140億余円に上っている。一方、192特定関連会社等のうち174法人は、独立行政法人が株式を取得してから25年度までの間に一度も配当を行っていない。
9独立行政法人において、どのような場合に特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかなどの業務方法書等の規定の有無及びその内容についてみたところ、多くの独立行政法人では、業務方法書等において、出資目的を達成するなどして株式の全部又は一部を処分することが適当であると認められる場合には株式を処分するなどといった規定を設けていた。しかし、1独立行政法人を除いて、出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等までは定めていなかった。
9独立行政法人が、設立されてから24年度までの間に、出資目的が達成されたなどとして全株式の譲渡を行ったり、期待された成果が上がらなかったなどとして清算を行ったりした特定関連会社等は、93法人となっている。そして、これらの特定関連会社等から株式を保有している間に受け取った配当金、株式の譲渡代金及び清算分配金(以下、これらを合わせて「回収金」という。)による出資金の回収状況についてみたところ、8独立行政法人の89特定関連会社等については、出資金累計額から回収金を差し引いた結果、当該特定関連会社等に対する出資金に係る回収不能額が生じており、その額は計535億余円となっていた。
98独立行政法人が20年度から24年度までの各年度において、独立行政法人の支出の原因となる契約(以下「支出原因契約」という。)及び収入の原因となる契約を締結している関連法人の数についてみたところ、独立行政法人が契約を締結した特定関連会社等の数は、いずれも横ばい傾向となっており、関連公益法人等の数は、20年度の114法人から24年度の38法人と大幅に減少していた。
また、24年度に関連法人と支出原因契約を締結した独立行政法人について、関連法人との支出原因契約の契約額等をみると、関連法人のうち特定関連会社は、60法人のうち17法人(28.3%)であるが、契約額でみると2647億余円のうち2391億余円(90.3%)とほとんどを占める状況となっていた。
98独立行政法人が締結している支出原因契約のうち関連法人との間で締結している支出原因契約の件数及び契約額について、24年度を20年度と比較すると、件数及び契約額は、それぞれ減少傾向となっており、1者応札又は1者応募についても同様に減少傾向となっていた。
また、独立行政法人が、関連法人との間で締結する契約について、競争性のある契約方式による契約の占める割合が増加していた。この要因としては、「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定)に基づき、随意契約の見直しなどに取り組むなどして、競争性のある契約方式への移行が推進されたことなどによると考えられる。
独立行政法人が関連法人との間で締結している支出原因契約のうち、24年度に1者応札又は1者応募であった契約であって、同じ内容の契約が25年度にも締結された契約47件(契約額47億余円)の改善状況をみたところ、25年度に複数応札又は複数応募となっていた契約は46件(契約額47億余円)で、これらの契約における平均落札率は、24年度が96.0%であったのに対して、25年度は90.0%となっていた。この要因としては、公告期間の延長等の改善策が講じられて、応札者又は応募者が増加するなどした結果、平均落札率が低下したことによるものと考えられる。
基本的方針によれば、各独立行政法人は、一般競争入札等を原則としつつも、事務・事業の特性を踏まえ、随意契約によることができる事由を明確化し、公正性・透明性を確保しつつ合理的な調達を実施することとされている。
独立行政法人が関連法人との間で締結する契約の中には、特定の公益法人等のみが所有する施設を使用する必要がある業務を当該公益法人等に委託する業務委託契約、あるいは、特定の研究開発の委託を行うために設置した公益法人等にその研究開発を委託する業務委託契約が見受けられる。そして、このような契約は、随意契約(特命等)により行うことの合理性があると考えられるが、一部の独立行政法人において、このような契約について、公告、入札、公募等の手続が必要となる一般競争入札等の契約方式により行っている事態が見受けられた。
独立行政法人は、1(5)のとおり、「契約状況の点検・見直し」に基づいて、契約監視委員会を設置して、20年度に締結した契約のうち、随意契約、1者応札又は1者応募となった契約等について、点検及び見直しを行っている。
契約監視委員会は、21年度以降に新たに随意契約等として締結した契約についても、点検及び見直しの対象としている。このように、契約の競争性を確保するため、契約監視委員会を今後も引き続き活用することが重要であると考えられる。
98独立行政法人が24年度末において有する292関連法人において、全役員数に占める独立行政法人の役職員経験者数の割合(以下「在職率」という。)を関連法人の種別ごとに比較すると、特定関連会社における在職率が関連会社及び関連公益法人等における在職率と比較して高くなっている。また、80関連公益法人等のうち、事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上かつ理事等のうち独立行政法人の役職員経験者の占める割合が3分の1以上となっている8関連公益法人等の在職率についてみると、80関連公益法人等全体の14.5%よりも高い34.0%となっている。
24年度において、特定関連会社を有する7独立行政法人のうち、連結財務諸表を作成していたのは5独立行政法人、特定関連会社の重要性が乏しいとして連結財務諸表を作成していなかったのは2独立行政法人となっていた。
そして、特定関連会社の関連法人情報に係る情報開示の状況についてみたところ、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社の関連法人情報に係る情報開示については、情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において情報開示を行っている独立行政法人と、会計基準等において明文の規定が設けられていないなどのことから情報開示を行っていない独立行政法人があり、ばらつきが生じていた。
関連会社を有する各独立行政法人における関連会社の関連法人情報に係る情報開示の状況についてみたところ、24年度において、連結財務諸表を作成していない3独立行政法人のうち、2独立行政法人は、両法人が有する関連会社の関連法人情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において、情報開示を行っていた。一方、1独立行政法人は、会計基準等において明文の規定が設けられていないことから、個別財務諸表において関連法人情報に係る情報開示を行っていなかった。
公益法人等の事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上である場合(ただし、独立行政法人が交付する助成金等による収入が事業収入の3分の1以上を占めるために、これに該当することとなる場合を除く。)には、独立行政法人が当該公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかに示されない限り、当該公益法人等は関連公益法人等に該当することとなっている。
独立行政法人が、取引先等の公益法人等について、関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たって、調査の対象とする公益法人等の範囲を限定していたり、公益法人等の事業収入、独立行政法人との取引額、助成金等の額等を適切に判断していなかったり、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかには示されていないのに、重要な影響を与えることができないことが明らかであると判断したりするなどして、関連公益法人等に該当しないとしていた独立行政法人が見受けられた。
独立行政法人の監事の権限等は、通則法において基本的な事項が規定されているが、その他の事項については、各独立行政法人が定める監事監査に関する内部規程(以下「監事監査規程等」という。)に委ねられている。このため、監事が、その職責を果たすために必要な事項は、各独立行政法人の監事監査規程等において明確にされていることが重要である。
そこで、24年度末において特定関連会社を有する7独立行政法人について、監事監査規程等の整備状況及びその内容についてみたところ、全ての独立行政法人において監事監査規程等が整備されていたが、特定関連会社に対する調査について監事監査規程等において定めているのは、3独立行政法人のみであった。
なお、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号。以下「改正通則法」という。)が27年4月から施行されることとなっていて、これにより、監事及び会計監査人は、子法人の業務及び財産の状況の調査を行うことができるとされ、調査権限が明確化されることとなっている。
各独立行政法人において、関連公益法人等の財務諸表の内容の正確性についてどのような確認を行っているかみたところ、財務諸表に記載された数値間の整合性を確認したり、関連公益法人等のホームページ等で公開された財務諸表や定時総会招集通知に添付された財務諸表と一致していることを確認したりしていた。また、これに加えて、関連公益法人等の財務諸表に監査報告書が添付されている場合にその内容を確認したり、過年度の数値と比較して異常なかい離がある場合に関連公益法人等に問い合わせて原因分析を行ったりしている独立行政法人も見受けられた。
独立行政法人における関連法人の状況について検査を実施したところ次のような状況が見受けられた。
独立行政法人の出資先である特定関連会社等について、株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置を執る必要があると認められたり、出資対象事業が終了した後、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されたりしている事態が見受けられた。
24年度末において、利益剰余金を計上しているのは73特定関連会社等、繰越欠損金を計上しているのは119特定関連会社等であり、119特定関連会社等のうち10法人が債務超過となっていた。
また、特定関連会社等が保有している有価証券の中には、投資先が債務不履行に陥ったために、時価が取得価額を大幅に下回っている社債や、時価が評価できない外債も見受けられた。
特定関連会社等に出資しているほとんどの独立行政法人は、特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等を定めていなかった。
独立行政法人が関連法人との間で締結する契約について、競争性のある契約方式による契約の占める割合が増加していた。
また、各独立行政法人は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定)等に基づいて、合理的な調達を実施すべく様々な取組を行っているが、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられる契約について、公告、入札、公募等の手続が必要となる一般競争入札等に付しているものが見受けられた。
契約監視委員会は、20年度に締結した随意契約等に加え、21年度以降に新たに締結した随意契約等についても、点検及び見直しを行っていた。
連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報に係る情報開示については、情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において情報開示を行っている独立行政法人と、会計基準等において明文の規定が設けられていないなどのことから情報開示を行っていない独立行政法人があり、ばらつきが生じていた。
独立行政法人が、取引先等の公益法人等について、関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たって、調査の対象とする公益法人等の範囲を限定していたり、公益法人等の事業収入、独立行政法人との取引額、助成金等の額等を適切に判断していなかったり、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかには示されていないのに、重要な影響を与えることができないことが明らかであると判断したりするなどしていた。
24年度末において特定関連会社を有する7独立行政法人は、監事監査規程等を整備していたものの、特定関連会社に対する調査について監事監査規程等において定めていたのは、7独立行政法人のうち3独立行政法人のみとなっていた。
独立行政法人は、国の一般会計や特別会計からの出資金を主な財源として、関連法人に対して多額の出資を行ったり、国から独立行政法人に対して毎年度交付されている運営費交付金を主な財源として、物品、役務等の調達を行って、その対価を支払ったりなどしている。
以上の検査の状況を踏まえて、独立行政法人及び関連法人における業務運営のより経済的、効率的及び効果的な実施を図るため、独立行政法人においては次の点に十分留意すること、主務府省においては独立行政法人が十分留意することとなるよう引き続き努めていくことが必要である。
(ア) 出資後相当の期間が経過し、特定関連会社等において、出資対象事業が順調に実施され、利益剰余金が発生していて、独立行政法人が特定関連会社等の株式を全部又は一部処分したとしても出資対象事業を継続していくことが可能となっているなどの場合、出資目的の達成状況を踏まえて、特定関連会社等の株式を処分することなどにより出資金の回収を図ることを十分に検討して適切な措置を執ること、また、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されるような場合、その後の出資金の回収についての見通しなどを踏まえつつ、慎重に対応を検討すること
(イ) 特定関連会社等が投資目的で保有する有価証券に損失が生ずることにより独立行政法人からの出資金が毀損される結果となることを極力回避するように、出資者として、特定関連会社等に適切な運営等を求めること
(ウ) 特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等を定め、これに基づいて出資金の回収を行うことにより資金の有効活用を図ること
契約方式の選定に当たって、契約の競争性及び透明性が真に確保されているかどうかについて一層留意するとともに、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられる契約については、一律に一般競争入札等に移行させるのではなく、透明性を確保しつつ、一般競争入札等に要する事務処理量の増加、契約締結や成果物納入までに必要となる期間等も勘案した上で、合理的な調達になるよう取り組むこと
(ア) 独立行政法人における財務報告の目的を踏まえて、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報について、情報開示の一層の促進に努めること
(イ) 会計基準等の趣旨や企業会計での取扱いを踏まえた会計基準等の適正な解釈に基づき、関連公益法人等に該当するかどうかの調査及び判断を適切に行うこと
本院としては、独立行政法人が多額の国費を財源として業務運営を行っており、その徹底した効率化、透明化等を図ることが求められていること、さらに、27年4月に施行される改正通則法により、独立行政法人の業務運営の一層の適正化が求められていることを踏まえつつ、独立行政法人及び関連法人における業務の状況等について、今後とも多角的な観点から引き続き検査していくこととする。