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年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(9) 機構における年金記録問題への取組の体制

機構は、本部、9ブロック本部及び312年金事務所により組織されていて、各ブロック本部の下に事務センターが置かれている。そして、年金記録問題への主要な取組の集中処理期間の組織体制は、図表1-41のとおりとなっている。

図表1-41 集中処理期間における機構の組織図

図表1-41 集中処理期間における機構の組織図画像
注(1)
機構の組織については、適宜変遷しており、本図表は、原則として、平成26年3月31日現在の組織図である。
注(2)
管理部総合調整グループと経理グループとが同一グループになっているブロック本部もある。
注(3)
記録突合センターグループは、25年12月末で廃止されている。

機構本部は、統括管理、人事、会計、事業企画、事業管理、システム、全国一括業務(26年4月以降は年金給付業務)の各部門の下に部を配置し、機構という全国組織の本部としての各種業務を行っている。そして、ブロック本部は、機構本部の指示を年金事務所に徹底し、年金事務所の業務を支援するために設置され、管内の事務センター及び年金事務所が行う業務に対する指導・支援、進捗管理、派遣職員等の作業要員の確保、管内地域に係る調達・契約等の業務を行っている。また、事務センターは、届書等の審査、入力、通知書等の作成、発送等の対面を必要としない業務を集約して行っており、年金事務所は、適用事業所等の調査や保険料の強制徴収、年金相談等の対人業務を行っている。このような体制により、機構は効率的に業務運営を行うこととしている。

機構は、前記のとおり、年金記録問題への主要な取組を25年度をもって終了することとしている。そして、機構の人員については、「日本年金機構の当面の業務運営に)関する基本計画」(平成20年7月29日閣議決定。 以下「基本計画」という。によれば、機構の設立時の人員数は、総数17,830人程度とし、うち10,880人程度を正規職員、6,950人程度を有期雇用職員とするとされている。

機構の職員の定員数をみると、22年1月の機構設立時は、正規職員10,880人、准職員(注14)、特定業務契約職員等(注15)(以下、両者を合わせて「有期雇用職員」という。)12,534人となっていたが、25年度では、正規職員10,880人、有期雇用職員14,787人となっており、正規職員の数は設立時と変わっていないものの、有期雇用職員の数は増加していた。

これは、基本計画において、「現下のいわゆる年金記録問題への対応については、現在、その問題解決に向け、政府において鋭意取組を進めている。一方、本基本計画で示した機構の必要人員数は、通常想定される業務をベースにしている。年金記録問題への対応として、一定期間、一定程度の人員・体制がなお必要となる場合も、まずは既定の人員の枠内で最大限の工夫を行うものとし、それでも対応が困難である場合でも、できる限り、外部委託や有期雇用の活用などにより対応するものとする。」とされていて、正規職員の定員数には、年金記録問題への取組に対応するための職員は考慮されていないため、機構設立以降、年金記録問題への取組等に要する人員として、図表1-42のとおり、多くの有期雇用職員が予算措置されたためであった。そして、この年金記録問題への取組のために予算措置された有期雇用職員の中には、年金記録問題に従事することになった正規職員が行っていた厚生年金保険や国民年金の適用・徴収業務等を代わって行わせるための有期雇用職員が含まれていた。

(注14)
准職員  オンラインシステムの刷新等による業務の集約化、業務処理のシステム化による合理化等により機構設立後に削減が予定されている業務に主として従事させるため、労働契約の期間の定めのある職員として雇用された者
(注15)
特定業務契約職員  特定の業務に従事させるため、労働契約の期間の定めのある職員として雇用された者

図表1-42 年金記録問題への取組等のために職員を特別に配置する予算措置が行われた有期雇用職員数の推移

(単位:人)
区分\年度 平成21 22 23 24 25


年金記録問題対応 0 1,296 1,417 1,634 1,790
適用・徴収関係 0 1,917 2,377 2,341 2,341
0 3,213 3,794 3,975 4,131
特定
業務
契約
職員
年金記録問題対応 7,661 11,460 1,747 762 1,199
適用・徴収関係 0 624 624 624 624
7,661 12,084 2,371 1,386 1,823
合計 7,661 15,297 6,165 5,361 5,954
(注)
短期間の従事者も1人として計算している。

機構における年金記録問題への取組に当たっては、上記のように、正規職員の定員数を増加させるのではなく、有期雇用職員の定員数を増加させることにより対応していた。

そして、年金記録問題への取組に従事した職員の実人員数は、機構によれば、各部署の業務の進捗状況に応じて、他の部署から応援の職員を異動させたり、有期雇用職員を年度途中で増員したりして年金記録問題への取組を行っていることなどから、これを全体的に算出することは困難であるとしている。

これを踏まえ、機構全体の各時点における実人員数についてみると、図表1-43のとおり、22年1月の機構設立時は、正規職員10,556人、有期雇用職員6,720人となっていたが、25年6月時点では、正規職員10,911人、有期雇用職員14,407人となっており、実人員数において、有期雇用職員数は、年金記録問題への取組等による増員もあって機構設立時と比べて2倍以上となっていた。

図表1-43 正規職員等の実人員数の推移

(単位:人)
区分\年月日 平成
22.1.1
(設立時点)
22.6.1 23.6.1 24.6.1 25.6.1
正規職員 10,556 10,704 10,712 10,797 10,911
注(1)
CHU1-43-1
有期
雇用
職員
准職員 1,458 2,947 4,474 4,810 4,744
特定業務契約職員等 5,262 11,226 11,554 9,956 9,663
6,720 14,173 16,028 14,766 14,407
合計 17,276 24,877 26,740 25,563 25,318
注(1)
定員数(10,880人)を超えているのは、年度中の退職者の発生を見越しているためである。
注(2)
短期間の従事者も1人として計算している。
注(3)
年金記録問題対応のために予算措置が行われた図表1-42の有期雇用職員数を含んでいる。

これは、年金記録問題への取組には専門的知識や経験を有する職員が必要であることから、機構の推計によれば、図表1-44のとおり、多くの正規職員が年金記録問題に従事し、厚生年金保険や国民年金の適用・徴収業務等の経常業務に従事する正規職員が不足して、これを補充するための有期雇用職員が配置されたためであった。

図表1-44 年金記録問題に従事している正規職員数の推移(機構推計)

(単位:人)
区分\年月 平成
22年10月

23年10月

24年10月

25年10月
ブロック本部 83 410 193 43
事務センター 416 386 655 917
年金事務所 1,053 707 569 597
1,552 1,503 1,417 1,557
(注)
年金記録問題関係とその他の業務を兼務している者については、その業務量に応じて機構が案分して算出している。なお、機構本部については、年金記録問題に従事している正規職員数の調査を行っていないため不明であるとしている。

また、機構における年金記録問題への取組を行っている部署についてみると、機構本部の「記録問題対策部」で年金記録問題に係る対策の企画立案、実施、進捗管理、厚生労働省との調整、関係機関への協力依頼等を行っていた。

そして、ブロック本部の「管理部 総合調整グループ」、事務センターの「記録審査グループ」及び年金事務所の「年金記録課」がそれぞれ年金記録問題への取組を行っていて、紙台帳等とオンライン記録との突合せ関係の業務を行うために22年6月以降、ブロック本部の管理部に「記録突合センターグループ」が、24年4月以降、事務センターに「突合記録審査グループ」がそれぞれ設置されていた。これらの部署の主な業務内容は図表1-45のとおりである。

図表1-45 年金記録問題への取組を行っている部署及び主な業務内容

機構組織 部・グループ 主な業務内容
ブロック本部 管理部 総合調整グループ
注(1)
CHU1-45-1
注(2)
・年金記録問題の総合的進捗管理・調整
・コンプライアンス・リスク対策の徹底
管理部 記録突合センターグループ ・管内の記録突合センターにおいて紙台帳等 とオンライン記録との突合せを実施すること
・記録突合業務の状況把握、分析、ブロック 本部への報告及び調整に関すること
事務センター 記録審査グループ ・基金の管理する記録との突合せに関すること
・年金記録の訂正に関すること
・年金記録の補正に関すること
・第三者委員会への進達に係る審査及び調整に関すること
突合記録審査グループ ・訂正審査に関すること
・年金受給見込額の試算に関すること
・本人確認の通知書の作成に関すること
・困難事例への対応に関すること
年金事務所 年金記録課 ・年金記録問題対応の事実調査確認等
注(1)
管理部  総合調整グループと経理グループとが同一グループになっているブロック本部もある。
注(2)
管理部  総合調整グループは、機構の経営方針に基づくブロック本部管内の業務運営等に関する総合管理、定員管理等の業務を主に行っており、図表に示した年金記録問題への取組に関する業務をその一部として担当している。

そして、前記の機構の各部署に配分された職員の定員数の推移は図表1-46のとおりとなっていて、各部署では、この定員数の範囲内で実際に職員を配置するなどして年金記録問題への取組を行っていた。

図表1-46 年金記録問題への対応に係る担当部署別の職員の定員数の推移

図表1-46 年金記録問題への対応に係る担当部署別の職員の定員数の推移画像
注(1)
表中の「正」は正規職員 「准」は准職員 「特定」は特定業務契約職員 「アシスタント」はアシスタント契約職員をそれぞれ示している。
注(2)
年度当初の定員である。
注(3)
「通常分」は、年金記録問題対応を含まない通常業務分として予算措置された職員のうち年金記録問題担当部署に配分された職員の定員数であり 「記録分」は、年金記録問題対応として予算措置された、職員のうち年金記録問題担当部署に配分された職員の定員数である。
注(4)
「アシスタント契約職員」は、主として補助的な業務に従事させるため、労働契約の期間の定めのある職員として雇用された者である。
注(5)
図表1-42の有期雇用職員数を超えているものがあるのは、予算措置された人員数を基に、各年金事務所の進捗状況や職種割合等を考慮した上で、准職員の予算を特定業務契約職員に振り替える等の措置を講じたためである。
注(6)
管理部 総合調整グループは、年金記録問題への取組に特化した部署ではないため、同グループに係る職員の定員数は記載していない。

機構設立の22年1月から年金記録問題への集中取組の最終年度である25年度までの間の機構の組織、職員の配置状況については、以上のとおりとなっていたが、機構によれば、その職員の配置は、日本年金機構組織規程(平成22年1月1日規程第2号)等により、原則として次のとおり行われていた。

各年度の開始前に、本部からブロック本部の本部長に対して、当該ブロック本部管内の正規職員、准職員及び特定業務契約職員の定員数を通知し、通知を受けたブロック本部の本部長は、この通知を受けた定員数の範囲内で、管内の各事務センター及び各年金事務所における年金記録問題に係る業務の進捗状況等を踏まえ、本部長の判断でブロック本部の各部、各事務センター及び各年金事務所の定員数を定めて、ブロック本部の各部長、各事務センター長及び各年金事務所長に通知していた。そして、ブロック本部の各部長、各事務センター長及び各年金事務所長は、本部長からの通知の定員数の範囲内で、各部、各グループ、各課室の定員数を定めていた。

また、上記の各通知においては、前記のとおり、年金記録問題への対応は有期雇用職員を増員することで対応することとされていたため、年金記録問題への対応のために措置された有期雇用職員の定員数が明示されていた。そして、この年金記録問題対応の有期雇用職員の配置に当たり、本部は、例えば、①紙台帳等とオンライン記録との突合せに対応するための職員については、突合せ対象者の住所地の割合に応じて、②厚生年金保険の被保険者等の年金記録と厚生年金基金記録との突合せに対応するための職員については、都道府県ごとの基金加入者の割合に応じて、それぞれブロック本部に配置するなどしていた。なお、上記の有期雇用職員の定員数には、前記のとおり、正規職員が年金記録問題に従事することによって不足することになった厚生年金保険等の適用・徴収業務等の経常業務に従事する正規職員を補充するために配置された職員も含まれていた。

このほか、機構は、25年度までに年金記録問題への取組の主要部分を終了させるために、各部署の長が職員の能力・適性や業務の状況を総合的に勘案して、専門的知識や経験を有していて指導的役割を果たすことができる正規職員を年金記録問題を専門に担当する部署に配置したり、各担当部署の年金記録問題への取組の進捗状況に応じ、。、て職員を異動させたり 年度の中途で有期雇用職員の増員を行ったりしていた また紙台帳等とオンライン記録との突合せ業務については、本部の指示により、ブロック本部間で業務を融通するなど所定の期限内に業務を終えるための処置が執られていた。

このように、機構は、年金記録問題への取組の進捗状況等に応じて、本部、ブロック本部、事務センター及び年金事務所のそれぞれの業務量に対応して職員配置を適切に行ったとしている。